ついてない女
母子家庭で育った私。
絶対的な立場の母親。
反発しグレた兄。
高校卒業してから勤めていた会社が倒産。
次の仕事が見つかるまでと思いバイトで働き出した、ラブホテルのフロント兼メイクの仕事。
つなぎのつもりが1年になる。
3年付き合って、結婚も考えていた彼氏に振られた。
何人かお付き合いした人もいたけど、絵にかいた様なダメ男ばかり。
男運も悪いらしい。
こんな私は今年は厄年。
お祓いに行った帰りにスピード違反で捕まった。
こんな私のくだらないつぶやきです。
ぼちぼち書いていきます。
13/07/13 11:26 追記
ガラケーからスマホに変えました。
まだうまく使いこなせないため、ご迷惑をお掛け致します。
少し慣れてから改めて更新したいと思います。
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母親の手術が終わった。
麻酔がきいているため、母親は眠っている。
酸素マスクやら点滴やら母親の体に沢山の管がつけられていた。
眠っている母親を見る。
顔にはシワがあり、髪の毛も白髪がある。
もう還暦近いため当たり前なのだが、若かりし頃の母親の記憶が強いため複雑だった。
この病院は完全看護のため、手術初日以外は身内が泊まらなくても看護してくれる。
手術初日は父親が付きっきりで母親を看る。
ただ父親も無理して倒れられたら困るため、父親が仮眠する時には私が側にいた。
祖父は眠っている母親の手を握る。
「恭子、苦労をかけて本当にすまなかった。でもお前には家族がいる。いい家族に恵まれて…」
祖父はそう言って泣いていた。
兄が祖父の背中を無言でさすっていた。
祖父は高齢のため、余り長時間病室にいるのは大変だという事と、子供達を保育園に迎えに行かなきゃならないため兄夫婦と香織さんのお母さんが祖父を連れて病室を後にした。
夜になり、兄と香織さんが病室に戻って来た。
祖父の曾孫になる勇樹くん、ゆめちゃん、まなちゃんの3人と初めて対面。
元気な曾孫の姿に祖父は涙を流し「年を取ると涙腺が緩んでな…」と言って涙を流しながら笑顔だったそうだ。
母親が目を覚ました。
しかし痛みからか、顔をしなめて唸り声をあげる。
看護師さんが定期的に来ては様子をみていく。
薬のせいか、また眠りについた母親。
無事に手術は成功した。
長い入院生活になる。
時間がある時は母親の病室にいる様になる。
職場の皆や桑原くんのお兄さん、高島さん他、色んな人からお見舞いを頂く。
桑原くんのお兄さんは母親の着替えや荷物が沢山ある時は送り迎えをしてくれ、病室まで荷物を運んでくれた。
看病に来ていた父親にもきちんと挨拶をしてくれた。
兄や香織さんにも挨拶をしてくれた。
兄は妙に笑顔だ。
「みゆき、やっと彼氏が出来たか😄」
「いや違う…」
「ちゃんと挨拶も出来るし気がきくやつじゃないか😄今までの男の中で一番いいぞ😄」
「いや、だから違う…」
「今度はうまくやれよ😄」
「…💧」
香織さんも笑顔で桑原くんのお兄さんに「妹の事、よろしくお願いしますね😄」と話している。
桑原くんのお兄さんも笑顔で答えている。
帰りの車の中でお兄さんが「いいご家族ですね😄」と話し出す。
「私も仲間になりたいですね、藤村さん😄なっちゃいましょうか?(笑)」
「はい?」
「調子に乗りました⤵すみません😞」
「ははは😅💧」
家に着いた。
「すみません、今日はありがとうございました」
お兄さんにお礼。
「いえいえ😄またいつでもお迎えに参ります😄ではまた😄」
そう言ってお兄さんは帰って行った。
祖父も兄も香織さんもほぼ毎日の様に母親の病室に来た。
父親は特別な用事や仕事がない限り、母親の側にいた。
この日は私は仕事だったが仕事前に病院に行った。
病室に行くと母親が「オレンジジュースが飲みたい」というので、看護師さんに聞いたらジュースは大丈夫と許可を得たためペットボトルのオレンジジュースを買いに売店に行った。
父親にもお茶と飴を頼まれ、ジュースとお茶と飴が入った袋をぶら下げて病室に戻った。
すると、知らない男性がお見舞いに来ていた。
年齢は40代後半から50代前半といった感じで、紺のスーツを着た真面目そうな人。
誰だろ…?
顔に出ていたらしく、私の顔を見た母親が一言。
「腹違いの弟だよ」
母親の弟⁉
母親の弟って事は、私の「おじ」になる人って事だよね。
「初めまして…」
「あぁ…娘さんですか。こんにちは、初めまして」
父親は黙ってその様子を見ていた。
母親の弟も母親の顔にも笑顔はない。
兄弟間の確執はまだある様だ。
「何しに来た?」
母親が弟に言う。
「親父から「恭子が入院した」と聞いたから」
「良く来れたな」
「せっかく来てやったのに酷い言われ方だな」
「来てと頼んだ覚えはない」
「もう二度と来ないから安心しろ、母親の葬儀にも来ないやつなんかそのまま死ねばいい」
「私にとっては母親でも何でもない、ただの鬼畜だ。お前らも同じだ。あんたら全員地獄に落ちろ‼」
「チッ💢」
母親の弟は舌打ちをして、乱暴に病室の扉を開けて閉めた。
母親は興奮していた。
「恭子、落ち着こう。みゆき、ジュースをくれ」
私は慌てて買って来たオレンジジュースを父親に渡した。
「くそじじい、余計な事を言いやがって💢」
母親は祖父への怒りを露にして、父親がコップに注いでくれたジュースを一気に飲み干した。
血圧が一気に上昇。
父親が落ち着かせようと母親を抱き締めた。
「はぁ…」
深い溜め息をついた母親。
どうやら少し落ち着いたらしい。
ふと母親の弟がいた椅子を見ると「お見舞い」と書かれた封筒を見つけた。
おじは藤村敏弘というらしい。
父親に「これ…ここにあったけど」と渡す。
父親は「落ち着いた時に恭子に渡しておく」と言って受け取った。
多分だが、母親の弟は冷やかしとかではなく純粋に母親を心配しお見舞いに来てくれたのであろう。
しかし母親が悪態をついたため売り言葉に買い言葉でついカッとなってしまったのであろう。
母親にとっては自分を苦しめた母親の子供であり、一緒に自分をバカにした相手。
しかし母親の弟にとっては昔話で、母親がこの年になっても恨んでいるとは思ってなかったと思われる。
後から父親から、私が仕事に行ってから母親が泣いていたと聞いた。
辛かったと。
胸が痛くなった私がいた。
母親が手術をしてから約半月が過ぎた。
手術後の経過も順調。
しかしまだ検査が山程あるため、退院はまだまだ先である。
そんなある日の休み。
いつもの様に母親の病院に行き、スーパーと百均で買い物をして夜8時半過ぎに帰宅した。
晩御飯を作るのが面倒だった私は特売で箱買いしていたカップラーメンを食べようとお湯を沸かしながら一服していた。
その時、部屋のインターホンが鳴った。
玄関の覗き穴から覗くと、何と桑原くんのお兄さんが立っていた。
「こんばんはー」
「はい」
私は玄関の鍵を開けた。
「突然すみません💦駐車場を見たら車がありましたので寄らせて頂きました」
「いえ…ご用件は?」
「あのですね、実は取引先の方から野菜を売る程頂きまして💦会社の皆にも配ったんですが、まだこんなにありまして…藤村さんにもお裾分けしようと思いまして😄」
そう言ってみかん箱位の大きさの段ボール2箱を玄関に置いた。
開けてみると、じゃがいもやら人参やら大根、長ネギやほうれん草等の野菜がぎゅうぎゅうに詰められていた。
「こんなに沢山…」
「私も一人暮らしですし、余り自炊しないので💦」
「ご実家には?」
「持って行きました😄それでもこんなにあって…」
「有難いです😄助かります😄」
「良かった✨」
野菜が高騰していた時期だったため本当に有難かった。
「何かお礼を…」
「いえいえ、今お母さんが大変な時ですから💦お気持ちだけ頂いておきます」
「でも…」
「野菜達も藤村さんに食べてもらえれば喜びます😄ではこれで😄」
そう言って帰って行った。
後日。
休みの日に桑原くんのお兄さんを自宅に招いた。
野菜のお礼として、頂いた野菜をふんだんに使った手料理を振る舞った。
普段滅多に見る事のない料理レシピのサイトを開き、作れそうな料理をプリントアウト。
昼から一生懸命作った。
待ち合わせ時間ぴったりにお兄さんが来た。
仕事帰りに真っ直ぐ来たらしく、スーツ姿だった。
「今日をずっと楽しみにしていました😄あぁーいい匂いがする😍」
お兄さんは玄関先で鼻をクンクンさせていた。
こんなに頑張ってご飯を作ったのは久し振り。
「お口に合うかどうか…」
「藤村さんが作る料理は何でも美味しいです😄頂きます(^人^)」
手を合わせて食べ始めた。
「凄く美味しいです😍」
そう言って黙々とご飯を食べていく。
見ていてとても気持ちが良い。
「こうして藤村さんの手料理が食べられるなんて…幸せ過ぎます😄本当に美味しい😄」
「ありがとうございます」
お世辞でも誉められると嬉しい。
ほとんど残らず食べてくれた。
「ご馳走さまでした(^人^)」
「いえ、こちらこそ美味しい野菜を頂いて」
片付けていると「いやぁー何かやっぱり藤村さんって素敵な方ですね」
台所にいる私に後ろから話して来た。
すると視界にお兄さんが入って来たと思ったら、背後から抱き締められた。
ちょうど私の胸の辺りで手がクロスになる。
その右手がちょうど私の胸に当たっていた。
「藤村さん…」
「すみません💦手が胸に当たってるんですけど😱」
言った瞬間、お兄さんは飛び跳ねる様に後ろに下がった。
「失礼しました💦」
「いえ」
「これ以上、一緒にいたら藤村さんを襲ってしまいそうなので帰ります💦今日はありがとうございました‼」
ペコリとお辞儀をして、足早に玄関に向かったかと思ったらもうお兄さんの姿はなかった。
正直なところ、後ろから抱き締められた時、少しだけドキッとした。
以前なら全てを拒否していただろう。
こうして自宅に招いたりも絶対になかった。
しかし今はお兄さんの事が気になる存在になっていた。
でも、桑原くんのお兄さん。
揺れる心。
複数であった。
季節は春。
桜が綺麗な公園は花見客で賑わう。
ある日曜日。
夜は仕事だったが、昼間はあいていたためラブホテルのメンバーで花見をする事にした。
昼間働いている愛ちゃんも綾子さんも日曜日は昼間の仕事は休み。
皆でお金を出し合い、飲み物持参でバーベキューをした。
愛ちゃんと綾子さんは娘さんを連れて来た。
絵美さんの子供は部活の試合があり欠席。
愛ちゃん親子、綾子さん親子、絵美さん、純子さんと私の女7人での花見。
ゆうちゃんも誘ったが仕事だからと来れなかった。
和子さんも誘ったが、孫と動物園に行く約束をしたからと来れなかった。
綾子さんの娘さんは愛ちゃんの娘さんと仲良くなり、愛ちゃんの娘さんは「お姉ちゃんみたい😄」と喜んでいた。
綾子さんの娘さんは高校生、愛ちゃんの娘さんは小学生。
綾子さんの娘さんも楽しそうにしていた。
夜が仕事組の私と綾子さんと愛ちゃんはジュースやノンアルコールビールで我慢したが、休みである純子さんは「ごめんねぇー😍」と言いながらビールを飲みご機嫌。
絵美さんは試合が終わったら子供を迎えに行かなきゃならないからとノンアルコールビールを飲んでいた。
天気にも恵まれ、楽しい花見だった。
いいだけ飲んで食べてもお肉や野菜が結構余った。
幹事をしてくれた純子さんに渡そうと思ったが酔っていてそれどころではなかったため、食べ盛りの子供がいる絵美さんと綾子さんと愛ちゃんとで分けた。
余ったジュースやお茶類は私、ビールは純子さんとで分けた。
その日は晩御飯がいらないくらい食べたため、仕事組は小腹がすいた時用で菓子パンを持参した。
仕事をしながら「また時間が合えば皆で集まりたいね😄」と話をする。
たまにはこうして皆で集まるのも悪くない。
今度はゆうちゃんも和子さんも参加出来たらいいなと思う。
昼間にはしゃぎ過ぎたせいか、仕事を終えて帰宅するとどっと疲れてしまった。
携帯を見ると、高島さんからメールが来ていた。
「ご無沙汰してました😄元気ですか?実は私、高島耕平、結婚する事になりました🎵お相手はもちろん高野なぎささんです😄」
おぉ~✨
結婚するのか😄
その後、結婚披露宴の招待状が届いた。
高野くんにも会いたいし、「出席」に○をつけた。
おめでたい事は実に嬉しい気持ちになる。
お幸せに😄
この春、甥っ子である勇樹くんが小学校入学。
入学式当日、入学祝いをやるからと私も誘ってくれた。
兄家族は現在、香織さんの実家で香織さんのお母さんと同居。
2階部分をリフォームし、二世帯にして住んでいた。
玄関とお風呂は一緒だが、トイレとキッチンは2つある。
お祝いを持って約束の時間にインターホンを鳴らした。
香織さんのお母さんが笑顔で出迎えてくれた。
香織さんのお父さんの仏壇で線香をあげさせてもらい香織さんのお母さんと一緒に兄家族が待つ2階へ。
「あっ‼みゆきちゃん‼」
真っ先に気付いた勇樹くんが駆け寄ってくれた。
「今日ね、小学校の入学式だったんだよ‼」
嬉しそうに入学式での事を話し、真新しいランドセルを自慢する勇樹くん。
「勇樹くん、ランドセル似合ってるよ😄良かったね😄」
ランドセルと机は私と兄の父親が買ってくれたらしい。
居間の奥ではゆめちゃんがまなちゃんに絵本を読んでいた。
まなちゃんがゆめちゃんにちょっかいをかけるため、ゆめちゃんが「まな‼邪魔しないで😠」と怒っていた。
微笑ましい光景である。
テーブルの上には豪華なご馳走が並ぶ。
香織さんとお母さんと2人で作ったという。
お母さんが「みゆきさん😄お口に合うかわからないけど…沢山食べて😄」
「ありがとうございます😄」
兄家族と一緒に過ごす夜。
兄は自慢気に勇樹くんの入学式に撮ったビデオカメラを見せてくれた。
可愛いスーツに身をまとい、少し緊張した顔をしながらお友達と手を繋ぎ在校生や父兄のあたたかい拍手の中入場してくる勇樹くん。
カメラを見つけたのか緊張した表情から一瞬笑顔になった。
保育園で仲が良かったお友達と同じクラスになったらしく、とても嬉しそうにしていた。
「早いなぁ、もう小学生かぁ」
私がつぶやくと香織さんも「本当にね」ともりもりご飯を食べている勇樹くんを見つめた。
子供の成長って本当に早い。
まなちゃんもついこの間生まれたと思ったら、今はもうヨチヨチ歩いている。
美味しいご飯をお腹いっぱい頂き、楽しい入学祝いに呼んでもらい本当にいい夜を過ごした。
翌日、兄がパソコンに落として写真にした勇樹くんの入学式の写真を病床の母親に見せに行った。
母親は目を細め「勇樹も小学生なんだね」と嬉しそうに写真を見る。
母親が気に入ったのは保育園からのお友達と一緒に教室で撮った満面の笑顔の写真。
「いい笑顔」
その写真を枕元にある棚に飾りたいと言われて、うちにある今は使っていない写真立てを持って来る事にした。
昔の母親は絶対こんな事はない。
病気になり、年もとり色々と思う事もあるのだろう。
父親と入籍してから母親は丸く穏やかになった。
私が帰ろうとした時に父親が病室に来た。
「みゆき、来ていたのか」
「うん、勇樹くんの入学式の写真持って来た」
そう言うと父親は「どれどれ」と笑顔で母親が持っていた写真を見る。
「おぉ、勇樹立派になったなぁ」
父親も笑顔で写真を見ていた。
孫は可愛いというが、両親を見ていて改めてそう思う。
「みゆきもそろそろ…結婚しないのか?」
父親が言い出した。
「うん、まだ予定はないかな…」
「お前、もう30過ぎただろ」
「とうの昔に」
「お前も落ち着かないと」
「わかってる」
兄といい、父親といい、心配してくれているのはわかるが…
確かにもう結婚して子供がいてもおかしくはない、というかむしろ当たり前の年ではあるが…
「まぁ、そのうちに😅」
そう言って誤魔化しながら逃げる様に病室を出た。
その日の夜は仕事だったが、仕事が一段落した時に携帯を見ると桑原くんのお兄さんからメールが来ていた。
「お仕事お疲れ様です😄早速なんですが、今度のお休みはいつですか?同僚から映画のペアチケットを貰ったのですが、良かったら一緒にどうかな?と思いまして😄」
映画かぁ…しばらく行ってないな。
たまにはいいかも💡
「お疲れ様です😄映画いいですね😄是非ご一緒させて下さい。次の休みは金曜日です」
送信したらすぐに返信。
「わかりました😄ありがとうございます✨では金曜日の夜、仕事が終わったらお迎えに参ります😄」
楽しみにしている自分がいた。
約束の金曜日。
着ていく服で悩んでいた。
この季節の変わり目の服装は結構悩む。
当たり障りないが普段はまずはかないスカートをはいてみた。
太い足を出すのは抵抗があったが、たまにはいいだろう。
約束の時間少し前に桑原くんのお兄さんから着信。
「今、藤村さんのアパートの前に着きました」
「今降ります」
お兄さんは私の姿を見るなり「藤村さんがスカートはいている姿は初めてですが可愛いじゃないですか😍」とべた褒めしてくれた。
少し照れる私。
映画館に着き、ジュースを買い劇場へ。
ラブコメディ映画のためカップルが多かった。
映画が終わった。
「楽しかったです😄ありがとうございます」
「いえいえ💦あっ、良かったらこれからご飯どうですか?ちょっと遅くなりましたが…」
せっかくなので一緒にご飯を食べに行った。
映画館のすぐ近くにある和食レストラン。
「またこうして藤村さんと会えるとは😄」
「こちらこそ映画お誘い頂いて」
「同僚に感謝です(笑)」
食事をしながらお兄さんと話す。
食事も終わり、ふと時計を見ると午後10時半を過ぎていた。
「あら、もうこんな時間ですね💦」
「藤村さんと一緒だと時間が過ぎるのが早すぎます😢もっと一緒にいたいですが無理ですか?」
「ダメではないですが…明日仕事は?」
「あります😞でも上司が皆いないので少しは気が抜けます😄」
「そうですか…で、何処に行きます?」
「どうしましょうか?」
「うちに来ますか?少しはゆっくりお話し出来るかと」
「いいんですか⁉じゃあ何か飲み物か何か買っていきましょう😄」
24時間営業のスーパーに寄り、飲み物や適当な食べ物を買ってうちのアパートに来た。
「お邪魔します😄」
「どうぞ」
スーパーで買って来たものをテーブルに並べる。
さっきご飯を食べたばかりの為、好きなさきいかやカルパス、半額になっていたサラダ等酒のつまみばかり。
「藤村さんの部屋はシンプルですね」
「良く言われます。ごちゃごちゃしているのは苦手で」
「じゃあうちはダメですね😞片付けが出来なくて」
「出したら元の場所にしまえばいいだけですよ」
「それが出来なくて😅とりあえずソファーに座って全てが手に届く範囲にあります💦」
「そうなんですか😅」
最初はこんな感じの話をしていたが、ふとした事から桑原くんの話しになった。
「雅之は昨年10月に転勤になりまして…」
「そうなんですか」
「あれから色々彼女をとっかえひっかえしていましたが、ちょっとトラブルがありまして…まぁ左遷っていったところでしょうか…我が弟ながら恥ずかしくて」
良く話を聞くと会社の女性何人かに手を出し、そのうちの1人が妊娠したらしい。
するともう1人も妊娠したと出てきて女性同士が修羅場と化した。
当の桑原くんは2人に「勝手に妊娠したんだから俺は関係ない」と告げて逃げた。
それに激怒した女性2人が結託し桑原くんを訴えた。
大事になり、会社の社長にまで話が伝わる。
話を聞いた社長が激怒し、桑原くんをクビにしようとしたが部長の計らいで左遷に。
妊娠した2人の女性は会社を辞めた。
これは酷い…
「雅之は藤村さんと別れてから荒れていました。でも僕は藤村さんを悲しませた弟が許せなかった。女性社員に酷い事をしておきながら僕に泣きついてきました。クビにならなかっただけ有難いと思え‼と突き放しました。それ以来連絡は取っていません…」
「そうなんですか…」
それからしばらく無言が続いた。
すると突然お兄さんが口を開いた。
「僕は藤村さんを悲しませる事はしない‼藤村さんを守ります。きっと藤村さんは弟の事が引っ掛かっているんだろうと察しますが…良かったら…あの…お付き合いして下さい‼」
告白された。
「桑原雅之の兄としてではなく、1人の男として見て下さい‼」
そう言って頭を下げた。
「頭を上げて下さい…」
そう言ってもずっと頭を下げたままのお兄さん。
困惑しながらも返事をする。
「はい…こんな私ですがよろしくお願いします」
するとパッと頭を上げた。
「本当に?」
「はい」
「ありがとうございます‼」
「よろしくお願いします」
「こちらこそ」
そう言ってテーブルを挟みお互いにお辞儀をした。
お付き合いを始めたと言っても、今までとそんなに変わらない。
お互いいい年のためイチャイチャベタベタというお付き合いではなく、邪魔にならない程度のお付き合いだった。
1人の時間もあるし、お互いの仕事も理解し合い決して迷惑はかけない。
まだお互いに敬語がとれない。
他人から見たら不思議な関係だったが、お互いにそれで良かった。
付き合い始めて1ヶ月。
初めて休みが重なった。
この日は前からデートをする約束をしていた。
幸い天気にも恵まれドライブ日和。
少し車を走らせて海を見に行った。
ほのかに潮の香りがする。
「海なんて久し振りです😄」
お兄さんは運転しながら笑顔。
「私もです😄」
窓を開けると波の音が聞こえる。
ちらほらと釣りをする人達が見えた。
お昼近くになり、海沿いにあった海鮮料理屋さんに入った。
少し値段は高いがせっかくだからと海鮮丼を注文。
観光客と思われる人達で店内は賑わっていた。
私が持って来たデジカメで海鮮丼やお兄さんの写真を撮っていたらお店の方が「ご一緒にお撮りしましょうか⁉」と声を掛けてくれた。
「ありがとうございます😄」
私は店員さんにデジカメを渡し、お兄さんと2人で海鮮丼を少し傾けてカメラに向け、押さえながらピースでポーズ。
記念の一枚になった。
海をバックに写真を撮ったり景色を写したり。
カメラマン藤村は色んな写真を撮り楽しみ、その写真を見て楽しむお兄さん。
素人写真のためうまく撮れないものも多かったが、奇跡的にうまく撮れたものも稀にあった。
すごく楽しい1日だった。
地元に帰って来てから2人で居酒屋に行った。
店内はそこそこ混んでいて賑やかだった。
お兄さんとお酒を飲みながら色々話をする。
話をしているうちにお兄さんの元嫁の話が出た。
付き合って1年半で結婚。
元嫁は勤務していた会社を寿退社、専業主婦に。
一緒に住んで初めてわかったが元嫁は家事が一切出来なかった。
結婚するまで実家暮らしで全て義母が家事をしていたため、全くといっていい程出来なかった。
最初は失敗しながらも色々頑張ってくれていたが、ある日「私には主婦は無理、自分の事は自分でやって」と言い出しパートに出た。
お兄さんは帰って来てから掃除洗濯、お風呂掃除、出勤前にはゴミ出しをしていたが元嫁は「あなたは何にもしてくれない」といつも愚痴っていた。
そしてヒステリーを起こしスイッチが入るとお兄さんを罵る。
言い返すと「誰に向かって口答えしているんだ💢」
黙っていると「無視すんな💢」
自分の意見が通らないとヒステリーになり、自分が思った通りの答えが返って来ないと「何もわかってくれない💢」と怒る。
休みの日、元嫁は友人と遊びに行ったりするのに自分が出かけようとすると「自分ばかりずるい💢」
「そっちだって休みは友人と出かけるじゃないか」と言えば「束縛する気⁉自由もないの⁉」と話がずれる。
もう限界を感じていた時に元嫁の浮気が発覚。
元嫁に聞くと浮気を認め「あなたから言ってくるのを待ってた。あなたから離婚って言って来たんだから慰謝料を請求する」と意味不明な要求。
弁護士さんを通し、浮気を含め元嫁の事を全て弁護士さんに話し逆に元嫁に慰謝料請求。
わずかなお金をもらい離婚した。
今はどうしているか知らないとの事。
「大変だったんですね」
「はい…それで女性には懲りたのでしばらく1人でいたのですが、藤村さんと出会って気持ちが変わりました😄」
「そうですか…」
あんな母親だったが、家事が出来る様になったのはある意味母親のおかげである。
ヒステリーね。
母親も良くヒステリーを起こしていたが、母親を見ていると自分の意見が通らないとヒステリーになっていた気がする。
ヒステリーになるともうお手上げ状態。
ある意味無敵だ。
大変だったんだなぁ、お兄さん。
結婚してから変わる人もいるらしいからな。
お兄さんは結構酔ったのか顔が真っ赤になっていた。
明日は仕事のため、居酒屋でお兄さんと別れた。
ある日、香織さんから連絡が来た。
「みゆきちゃん😄今、電話大丈夫?」
「こんにちはー😄大丈夫です😄」
「今度の水曜日ってみゆきちゃん仕事⁉」
「水曜日?あー…ちょっと待って下さい」
シフト表を見る。
「すみません、仕事です…」
「そうなんだぁー残念💦水曜日は私の誕生日でさ😄子供達が「みゆきちゃんも一緒にママの誕生日お祝いしよ🎵」ってうるさくて💦仕事なら仕方ないねー」
「すみません」
そうだった💦
香織さんの誕生日だった。
いつも良くしてくれる香織さん。
誕生日は行けないけど…何かプレゼントしよう😄
香織さんはいつも長い髪を後ろに結んでいたり、アップにしている事が多い。
可愛いシュシュでもプレゼントしようかな?
今度の休みにプレゼントを見に行ってみよう。
そう思っていたが…
体調が良くない。
風邪でもひいたかなと思っていた。
体がダルくてお腹はすくが食べると吐く。
飲み物はそうでもないが、固形物を受け付けない。
日に日に酷くなり、仕事にも支障する様になる。
わずかだが吐血した。
これはヤバいと思い近所の行き付けの病院に行くと、胃腸科を紹介された。
翌日に胃を空っぽにして紹介状を持って胃腸科で胃カメラを飲む。
先生が胃カメラを見ながら一言。
「あらぁ…これは酷いね…入院しますか」
…えっ⁉入院⁉
胃潰瘍であった。
「入院ですか?」
先生に聞いた。
「そうだね、このまま入院しましょうか」
「でも…何にも用意してないし…仕事も…」
「藤村さん、仕事が大事なのはわかりますが自分の体が一番でしょ?こんな状態で働くのは無理です」
「…はい」
「今のうちにご連絡して下さい」
「…はい」
まさかの入院。
入院するとは思っていなかったため、何もかもがそのままだ。
至急社長に連絡。
夜のメンバーに入院する事をメール。
母親も入院のため父親に連絡。
兄と香織さんにも連絡。
入院する時の保証人の署名が必要だったため、父親が来てくれた。
香織さんがパートが終わってから職場から真っ直ぐ来てくれた。
香織さんに部屋の鍵を渡して着替えを持って来てもらい、駐車場に停めてあった私の車を看護師さんに言われた別の駐車場に移動してくれた。
桑原くんのお兄さんにも連絡。
絶食入院生活が始まった。
入院すぐに看護師さんから普段の生活について聞かれた。
仕事の事、食生活、どんな生活をしているのか?家族構成等…
どうやら食生活の乱れとストレスが一番の原因の様だ。
胃腸はストレスに弱い臓器らしい。
今までの積み重ねが「胃潰瘍」という症状となり体が悲鳴をあげていた。
他は至って元気なため、入院生活はつまらない。
武田一家や亜希子ちゃん親子、ラブホテルのメンバーも皆お見舞いに来てくれた。
愛ちゃんが勤務する保険に入っているため手続きもあり何度か来てくれた。
「入院生活が暇だ」と言ったら皆漫画や雑誌を買って来てくれた。
有難い。
普段は余り本は読まないがこの時は読みふけた。
一番有難かったのがナンクロやイラストロジック。
もくもくやっていた。
絶食のため、食べ物は食べられない。
飲み物も制限されたが水や麦茶は許された。
24時間点滴をしているせいか余り空腹感はない。
入院した日に桑原くんのお兄さんがお見舞いに来てくれた。
「入院したと聞いて驚きました…でも意外に元気そうで💦」
「胃以外は元気です😄何が辛いって絶食が一番辛いです😫」
お兄さんは残業で遅くなる日や用事がある日以外は毎日来てくれた。
休みはずっと一緒にいてくれた。
病室は4人部屋だが、私ともう1人小林早苗さんという40代と思われる人と2人だけ。
小林さんはいつもベッド周りにあるカーテンを閉めていた。
看護師さんが開けようとしたら「開けないでもらえます?」と言って怒る。
私にも「お見舞いに来る度にうるさいから、あそこで話してくれる?」と言ってデイルームを指差した。
「すみません…」
言われてからお見舞いに来てくれた時は病室から出る様にした。
しかし何かにつけて文句を言われる様になる。
「せっかく1人だったのに…今からでも違う部屋に移れない?」
絶食の私に「あーご飯が美味しいわぁ」と聞こえる様に話してくる。
最初はイライラしていたが2~3日もすると気にならなくなった。
色々言っていたがスルーしているとそれが面白くなかったのか「無視ですかぁ?」と嫌味を言われた。
面倒くさい人だな…
私は小林さんのベッド周りにあるカーテンをガラっと開けて「構って欲しかったら素直に構って欲しいって言ったらどうですか?」と言った。
黙っている小林さん。
「カーテン越しじゃないと文句も言えないの?嫌味タラタラ…うるさいんですけど」
「…」
黙っているため、開けたカーテンをそのままで自分のベッドに戻った。
「…カーテン閉めてよ」
小林さんが言った。
「自分で閉めたら?」
小林さんは私を睨み付けながらカーテンを力強く閉めた。
それから文句や嫌味を言われる事はなかったが、ブツブツ独り言が始まった。
小林さんの独り言も気にならなくなったある日。
久し振りの食事にありつけた。
とは言っても、重湯だったがとても美味しく感じた。
食べれる幸せ。
かなり胃潰瘍も良くなって来たのか胃痛も消えていた。
先生から退院も近いと言われて退院日時も決まった。
退院日には桑原くんのお兄さんが有給を取ってくれたらしく、迎えに来てくれると言ってくれた。
タクシーで来て、私の車を運転してくれるらしい。
本当に有難い。
退院当日。
桑原くんのお兄さんが笑顔で迎えに来てくれた。
一応、同室だった小林さんにも挨拶をしたが無視されてしまった😞
看護師さんから薬と退院後の生活という紙をもらい退院。
しばらく振りの我が家に帰って来た。
香織さんに冷蔵庫の中の賞味期限が入院中に切れてしまう卵やちくわ等を切れる前に食べて欲しいとお願いをしていたため、冷蔵庫の中はすっきりしていた。
桑原くんのお兄さんは退院してからしばらくの間、毎日来てくれた。
退院直後は体がなまっているのか体力がない。
そのため、お兄さんが身の回りの事を手伝ってくれた。
お兄さんの存在が心から感謝の気持ちでいっぱいだった。
ラブホテルにも復帰し、今までのだらしない食生活も見直し気をつける事にした。
しばらくお酒は飲めない。
タバコも止めた方がいいと言われたがさすがに止められず⤵
本数は減らす様にした。
健康が一番だと改めて感じた。
今まで余り興味がなかったサプリメントも買った。
心なし体が言う事をきく様に感じる。
食生活を見直してから体重も少し減った。
面倒だからとカップ麺やコンビニ弁当ばかりではやはり体には良くなかった。
多少だが料理にも目覚め、色んな物を作ってはお兄さんと一緒に食べたりした。
体調も良くなったある日。
父親から連絡があった。
「もしもし、みゆきか?」
「うん」
「入院中はなかなか行けなくてすまなかったな」
「いいよ、お母さんについていてあげて。お母さんの具合は?」
「今のところは安定しているよ」
「そう…で、用件は?」
「あぁ…恭子の父親が亡くなった」
「…えっ?」
「明日、通夜なんだ」
母親の祖父が亡くなった。
入院する前に会ったばかりだった。
その時はいつも通りニコニコしていて、普段と変わりなかった。
死因は心不全。
突然の事だった。
あの姿が最期になってしまった。
最初に会った時に抱き締めてくれたあの感触を思い出す。
母親は体調が落ち着いているため、祖父の葬儀の時は外出許可が出た。
その代わり薬をもたされ、必ず指定された時間に飲む様に言われた。
通夜はシティーホール。
喪主は母親の腹違いの弟。
母親と父親と私と3人でシティーホールに着いた。
母親は棺桶の中で眠っている祖父を見るなり泣き崩れた。
「お父さん…お父さん…」
そんな母親の側に涙をこらえた父親がいた。
喪主が母親に近付いた。
「ちょっと…いいか?」
母親は力無く立ち上がりハンカチで涙を拭きながら喪主について行った。
父親は私と残る。
父親の会社の人達も集まり父親にペコペコと頭を下げて行く。
隣にいた私にも頭を下げてくれる。
父親が喪主に呼ばれた。
私はシティーホールの入口にあった喫煙所に向かった時にちょうど兄と香織さんが来た。
「親父は?」
「今、喪主に呼ばれて控え室に入った」
「そうか」
兄が受付を済ませて喫煙所に来た。
2人共余り話さない。
香織さんは御手洗いに入って行った。
通夜が始まる。
私と兄と香織さんは隅っこの席に座る。
父親と母親は一番前に座っていた。
初めて会う母親の兄弟や親戚。
たくさんの方々に見送られ祖父は天国へと旅立った。
母親の腹違いの弟が2人、妹が1人来ていた。
長男は喪主、次男は母親のお見舞いに来てくれた藤村敏弘さん。
妹は体重が100キロ前後はありそうな体格で声が大きい。
お通夜の時に兄弟が何十年振りに揃って顔を合わせた。
母親は最初、目も合わす事はなかったが時間が経つにつれて話をする様になる。
体格が良い妹が大きな声で良く喋る。
妹が「母親が怖かった。ねえさんの事を良く言うと平手打ちされた。だからねえさんの事をこんな年になるまで本音で話せないなんてね」と話し出した。
母親は眉間にシワを寄せながら黙って聞いていた。
兄弟間の長い間の確執。
母親は継母と弟妹が許せない。
弟妹は「母親が怖かった」と口を揃える。
話を聞いていると、元凶は継母にあった様だ。
その継母が亡くなり隔たりがなくなった今、やっと姉である母親と交流を持つ事が許されたのであろう。
祖父が子供達を繋げてくれた気がする。
母親は声をあげて子供の様に泣いていた。
母親にしかわからない心にしまっていた色々な思いが爆発した様に感じた。
周りにいた身内も事情を知っている人達もすすり泣いていた。
この日から母親の弟妹達は母親が入院する病院に良く来てくれた。
特に妹は頻繁に来てくれた。
ずっと母親の看病をしている父親に「少し休まないと」と言って休ませ、その間母親の面倒をみていた。
母親は最初は困惑した様な表情をしていたが次第に笑顔になっていった。
妹の名前は河合初枝さん。
旦那は市役所勤務。
子供は5人いて、一番下は今年高校を卒業したそうだ。
大学には行かず、地元のスーパーに就職が決まり春からスーパーで働き出したと言っていた。
母親はそんな話を笑顔で聞いていた。
母親の笑顔は久し振りだった。
高島さんと高野くんのお姉さん、なぎささんの結婚式の日を迎えた。
遠方の親戚が多いため、昼11時半からの披露宴だった。
久し振りに高野くんに会った。
「ご無沙汰してました😄」
「高野くん😄元気だった?」
高野くんの隣には可愛いピンクのドレスを着た娘さんがいた。
「こんにちは😄」
娘さんが挨拶をしてくれた。
「こんにちは😄」
娘さんは高野くんにそっくりだった。
AKBが大好きで全ての歌の振り付けも完璧に覚えているらしい。
可愛い素直な子だった。
結婚式は手作りが多く、豪華ではないが素朴で心暖まる素晴らしい式だった。
ウェディングケーキは高野くんのお母さんの手作りだと聞いた。
高野くんのお母さんはお菓子作りが趣味で腕前は確かなもの。
娘の晴れ舞台にお母さんが頑張って作ったらしい。
お母さんはケーキ入刀の時、笑顔で新郎新婦を見守っていた。
ケーキが振る舞われ頂いたがプロ並みに美味かった。
緊張した表情の高島さん、ずっと笑顔だったなぎささん。
すごく素敵な結婚式に招いてくれてありがとう✨
末長くお幸せに😄
後日、高野くんと飲みに行った。
胃潰瘍をしてからは前程はお酒は飲まなくはなったが、お付き合い程度たしなむ。
高野くんと久し振りに飲んで色々話す。
高野くんは娘さんが大人になるまで再婚はしないという意思は強いらしく「娘が成人して娘が良いと言ってくれた人がいれば、その時は考えます」と言っていた。
父子家庭で色々大変な事もある様だが、頑張って欲しい。
「愚痴ならいつでも聞くよ」
「ありがとうございます😄」
変わらない高野くんの笑顔。
高野くんが勤務している温泉ホテルの割引券をもらった。
「是非、彼氏さんといらして下さい😄」
期限は今年いっぱい。
「ありがとう😄」
一度行ってみたかったホテル。
休みが重なる事があれば是非一緒に行ってみたい。
ある休日。
お兄さんは仕事。
仕事が終わったらうちに来る約束をしていたため、晩御飯はうちで食べる予定だ。
たまには手料理を振る舞おうとパソコンで作れそうなレシピを入手、必要な材料をスーパーに買いに行った。
買い物袋をぶら下げて玄関の鍵を開けようとした時にカバンの中の携帯が鳴った。
亜希子ちゃんだった。
「もしもし」
鍵を開けながら電話に出る。
「もしもしー😄みゆきん😄久し振り~😄今大丈夫⁉」
「うん」
「早速なんだけどさ、みゆきん…今日って時間ある?」
「うーん…夕方くらいまでなら」
「ちょっと相談があって…これからみゆきんの家に行っても大丈夫⁉」
「構わないけど」
「急にごめん💦じゃあこれから行くね」
そう言うと亜希子ちゃんは電話を切った。
20分後。
亜希子ちゃんが来た。
「急に申し訳ない💦これお土産😄」
そう言ってチェーン店のケーキ屋の箱をくれた。
開けてみると美味そうなロールケーキが入っていた。
「新商品のキャラメル味なんだって🎵」
「ありがとう😄散らかってるけど入って」
「お邪魔しまーす」
久し振りに会う亜希子ちゃんは少し痩せた気がする。
「亜希子ちゃん痩せた?」
「うん、8キロ減った💦ダイエットした訳じゃないんだけどね😅」
「そうなんだ…そういえば子供は?」
「保育園だよ😄」
「そっか」
お土産のロールケーキを切り分けながら話す。
「みゆきん、今日は休み?」
「休みだよ。亜希子ちゃんも?」
「夜は仕事ー💦19時からだからまだ時間はあるんだ😄」
「そっか」
ロールケーキをテーブルに置き、烏龍茶も一緒に出した。
「食べようか、亜希子ちゃん頂きます😄」
ロールケーキを一口。
ほんのりキャラメル味のクリームが口いっぱいに広がる。
「うん、美味しい🎵」
亜希子ちゃんも一口食べて笑顔。
「相談って…何?」
ロールケーキを食べながら亜希子ちゃんに聞いた。
「うん…実はね…」
亜希子ちゃんは話し出した。
亜希子ちゃんの話をまとめるとこうだ。
離婚成立後、しばらくの間は何の音沙汰もなく静かで平和だった。
しかしある日突然、亜希子ちゃんの実家に元旦那から子供へおもちゃのプレゼントが届いた。
亜希子ちゃんはおもちゃを元旦那に送り返した。
「もう二度とこういう事はやめてもらいたいし、今後一切関わらないで欲しい」と書いた手紙も添えた。
その後直ぐに実家に来て「やり直したい、子供に会いたい」と玄関先で騒いでいた。
一緒にいた亜希子ちゃんのお母さんが「これ以上騒ぐと警察を呼びます」と言うと居なくなった。
亜希子ちゃんは離婚と同時に携帯を変えたため、元旦那は亜希子ちゃんの実家に連絡するしか手段がなかった。
亜希子ちゃんの元旦那は亜希子ちゃんとの復縁を望んでいるが、亜希子ちゃん自身は全くその気はない。
そんな中、亜希子ちゃんのお母さんに再婚の話が出た。
亜希子ちゃんは喜んだが、亜希子ちゃんのお母さんは娘と孫が心配で再婚を延ばしていた。
離婚間もない娘とまだ幼い孫。
再婚したら地元を離れる。
お母さんの再婚相手は「是非一緒に」と言ってくれているが躊躇。
でも今の場所に住んでいると、またいつ元旦那が来るかわからない。
小さいこの街では何処で会うかわからない。
でも母親の再婚相手のところに一緒に行くのもどうかと…。
どうしたらいいものか。
というものだった。
「市営住宅とかなら母子優先とかしてくれないの?元旦那との関わりを絶ちたいなら、まず引っ越しだよね?」
「そうなんだけど…今すぐは難しいかな」
「じゃあちょっと高くなるけど賃貸は?とりあえず安いところ見つけて入って…」
「そんなお金もないし…」
「昼夜働いているなら家賃払えるでしょ?母子なら母子手当てみたいのも入るでしょ?」
「うん…でも…」
「後は市役所の子供課みたいなところで相談してみたら?専門家だろうから何か良いアドバイスもらえるんじゃない?」
「うん…」
煮え切らない亜希子ちゃんの返事。
「ゴメン、ちょっときつい言い方をするけど、離婚して子供と2人で頑張るって決めたんだよね?だったらどうして誰かに依存しようとするの?」
「…」
黙る亜希子ちゃん。
「でも、だって、ばかり言ってたって先に進めないじゃん。子供を守れるのは亜希子ちゃんしかいないんだよ?確かに1人で仕事をしながら子供の面倒をみるのは大変だとは思うけど、頑張ると決めたからには頑張らないと‼」
すると亜希子ちゃんが突然キレ出した。
「みゆきんは何にもわかってない‼子供を生んだ事もないくせに偉そうに言わないでよ💢子育てがどんなに大変かなんてわからないくせに‼」
売り言葉に買い言葉。
「あー、私は子供を生んだ事も育てた事もないよ、大変さを100%理解してるかと言われたら知らないよ。でもね、子供は母親を見てるよ。そんな頼りない母親を見て子供はどう思うかな…しっかりしなよ‼」
亜希子ちゃんは泣き出してしまった。
言い過ぎたと反省。
きっと亜希子ちゃんはいっぱいいっぱいになっているんだろう。
幼い我が子を抱えて離婚して不安な気持ちはわかる。
誰かに頼りたい気持ちもわかる。
でも、離婚して子供と2人で頑張ると決めたのは亜希子ちゃんだ。
友人として協力出来る事はしたいと思ってる。
たまには息抜きもしたいだろう。
でも、今が頑張り時だと思う。
きっと軌道に乗れば親子2人で頑張っていける。
それまでは本当に大変だと思うが友人として応援したい。
亜希子ちゃんは1ヶ月という期限付きで、親子でうちに来る事になった。
その間に部屋を決め、夜間保育所を探す。
昼夜働いているためなかなか進まないが、休みの日は朝から市役所に行ったり不動産屋に行ったりしている。
うちは1DKのため亜希子ちゃん親子はリビングで持参した布団で寝ている。
息子はまだ歩かないが、何でも口に入れてしまうため手が届く範囲には物は置かない様に気を付けている。
息子の名前は悠斗くん。
余り夜泣きはせず、大人しい子供だった。
保育園に預けているからか余り人見知りもしない。
手が掛からない方ではないだろうか?
抱っこするとたまに笑ってくれる。
一度おむつを取り替えてあげた時に、おむつが取れて開放的になったのか噴水の様におしっこをかけられた。
おむつで蓋をしたが間に合わなかった。
隣で亜希子ちゃんが笑いながら「私もたまにかけられるんだ~(笑)」と話していた。
「悠斗!コノヤロー😄おばちゃんにおしっこかけたな~(笑)」
私は笑いながら悠斗くんに話し掛けた。
タイミング良く悠斗くんは笑ってくれた。
人懐っこい可愛い笑顔。
子供って本当に可愛いな😄
亜希子ちゃんがうちに来て3週間。
部屋も決まり、夜間保育所も決まった。
「予定より少し早いけど…みゆきん、本当にお世話になりましたm(__)m」
亜希子ちゃん親子が引っ越す事に。
少し寂しい。
「またいつでも遊びに来てね😄」
「ありがとう‼本当にありがとう‼」
亜希子ちゃんの新居は古いが部屋が居間の他に2つある2DK。
郊外の住宅街の中にある。
引っ越しは桑原くんのお兄さんも手伝ってくれた。
引っ越してすぐに、亜希子ちゃんがお礼にと私とお兄さんを食事に誘ってくれた。
「お金がないから高いのは無理だけど…」
「お気遣いなく😄困った時はお互い様😄」
ファミレスで楽しく食事。
亜希子ちゃん親子の新しい生活のスタート。
頑張って欲しい。
亜希子ちゃんが落ち着いた頃。
いつもの様に仕事のためラブホテルに着いた。
「藤村さん」
男性に声を掛けられて振り向くと亜希子ちゃんの元旦那がいた。
「ご無沙汰してました…藤村さん」
何故かニヤニヤしている。
「これから仕事なので…」
「だからぁ~?俺にはあんたが仕事だろうが関係ないし(笑)」
そう言って私の右腕をガッシリ掴んだ。
「離して下さい‼」
「はぁ~?聞こえねーな」
そう言いながらニヤニヤしている。
するともう1人男性が来た。
その男性はニヤニヤしながら私を上から下まで見て「なかなかいい女じゃねーか(笑)おい、あんた、こいつに貸しがあるんだって?返してやろうと思ってよ」と言った。
怖かった。
体が震え、声が出ない。
その時、純子さんが出勤。
私が男性2人に絡まれているのを見て「何やってるの‼」と言って走って来た。
「あぁ⁉💢」
そう言って元旦那が純子さんを睨む。
「みゆきちゃんから離れなさい‼」
「何だこいつ」
もう1人の男が純子さんに近付く。
ふと掴まれていた腕の力が緩んだ。
その隙に私は元旦那から離れ、駐車場に置いてあったパイロンを投げ付けた。
それが元旦那にぶつかる。
そっちに気が行った瞬間、私と純子さんは逃げ出し控え室に逃げ込んだ。
社長が私達がすごい勢いで駆け込んだためびっくりしていた。
「どうした?」
私は社長の顔を見た瞬間、安堵の気持ちからか涙が出て来た。
純子さんが社長に事情を説明。
「私が出勤したら、みゆきちゃんがガラの悪い男性2人に絡まれていて…」
話を聞いた社長はモニターを駐車場に切り替えた。
すると男性2人の姿が写し出された。
社長は警察に電話をした。
「うちのホテルの駐車場に怪しい男性2人がいます」
警察に電話をしている事を知らない男達は私の車の前にいた。
そして私の車をガンガン蹴りつけている。
その時、純子さんが「あっ‼」と声をあげた。
「愛ちゃん、これから出勤‼連絡しないと‼」
純子さんは慌てて愛ちゃんに電話。
今すぐ出勤はしない様にと事情を説明。
落ち着いたらまた連絡すると言っていた。
程なくして警察が到着。
サイレンは鳴らさずに来てくれた。
私の車をボコボコにするのに夢中だったのか、警察官が来たのが気がつかなかった様子。
突然の警察官登場に驚き逃げようとするが、逃げられないとわかると大人しくなった。
私は警察官から事情を聞かれた。
全てを話し、相手は器物破損と恐喝容疑で警察官に連れられて行った。
全てが終わり車を見に行った。
前後のライトは割られドアはベコベコ、サイドミラーはへし折られていた。
武田くんから譲ってもらった大事な車。
余りの悲惨な姿にに放心状態になっていた。
「藤村くん…今日はもう帰りなさい、あの男共はまだ警察署にいるだろうから、今のうちに帰りなさい。とりあえず明日と明後日は休んでいいから、車の修理と安全の確保に回りなさい」
社長は心配をしてくれたのか、私に帰る様に言ってくれた。
純子さんと事情を知った愛ちゃんも心配してくれた。
「ご迷惑をおかけしてすみません」
私は早退させてもらい、ラブホテルのすぐ近くにあるファーストフード店に入った。
突然の出来事に戸惑いながらも、桑原くんのお兄さんに連絡をした。
簡単に事情を説明するとお兄さんは「今すぐ行きますから、待っていて下さい‼」と言ってくれた。
Tシャツにジャージ、裸足にサンダルという格好で来てくれた。
部屋着のまま着替えもせずに本当にすぐに迎えに来てくれたんだ。
私はお兄さんの姿を見た瞬間、恐怖から解放された気持ちと安心感から号泣。
お兄さんは無言のまま運転。
どうしたらいいのかわからないのだろう。
しばらく走ったところにあった自動販売機の前に停まった。
そしてお茶のペットボトルを泣いている私にくれた。
「一口でも飲んだら少しは落ち着くかもしれません」
「…ありがとうございます…」
泣きじゃっくりをしながらお礼を言う。
深呼吸をしてお茶を一口頂くと少し落ち着いた。
郊外の静かな公園の駐車場。
お兄さんは「全て話してみて下さい」と言いながら私を見た。
今回警察に連行された男性のうち1人は亜希子ちゃんの元旦那である事、元旦那の吉田留美子との不倫や何故離婚したか、ホテルにお金を借りに来た事等全てをお兄さんに話した。
お兄さんは眉間にシワを寄せていた。
そして全ての話を聞いた後「人間として有り得ない事を平気で出来る人は、きちんと罰を受けるべきです。藤村さん、訴えましょう‼被害届を出しましょう‼」
お兄さんは少し怒った様な口調で話し出した。
そして車の修理は兄にお願いをした。
兄に事情を説明、兄は電話口で怒り狂った。
「俺がそいつらをぶっ殺してやる💢いいか‼みゆき‼何かあったらすぐ俺に連絡をよこせ‼わかったか💢」
「…はい」
実の妹の私も怖く感じる程だった。
兄が車を見たいというので停めてあるラブホテルの駐車場で待ち合わせた。
兄が既に到着していた。
兄は一緒にいたお兄さんに「妹がお世話になってます。こんな時間に妹がご迷惑をおかけしてすみません」と言って一礼。
お兄さんも「いえ、こちらこそいつもお世話になっております」と言って深々と頭を下げた。
そして「みゆき、車は何処にある?」と言って私を見た。
「こっちに停めてある」
従業員用駐車場を指差して歩き始めた。
兄とお兄さんがついてきた。
車を見た瞬間、想像以上だったのだろう。
お兄さんは驚きの表情、兄は「これは酷いな」と呟きながら車を見ていた。
兄は「明日の朝一番に車を取りに来るから、車の鍵を預からせて欲しい」と言うので兄に車の鍵を渡した。
兄が「何かあったら必ず俺にも連絡をよこせよ‼何時でも構わないから…桑原さん、妹の近くにいてあげて下さい…」
「はい、妹さんを全力で守ります」
「よろしくお願いします…じゃあみゆき、明日の朝勝手に車を持ってくけどいいか?」
「うん、ありがとう」
兄はそのまま帰った。
兄は桑原くんのお兄さんの事は信頼している様だ。
いつもなら「うちに来い」と言うが言わなかった。
その日はお兄さんはうちに泊まった。
お兄さんがうちに来てから色々話し合った。
「今回の件が落ち着くまでは私、藤村さんが休みの日は寮には帰らずにこちらに来ます。心配だから…あと、明日にでも警察に被害届を出しに行きましょう‼お昼過ぎなら私も時間が取れると思いますから一緒に行きましょう‼」
お兄さんは心配で仕方がないと言っていた。
私は逆恨みされている。
一生つきまとわれるのではないか?という不安な気持ちもあった。
翌日。
午前10時を過ぎた頃。
お兄さんから「12時半頃に迎えに行きます😄」というメールが来た。
その直後に直美から電話が来た。
「もしもし‼みゆき?」
「もしもし、直美おはよう😄」
「あのさ、いきなりだけど…みゆきの事ネットで晒されてるよ?今見付けてびっくりして電話したのよ」
「えっ?」
直美は某サイトを何気無く見ていたら、私の事を誹謗中傷しまくった書き込みを見つけたらしい。
直美からそのサイトのURLをメールで添付してもらった。
見てみると…
「寺崎グループのお嬢様である藤村みゆ○は社長令嬢なのにラブホテル勤務だってお(*≧m≦*)ププッ」
「この女はすぐにやらしてくれるお 笑 だってラブホテル勤務だおO(≧▽≦)Oヤリマン以外何者でもない」
「会いたかったらこのラブホテルにGOーヽ(・∀・)ノ 笑 ひときわでかい女がそうでーす( ̄▽ ̄)b」
「こんな女、タヒねばいいのに 笑 生きてる価値なし‼てか、やっちゃう?笑」
「あの女のせいで俺の人生はメチャクチャにされた、絶対許さん‼ぶっころしてやる(▼皿▼)Ψ」
どう見てもこの書き込みは亜希子ちゃんの元旦那のものだろう。
これは立派な犯罪になる。
これを持って警察に相談しよう。
お兄さんとの約束の時間になった。
お兄さんにも直美に教えてもらったサイトでの書き込みを見せた。
お兄さんは何故か笑っていた。
「藤村さん、こんなに頭が弱い人は周りで初めてです😄自ら証拠を残すなんて…さっ😄早く警察でこれを見せましょ😄」
お兄さんは警察署に向かって車を走らせた。
悪い事をした覚えはないが警察署というところは何故か緊張する。
警察官に相談し被害届を出す。
それからは早かった。
亜希子ちゃんの元旦那は逮捕されたのだ。
元旦那には他にも余罪があった様だ。
一緒だった男も同様で逮捕。
どうやら別件で恐喝と詐欺、傷害で訴えられていたらしい。
私の一件だけでは逮捕までは至らなかったと思われる。
法律の難しい詳細は弁護士や法律家ではないためわからないが、逮捕されたと聞いて安堵した。
多分だが、しばらく顔を合わす事はないだろう。
直美に教えてもらったサイトの書き込みは綺麗に削除されていた。
亜希子ちゃんの元旦那はどこから道を外してしまったのだろうか。
きちんと犯した罪を反省して欲しい。
結局ラブホテルは4日間休んだ。
社長が「目処が立つまで休んで良い」と言ってくれた。
ラブホテルの皆には本当に迷惑をかけてしまった。
特に純子さんと社長。
巻き込んでしまった。
本当ならここまで迷惑をかけてしまったらクビになってもおかしくないだろう。
しかし社長は「お疲れさんだったね😄」と笑顔で迎えてくれた。
本当に頭が下がる。
メンバーも皆心配してくれていた。
車の修理も終わった。
車を修理してもらっている間は代車として軽自動車に乗っていた。
兄から連絡があり車を取りに行く。
ピカピカになっていた。
「綺麗になっただろ?兄ちゃんの最高傑作だ(笑)サービスで車の中もピカピカにしておいたぞ」
「ありがとう」
修理代は結構かかったが、相手には請求しないで私が支払った。
無事に戻って来た愛車。
試しに乗ってみるが調子は良い様だ。
兄は私の車を良い機会だからと色々見てくれた様だ。
兄は「今度の水曜日の俺の誕生日は焼酎でいいぞ(笑)」と笑っていた。
そういえば今度の水曜日は兄の誕生日だ。
香織さんや子供達からもお誘いを受けた。
休みだし、たくさん焼酎を抱えてお祝いに行こう😄
兄の誕生日。
この日は香織さんのお母さんはお友達と2泊3日でバスツアーに行っていて留守。
お父さんが亡くなってから引きこもりがちになっていたお母さん。
お友達がそんなお母さんを旅行に誘ってくれたらしい。
香織さんも兄もお友達の誘いに大変喜び、お母さんに旅行を楽しんで欲しいと旅費を負担した。
笑顔で「行って来ます😄」と言って出掛けたそうだ。
明日の夜に帰る。
「お母さん、お父さんを亡くしてから初めての旅行😄きっと天国のお父さんも楽しく旅行をしているお母さんの姿を見たら喜ぶよ😄」
香織さんは笑顔で話す。
きっと今頃はお友達とのんびり温泉を楽しんでいる事だろう。
子供達は相変わらず元気。
一番下のまなちゃんも片言を話す様になった。
ママとパパとババが混ざり「マパ」とか「ババマー」とか言っている。
可愛い😄
香織さんも兄も仕事のためこの日は宅配ピザとスーパーのお惣菜やお寿司が並んでいた。
「手抜きでごめんね😅」
「いえいえ😄」
勇樹くんとゆめちゃんは宅配ピザに大興奮。
「みゆきちゃん‼ピザだよ‼僕ピザ大好きなんだ😄」
「ゆめも😄」
私が買って行ったケーキを見て更に喜ぶ子供達。
こんなに喜んでもらえてみゆきおばちゃんも嬉しいよ。
兄には兄が好きな芋焼酎をプレゼント。
兄も喜んでくれた。
兄ももうアラフォー世代。
白髪が見え始めた。
「白髪発見😄もうおじさんだね😄」
私が兄をからかう。
「何だと⁉まだまだ若い😆」
「ガラケーって何よって聞いてた時点でダメじゃん(笑)」
香織さんが突っ込む。
楽しい誕生日会になった。
ある休日。
お兄さんと休みが重なったため、以前高野くんからもらった高野くんが勤務する温泉ホテルに行く事に。
お兄さんにうちまで迎えに来てもらいお出掛け。
絶好の行楽日和。
若干雲はあるが、綺麗な青空が広がる。
遠くの山々もくっきり見えた。
市街地から山に向かって走る事30分。
小さいが温泉街が見えて来た。
その中にひときわ大きな建物が高野くんが勤務しているホテルだった。
全国的に有名な草津や箱根、鬼怒川みたいな賑やかさはないが、何件かお土産屋が並び所々から温泉の湯気が大量にあがる。
温泉街の真ん中に足湯を見つけた。
せっかくだからとお兄さんは近くの駐車場に車を停めて足湯に入る。
先客で年配のご夫婦が足湯を楽しんでいた。
年配のご夫婦から「ご旅行ですか?」と笑顔で話し掛けられた。
「いえ、地元なんですけど休みなので…」
「あら😄デート?若いっていいわね😄」
街で知らない人に話し掛けられても無視するが、不思議とこうした観光地では嫌な気は全くしない。
むしろ、会話が弾み楽しかった。
年配のご夫婦は金婚式記念で息子さんから旅行をプレゼントされたそうだ。
2人共70代後半だと言っていたが、とても若々しくお元気だ。
息子さん夫婦と一緒だが、今は別行動だと言っていた。
「私達はこれで…ゆっくりご旅行楽しまれて下さいね😄」
私とお兄さんは足湯から上がる。
「ありがとうございます😄そちらもデート楽しんで😄」
「はい😆」
私達はプチプチ旅行だが、こんな触れ合いも旅行の醍醐味だろう。
ホテルに入る。
先にチェックインしてから荷物を部屋に置いてからまた出掛けようと思っていた。
フロントに高野くんの姿を発見。
「高野くん😄」
私は手を振った。
「あれー⁉藤村さん⁉」
高野くんは驚いていた。
予約はお兄さんの名前でしていたため、私が来るとは思っていなかったらしい。
「前に高野くんからもらった券を使いたくて」
「はい😄来てくれて嬉しいです😄彼氏さんですか?初めまして😄高野と申します😄」
お兄さんには高野くんの事は話してあったため「話しは伺ってます😄初めまして😄宿泊券ありがとうございました😄」とにこやかに挨拶。
高野くんが「藤村さんが来るのわかってたら、もっと良い部屋にしたのに😫」と言いながら部屋の鍵を渡して来た。
「いやいや、タダで泊めさせてもらうんだから贅沢は言わないよ💦」
鍵には5122と書いてある。
5122の1は「本館」で0は「別館」という意味らしい。
部屋は5階。
エレベーターを降りてすぐの部屋だった。
10畳程の和室。
入ってすぐにお風呂とトイレが一緒になっているユニットバスがあり、出てすぐのところに大きな鏡がある洗面所。
小さな石鹸とドライヤーが備え付けてある。
部屋もきちんと掃除が行き届いてあり、テーブルの上にはお茶請けの温泉まんじゅうが2個置いてあった。
窓からの景色は小さな温泉街が見渡せ、山々が綺麗に見えた。
荷物を置き早速外出。
高野くんに「行ってらっしゃい😄」と笑顔で見送られる。
何件かあるお土産屋さんを見て歩く。
お兄さんは会社の同僚に、私はラブホテルの皆にお土産を買う。
お兄さんと「どれがいい?」なんて話ながらお土産を選ぶ。
ささやかな幸せを感じる。
ホテルに戻りたっぷり温泉を楽しみ、レストランで夕食を楽しむ。
高野くんがレストランまで来た。
「僕は娘が待っているので帰りますけど、朝はいると思いますから😄ゆっくりしていって下さい😄」
わざわざ挨拶に来てくれた。
高野くんのおかげでゆっくり出来ます😄
本当にありがとう✨
その日の夜。
テレビを見ながらお兄さんとビールを飲みながらまったりしていた。
するとお兄さんは、急に正座をし背筋を伸ばし「藤村さんに大事なお話があります」と真顔で言われた。
私も崩していた足から正座に変えて、吸っていたタバコを消した。
「はい…」
「あの…回りくどい言い方は苦手なのでストレートに言います。僕と結婚して下さい‼」
突然のプロポーズ。
テレビはバラエティーが流れ、ちょうどお兄さんが言い終わると同時に出演者が爆笑していた。
それに気付いたお兄さん。
「タイミングが悪かったみたいで…笑われました😅」
余りにもタイミングが良かったため2人で笑ってしまった。
「気を取り直して…弟の事もありますが…私は藤村さんを悲しませる事は絶対にしません‼頼りないかもしれませんが、僕についてきて下さい‼」
真っ直ぐ私を見て言った。
そしてカバンから綺麗な包装紙で包まれたものを取り出し私に手渡した。
指輪だった。
プラチナと書いてある。
小さなダイヤが指輪に散りばめられているシンプルなタイプ。
「気に入るかどうかわからないですが…」
まさに私の好みだった指輪。
嬉しさの余り胸が熱くなる。
本当に本当に嬉しかった。
この日から結婚に向けて話が進む事になった。
お兄さんからプロポーズを受け指輪をもらった時は舞い上がり、お兄さんとの甘い生活を思い描いていたが…
現実的には壁があった。
そう、元カレである桑原くんの事である。
お兄さんと結婚したら「義姉」「義弟」の関係になる。
嫌でも何かあれば必ず顔を会わせなくてはならない。
桑原くん自身が結婚していても私は気にならないが、桑原くんの奥さんが私が「元カノ」だと知れば、きっと気分は良くないだろう。
ご両親も良く思われないかもしれない。
お兄さんに話したが「そこまで気にしなくても大丈夫だよ😄」と楽観的だ。
ラブホテルの仕事はこのまま続ける予定だが、今のアパートは独身者用のため結婚となれば引っ越さなければならない。
お兄さんも独身寮を出る予定。
まずは徐々に準備をし、桑原くんの問題を解決したい。
休みが重なったある日、ご両親にご挨拶に伺った。
何度かお会いした事はあるが、今度は「お兄さんの彼女」としてのご挨拶。
緊張の余り過呼吸気味になりお兄さんに何度も「深呼吸して💦大丈夫だから😄」と言われた。
自宅に着いた。
お兄さんは「連れて来たよー😄」と玄関から叫ぶ。
中からお母さんが笑顔で出て来た。
「こんにちは😄みゆきちゃん😄久し振りね😄」
あ…あれ⁉
意外に普通に迎えてくれた事に拍子抜け。
「さっ😄あがってちょうだい😄」
「…お邪魔します」
戸惑いながらもお兄さんと一緒に居間に向かう。
居間のソファーにはお父さんがいた。
私が居間に入った瞬間、立ち上がって「どうも」と言って挨拶をしてくれた。
「こんにちは」
私も軽く頭を下げてご挨拶。
テーブルの上にはブルーベリーやイチゴがたくさん乗った美味そうなフルーツタルトが1ホールとロールケーキ1本が置いてあった。
「みゆきちゃん、コーヒーと紅茶ならどちらがいいかしら?」
「あっ…えっと…あの…じゃあ…紅茶で…」
緊張からかうまく口が回らない。
心臓がニョロっと口から出てきそうだ。
心拍数が上がり、脈がメチャクチャ早くなっているのがわかる。
口も緊張で渇いている。
そんな私を察したお兄さんは私の背中を軽くポンポンと2回叩き、小声で「大丈夫だから😄」と私に囁いた。
軽く深呼吸すると、少しだけ心拍数が下がった気がする。
少し落ち着き紅茶を頂いたが、せっかくのケーキは緊張で舌がバカになり全く味がしなかった。
「みゆきちゃんなら大歓迎よ😄バカ息子と別れたと聞いて残念に思っていたけど、今度は貴之とお付き合いをしていると聞いて最初は驚いたけど、またみゆきちゃんに会えると思って嬉しかったわ😄」
お母さんは一気に喋った。
お母さんのこの話で一気に緊張がほぐれた。
「みゆきちゃん、貴之の事よろしくお願いしますね😄」
「こちらこそ、色々ご迷惑をおかけ致しますがよろしくお願いします」
私はそう言って頭を下げた。
お兄さんとの結婚話は驚く程、順調に進んだ。
結婚後もラブホテルの仕事は続ける。
お兄さんも了承してくれた。
子供が出来るまで働いてある程度は貯えたい。
借金もお兄さんの車のローンくらい。
それも来年には終わる。
新居もお互いの職場の中間くらいに良い物件があれば…と探し始めた。
新婚旅行は何処にする、とか子供が生まれたら、とか色んな話をお兄さんとしていると、とても幸せな気持ちになる。
お兄さんは前回、元嫁の希望に合わせてブライダルローンを組んで大変豪華な結婚式を挙げたそうだ。
私はそんな豪華な結婚式は一切望まない。
家族と仲が良い友人やお世話になった人達で食事会程度の小さなものが良い。
そう話すとお兄さんは驚いていた。
「えっ?女性って皆、お姫様みたいな豪華な結婚式に憧れるって聞いたけど…」
「誰から?」
「…元嫁から😅」
「若い頃は憧れもあったけど、この年でお姫様はないわぁ(笑)写真くらいはウェディングドレスで撮りたいけど、後はちょっとしたスーツで十分ですね😄」
「余り欲がないんですね😅」
「そこまで結婚式にこだわらないけど…その分新婚旅行はゆっくりしたいですね😁」
「それいいっすね😁」
旅行代理店から色々パンフレットをもらって来て、お互いに行ってみたいところを選んだ。
お互い仕事で入れ違いだったが、会える時は会っていた。
そんな楽しい日々。
毎日が楽しかった。
目標が出来、仕事にも張り合いが出て来た。
そんなある日。
お兄さんが会社の階段から足を滑らせて転落。
左足首骨折の怪我をした。
頭やお腹も打ったらしいが幸い異常はなかった。
お兄さんは転落直後、骨折したという自覚がなかったそうだ。
立ち上がると激痛が走りおかしいと思い病院に行ったらまさかの骨折、入院。
ギプスが痛々しいが、怪我の回復具合は良好の様だ。
お兄さんの怪我の具合も良くなったある日。
お兄さんのご両親が「貴之の快気祝いで家で一緒にご飯どうかしら?」とのお誘いがあり私は有り難く行かせてもらう事に。
その日はラブホテルの仕事はお休み。
お兄さんの仕事が終わるのを待って一緒に御実家に向かった。
「みゆきちゃん!いらっしゃい!」
お母さんが笑顔で迎えてくれた。
「お邪魔します」
中に入ると桑原くんがいた。
弟だからいてもおかしくはないのだが、いるとは聞いていなかったため少し動揺した。
「おう!藤村!久し振りだな」
「…久し振り」
「幽霊にでも会ったみたいな顔してんじゃねーよ(笑)元気だったか?」
笑顔の桑原くん。
お兄さんは私と桑原くんの事を交互に黙って見ていた。
お兄さんも桑原くんがいるとは聞かされてなかった様子。
「お前、何しに来たんだよ」
お兄さんが桑原くんに話し掛ける。
「実家に帰って来たらダメな理由があるのか?」
「…」
黙るお兄さん。
「兄貴、こいつ以外に胸あるだろ?お尻に可愛いほくろあるの知ってるか?抱き心地は悪くはないしな(笑)」
この桑原くんの発言で兄弟喧嘩が勃発。
台所にいたお母さんが「あんた達!何やってんの!」と言いながら飛んで来た。
ダメだ…
やっぱり元カレが身内だと気まずい。
桑原くんはお兄さんに殴られた。
でも桑原くんは殴り返す事はしなかった。
黙って殴られていた。
お風呂から上がったお父さん。
喧嘩している息子2人にいきなり喝を入れる。
「お前ら!何をやってるんだ!」
そう言って殴っていたお兄さんのシャツを力付くで引っ張り、頭を張り手した。
桑原くんにも「どうせお前が余計な事を言ったんだろ?あぁ?」と言いながら桑原くんを張り手した。
父親に怒られ、大人しくなった2人。
「みゆきさん、見苦しい兄弟喧嘩で申し訳ない…」
「いえ…」
こちらの方が申し訳ない気持ちでいっぱいだった。
お母さんは苦笑い。
食事中も2人は一切会話はしない。
お兄さんは珍しく私とぴったりくっつく。
たまに桑原くんの視線を感じる。
美味しい食事も終わった。
すると桑原くんから「藤村…ちょっと…」と玄関に呼ばれた。
「さっきは悪かった…ぶっちゃけ俺の単なるヤキモチなんだ…兄貴と幸せになれよ…」
そう言うと桑原くんは2階にある自分の部屋に入って行った。
お兄さんはそんな桑原くんの事を黙って見ていた。
後で知ったが桑原くんはこの時、勤務していた会社を辞めて実家に戻って来ていた。
色々面接に行くが、ことごとく不採用。
前会社も一応は「自主退社」だが、女性関係のもつれから社長から呼び出しがかかったらしい。
手当たり次第に女性社員に声を掛けては体の関係を持つ。
桑原くんは以前「彼女以外のセックスはトイレで用を足す感覚」と言っていた。
ただ単に性欲処理に利用しただけなんだろう。
しかし女性はホテルに行くと言う事は少なからず桑原くんに好意はあっただろう。
でも桑原くんはただ単にやりたいだけだった。
前は首の皮一枚の状態であったが、とうとうその皮も繋がらない状態になったのであろう。
桑原くんはまだ私に未練がある様だ。
そんな中仕事を失い、兄は私と結婚準備。
相当ストレスが溜まっていた。
しかし冷たいが桑原くんは自分で自分の首を絞めた。
誰のせいでもない。
まずは就職先を見付けて心を入れ替えないと難しいかもしれない。
それからしばらく経ったある日。
亜希子ちゃんから連絡が来た。
「今度の木曜日、悠斗の1歳の誕生日なんだ!みゆきんにも一緒に悠斗の誕生日を祝って欲しくて(*'▽'*)」
そっか。
もう1歳になるのか。
早いなぁ。
木曜日は仕事だけど…休みとろうかな?
亜希子ちゃんに行くと伝え、社長に休む連絡をする。
当日。
誕生日プレゼントでアンパンマンのおもちゃを買い、約束の午後6時半ちょっと前に亜希子ちゃんちに着いた。
「こんばんは!」
「みゆきん!今日は有り難う!」
笑顔で出迎えてくれた。
主役の息子は居間でテレビを見ていた。
今回、お兄さんも呼ばれたが仕事で都合がつかずに欠席。
代わりにお兄さんから可愛い子供服を預かり亜希子ちゃんに渡した。
その時、部屋のチャイムが鳴った。
亜希子ちゃんは「はぁ~いっ!」と言いながら玄関に向かう。
すると知らない男性が笑顔で入って来た。
背は私と変わらない位だが、爽やかな笑顔がなかなか素敵だ。
「みゆきん!あのね、こちら木下裕太さん」
恥ずかしそうに私に紹介。
そして男性に「こちらは高校からの親友の藤村みゆきちゃん」と紹介。
お互いに「はじめまして」とペコリと頭を下げた。
この時点でこの男性が亜希子ちゃんの彼氏だと直ぐにわかる。
木下さんの仕事はチェーン店の不動産屋さんの営業。
亜希子ちゃんがこの部屋を選んだ時の担当だったそうだ。
息子も懐いているのかヨチヨチ歩いて木下さんの側に行く。
「みゆきんにどうしても木下さんを紹介したくて」
こうして3人を見ていると本当に幸せな家族の様だ。
ちょっと安心した私がいた。
しかし後日、とんでもない事実が判明する。
亜希子ちゃんの彼氏である木下さんが実は既婚者であった。
私はその日のお昼過ぎ、セール中の郊外のショッピングモールに買い物に出掛けた。
1人でショッピングモールをプラプラしていた時、2歳位の男の子が走っていて私の足にぶつかり転んでしまい泣いてしまった。
「ごめんね~僕!大丈夫?」
私は泣いている男の子を座っている状態から立たせて頭を撫でていたら「すみません!すみません!!」と言いながら男の子のお母さんが走って来た。
お腹がかなり大きい。
そのため動きがゆっくりだ。
「すみません!子供がご迷惑をおかけしまして」
「いえ」
目鼻立ちが整った和服が似合いそうな美人なお母さんだった。
泣いている男の子は「ママ~!」と言いながらママに駆け寄る。
その時、泣いている男の子が急に泣き止み「あっ!パパ!」と言って走り出した。
ふと視線を向けると…
亜希子ちゃんの彼氏として紹介された木下さんだった。
∑(゚Д゚;)←木下さん
(;¬_¬)←私
木下さんの顔色が青くなるのがわかった。
私は素知らぬ顔で軽く頭だけ下げてその場を去った。
きっと木下さんは「助かった」と思ったかもしれない。
翌日、私は木下さんが勤務する不動産屋へと向かった。
「いらっしゃいませ!」
若い男性が立ち上がり笑顔で近づいて来た。
「あの…藤村と申しますが木下さんはいらっしゃいますか?」
「木下ですね!少しお待ち下さい」
男性は笑顔でカウンター裏に消えた。
きっと木下さんのお客さんだと思ったのだろう。
すぐに木下さんがカウンター裏から出て来た。
私の顔を見て直ぐに察したのか「今行きますから」と言って背広の上着を来て鍵を持ってカウンターから出て来た。
「ちょっと外に行きましょう」
私は無言で頷き、木下さんについていった。
不動産屋のすぐ近くにあるファーストフード店に入る。
お昼前という事もあり、店内は混んでいた。
セットメニューを頼んだ。
私がお財布を出すと木下さんは「会計は一緒で」と店員さんに言う。
「いえ…そういう訳には…」
「いえ、このくらいはさせて下さい」
「…すみません…ごちそうさまです」
席につき、早速木下さんが口を開く。
「仕事中なので手短に…」
「承知しています。職場にお邪魔して申し訳ないです」
「自宅に来られるよりは全然平気です」
「あの…亜希子ちゃんの事なんですが…」
「彼女には黙っていてもらえませんか?」
「…何故既婚者だという事を黙っていたんですか?」
「聞かれなかったから、言わなかっただけです」
「あんな美人な奥さんと可愛い子供がいるのに、何故亜希子ちゃんに手を出したんですか?」
「彼女が離婚して小さな子供を連れて一生懸命部屋を探している姿を見たら放っておけなくなりまして」
「それで亜希子ちゃんに手を出したと…」
「手を出したとは聞こえが悪い。援助です。人助けです」
「亜希子ちゃんと別れる気はありますか?」
「今はありません」
「奥さんとは?」
「全くありません」
「ご自身が何をされているかわかりますか?」
「はい、わかってますよ?」
「亜希子ちゃんと別れて下さい」
「あなたに言われる筋合いはありません」
「では私からこの事実を亜希子ちゃんに伝えます」
「藤村さん、あなたがやっていることはただの偽善だ。お節介にも程がある。本当の事を知らない方が幸せな事もある。彼女がまさにそうだ。だからあなたがとやかく口を出すのは間違えている。邪魔をするな」
少し強めの口調で言った。
「はぁ…」
思わずため息。
「お返事がないという事は納得して頂いたと解釈します。大丈夫です。亜希子にも家内にもバレない様にうまくやる自信はあります。ご心配なく」
ダメだ…この人。
「では私は仕事があるので失礼します」
そう言って木下さんは軽く頭を下げて職場に戻った。
私はすぐに亜希子ちゃんに連絡をした。
平日の昼間だったため仕事かもしれないと思いながらも電話を掛けた。
「もしもし~!みゆきん!」
「あれ?出た」
「出たなんてお化けみたいじゃん(笑)凄い声でしょー(^。^;)風邪引いちゃってさ、仕事休んだんだ」
確かに声が少しおかしい。
鼻声だ。
「調子悪い時にごめん」
「いいのいいの、気にしないで!夕方までチビは保育園だし、朝一番で病院に行って薬もらってきたしね(≧▽≦)こんな変な声でこっちこそごめんね~それより…何かあった?ていうか、もしかして木下さんの事?」
相変わらず鋭い亜希子ちゃん。
「うん、ちょっと木下さんの事で話があるの」
「うん」
「あのね…」
私は木下さんが既婚者である事、今さっき会って話した事、ショッピングモールでばったり会った事等全て話した。
亜希子ちゃんは「うん…うん…」と相槌を打ちながら話を聞いていた。
全て話し終わってから「亜希子ちゃん…ショックかもしれないけど…これが事実なんだ!だから別れた方が…」と言った時、亜希子ちゃんから驚く一言が。
「既婚者なのは知ってるよ」
何ですと(゚Д゚;)
知ってて付き合ってるの?
逆に驚いている私に亜希子ちゃんは話を続けた。
「実はね…」
亜希子ちゃんの話をまとめるとこうだ。
最初は既婚者だとは知らなかった。
声をかけて来たのは木下さんからだった。
とても優しくて素敵な人だと思っていた。
バツイチだと聞いていた。
ある日、亜希子ちゃんの携帯に知らない番号から着信があった。
その時亜希子ちゃんはちょっと風邪気味だった息子を保育園に預けていたため、もしかしたら息子に何かあって保育士さんが掛けて来たのかと思ったらしく何の疑いもなく電話に出た。
すると保育士さんではなく木下さんの奥さんからの電話だった。
「いつもうちの木下がお世話になっております。木下裕太の家内です」
亜希子ちゃんは驚きの余り言葉が出なかった様だ。
この時初めて既婚者である事がわかった。
亜希子ちゃんは既婚者だと知った以上、金輪際木下さんとは会わないと伝え奥さんに謝罪をした。
しかし奥さんからの答えは驚くものだった。
「あなたを責めるつもりも訴えるつもりも一切ありません。今回お電話したのはあなたにご協力をお願いしたくて…」
亜希子ちゃんは突然の事に動揺しながらも奥さんの話を聞いた。
木下さんの奥さんは離婚を希望している。
木下さんは爽やかな見た目からは想像つかないが、DVモラハラ野郎だった。
しかも束縛も激しいという。
奥さんは意見する事は許されず、木下さんに絶対服従。
少しでも逆らうと地獄の様な暴力と酷い罵声が待っている。
耐えきれなくなり心身共異常な事に気付き心療内科に通う事になった。
浮気相手に相談するのもおかしな話しだが、離婚の為に協力して欲しいというものだった。
亜希子ちゃんは奥さんに同情。
奥さんと亜希子ちゃんで作戦を立てた。
その作戦とは2人同時に木下さんの前から姿を消す事。
奥さんのご両親は既に他界されているため実家がない。
兄弟は遠くにいるため簡単に行く事は出来ない。
だから奥さんは今の家を手たら木下さんは奥さんの居場所はわからなくなる。
亜希子ちゃんは、亜希子ちゃんが住むアパートは残念ながら解約する形になるが引っ越し費用と敷金等のお金は奥さんが出すから引っ越しをする事になる。
亜希子ちゃんの職場はバレてしまっているためかなりリスクはあるが、奥さんは離婚出来た時は必ず御礼します、もうあなたしかいないと懇願され亜希子ちゃんは話に乗る事になった。
私はそんな事をするより、お金があるなら弁護士とか探偵とかプロにお願いしたら?と言うが、亜希子ちゃんはうんとは言わなかった。
何かあれば連絡を…とは伝えたが、何もない事を願いたい。
どうも亜希子ちゃんの元旦那と被る。
あんな状態にならなければ良いが…。
亜希子ちゃんの電話からしばらく経ったある日。
いつもの様に仕事に行くため支度をしていた。
お兄さんは月末まで出張中。
「そろそろ出勤時間ですか?今日も元気に行ってらっしゃい!(^_^)ゞ」
お兄さんからメールが届く。
「行って来ます!」
メールを送信。
その直後、亜希子ちゃんから電話が来た。
「みゆきん!どうしよう…助けて!!」
切羽詰まった声叫んでいる。
「亜希子ちゃん!?どうしたの!?今どこにいるの?」
問い掛けに何かを言っているが何を言っているのかうまく聞き取れない。
ヤバい状態だというのはわかるが、出勤時間まであと30分。
どうしよう…
「もしもし?亜希子ちゃん!?」
「みゆきん!助けて!いやぁ!」
「今どこ?すぐ向かうから!」
場所を聞き出し職場に電話。
昼間のフロントさんに「すみません、急用が出来たので少し遅れます」と伝えた。
直ぐに車に乗り込み聞き出した場所へと向かう。
10分かからないで到着。
そこは木下さん一家が住むマンションだった。
1階がコンビニになっている地上10階建てのマンション。
築年数も新しく建った時は地元では話題になったマンションだったため、迷う事なくたどり着けた。
立派なエントランス。
私は亜希子ちゃんに連絡をしようとしたその時、救急車のサイレンが聞こえて来た。
と同時にパトカーも走って来た。
そして、このマンションの前に停まった。
静かだったマンションが急に騒がしくなる。
「もしかして…」
私は血の気が引いていくのがわかった。
しばらくしてタンカーで女性が運ばれて来た。
木下さんの奥さんだった。
ただ事ではない様子にマンションの住人なのか近所の人なのか、こちらの様子を伺う野次馬が何人かいた。
タンカーで運ばれる奥さんを心配そうに見ている。
続けて旦那である木下さんと亜希子ちゃんが出て来た。
亜希子ちゃんは泣きはらした顔、木下さんはまるで能面の様に無表情だった。
通報者は亜希子ちゃん。
木下さんはパトカーに乗せられた。
亜希子ちゃんは私の姿を見るなり抱きついて号泣。
それまでオブジェの様な存在だった私に警察官が近付いて来た。
「通報者の田中さん?」
「田中さんは彼女です」
号泣している亜希子ちゃんの肩を叩く。
私は亜希子ちゃんと一緒に警察署に行く事になった。
>> 339
私は状況がわからない。
亜希子ちゃんから連絡をもらい駆け付けて直ぐに救急車とパトカーが来た。
でも、亜希子ちゃんと木下さんが警察官と一緒に部屋から出て来たと言うことは既にパトカーがいたと思うが気付かなかった。
亜希子ちゃんは興奮状態だが、私は部外者なので警察官に「仕事があるので」と伝えてラブホテルに向かう。
結局約2時間の遅刻。
幸いこの日は暇だった。
あの状況を見たらだいたい何があったかは想像出来たが、夜中に警察署から帰って来た亜希子ちゃんから連絡が来た。
ちょうど帰宅途中だった。
近くにあったコンビニの駐車場に車を停めて電話に出た。
この日、亜希子ちゃんは奥さんに「話がある」と呼ばれて木下さん宅に向かった。
作戦を本格的に練り上げるためだった。
すると突然、木下さんが帰って来た。
慌てる2人。
木下さんもまさかのツーショットに驚いた様子だったが、2人共何も話していないのに勝手に想像したのか「何を勝手に動いているんだ!お前は!」と言いながら奥さんの顔を突然殴った。
「何をするのよ!」
亜希子ちゃんは止めに入るが「亜希子!お前はこいつに騙されてるんだ!」
そう言って亜希子ちゃんを振り払い妊婦である奥さんに対して容赦ない暴力。
「お前は本当にクソだな!俺に逆らいやがって!」
「いや…止めて」
必死で奥さんが身を守るも木下さんの怒りは尋常じゃなかった。
「お腹に赤ちゃんがいるんだよ!」
亜希子ちゃんはそう言って木下さんに言うが「だから何だ!!こいつが勝手に妊娠したんだよ!誰が妊娠していいって言ったんだよ!」
そう言って奥さんに対して暴力は止まらない。
「こんな女、生きてる価値なんてないんだよ!」
「妊娠を理由に家事を手抜きするのが腹立つんだよ!」
「死ねや!」
「雌豚の分際で俺の許可なく人に会うな!」
耳を塞ぎたくなる様な暴言。
亜希子ちゃんはみるみる血の気がなくなる奥さんを見てヤバいと思い警察と救急車を呼び、その後に私に電話をした。
木下さんは暴行の現行犯で警察署へ連れて行かれた。
心配していた事が現実になってしまった。
奥さんと赤ちゃんの無事を願う。
長男は奥さんの親友宅で預かってもらっているそうだが、まだ小さいのにパパもママも近くにいないのはきっと不安だろう。
可哀想に…。
後日、木下さんからの暴行が原因で予定日よりかなり早く出産したと聞いた。
赤ちゃんは体重が2000gもない未熟児だったが元気との事。
それを聞いて安堵した。
木下さんの奥さんは退院後、2人の幼い子供を連れて離婚。
被害届も出した為、木下さんは前科がつく事になり不動産屋も解雇。
亜希子ちゃんはまた新たに引っ越しをした。
費用は木下さんの奥さんが出したそうだ。
木下さんの奥さんは地元に帰る。
何か腑に落ちないというか、スッキリしないが…
いつもの生活に戻る。
ある日の休み。
これといった用事もなかった為、お昼過ぎまで爆睡しゴロゴロしていた。
夜はお兄さんの仕事が終わってから一緒に食事に行く予定だ。
「おはようございます。今日は19時過ぎには迎えに行けそうです」
お兄さんからメールが来ていた。
まだ時間はあるな。
取りだめしていたドラマでも見るか。
スウェットのまま、コーヒー片手にドラマを見ていた。
すると携帯が鳴った。
愛ちゃんだった。
「もしもし!みゆきちゃん!起きてたぁ?」
「おはよう愛ちゃん!起きてドラマを見てた(^_^)」
「あのね、急で申し訳ないんだけど…今日仕事代わって欲しいんだ!うちのちびっ子が入院しちゃって…」
話を聞くと娘さんは盲腸で緊急入院になり、これから手術らしい。
「いいよいいよ!代わるよ!娘さんの側についていてあげて!心細いだろうから」
「ごめんなさい」
そういう理由なら仕方がない。
せめて娘さんが落ち着くまで近くにいてあげて欲しい。
お兄さんに連絡。
食事は次の休みまで持ち越しに。
この日は金曜日という事もあり忙しかった。
あっという間に終業時間。
一緒だった純子さんと綾子さんもお疲れの様子。
最近、どうも体がダルい。
若い時は回復も早かったが30代も半ばになると体力も落ちる。
体力だけは自信があったんだけどな(^_^;)
しかし…ふと思った。
そういえば…
生理が来ていない。
元から不順ではあったが、予定日より約1ヶ月遅れている。
「…もしかして妊娠!?」
心当たりはある。
相手はもちろんお兄さん。
初めての事に戸惑った。
夜中だからドラッグストアは閉まっている。
明日妊娠判定薬を買ってこよう。
しかし翌日、無事に生理が来た。
ただ遅れていただけだったらしい。
今回は大幅に遅れたせいなのか生理痛が酷い。
夜は仕事だけど、仕事前まで少し休もう。
布団でゴロゴロしていたらお兄さんから電話が来た。
「おはようございます!」
「おはようございます」
「寝てました?」
「ちょっと体調が良くなくて…」
「体調が悪い時にゴメンナサイ!ちょっとお話しがありまして…」
「はい」
「電話でなく直接話したいと思って…都合良い日を教えて下さい」
「明日は休みです」
「明日か…うーん…わかりました!明日また連絡します!ゆっくり休んで下さい!」
そう言ってお兄さんは電話を切った。
何の話しか気になったが明日まで待つか。
何か忙しそうだったし。
翌日。
相変わらず生理痛が酷い。
ダルい体を動かす。
お兄さんが来るからと部屋を片付けた。
約束の午後7時。
お兄さんから「これから会社を出ます」
とメールが来た。
それから直ぐお兄さん到着。
部屋のインターホンが鳴る。
「こんばんは(*⌒▽⌒*)」
スーツ姿でネクタイを少し緩め笑顔のお兄さん。
「お疲れ様です、どうぞ」
「お邪魔します」
お兄さんは玄関に入り鍵を閉めた。
「顔色悪いけど…」
お兄さんは私を心配そうに見る。
「ちょっと…生理痛が酷くて(^。^;)」
「それは大変ですね…具合が悪い時にすみません」
「いえいえ」
私は冷蔵庫から麦茶を出しコップに注ぎお兄さんが座るテーブルに持って行く。
「ありがとうございます、晩御飯まだでしたらピザでも取りましょうか(^^)」
「ピザいいですね」
早速宅配ピザを頼む。
最初はお兄さんと他愛もない話をしていた。
仕事での出来事、面白いお客さんがいたとか、職場の同僚の話しとか色々。
その時ピザが届いた。
仲良く分け合いながらピザを食べる。
食べ終わり食後の一服。
落ち着いた時にお兄さんが真面目な顔になる。
「あの…昨日言ってた話しなんですが…」
「はい…」
私も姿勢を正しお兄さんの前に座った。
お兄さんは仕事用のカバンから封筒を取り出した。
「開けて下さい」
「はい…」
少し緊急しながら封筒を開けた。
すると「婚姻届」と書いた紙が3枚。
ドラマとかでは見た事があるが、こうしてリアルに間近で見たのは初めてだ。
「何故3枚も?」
「間違えた時用です(^。^;)」
婚姻届をまじまじと見ていた私にお兄さんが話す。
「実は…来月、東京に転勤が決まりました。いつ帰るかわかりません。多分ですが早くて2年…」
「えっ…?」
突然の転勤話に驚いた。
「そこで…転勤前に…桑原みゆきになって欲しくて…」
恥ずかしそうに少し俯きながら話すお兄さん。
「僕の妻になって下さい!一生大事にします!」
お兄さんは頭を床にぶつけそうな勢いで頭を下げた。
「はい、よろしくお願いします」
そう言って私も頭を下げた。
お互いテーブルを挟んでのお辞儀。
先にお兄さんが書く。
お兄さんが書き終わり続けて私が書く。
間違えない様に書かなきゃという緊急からかペンを持つ手が震える。
書き終わりペンを置く。
改めて婚姻届を見た。
嬉しさで涙が流れて来た。
翌日、市役所に一緒に行き婚姻届を提出。
受付の男性が「おめでとうございます」と笑顔で婚姻届を受け取る。
「ありがとうございます」
不備がないかチェックされ、無事に受理。
晴れて「藤村みゆき」から「桑原みゆき」になった。
何にも準備していない中での結婚。
お兄さん…いや旦那さまの転勤が結婚に向けて一気に動いた。
私の仕事もあるから、単身赴任か仕事を辞めて東京までついていくか転勤までに決めて欲しいと言われた。
悩む事になった。
田舎者の私が大都会東京で生活が出来るのか…
地理もわからなければ、電車の乗り方すらわからない。
新宿、渋谷、六本木、青山、池袋…
名前は聞いた事があるが、遠いのか近いのかもわからない。
まずは…行ってみてみよう!
それから決めても遅くはないだろう。
早速ラブホテルに休暇届けを出す。
その頃、旦那様は既に東京で社宅を借りて、いつ東京に移ってもいい状態になっていた。
東京とこの街を忙しそうに行ったり来たりしていた。
ラブホテルの休暇は4日間。
忙しい時期だったため悩んだが、社長に結婚の報告をした時に自分の事の様に喜んでくれて、東京に下見に行きたいと伝えた時も快く休暇をくれた。
笑顔で「俺へのお土産はとらやの羊羹がいいなぁ(*'▽'*)」と笑いながら言っていた。
メイクの皆にも東京下見に行く事を伝え、東京へ出発。
東京へは飛行機。
旦那様には連絡済み。
羽田空港で待っていてくれる。
飛行機の中から見る景色はまるでリアルな日本地図。
山や海がくっきりと分かれ、ところどころ街並みらしきものが見える。
東京が近付くと高度を下げるのがわかった。
上空から見る東京は本当に大都会だ。
無事に羽田空港に到着。
到着ロビーで出口付近にいる旦那様を発見。
大きく手を振った。
直ぐに気付いてくれた。
笑顔で手を振り返してくれた。
預けていた荷物を受け取り旦那様と合流。
久し振りに会う旦那様。
変わらない優しい笑顔がホッとさせてくれる。
しかし早速の試練。
電車である。
切符を買いたいが、券売機の上にある目的地の駅名が探せない。
旦那様が説明をしながら買ってくれたが、結局わからなかった。
初めての電車。
見るもの全てが新鮮そのものだった。
読めない地名もたくさんある。
私鉄と地下鉄の区別がつかない。
JRもうちの田舎みたいに一つだけじゃない。
蜘蛛の巣みたいに張り巡らされた線路。
覚えるにはかなりの時間がかかりそうだ。
電車を乗り継ぎ、社宅の最寄り駅に着いた。
駅前には色んなお店屋さんが軒を並べる。
田舎では見ない光景に少しテンションが上がる。
駅から歩いて10分ちょっと。
社宅があった。
社宅は3階建てのマンションを借り上げ。
一つの階に5部屋、全部で15部屋ある細長いマンション。
部屋は縦に細長い2K。
新しくはないが、フローリングと壁紙は綺麗に張り替えてあった。
小さいがベランダもあり、風呂トイレ別。
2人で住むには十分な広さだ。
私の物を持って来たらどこに置こうとか、年甲斐もなくはしゃぐ私。
荷物を置き、早速近所を旦那様と一緒に歩いてみる。
周りは住宅街だが、隣の家との幅が狭い事に驚く。
歩いて直ぐのところにコンビニと郵便局を発見。
更に歩くと小さな公園があり、周りには自転車や原付バイクがたくさん止まっていた。
そこから駅までは遠くはない。
駅が近づくに連れて店が賑やかになる。
ファーストフード店、コンビニ、ドラッグストア、雑貨屋、惣菜屋、少し離れてスーパー、パチンコ屋…
この駅前通りだけで十分用は足りそうだ。
せっかくだからと旦那様と電車に乗り色々連れて行ってもらった。
久し振りに旦那様とゆっくりまったりした日を過ごす。
東京での生活に不安もあるが、旦那様がいてくれたら頑張って行けそうな気がする。
いきなり今日明日で仕事を辞める訳にいかない。
3ヶ月後を目処に東京へ引っ越す事に決めた。
小説・エッセイ掲示板のスレ一覧
ウェブ小説家デビューをしてみませんか? 私小説やエッセイから、本格派の小説など、自分の作品をミクルで公開してみよう。※時に未完で終わってしまうことはありますが、読者のためにも、できる限り完結させるようにしましょう。
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少女漫画あるあるの小説www0レス 58HIT 読者さん
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北進10レス 217HIT 作家志望さん
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こんなんやで🍀123レス 1154HIT 自由なパンダさん
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「しっぽ」0レス 100HIT 小説好きさん
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わたしとアノコ142レス 1408HIT 小説好きさん (10代 ♀)
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西内威張ってセクハラ 北進
ブラック企業とさえ呼びたくないカス零細なぜなら問題が問題として取り上げ…(自由なパンダさん1)
72レス 2546HIT 小説好きさん -
こんなんやで🍀
逮捕とか…そんなワードがテレビから流れる事が多いけど… 私にしてきた…(自由なパンダさん0)
123レス 1154HIT 自由なパンダさん -
仮名 轟新吾へ(これは小説です)
【何度言えば解るのかな!】 何度も何度も言ってますけど、 あな…(匿名さん72)
175レス 2667HIT 恋愛博士さん (50代 ♀) -
神社仏閣珍道中・改
(光前寺さんの続き) その先を下ると、どっしりという表現がぴった…(旅人さん0)
200レス 6586HIT 旅人さん -
わたしとアノコ
「,,,さん!雪町さん!」 目を開ける。真っ白な天井に、少し固いベッ…(小説好きさん0)
142レス 1408HIT 小説好きさん (10代 ♀)
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人間合格👤🙆,,,?11レス 116HIT 永遠の3歳
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酉肉威張ってマスク禁止令1レス 124HIT 小説家さん
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今を生きる意味78レス 503HIT 旅人さん
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黄金勇者ゴルドラン外伝 永遠に冒険を求めて25レス 939HIT 匿名さん
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勇者エクスカイザー外伝 帰ってきたエクスカイザー78レス 1779HIT 作家さん
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人間合格👤🙆,,,?
皆キョトンとしていたが、自我を取り戻すと、わあっと歓声が上がった。 …(永遠の3歳)
11レス 116HIT 永遠の3歳 -
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酉肉威張ってマスク禁止令
了解致しました!(小説好きさん1)
1レス 124HIT 小説家さん -
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おっさんエッセイ劇場です✨🙋🎶❤。
ロシア敗戦濃厚劇場です✨🙋。 ロシアは軍服、防弾チョッキは支給す…(檄❗王道劇場です)
57レス 1389HIT 檄❗王道劇場です -
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今を生きる意味
迫田さんと中村さんは川中運送へ向かった。 野原祐也に会うことができた…(旅人さん0)
78レス 503HIT 旅人さん -
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神社仏閣珍道中・改
この豆大師についての逸話に次のようなものがあります。 『寛永…(旅人さん0)
500レス 14816HIT 旅人さん
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いじめなのか本当に息子が悪いのか
小学4年生の息子の母です。 息子が学校で同じクラスの女の子のお尻を触ってしまうというトラブルがあり…
68レス 3051HIT 教育に悩むママさん (30代 女性 ) -
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30歳を過ぎ、自分の考えに疑問に思うことが増えたので、聞いていただきたいです。 私は20歳を過…
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13レス 353HIT おしゃべり好きさん - もっと見る