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+☆天城美穂☆+( 20代 ♀ iRGK )
13/11/14 17:06(更新日時)

誰にも望まれずに


誕生した少女が


紡いでいく恋物語です。

No.1720624 11/12/17 17:14(スレ作成日時)

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No.1 11/12/17 17:20
+☆天城美穂☆+ ( 20代 ♀ iRGK )

☆プロローグ☆


この世に生を受ける時


誰もが周りから祝福されて


誕生してこなければならない。


だけど


実際は違う。


誰にも祝福されずに


この世に誕生した命だって


実際にはあるんだ。


そう


わたしみたいに…。

No.2 11/12/17 17:29
+☆天城美穂☆+ ( 20代 ♀ iRGK )

「またね」


そう聞こえてきた声に、わたしは思わず背後を振り返る。


しかし、その声の主はわたしの方を見ていない。


わたしの近くにいた別の人間の方を見て、にこやかに手を振っている。


そして、その手を振られている側の人間も、同じ様ににこやかに手を振っていた。


そんな光景を目にして、わたしは少し淋しい気持ちになった。

No.3 11/12/17 17:32
+☆天城美穂☆+ ( 20代 ♀ iRGK )

わたしには、『またね』という言葉を交わせる人間が、今いる空間に誰一人としていないから。


いや、もしかしたら他の空間にもいなくて、わたしがその様な言葉を交わせる人間など、ドコにも存在しないのかも知れない。


その様な事を考えながら、わたしは目の前の光景に背を向けた。


そして、騒然とした廊下へと出る。


廊下には、にこやかに雑談を交わす人々で溢れ返っていた。

No.4 11/12/17 17:37
+☆天城美穂☆+ ( 20代 ♀ iRGK )

廊下の真ん中に群がり、通行人の邪魔になっている人々もいた。


そんな人々の間を、わたしは黙って通り抜ける。


そして、そのまま建物の出口を目指す。


わたしは、下駄箱で上履きから外履きに履き替えると、そのまま学校という空間を出た。


学校という空間は、わたしにとって孤独な牢獄。


誰も言葉を交わす相手がいなくて、いつも独りぼっちな空間。

No.5 11/12/17 17:43
+☆天城美穂☆+ ( 20代 ♀ iRGK )

わたしには、友達と呼べる存在がいない。


今まで、一度も出来た試しがない気がする。


友達を欲しいと思った事はある。


しかし、どうすればいいのか分からない。


どの様にして、友達というものを作ればいいのか、未だに分からなかったりする。


そのため、わたしはいつも学校では独りぼっち。

No.6 11/12/17 17:47
+☆天城美穂☆+ ( 20代 ♀ iRGK )

そんな孤独な空間を出る瞬間が、いつも待ち遠しかった。


別に、その足で行きたい場所など、いつもなら特にない。


しかし、今日は違った。


先程、学校の教室という空間で、自分に声を掛けられたと勘違いしてしまったせいかも知れない。


今日のわたしは、ヒドく淋しい気分だった。


そのため、誰かの温もりに触れたいと思った。

No.7 11/12/17 17:51
+☆天城美穂☆+ ( 20代 ♀ iRGK )

それに、あまり家へ帰りたくないのもある。


今日は、そういう日だ。


わたしは制服のポケットから、リキッドグリーン色の携帯電話を取り出す。


そして、電話帳を開くなり、あまり見慣れない名前を呼び出した。


そのまま発信ボタンを押すと、わたしは携帯電話を耳に当てる。


無機質なコール音が聞こえてくる。

No.8 11/12/17 17:55
+☆天城美穂☆+ ( 20代 ♀ iRGK )

それが止むのを、わたしは黙って待っていた。


しかし、その音は一向に止む気配を見せない。


今日は、忙しいのかも知れない。


その様な事を思い、わたしが諦め掛けた時だった。


無機質なコール音が、急に鳴り止む。

No.9 11/12/17 17:57
+☆天城美穂☆+ ( 20代 ♀ iRGK )

「…もしもし」


久し振りに聞く、少し低い声。


「逢いたい…」


開口一番に、わたしはそれだけを言った。


「夕方からバイトがあるから、少ししか逢えないけどいい?」


「…うん」


「じゃあ、家に来て」

No.10 11/12/17 17:59
+☆天城美穂☆+ ( 20代 ♀ iRGK )

「…うん」


わたしが頷くと、通話は切られた。


素っ気ない会話。


いつもながら、そう思う。


しかし、それでも良かった。


ただ、逢える事になったのが、今のわたしには嬉しかった。


わたしは早足になりながら、目的地へと急いだ。

No.11 11/12/17 18:08
+☆天城美穂☆+ ( 20代 ♀ iRGK )

目的地であるマンションの前に立つと、わたしはチャイムを鳴らした。


ピンポーンという甲高い音の後に、ガチャリとドアが開いた。


そして、そこから顔を覗かせたのは、先程の電話の相手。


一応、わたしの彼氏という事になっているマサオだ。


マサオは、アルバイトを二つ掛け持ちしている。


そのせいか、忙しいらしい。

No.12 11/12/17 18:10
+☆天城美穂☆+ ( 20代 ♀ iRGK )

そのため、わたしとマサオが逢う事は滅多にない。


しかも、いつも逢う時は、わたしの方から連絡をしている。


マサオの方から、連絡がくる事がないから。


わたしの事など、マサオはどうでもいいのかも知れない。


そう思う事もある。


それくらい、マサオはわたしに連絡してこない。

No.13 11/12/17 18:12
+☆天城美穂☆+ ( 20代 ♀ iRGK )

付き合うキッカケとなったのは告白の言葉。


そして、その言葉を口にしたのは、わたしではない。


マサオの方だ。


わたしの事が好き。


付き合って欲しい。


確かに、そうマサオは言ったんだ。

No.14 11/12/17 18:14
+☆天城美穂☆+ ( 20代 ♀ iRGK )

しかし、実際に恋人という関係を初めてしまえば、わたしは放置されている状態。


至極、可笑しいと思う。


しかし、そんなマサオの事を、何故かわたしは好きになってしまった。


ドコが好きと訊かれても、わたしには分からない。


マサオのいいところがドコかも、わたしには浮かんでこない。


それでも、何故か好きになってしまった。

No.15 11/12/17 18:17
+☆天城美穂☆+ ( 20代 ♀ iRGK )

人を好きになるという事は、きっと理屈ではない。


マサオを好きになって、わたしはそう思う様になった。


そのため、ドアから顔を覗かせたマサオを目にしただけで、わたしは嬉しい気持ちになった。


マサオは、そうではないかも知れない。


その様な事くらい、キチンと理解しているのに。

No.16 11/12/17 18:20
+☆天城美穂☆+ ( 20代 ♀ iRGK )

「入って」


そうマサオが言うと、わたしは玄関で靴を脱ぐ。


そして、マサオの後に続いて、マサオの部屋へと向かう。


わたしは、マサオの家には数える程しか来た事がない。


それでも、別に初めて来た訳ではない。


しかし、わたしは緊張していた。

No.17 11/12/17 18:21
+☆天城美穂☆+ ( 20代 ♀ iRGK )

初めてマサオの家に来た時と、同じくらい緊張している気がする。


普通、何度か来ているうちに、少しくらいは緊張しなくなるものだと思うけれど。


何度来ても、マサオの家には慣れないと思う。


それは、わたしとマサオの心の距離を表しているのかも知れない。


わたしとマサオの心の距離は、決して近いとは言えないだろう。


そして、そんな遠過ぎる心の距離が、わたしをいつまで経ってもマサオの家に慣れさせないのだと思う。

No.18 11/12/17 18:23
+☆天城美穂☆+ ( 20代 ♀ iRGK )

いや、マサオの家というよりも、わたしはマサオ自身に慣れていない。


逢う度に、いつも緊張している。


マサオは、何を考えているのか分からない。


わたしの事を、好きなのかさえ分からない。


告白された時、確かにわたしはマサオに好きだと言われた。


しかし、その言葉が全てとは限らない。

No.19 11/12/17 18:25
+☆天城美穂☆+ ( 20代 ♀ iRGK )

人の言葉には、裏というものが存在する。


人間という生き物は、腹黒い生き物だから。


わたしは、マサオの事が怖いのかも知れない。


何を考えているのか分からないマサオを、きっと心の奥底では恐れているのだと思う。

No.20 11/12/17 18:26
+☆天城美穂☆+ ( 20代 ♀ iRGK )

それでも、逢いたくなる。


傍にいて、触れたくなる。


恋人という関係でいたいと思う。


それは、やはり好きだからなのだろう。

No.21 11/12/17 18:27
+☆天城美穂☆+ ( 20代 ♀ iRGK )

それが、いい事なのかは分からない。


人は何故、人を好きになるのだろう。


自分が相手に、想われていないかも知れないのに。


どうして、こんなに人は人を好きになるのだろう。

No.22 11/12/17 18:32
+☆天城美穂☆+ ( 20代 ♀ iRGK )

「リナ」


マサオが、わたしの名を呼ぶ。


マサオは、滅多にわたしの名前を呼ばない。


そのため、わたしは名前を呼ばれるだけで嬉しかった。

No.23 11/12/17 18:34
+☆天城美穂☆+ ( 20代 ♀ iRGK )

「おいで」


ベッドの上に腰を下ろしているマサオが、絨毯の上に座る私の方に向かって手を広げる。


わたしは立ち上がって、マサオの座っているベッドの方へと向かう。


そして、ベッドに腰を下ろすなり、わたしはマサオへと抱き付いた。


マサオの身体は、とても温かかった。


この温もりで、わたしは落ち着く事が出来る。


そんなわたしを抱き締めたまま、マサオはベッドに横になった。

No.24 11/12/17 18:38
+☆天城美穂☆+ ( 20代 ♀ iRGK )

そのため、わたしはマサオの横に寝そべる形になった。


自分とわたしに布団をかけると、そのままマサオは微動だにしなくなった。


マサオの腕枕に頭を乗せながら、わたしはマサオの横顔を見詰める。


恋というものは、本当に不思議だと思う。


ただ見ているだけでも、全く飽きないのだから。


寧ろ、ずっと見ていたくなる。

No.25 11/12/17 18:45
+☆天城美穂☆+ ( 20代 ♀ iRGK )

しかし、やはり人間というものは我が儘な生き物だ。


いつも常に、もっと上を見てしまうのだから。


マサオを見ていると、それだけで嬉しい。


しかし、同じ様にマサオにも、わたしを見ていて欲しいと願ってしまう。


実際、そうではない事に少し淋しささえ覚えてしまっている。


マサオは、ずっと天井を向いたままだ。

No.26 11/12/17 18:50
+☆天城美穂☆+ ( 20代 ♀ iRGK )

しかも、ずっと目を瞑っている。


横になってから、一度も目を開けていない。


もしかしたら、そのまま眠ってしまっているのかも知れない。


今までにも、その様な事が何度もあった。


折角、わたしが家へ来たというのに。


何だか、歓迎されていないみたいで嫌だ。

No.27 11/12/17 18:56
+☆天城美穂☆+ ( 20代 ♀ iRGK )

わたしは、何のためにマサオの家へ来たのだろうか。


そうは思うが、それをマサオに言えずにいる。


恋をすると、人というものは臆病になるものだ。


そして、それはわたしも例外ではない。


わたしは、マサオに嫌われるのが怖い。


そのため、不満などがあってもマサオに言えない。

No.28 11/12/17 18:59
+☆天城美穂☆+ ( 20代 ♀ iRGK )

惚れた弱みという言葉を聞くが、この様な事をいうのかも知れない。


それを、少し悔しく思う。


しかし、そう思ったところで、どうにもならない。


それなら、マサオと一緒に過ごせる時間を大切にしようと思う。


わたしは、マサオの頭の後ろへ手を伸ばす。


そして、マサオの顔を自分の方へと向かせた。

No.29 11/12/17 19:01
+☆天城美穂☆+ ( 20代 ♀ iRGK )

マサオは、無反応。


しっかりと、目も閉じたままだ。


やはり、寝ているのだと思う。


そんなマサオを映していた瞳を、わたしは静かに閉じる。


そして、少し乾いたマサオの唇に、わたしは静かに自分の唇を重ねた。


一向に、マサオは目を開かない。

No.30 11/12/17 19:03
+☆天城美穂☆+ ( 20代 ♀ iRGK )

わたしは、そのまま十秒くらいマサオとキスをしていた。


マサオから唇を離してからも、身体はマサオから離さない。


ピッタリと寄り添ったまま、わたしはボーっとしていた。


相変わらず、マサオの身体は温かい。


寧ろ、布団がかかっている事で、先程よりも温かくなっている様な気がする。


正直、少し熱いくらいだ。

No.31 11/12/17 19:09
+☆天城美穂☆+ ( 20代 ♀ iRGK )

しかし、わたしはマサオから身体を離さない。


少しでも隙間が出来るのを嫌がる様に、しっかりとマサオの身体に抱き付いている。


マサオの温もりが、恋しかった。


マサオに対して、色々と思う所はある。


不満がない訳ではない。


寧ろ、数え上げたらキリがないかも知れない。

No.32 11/12/17 19:11
+☆天城美穂☆+ ( 20代 ♀ iRGK )

しかし、それでもマサオの温もりで、わたしは安心する事が出来る。


ずっと、この温もりを感じていたいと思うくらいだ。


しかし、幸せな時間は長くは続かないものだ。


三十分くらい経過した頃、急に女性の歌が流れ出した。


わたしは驚き、周囲を見回す。

No.33 11/12/17 19:14
+☆天城美穂☆+ ( 20代 ♀ iRGK )

すると、枕元にあるマサオの携帯電話が緑色の光を放っているのに気付いた。


どうやら、急に流れ出した歌の正体は、マサオの携帯電話の着うただったらしい。


メールか電話だろうか。


そう思いながら、わたしはマサオの方へ目をやる。


しかし、マサオは目を覚ます気配がない。


仕方なく、わたしは着うたが鳴り止むのを待った。


しかし、十五秒くらい経過しても、一向に着うたは鳴り止まない。

No.34 11/12/17 19:16
+☆天城美穂☆+ ( 20代 ♀ iRGK )

メールや電話にしては、着うたが鳴り響いている時間が長い気がする。


一体、いつになったら鳴り止むのだろう。


その様な事を思いながら、わたしはマサオとマサオの携帯電話を交互に見ていた。


そうしているうちに、マサオが目を開けた。


眠そうに目を擦りながら、携帯電話へ手を伸ばしている。


そして、鈍い動作で携帯電話を開いてキーを叩く。

No.35 11/12/17 19:19
+☆天城美穂☆+ ( 20代 ♀ iRGK )

すると、着うたは鳴り止んだ。


どうやら、着うたはアラームで鳴る様に仕掛けていたらしい。


マサオのすぐ隣にいたから、たまたま携帯電話の画面が見えて知ってしまった。


わたしが家へ来てから、マサオが携帯電話を弄っている気配はなかった。


そのため、アラームはわたしがくる前に仕掛けたという事になる。


どうして、マサオはアラームを仕掛けたのだろう。

No.36 11/12/17 19:58
+☆天城美穂☆+ ( 20代 ♀ iRGK )

それが、妙に気になった。


「そろそろ、バイトに行く時間だ」


そう言って、マサオがベッドから身体を起こすから、余計に気になる。


これは、わたしに帰れという合図。


ただ単に、本当にアルバイトに行く時間なら良い。


しかし、それが真実とは限らない。

No.37 11/12/17 20:00
+☆天城美穂☆+ ( 20代 ♀ iRGK )

人間の言葉など、何が本当で何が嘘かなど分からないものだ。


わたしに早く帰って欲しくて、そう言っているだけかも知れない。


わざわざ、アラームという小細工をしてまで。


もしも、そうだとしたら嫌だ。


本当に、これからマサオがアルバイトであって欲しい。


そう思いながら、わたしもベッドから身体を起こした。

No.38 11/12/17 20:03
+☆天城美穂☆+ ( 20代 ♀ iRGK )

そして、無言で通学用鞄を手に取る。


「帰るね」


「嗚呼」


わたしの言葉に頷くと、マサオはわたしを玄関へと促した。


玄関まで来ると、わたしは無言で靴を履く。


仲のいい恋人同士なら、ここは他愛ない会話でもしているところなのかも知れない。


それか、別れを惜しんでいるところなのかも知れない。


しかし、わたしとマサオの間に会話はない。

No.39 11/12/17 20:05
+☆天城美穂☆+ ( 20代 ♀ iRGK )

本当は、何か話したいと思う。


しかし、わたしはマサオと何を話していいのか分からない。


そのため、どうしても無言になってしまう。


それは、わたしとマサオの間に、やはり距離があるからなのだろう。


そんな距離が、いつもわたしを不安にさせているのだと思う。

No.40 11/12/17 20:07
+☆天城美穂☆+ ( 20代 ♀ iRGK )

マサオの家を出ると、わたしはバスに乗った。


そして、自宅近くの停留所で、わたしはバスを降りた。


ここから、歩いて五分くらいで家へと着く。


人によっては、それを遠いと感じるかも知れない。


しかし、わたしには近い。


あまりにも、近過ぎる距離だ。

No.41 11/12/17 20:09
+☆天城美穂☆+ ( 20代 ♀ iRGK )

こんなに短い距離では、すぐに家へと着いてしまう。


わたしは、まだ家へ帰りたくないのに。


今日は、出来れば家へ帰りたくない。


何か、家へ帰らなくていい方法はないだろうか。


その様な事を考えていたから、わたしは前を見て歩いていなかった。

No.42 11/12/17 20:11
+☆天城美穂☆+ ( 20代 ♀ iRGK )

そんなわたしに、いきなり何かがぶつかる。


俯きがちだったわたしは、驚いて顔を上げた。


すると、目の前には一人の男性がいた。


明るい茶髪に、目鼻の整った顔立ち。


細身で、わたしよりも頭一個分くらい高い身長。

No.43 11/12/17 20:13
+☆天城美穂☆+ ( 20代 ♀ iRGK )

「悪い!大丈夫か!?」


わたしを見下ろしながら、男性は言う。


「…はい、大丈夫です」


少し緊張気味に、わたしは返す。


それを見て、男性がホッとした様な表情を浮かべた。


かと思うと、まじまじとわたしを見詰めてきた。


一体、何なのだろう。

No.44 11/12/17 20:15
+☆天城美穂☆+ ( 20代 ♀ iRGK )

そう思いながら、わたしは男性の次の言葉を待った。


「アンタ、この辺の娘か?」


「はい、そうですけど…」


本当に何なのだろうと思いながら、わたしは男性の言葉に頷く。


「名前、何て言うんだ?」


「…リナです」


「リナか。俺は、ケイタだ。よろしくな!」

No.45 11/12/17 20:17
+☆天城美穂☆+ ( 20代 ♀ iRGK )

一体、何がよろしくなのだろう。


ここで別れた後、もう逢う事はなくなるだろうに。


いきなり名前を訊いてきたり、よく分からない人だ。


「それでは…」


そう言って、わたしはケイタさんの横を通り抜けようとした。

No.46 11/12/17 20:19
+☆天城美穂☆+ ( 20代 ♀ iRGK )

しかし、そう出来なかった。


「おい、待てって!」


そう言いながら、ケイタさんがわたしを行かせまいとしたからだ。


まだ何かあるのだろうか。


そう思いながら、わたしはケイタさんの次の言葉を待った。

No.47 11/12/17 20:21
+☆天城美穂☆+ ( 20代 ♀ iRGK )

「俺、この辺に引っ越してきたばっかなんだ!」


「はぁ…」


勝手に自分の話を始め出したケイタさんに、わたしは適当に相槌を打つ。


そんなわたしに、ケイタさんは更に勝手な事を言い出した。


「てな訳だから、この辺を案内してくれよ!」


「え?わたしがですか?」


「おう!」

No.48 11/12/18 15:25
+☆天城美穂☆+ ( 20代 ♀ iRGK )

当然という様に、ケイタさんが力強く頷く。


初対面の人に、いきなり頼み事を出来るケイタさんを、わたしはスゴいと思った。


わたしとは、正反対だ。


わたしは、マサオに思った事を言えない。


いや、マサオだけではない。


他の人にも、全く言えていない。


そのため、わたしはケイタさんの性格を少し羨ましいと思った。

No.49 11/12/18 15:28
+☆天城美穂☆+ ( 20代 ♀ iRGK )

それはさて置き、どうしようか。


ケイタさんを案内するか。


それとも、断るか。


断ったとしても、ケイタさんなら強引に案内させようとするかも知れない。


しかし、わたしはケイタさんを案内するべきなのかも知れない。

No.50 11/12/18 15:30
+☆天城美穂☆+ ( 20代 ♀ iRGK )

腹黒いわたしは、そう考えた。


ケイタさんの提案は、利害一致だと思う。


わたしは、今日は家へ帰りたくない。


そのため、ケイタさんを案内する事は、わたしにとっても都合がいい様な気がした。


家へ帰るのを遅らせられるからだ。


ケイタさんの案内が、長くなればなる程。

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