彼と彼
私は綾子28歳
某外食チェーン店の事務方の仕事をしている。
営業部の部長と4年間の不倫関係を続けていた。
元カレとの別れ話しや、仕事の悩み事を嫌な顔をせずに親身になって聞いてくれた。そんな優しさに甘えていた。いつの間にか、恋に落ちていった。
彼は45歳。
奥さんと息子さんと娘さんの4人暮らし。
奥さんもフルタイムで働いているので、すれ違いの生活が続いた。
気付いた時には家庭内別居の夫婦になっていた。
新しいレスの受付は終了しました
彼はいつも私に優しく、私のワガママを聞いてくれた。
仕事の忙しさを理由に家事や子育てに目を向けない奥さんには出て行く事を言い続けてきた。
年齢の大きくなった子供と夫に家事をまかせ、土日も夜も家にはいない奥さんだった。
冷えた夫婦関係だったが、子供達には私に向けてくれる愛情とは違う深い愛情を持った彼だった。
だか、子供達も大きくなり仕事と家の往復だけの毎日に孤独を感じていた。
同じ系列会社の私と彼は、普段あまり顔を合わす事はない。
上司の仕事のサポートの為に彼の仕事を同行する時があった。
真面目なタイプで優しい物腰の彼に、ついつい相談事などをよくするようになった。
車が趣味の彼に、私は通勤やプライベートで使うマイカーのメンテナンスの事を聞いていた。
私は必要性の為に運転をするが、車のメカニックには無知だった。
恥ずかしいので誰にも聞けずにいる事を、彼は笑わずに『何でも聞いて』…と言ってくれた。
彼は奥さんとは家の中で一緒に過ごす事はなく、互いに別々のプライベートルームを持っていた。
電話は声が部屋から漏れるのでタブーだったが、メールのやり取りは全く問題なかった。
私達は普通の恋人同士のように、毎日メールで連絡を取り合うようになった。
互いに口に出さなくとも、気持ちを確認できた。
二人が男と女の関係になる事に迷いはなかった。
互いの休みを合わせて月に一度は密会をするようになった。
年の離れた彼はいつも私に優しかった。
料理好きな私の食事を喜んで食べてくれた。
本当に普通の恋人のように時間を過ごす。
でも彼は外泊する事はなく家にいつも帰っていった。
明るく、気をつけてね…と手を振り笑顔を見せる私の肩を引き寄せ、唇を重ねる。
そしてドアを開けて閉じた。
心にポッカリ穴が空く。
決まって1時間後にメールが届く。
帰ったよ😉
今日も美味しい料理ありがとう💓
あやちゃんとの時間が一番楽しい🙌
四十半ばの男が送ったメールに思えない内容に、携帯画面を見ながら一人微笑む。
どちらかが眠りにつく迄、他愛ない話しを何通も送り返す二人。
彼は、不倫男特有のエキスパートではなかった。
彼女には都合よく付き合い、家庭が一番というタイプではない。
だが、時々は鈍感な顔を見せる。
子供達の事を楽しそうに私に話す。
でも…一応気を使って話さなくてもいいじゃない。私も貴方の子供が産みたいわ。無理でしょ。
心の中で声にださない声が聞こえた。
彼の家庭を壊したいわけじゃない。
彼の幸せを願っている。
でもね…でもね…。
一人の休日、眠れない夜、手を繋ぐ恋人達を街で見掛ける時、私の心中に寂しさが込み上げてくる。
私にだって彼がいるのよ。優しくて頼りがいがあって大人の彼氏。
こんなに好きになった人は初めて。
そしてこれからも。
これが最後の恋だから…私の最後の恋だから。
自分でも、他の人に恋をすればいいのに…と思うけれど、
自分の心のコントロールは出来ない。
わざと彼に嫌われるような態度を取ってみたり。
嫌われた方が楽だ。
どうぞ、私を嫌いになって…。
そして離れていって…。
でも、そんな茶番は彼に見透かされていた。
彼を失う辛さと、今の苦しみを天秤にかけたならば、
確実に今の苦しみの方が軽いのだ。
だから私は可もなく不可もない存在でいいのだ。
誰もしらない。
誰にも言えない。
でも彼が好きで失ないたくない。
『本当に愛人を好きならば、家庭なんて捨てるよ。』
テレビドラマを見ていたら、そんなセリフがあった。
確かに…私を好きだと言ってくれるけれど、二人の未来について話した事はない。
ずっと私は愛人だもん。
彼の子供達が独立したら彼は私を選んでくれるから…
今日は一人でお酒でも飲もうかな…明日は仕事休みだし。
そう考えていた時に友人のヒカルから、誘いのメールがきた。
ヒカルは私と同い年。バツイチのシンママで仕事は看護士をしている。
実家で親と同居しているので、子育てしながら夜勤もこなす。
職場の愚痴を聞いてくれる女友達を探して私に連絡してきた。
私も飲みたい気分だったので、喜んで指示された店へと脚を運んだ。
私には初めての店だった。
扉を開けたら、こじゃれたバーのような感じがしたが、創作料理とお酒を楽しめるお店だ。
ヒカルはカウンター席に座り一人で生ビールを飲んでいた。
お店のスタッフからボックス席に移りますか?と言われたが、私もそのままカウンター席に腰を下ろした。
ビールを飲み美味しい肴をつまみながら女二人の話しはつきなかった。
ヒカルは唯一、彼との関係を知っている友人だ。
私を軽蔑する事もなく優しく私を見守ってくれている。
ガールズトークの真っ最中に私の携帯のサブディスプレイが彼の名前で光る。
『残業が終わったから、これから帰るね』
『今、ヒカルと飲んでたよ。お疲れ様』
『あやちゃんも、遅くならないうちに帰りなよ。』
『うん了解(^o^ゞ』
いつも私を子供みたいに扱う彼。
でも…そうゆうの嫌いじゃない。
心配されるってうれしい。
女二人の楽しい時間も過ぎて、近いうちにまた逢う事にしょうよと店を出る事にした。
大通りでタクシーを拾い、乗り込んだ。
『タクシーつかまったよ。帰るね。』
『うん、楽しかったかな?』
『楽しかったよ。お腹パンパンだよー』
『そのお腹触りたい』
『エッチだね~~』
普通の恋人と何ら変わらないメールのやりとりをする二人。
『部屋の中に入ったよ』
『お帰り。安心したよ。』
『ただいま。心配性だね』
『うん。かわいいあやちゃんだからね』
パジャマに着替えてベッドに横になった 。
今日はお酒のせいか、私が先に眠りについた。
翌朝起きると時計は9時を過ぎていた。
携帯を開くと新着メールが2件。
昨日寝る前の彼からの『おやすみ』と今朝の『おはよう会社行ってきます』の2つだった。
私はそのまま携帯を閉じて、洗濯機を回し部屋の掃除をした。
11時になり、パンとコーヒーで一人テレビを見ながらブランチの一時。
また、彼からのメール『あやちゃん 休憩時間だよ』
彼は一日に何度もメールをくれる。
毎日寂しい気持ちでいる私への配慮であり、ただ単純に暇があれば繋がり合いたい二人だった。
こんなにマメな人だと思っていなかったから、初めは驚いたが、今ではメールがないと何かあったのかと心配になる。
そんな時は『メール出来なくてゴメンね。商談が長引いて…』
事故や病気じゃなくて良かった…
何度もそう思ったかな。
恋愛感情は一説によると、麻薬か魔法にかかっている状態と同じだと。
だから、いずれは醒める。タイムリミットは四年間。
まさに私達はその状態かもしれない。
でも四年間後も変わらずに愛してると信じたい。
明日は二人とも仕事が休み。
彼が私の部屋に久しぶりに来てくれる事になった。
彼の好きな煮物でも作ろうかと、材料をメモして買い物に出発した。
買い物を終え、急いで夕食の準備を初めた。
お気に入りの可愛いエプロンを身に付けた。
煮崩れしないように、コトコトとしっかり煮込んだ。
うん!バッチリ彼好みの味付け。
私はシャワーをして、薄化粧をした。
ベッドの上には彼用の枕を置いて。
その時、メールのカエルコール。
『これから、あやちゃんの所に帰るよ』
彼にとって、私が帰る場所。
『お疲れ様。気をつけて帰ってね。』
時刻は6時、新婚さんみたいな気分を味わう。
お帰りなさい。お風呂にする?
ご飯にする?
…それとも私にする?
妄想は楽しい。
彼の車のエンジン音が私のアパートの前で大きくなって、静まる。
私は彼が呼び鈴を鳴らす前にドアを開けた。
『お帰りなさい、お疲れ様でした。』
彼は『ただいま~腹へったぁ~』と呟きながら、ケーキショップの箱を私に手渡す。
『お風呂入るでしょ?』
『うん。ありがとう。あ~旨そうな匂い!』
台所を通過してバスルームへ…
私は彼の着替えを脱衣場に置いた。
彼は私の腕を引き寄せ、『逢いたかった。』と抱きしめながらキスをした。
『続きは後でね。』
私はテーブルの上に温め直した手料理を並べた。
私はビール、彼は運転をして帰るので冷たいお茶。
バスルームから『さっぱりした~』と髪を拭きながら、彼が出てきた。
『うまそぉ~早く食べよー』
彼は家庭の味に飢えている。奥さんはキッチンに立つ事はないらしい。
かわいそうな彼。
かっては愛しあい仲いい夫婦だっただろうに。
最近のお互いの近状報告をしならがら、夕食をつまみ、『美味しい。美味しい。』と私の料理を誉めちぎる。
毎日食べさせたいなぁ…そんな気持ちにさせる。
『ごちそうさまでした。』
彼はいつも洗い物と片付けをしてくれる。
『私がするよ』と言っても、
『あやちゃんケーキ食べなよ』とお土産のケーキを薦めた。
『ありがとう頂きます。』
『うまいかぁ~?』
モグモグとケーキを口に運ぶ私に向かって嬉しそうな顔をする。
『おいしぃ~やっぱ、ケーキはここが一番だね』
『そうだよなぁ』キッチンのシンクの水滴を拭き終わり、私の隣に腰掛けた。
私はチョコレートケーキを彼の口元に近づけた。
飲み込んだ後で、私の顔を見つめながら、キスの荒らし。
二人とも甘いチョコレートの匂いがする。
ベッドルームへ手を繋ぎながら移動する。
私は彼の腕に包み込まれた。
経験の重みを感じるセックス。
女の身体を知り尽くしたような動き。
私は初めて彼に抱かれた時、今まで自分がしてきたセックスは何だったのかと思えた。
私はこんなに淫らな女だったの?
私を何度も快楽の海へと連れて行った。
私が彼から離れられないのは、身体が彼を求めるから…決して否定できない根拠だ。
もっと…もっと…貴方が欲しい。
しばらくこのまま、まったりとした時間を過ごしたかった。
『もう帰る…?』
『まだ帰らないよ。』
楽しい時間はなぜ、早く過ぎていくような気がするの?
二人とも同じ事を感じていた。
ずっと一緒にいたい。
私は彼の腕の中で、彼の切ない気持ちを受け止めていた。
いつも、いつも、寂しい思いさせてゴメンね。
本当はあやちゃんを幸せにしたい。
二人、誰も知らない街で一緒に暮らしたい。
ねぇ…あやこ…
君の女として大事な時を、俺の為に使っていいのか…?
私は他の誰かじゃイヤ。
私は貴方しか見えない。
黙ったままの二人。
お互いの気持ちは口に出さなくても分かっていた。
時計は11時を指していた。
再び浴室へシャワーを浴びに彼は立ち上がった。
ねぇ…泊まって行ってよ、明日の朝二人でモーニングコーヒーを飲もうよ。
…言えるわけもなく、私はテレビを付けてタバコに火を付けた。
『また来るよ』
『うん…次は、いつ?』
『連絡するよ。』
軽いキスをして、彼は家路を急ぐ。
奥さんは彼が何泊しょうとも気にはならない。
むしろ、顔も見たくないだろうに。
年頃の息子さんと娘さんの手前、彼は外泊はしない。
私は一人お風呂に入り、彼からのメールを待たずに眠りについた。
私も彼も仕事と家の往復をする日常に戻った。
朝、昼、夜…変わらずにメールを交わし、相変わらずラブラブのおバカカップルを年甲斐もなく装った。
次はいつ逢えるの…?
ただ、それだけが楽しみ。
私は退屈な夜には、以前、友人のヒカルと行ったお店に一人で顔を出すようになった。
店長とも随分仲良くなった。
新人スタッフの男の子が、私の注文したお酒とおつまみを間違えて、他のテーブルのお客様に運んでしまった。
店長と新人君は私に丁寧に謝り、お詫びにとサービスの料理を私に提供してくれた。
気にする事はない。私も外食産業の企業に勤めている。
ミスは仕方ない。だからお店の気遣いに恐縮してしまった。
新人君はそれから、私の話し相手をお店でしてくれるようになった。
『名前は?』
『アキヒロです。』
年は20歳。
地元の大学に通う学生さんで、今は親のスネをかじって生活しているが、ゆくゆくは一人暮らしをしたい。と話していた。
自分には、3つ違いの高校生の妹がいるが、両親の不仲に悩んでいる。
両親の離婚は仕方ないが、自分が大学を卒業したのち、妹の存在が気がかりであると話していた。
妹思いの優しい性格にイマドキの若者らしくない好印象を感じた私だった。
ラストオーダーの時間も過ぎて、私はそろそろ帰ろうかとバックから財布を出した。
アキヒロ君が『俺もバイト上がるんですが、あやこさん時間良かったら、別の店で飲みませんか?』
思いかけないアキヒロの誘いに『うん、いいよ。』と快諾した。
向かい側のコンビニの前で待っていると『すみません。待たせたて…』と駆け寄ってきた。
背の高いアキヒロはオシャレに私服を着こなしていた。
2・3分歩いた場所の居酒屋に入った。
私達はカウンターの席に座り、お酒を飲みながら互いの学校、仕事、友人、身の上話しなどざっくばらんに話し込んだ。
アキヒロとは笑いのツボが合う。
私の方が年上だけれど、しっかり者のアキヒロには気を使わずにいられた。
終始、敬語で話すアキヒロに『タメぐちでいいよ。』と声をかけた。
『あやこさんの彼氏、どんな人?』
えっ…?彼氏?
『私は好きな人はいるけど、彼氏はいないよ。』
『マジで~~~?』
『うん、私フリー』
『俺、脈アリ?期待していい感じ?』
私は口に含んだお酒を吹き出しそうになった。
『アハハ~~』と大笑いしてしまった。
私…不倫してるの。
言えるはずもなかった。
アキヒロの言う事など、ただの社交事例だから…
ちょっとカッコいい若い男の子と非現実的な疑似恋愛に似た空気感を楽しめて良かった。
でも彼には今日のアキヒロとの事は秘密!
別に結婚しているわけじゃない。
約束もしているわけじゃない。
束縛される理由もない。
それに、ただお酒を飲んだだけ。
これから身体を許すわけもない。
そう、だから大丈夫。
店を出てタクシー乗り場まで歩きながら、アキヒロは携帯を取り出した。
『赤外線よろしく!』
断る理由もなく、お互いの携帯を近付けた。
『じゃあ…またね。』
『今日はごちそうさま。』
私はガラス越しにタクシーの中からアキヒロに手を降った。
そして私は1時間前に送られてきた彼からのメールに返事を返した。
『今日は会社の女の子と飲み会したよ。返事遅れてゴメンね』
『そっか、楽しかったかな?』
あまり彼にウソはつかない。
…今日は年下の男の子と一緒にいたの…お酒を飲んで、連絡先を交換したわ。
もしも、本当の事を言ったら嫉妬してくれるのかな?
それとも怒るのかな?
しばらくは、あの店に行く事を控えよう…理由はないけど、アキヒロに深入りしたくなかった。
翌日の昼休みに、アキヒロからメールがきた。
『あやこさん
昨日は楽しかったね。
次は昼間に、どっか行こう。』
…遊び相手ならば、若い女の子を誘いなよと…思いなから。
『ありがとう。またお店でね。』
可もなく不可もない返事を返した。
どうせ、もうメールはこれからないでしょ。
だが、3日後にまたまたアキヒロからメールがきた。
アキヒロは物好きか?暇をもて余しているのか?
『あやこさん
次の仕事、休みは、いつかな?』
仕事は毎週土日が休み。
月に1・2回は土曜日の夜に彼が訪ねてくる。
今週末、彼は接待だと言っていた。
彼と逢えない時の休日の過ごし方は、だいたい掃除洗濯。
私の予定として、今週末は午後から服や靴を見つけに行きたかった。
アキヒロには、
『土日休みだけれど、掃除洗濯しなくちゃいけないし、買い物に行く予定もあるから』と嘘は無しでそのままの理由を告げた。
『じゃあ買い物に付き合うよ。一緒に行きたい。』
『服や靴を見たいんだ。アキヒロ君が退屈するだけで、つまんないって思うよ。』
『あやこさんに逢いたいんだ。』
…どうゆう意味?
年下の坊やの暇潰しのゲーム感覚?
アキヒロは真面目なタイプ。
軽いノリで女性を誘うような人じゃない。
私はアキヒロの事を嫌いじゃない。ただ不倫と言えども彼氏がいる私。
彼氏に逢えない寂しさもあって、誰かに心のスキマを埋めて欲しい時もある。
正直なところ、不倫なんて辞めて独身の男性との恋愛も考えなかったわけではない。
アキヒロと一緒に行く事になった。
時間、待ち合わせ場所を決めた。
アキヒロの事を彼には言えなかった。
やましい事はないし…でもアキヒロからの友達とは違う感情を私は察していた。
私は自分自身に問いかけてみる。
これからの自分の人生、女としての幸せ。
何年後かに彼と一緒になれたとして、私は子供が生めるの?
いつも人目を気にして、親にも言えない恋愛。
アキヒロとではなくとも、独身の男性とのお付き合い…。
普通の恋愛に憧れが強い自分に気付く。
だけれど一番そばにいて欲しいのは彼。
説明の出来ない辛さにいつも苦しくなる。
自分の気持ちがわからない。
約束の朝、
とてもいい天気。
私は掃除洗濯を済ませ、身支度を始めた。
アキヒロに逢うからオシャレを…というわけじゃなく、試着しやすいようにスカートとミュールを組み合わせた。
待ち合わせは1時、本屋の前。
私は本屋の前の交差点で信号待ちをしていた。
横断歩道の向こう側から背の高いアキヒロが私を見つけ手を大きく振りながら『あやこさ~ん!』と大きな声で呼んだ。
街行く人達に笑われている事さえ、お構い無しのアキヒロ。
青信号へ変わると猛スピードで私の元へ駆け出して来た。
若いって何でもアリ?私も笑いが込み上げる。
『今日はありがとう。あやこさん!』
『うん、荷物持ちよろしく~~』
『買い物の前に何か食べようよ。』
『そだね、私もお腹すいた。』
若いアキヒロに合わせて、ガッツリ系で人気のラーメン屋さんへ入った。
『俺、トンコツチャーシュー麺の大盛と半チャーハン…それから、爆弾ギョーザ』
えっ?そんなに食べれるのっ!
『あやこさんは?』
『私は味噌ラーメンにする。』
本屋に全部食べるつもり?
テーブルに並べられたボリュームにも唖然!
猫舌の私はゆっくり食べよう。
取り皿に私の分にと、チャーハンを半分、分けて、ギョーザもあやこさん2個ねっ…
トンコツチャーシュー麺をモグモグさせながら、私に勧めてくれた。
『ありがとう』…明日は私ダイエットだなっ!
アキヒロは10分も経たないうちに完食した。
私はお腹がはち切れそう…。
財布を出そうとすると、アキヒロが伝票を持って会計を済ませてしまった。
『ごちそうさま、ゴメンね』
『いいよ、次はあやこさんの手作り弁当持ってドライブ行こう!』
…次?手作り弁当?
はにかんで笑う私を見てアキヒロが
『今日からあやこさんじゃなく、あやこって呼ぶから。』
『呼び捨て?私は年上だよ』
『ねっー、俺あやこが好きだよ。俺達付き合おうよ。』
アキヒロの気持ちを聞かされて、薄々は気付いていたけれど、返事に困ってしまった。
苦しいお腹をファッションビルで解消。
てくてくと歩いて、いい運動になった。
私はカットソー2枚とカーディガン、通勤用のパンプスを買った。
今日のお礼にアキヒロへ黒いチェックのストールをプレゼントした。
アキヒロはとても喜んでくれた。
アイスクリームショップに立ち寄り賑やかな店内の中で急に真面目な顔をしながら目をそらさず私の顔を見つめて数秒間黙ったままのアキヒロ。
『さっきの話だけど…俺じゃダメかな?あやこに好きな人がいるのは知ってる。でも俺はあやこに寂しい思いさせないから!』
…寂しい思い。
私が彼を好きな限りついてくる孤独。
『ありがとう…ちょっと考えさせて欲しい。私は年上だし、アキヒロ君には釣り合わなくないのかな?』
『初めてあやこに逢った時からあやこの事ばかり気になるんだ。』
私には、もったいないほどの相手。
これからアキヒロみたいな人に恵まれる事もゼロに近い。
私には彼が…。
どうしたらいいの?
昼間の快晴が灰色の雲を拡げていた。
私はベランダに干した洗濯物が気になった。
アキヒロに、その事を話し私は家路を急いだ。
部屋の前まで来るとパラパラ冷たい雨が降りだした。
なんとか、洗濯物は濡らさずにセーフ!でも、私の心の中はどしゃ降りのような気持ちだった。
私の部屋には、彼の下着、部屋着、枕、歯ブラシ、食器…数えきれないほどの彼の痕跡。
今すぐ彼に逢いたくなった。
お願い。どこにも行くなと…言って。
そして抱きしめて。
床の上に雑然と置いた洗濯物も買い物した荷物もそのまま。
窓硝子に伝い落ちる雨の雫を眺め、私も泣いた。
気が付くと外は暮れていた。
昼に沢山食べ過ぎたせいか精神的なものか食欲もない。
買い物した服と洗濯物をたたみクローゼットに仕舞い、お風呂にも入らずベッドへ横になった。
『接待ご苦労様、おやすみなさい。』
一言、送信して眠りに落ちた。
翌朝、お腹がすいて目が覚めた。
ひとまずシャワーをしてから冷蔵庫の中のあり物でお腹を満たした。
今日は食料品を買い物しなくちゃ。
近所のスーパーまで重い脚を運ぶ…アキヒロとは友達のままでいたい。
それは私のエゴなのだろうか?
私の心の中心部には彼がいる。
それなのに逃げるようにアキヒロと付き合う事は出来ない。
メールで私の気持ちを伝えるのは礼儀がないだろうか?
結局、携帯を開いては閉じての繰り返し。
迷っている私?いいえ、迷いはない。
夜の9時にはメールしょう。自分の中で決意を決めた。
『昨日はありがとう。やっぱりアキヒロとは付き合えない。本当にごめんなさい。』
弱々しい心を振り切るように送信キー親指で押した。
『わかった。でもまだ少し、あやこを好きでいさせて。』
私はアキヒロの返事にメールを返さなかった。
彼に逢いたかった。しっかりと私を捕まえていて欲しかった。
彼の家庭の事情など、無視したかった。
私だけの彼でいて欲しい気持ちが大きくなった。
貴方のせいだよ。私をこんなに好きにさせたのは…。
私は悪くない!全て貴方のせい。
早く私の事を迎えに来て。私の為に何もかも捨ててしまって。
自分勝手な気持ち…進歩のない自分。
誰のせいでもない。自業自得なのに。
また明日から、変わらない日常が始まる。
そう…何も考えたくない。
年下のイケメン君を振っちゃった、身の程知らずの残念な人とは私です。
月日は流れ、忙しい彼とは、すれ違いがち。
無理してでも睡眠不足になっても私との時間を作って欲しい。
バカバカしい。
私はなぜ、彼に依存しているんだろ!。
放置される日々にイライラが増す。
あーアキヒロもったいない事しちゃったね!
アキヒロに乗り換えれば良かったー。
彼にかまって貰えない寂しさが憎しみへと形を変えてしまった。
『あやちゃん、最近忙しいから時間作れなくてゴメン…。』
久し振りにきたメールに嬉しかったが、私はわざと心配かけたくなってスルーした。
私がいつまでも待ってるとでも思ったの?
『ありえねー!』心の中で呟いた。
一時間ほど経ったあと彼からのメールが届く。
『明日は時間作れそうだ。あやちゃんに逢いたい。』
『うん待ってる。』
つまらないケンカはしたくない。
結局は彼を求めてしまう私がいる。
どちらかの情がなくならない限り、私達の関係は続く。
ワガママ言ってしまっても、嫌われたくない。
お願い…私から離れていかないでね。
私も辛抱するから…。
彼から強く抱いて欲しい。何もかも忘れさせて。
明日は何を作ろうか?彼にイジワル言ってしまって悪かった。
いつも以上に腕を奮ってみよう。
早く明日にならないかなぁ。
私も彼も仕事は休み。
珍しく昼前に彼が部屋に来てくれる事になった。
早起きして、掃除洗濯をした。
ドアを開けた彼の手は来る途中買い物した袋があった。
『寄って来たの?』
『昼まだだろ?俺が作ろう。』
『本当に?ありがとう』
『俺のスペシャルパスタ旨いぞ!』
『うん楽しみ』
『その前にあやちゃんを食べたい。』
『まだ明るい…よ。』
彼はベッドルームのカーテンを閉めながら、口元に人差し指をあてて『あやちゃん、声静かになっ!』
『ハイハイ…ご近所に聞こえちゃうもんね!』
私の身体をふんわりと軽々と持ち上げ、お姫様抱っこをしてくれた。
私もしっかり彼の肩にしがみついた。
最初は優しいキス…
私の髪をなでながら絡め合う濃厚な長い長いディープなキス。
彼の下半身が固くなる。私からもイヤらしい蜜が溢れる。
お互いに他の誰とも、関係を持たない証拠が分かる。
強く抱いて…。求め合う二人。
時間を止めて…。
激しい動きが止まった瞬間、彼の遺伝子の生暖かい液体が私のお腹の上に飛び出た。
二人仲良くシャワーを浴びて、キッチンに立った。
彼の手際よさに惚れ直す。
ササッとキノコたっぷりパスタが出来上がった。
『今日は、ずっと仲良くしていよう。』
彼の言っている意味深さに顔が熱くなる。
『エッチ、変態、エロ、スケベ!』
『あやちゃんがいれば元気になっちゃうからなぁ~!』
『私の事好き?』
『大好きだよ。あやちゃんは?』
『大好き。愛してるよ。』
食べた食器をシンクに置いたまま、再び愛しあった。
さっきの一回戦で身体が敏感になってしまっている私は何度も何度も昇天した。
私達が愛し合う行為は、ただの鬼畜のようなものだろうか…
それでも二人は構わない。
求める事も感じる事も与える事も真実だから…。
他の人の身体なんて興味ない。
反応し合う心と肉体が正直なだけ。
私が興奮すれば彼はそれ以上に熱を増す。
何も理由なんていらない。
彼は年齢のせいか長い。果てた後は私の身体は放心状態。
心臓の鼓動と荒々しい呼吸がハァハァと音をたてる。
『あやちゃん、スゴい。キュッって締まるんだ。』
腕枕の中で彼の身体に寄り添う。
『今日は、自分でも怖くなるほど感じちゃう…。』
もう彼以外じゃ、いや…。
既に加齢臭が気になってくる年代だけれど全然臭くない。
私は彼のにおい大好き。ずっと磁石のように寄り添っていた。
寝息を静かにたてる彼を起こさぬように私はシャワーを浴びに浴室へ向かった。
気が付くとカーテンの隙間から西日が射していた。夕食の準備を彼が寝ている間に済ませてしまおう。
和食好きな彼だから…きんぴらごぼう・ほうれん草のごま和え・煮魚・お味噌汁・彼の食事を作っている時って幸せな時間。
調理の片付けをしていると彼が起きてきた。
『ゴメンね…うるさかった?』
『いいや…知らないうちに寝てしまったな!あやちゃんゴメンね~』
『いいよ。寝てて良かったのに』
『せっかくあやちゃんと一緒にいるのに、眠ったらもったいない感じするからさ』
フフフ…そんな事言うと、かわいいねっ!ありがとう。
『洗面所の電気が切れてるよ。ちょっと買ってくるよ』
彼が向かい側のコンビニまで、ひとっ走りした後、天井の電球を付け替えてくれた。
女の私には高い場所には手が届かない…こうゆう時は一人暮らしの不便さを感じる。
今日は彼がいて良かった。やっぱり男の人は頼もしい。
『ありがとう助かったわ』
古い電球を受け取った。
『お腹すいたよ~』
『うん食べようか。いっぱい食べてね。』
彼はよく食べる。学生時代は野球チームにいたらしい。
若い時は少し痩せてたって。
同じ時代に生きて見てみたかったな!
若い時の彼。
食事を終え、ソファーに寄り添い肩を並べ腰掛けていた。
もう少しで王子サマはお城へ帰ります。時間を止める魔法は使えませんでした。
私の気持ちを感じとったのか彼は私の手を握りながら呟く。
『泊まろうか…』
『いいの…?』
『ちょっと、娘に電話するよ…』
彼は携帯を開き、お嬢さんに接待ゴルフの後に飲み会になってしまって、このまま宿泊する流れになった…と話していた。
私の為に何度、子供達に嘘をつかせてしまっているだろうか。
罪の意識を感じながら、彼の愛の形に喜びを隠しきれなかった。
家庭の事は詮索しない。それが暗黙のルール。私は何も聞かない。
『娘が県外の大学に進学する予定になりそうだ。』
『うん…。』
『今3年生だし、長男の方も一人暮らししたいらしくて、バイトの毎日だよ。』
『そう…。』
珍しく子供達の話をする彼に頷いてみた。
『娘の大学生活が落ち着いたら、あやちゃん、俺と暮らさないか…?』
『えっ…?』
『いつまでも俺達、このままじゃ良くないだろう。』
今日、そんな事を聞くなんて思わなかった。
この人は、その話をする為に来たの?
うれしいけど…素直に喜んでいいの?
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76レス 2332HIT 蜻蛉玉゜ -
仮名 轟新吾へ(これは小説です)
昔の事をいつまでも❗❗ごちゃごちゃと!!👊😡💢しつこい男じゃ❗ 【昔…(匿名さん72)
178レス 2783HIT 恋愛博士さん (50代 ♀)
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🌊鯨の唄🌊②4レス 105HIT 小説好きさん
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人間合格👤🙆,,,?11レス 120HIT 永遠の3歳
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酉肉威張ってマスク禁止令1レス 125HIT 小説家さん
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今を生きる意味78レス 509HIT 旅人さん
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黄金勇者ゴルドラン外伝 永遠に冒険を求めて25レス 946HIT 匿名さん
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🌊鯨の唄🌊②
母鯨とともに… 北から南に旅をつづけながら… …(小説好きさん0)
4レス 105HIT 小説好きさん -
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人間合格👤🙆,,,?
皆キョトンとしていたが、自我を取り戻すと、わあっと歓声が上がった。 …(永遠の3歳)
11レス 120HIT 永遠の3歳 -
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酉肉威張ってマスク禁止令
了解致しました!(小説好きさん1)
1レス 125HIT 小説家さん -
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おっさんエッセイ劇場です✨🙋🎶❤。
ロシア敗戦濃厚劇場です✨🙋。 ロシアは軍服、防弾チョッキは支給す…(檄❗王道劇場です)
57レス 1390HIT 檄❗王道劇場です -
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今を生きる意味
迫田さんと中村さんは川中運送へ向かった。 野原祐也に会うことができた…(旅人さん0)
78レス 509HIT 旅人さん
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アザーズ🫡 ここは楽しくな〜んでも話せる「憩いの場所🍀」となっており〜ま〜す🤗 日頃の事…
359レス 3240HIT 理沙 (50代 女性 ) 名必 年性必 -
母親の誕生日プレゼント何が良い?
来週の金曜日は私の母親の誕生日です、誕生日なので母親の好きな物や欲しい物をプレゼントしよう、と思った…
30レス 460HIT 張俊 (10代 男性 ) -
親が会社に挨拶、、
私はシングルマザーなのですが、子供2人が同時にインフルとコロナになり、会社に迷惑かけました。 社長…
13レス 411HIT おしゃべり好きさん ( 女性 ) -
高熱だと知り長時間放置
先日、私が高熱が出た時の話です。 彼は、彼と一緒に過ごした日が風邪の原因だと、何回も謝って…
13レス 457HIT 社会人さん (20代 女性 ) -
彼氏と分かり合えない。納得できない
親を大事にしない人嫌いって言われました。 私はただ連絡を取りたくないから疎遠になっただけ。 …
85レス 2442HIT おしゃべり好きさん (30代 女性 ) -
がんばっても何も言ってもらえない会社
仕事でがんばっても、成果をだしても、結果をだしても何も言ってもらえない。 がんばってるね、ありがと…
11レス 295HIT 気になるさん - もっと見る