18歳
あたしの18歳
恋愛はまだ『恋』だった勝手気ままな『ごっこ』
あの時のあなたの気持ちも知らないで…
自己中なあたしはただ自分自身の未来だけを見た
今はもう昔…高校生の未熟な恋愛
⚠卑猥な表現があります。不快に思われる方、読むに相応しくない年齢の方は自主的にロムを避け控えて下さい。
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手を繋いで買い物をする…
新婚ほやほやのカップルでもあまり食品の買い物のときは手を繋がないんじゃないか…
恵一は恥ずかしがる様子もなくしっかりと手を握っている。
「凜、ハンバーグ食べたい。ひき肉から見よう」
『うん、恵一は牛100%のと合挽肉のハンバーグどっちが好き?』
「え?何か違うの?よくわかんね」
『んじゃオーソドックスに合挽肉にしようか、あと玉子ってある?なかったら買ってこ。玉葱とパン粉ある?牛乳は…』
恵一が立ち止まり何故か微笑んでいる
『え?全部とりあえず買ってく?』
「…凜、若奥さんみたい」
そう言って笑った。
『何言ってんの、恥ずかしい』
「幸せだなぁって思ったから」
『あたしも、楽しい』
「さて、何?玉子…はある。牛乳微妙かも買ってこ、デザートに苺食べたい!」
『練乳いっぱいかけた~い』
「えー!甘いじゃん!牛乳と砂糖でいいよ」
『そのバージョンもいいね!じゃぁ恵一は牛乳と砂糖、あたしは練乳♪』
買い物を済ませて恵一の自宅に帰った。
帰り道も手を繋いで帰った。
「ん?」
『玄関先…誰かいない…?』
「本当だ…誰だ…」
『恵一んとこと同じ制服じゃない?…あ』
「…うん」
電車で別れた恵一と一緒にいた女の子だった。
女の子は私達に気付いてこちらに歩いてきた。
恵一の手をギュッと握った。
〔初めまして…私、恵一君の同級生の酒井あゆみと言います…突然すいません〕
『あ…いえ…あの…』
「さっきはゴメンな、急に電車降りちゃって」
すかさず恵一が話した。
〔ううん、まぁ気にはなったから…ちょっと来てみたの…〕
「…ゴメンな…大丈夫だから」
〔みたいだね…よかった…〕
気まずい空気が流れる…恵一の事が好きなんだなぁ…この子…
あたしは黙っていた。
「心配かけてゴメンな、また学校で話すから」
〔あ、うん、わかった〕
「じゃぁ、気をつけて帰れよ」
恵一はあたしの手を引き玄関の鍵を開けようとした
〔あの!……恵一君と戻ったんですか……?〕
『あ…あぁ、…はい…一応…』
〔彼女さんズルイです。初対面の私にこんなこと言われる筋合いなんかないと思いますが…恵一君のこと振り回して傷付けて…また戻ったなんて…ひどいです〕
『あ……』
「お前、どうしたの!?何言ってんだよ、これは俺が勝手に追いかけて今に至るんだって…」
〔でもズルイ…こうして戻るなら別れたりしなきゃいいのに〕
またあたしは黙った。
返す言葉もなかったから。
〔あたしは恵一君が好きです。諦めません。また別れそうな気がするから…〕
『………』
「お前…もうやめろよ…凜ゴメンね、先にうちに入ってて」
恵一はあたしに鍵を渡した。
「ちょっと近くまで送って来る……」
『ん……』
「心配しないで、凜。すぐに帰るから」
恵一はあたしの頭をポンポンと撫で、彼女を送って行った
家の中で一人で待つ事が出来なかった。
鍵を持ったまま、恵一の自宅近くのバス停にある古ぼけたベンチに座っていた。
恵一のことが大好きなんだなぁあの子…
あたしはあんなに一生懸命に恵一を追っ掛けたり目の前で堂々と好きだと胸を張って言う彼女の姿が頭から離れなかった
何も考える事はなく、たださっきまでのシーンを繰り返し繰り返し思い出していた
「凜?うちに入ってれば良かったのに、ゴメンね、嫌な思いさせて」
恵一は5分位で帰ってきた
あたしは無言で抱き着いた
誰かに恵一を取られるかもしれないという危機感
恵一はあたしのことが大好きなんだと言う自信
この両方があたしの胸に込み上げた
「ちゃんと俺は凜が好きだからって、酒井には断ったから。それが俺の気持ちだから不安にならないで」
『ん…』
「帰ろ?ほら、寒いから」
恵一はニッコリ笑ってあたしの手を引き歩きだした。
玄関に入るとドアに鍵をかけ、恵一が急に強くあたしを抱きしめた
「凜…不安にならないで。俺は凜しか好きじゃない」
『恵一?どうしたの?』
「凜が不安ってより俺が不安なんだな…こんなことあって、凜の気持ちが引けたりしてまた俺から離れてかないか…不安で仕方ない」
『離れないよ。恵一、大丈夫。ハッキリ言ってくれてありがとう。嬉しかったよ。』
「ゴメンね凜、嫌な思いしたね…」
『ううん、でも彼女すごいなって圧倒された。恵一の事すごく想ってるなって』
「ありがたい気持ちだよ。でもだから中途半端に対応できないから、ハッキリ話したよ」
『うん。あたしも負けないようにしなきゃ』
「凜……」
また恵一が強く抱きしめた
恵一と立つキッチンは楽しかった。
あ~でもないこ~でもないなんて言い合いながらご飯が出来上がっていった。
また新婚さんみたいに二人で向かい合って食べた。
幸せな時間は過ぎ去るのがあまりに早い。
時間が止まればいいのに…
何度もそう思った。
テレビを見ながら二人でゲラゲラ笑ってる時間も愛おしかった
「凛、風呂はいるよね?」
隣に座ってテレビを見ていた恵一がチャンネルを変えながらあたしに聞く。
『うん、あ…着替えないんだぁ…下着…』
「いいじゃん。別に気にしなくても」
『えぇ…でも……汚い…』
「汚くないでしょ」
そう言うと恵一はあぐらをかいている上にあたしを抱き抱えパンツの上から割れ目をさすりだした
『やだ、ちょっと…お風呂入ってから…あっ…』
「もう濡れてる。凛、いつからこんなに濡れてるの?」
『やだ、もぉ。汚いからやめて…お風呂入ろうよ…』
「だめ、お風呂はいる前にこの濡れまくってるのどうにかしなきゃ…エロすぎだ」
恵一は言いながらパンツを脱がした
あたしは恵一の膝の上から態勢を起こそうとした、恵一はキスでそれを防いだ。
『んっ』
激しくキスをする…舌を絡める…勃起した恵一のペニスが背中にあたるのが分かる
キスをしながら恵一はあたしの濡れた秘部を掻き回している
『あっ…んん…』
恵一はあたしを膝から降ろし床に寝かせた。
上着をめくりブラの上から乳首をいじる。
『あんっ…んっ…』
恵一はそのままスカートの中に顔を突っ込み、あたしは足を大きく広げられ、そのまま激しく舐められた
『やだっ!だめっ!』
あたしは必死に抵抗した。足を閉じようとしても強い力で開かれる。
また閉じようとすると、恵一はクリを吸い上げ口に含み激しく愛撫する
『ああっ、あんっ…んんっ…気持ちいぃよぉ…』
泣きそうな声で思わず出た台詞に恵一は興奮した様子を見せた
「凛もっと言って、気持ちいぃよぉってもっと」
スカートを脱がし下半身が丸裸にされ恵一の激しい愛撫は続く
指を出し入れされ、同時にクリを集中的になめ回される
『イクっ、イッちゃう、あぁっダメ、気持ちいぃよぉ』
グチュグチュと激しい愛撫の音の中、あたしはイカされた。
それでも恵一は愛撫をやめない
『だめっ、だめだめっ、続けてはやめてっ』
敏感になりすぎてドクドクしている秘部がビクンビクンと反応を見せる
『もっ、恵一まって、あっ、あぁぁ、あんっ』
優しく優しく這う暖かい舌の感覚がまたあたしを落としていく
恵一の頭をくしゃくしゃに撫で回しながら
『いやっ、あぁっまた、もうイクっ、あぁぁっ』
ビクンっと体が動き子宮が大きく数回ドキッ…ドキッと動く
クタクタになり荒々しく息を吐き出す
涙目のまま意識を失いかける
恵一があたしにゆっくり…ゆっくり…入ってきた
『んんっ…はぁっ…あっ…』
恵一があたしの中に入ったり…出たりを繰り返す
ヌチュッヌチュッという卑猥な音をたてながら、繰り返す。
恵一があたしにゆっくりキスをした
唇を愛おしむ様に、自分の唇と舌を使いあたしの唇に重ねる
頭がフワフワ、ぼぉ~っとしてきて…でも急に激しい快感に襲われた
『んっ…んあぁぁ、恵一、気持ちいっ……あぁぁ…』
「キツイ……凛…すっごい締まる…このキュゥッて締め付け…凛感じてるの?」
『うん…もぉ……なんか…イキそう……あぁぁっ…』
恵一がだんだん激しく突き上げてくる
「ああ…もぉっ、俺もイキそう……凛…すっごい気持ちいぃ」
正常位の体制から座位に変わる
より深く恵一が入ってくる
あたしは恵一に抱き着く形で自ら動く
恵一は乳首を激しく愛撫しながらクリを刺激してきた
『あぁぁぁっ、恵一ぃ、イッちゃうぅー』
「俺も、イク、凛、キスして、キスしながらイこう」
『んっ…』
激しく舌を絡ませながら、恵一はあたしをまた倒し正常位で思い切り突き上げながら二人で果てた
恵一は、あたしの横で息を切らしている
『大丈夫…?…』
「ん…大丈夫、気持ちよくて夢中になった」
そう言ってあたしを抱き寄せ恵一は
「凜…大好き…」
力いっぱい抱きしめてくれた。
汗でしっとりした体と恵一の筋肉質なゴツゴツした長細い腕に抱かれあたしは幸せだった。
『あたしも大好きだよ』
ちょっとだけ休んで、お風呂に入った。
こんな時間が続けばいいのに…
その夜…飽きることもなくお互い求めあった…
用意したコンドームはすぐになくなった……
もっと…もっと…
翌朝には身体が少し痛かった…
ずっと裸でいたから冷えた。
恵一はまだ隣で寝ていた。
あたしは恵一にピタッと身体を密着させ、また眠りについた…
目が覚めたのは…下半身への違和感からだった…
『んっ……何……』
「凜おはよ…目覚めた?クンニしたくて我慢できなくて💓」
そう言うとまた舐め始めた。
『んっ…💓はぁっ、あっ…』
食事も取らず、また昼過ぎまでお互いを貪り、出かけたのは14時を過ぎていた…
お昼から恵一と街に出かけた。
恵一が欲しいCDがあるというので買い物になった。
通り掛かったアクセサリー屋さんでシルバーのカワイイペアのリングを見た。
「あぁいうの欲しい?」
『カワイイと思うよぉ、見ちゃっただけ』
「そうなんだ、凜、俺ちょっとそこの靴屋さんみたい」
『いいよっ』
夕方までお互い行きたい店に立ち寄りながら歩いた
恵一との久々のデート
ずっと手をつないだまま歩いた。
18時過ぎ、電車に乗って帰ろうとした
その時だった
『恵一、大丈夫?』
「何言ってんの!凛が大丈夫かよ?」
『あたしは大丈夫だよ、気にしすぎだって』
「気まずかったろ?俺もなんか嫌だったしさ」
『ゴメンね…』
「何で凛が謝るの!?」
『元はと言えばあたしのせいだと思うし…』
「違う。それはない。もう気にしないで、ね?」
『ん……』
窓の外を流れる景色を見ながら…手は繋いだまま。
ガラガラと車両のドアが開いた
「酒井、ゴメンな。俺、彼女送って行きたいから次では降りないぞ。」
〔じゃぁ彼女さんの最寄り駅でいいから。話せますか?〕
「お前…何話すんだよ…いい加減に…」
『わかりました。次で降ります…話聞きます』
「凛、いいよ降りなくて」
『ううん、いい。降りよう』
間もなく電車は恵一と彼女の最寄り駅に着いた。
〔この間はすみませんでした。突然押しかけていきなり文句言っちゃって…ごめんなさい〕
彼女は深々と頭を下げた。
『あ、やっ、そんなやめて。全然気にしてないから』
「やめろよ、酒井。もういいって言ってんだし…」
〔私もあの時は何て言うかちょっと興奮状態で…落ち着いてちゃんと話したいって思ってて…〕
彼女がそう言い終えると、注文した飲み物が運ばれてきた。
あたしは下を向いたまま、彼女もそうだった。
また口を開いたのは酒井あゆみだった。
〔興奮状態だったけど…感じた事そのままは本音です…私が恵一君を好きなのも本当です…〕
『はい…』
〔恵一君が貴女の事を大好きで忘れられなくて、そんな気持ち知っていながら私は彼を大切にしたいと思いました。〕
『……』
酒井あゆみは下を向いていた顔をあげ、真っすぐにあたしを見た。
あたしも真っすぐ彼女を見た。
〔この間は怒鳴るようにして言ったけど、私はちゃんと恵一君が好きだと貴女に言いたくて。諦めるつもりはないし、恵一君の気持ちは知ってるので彼から返事が欲しいとかもありません…ただ、私は私の気持ちをちゃんと伝えたかった…〕
『はい…分かりました…』
「お前さ…その話は俺に直接すればいいじゃん。なんでわざわざ彼女巻き込むの?」
〔正々堂々とあなたが好きだと知ってもらいたかったから。陰でコソコソしたくなかったから〕
「俺は、凛が大好きで別れるつもりは微塵もない。前からそれだけはハッキリ言ってある。だから正々堂々とって気持ちもありがたいけど、これまでにして欲しい」
『恵一…もぅいいって…』
〔もぅいいって何ですか?〕
『え…だから、酒井さんの気持ちは分かったからって意味です…』
彼女がどんどん興奮状態になっていく
落ち着いて話す機会が欲しかった彼女は恵一から言われた言葉と、あたしが言った、もぅいいっての一言が気に入らなかったらしい
みるみる顔は赤く染まり、口元には力が入っているのが分かる
〔私は諦めないから。好きでいることは自由でしょ!?そんなの彼女だからって決められないよね!?〕
え…あたしは何も決めてないんだけど…
「落ち着けよ、お前言ってる事が支離滅裂だぞ。人を好きになるのは自由だし誰もそれを否定してないだろ。ただ、俺に対するお前の気持ちに俺は応えられない」
〔彼女がまた現れたからだね。せっかく少しは諦めついたかなって思ってたのに…あんたがタイミングよくあの日電車に乗ってたりしなかったら…〕
『……』
「俺ら帰るな。じゃぁな。」
〔私は諦めませんから。貴女の事だって認めてないし恵一君の事を好きな気持ちは私の方が全然上なんで〕
『酒井さんに認めてもらわなくていいよ。恵一があたし達のこと色々相談したから知ってるだろうけど、あたしは勝手で、恵一を振り回した。でもあたしの気持ちも誰にも負けないから。恵一を好きになってくれてありがとう。人を好きになるのは自由だよ』
〔…私は諦めないから、絶対。どうせまた別れるんだから〕
彼女の言葉を最後まで聞かず恵一の手を引いてお会計を済ませ店を出た。
駅に向かってスタスタ歩いた。
「凛、凛、ちょっと待って、止まって」
手を引っ張られる。
「凛っ。もうっ」
あたしは涙でボロボロだった。勢いよく歩いていて、あたしも興奮状態であったため涙が流れていた事に気付かなかった。
恵一が強くあたしを抱きしめた。
「こんなことになって本当にゴメン、凛ありがとう。嬉しかった」
あたしは恵一に黙って抱き着いていた。
酒井あゆみの気持ちも分かる。あたしが邪魔だろう。
大人気ない態度であたしも去ってしまったこと、今になって後悔した。
彼女があたしを許すとか許さないじゃないけど女の気持ちは複雑で、今はあたしが憎たらしくて仕方ないんだろう。
思い通りにいかない恋愛で極度の興奮状態になった彼女を見て、何故かあたしは、彼女が少し愛おしく思えた。
人を一生懸命に想う。
嫌われたくないのに嫌われてもいいような態度で好きを貫く
酒井あゆみは強い。
芯がしっかりした女性であるしあたしみたいにきっと簡単に別れを口にはしない
恵一はあたしを抱きしめてくれている。
あたしが泣いてるから。
あたしが強がっているように見えるから。
あたしを大事に思ってくれる恵一との恋愛は幸せだった。
今までで1番、あたしを一途に本気で思ってくれた人だった
その後も何度か酒井あゆみと街ですれ違った。
向こうが友達といるときは、あたしは知らない全くの他人からも睨まれた。
でもそれも思いの強さだと言い聞かせ気にしないようにした。
めぐや他の友達はあたしをひどく心配してくれた。
睨み返した所で無意味。何を言いたいのか分からない。争い事は苦手だ。見て見ぬ振りをしたい。でも気になる。
あたしと恵一の仲は相変わらずでデートも頻繁にしていた。
そして冬も終わり…
3月。
卒業の時がきた。
恵一と離れ離れになる時がきた。
卒業式は滞りなく終わり、友達や後輩、先生達との別れを惜しんだ。
あたしが過ごした3年間の短い間、様々な事があり出会いがありこれからは世代も関係ない社会へと旅立つ。
メソメソしてられない。
あたしはあたしでやるべきことをやる……
クラスでの打ち上げが夕方6時からだった。
それまで、めぐ達と最後の制服姿でプリクラを撮りに行くことになった。
友達が大勢集まりワイワイとプリクラを撮る機会がこの先もありますように…
県外へと出ていくあたしは強く願う。
卒業の打ち上げも盛大に、寂しさや新な志や未来の希望、不安を混ぜたまま、皆が別々の道へ歩き始めた。
帰り道、やけに淋しくなった。
ふと…バッグの中のポケベルがチカチカしていることに気付いた。
恵一からだった。
ウチアゲオワッタラアエナイ?
時間は21時だった。
公衆電話から恵一にメッセージを打った。
イマオワッタヨ、ドウシタライイ?
返事はすぐきた。
ムカエニイク。イマドコ?
恵一はすぐ迎えに来てくれた。
恵一はあたしを見付けると笑顔で駆け寄ってきた。
「ごめんね、疲れてるのに呼び出して」
恵一に抱き着いて……
なんの涙かわからない……
涙がポロポロとこぼれた。
声を殺して泣いた。
恵一は抱きしめたままあたしが泣き止むまで何も言わなかった
「卒業しちゃったね……」
うん、と無言で頷いた。
「凛はもうすぐ…いっちゃうんだね……」
恵一はあたしの頭を撫でながら言った
「寂しい……すごく。寂しいよ凛……」
自分で決めたことなのに涙が止まらない。
「凛がいっちゃうまで、一緒に過ごしたい。出来るだけ長く一緒にいて」
うん、とまた無言で頷いた。
「旅行行こうと思って。勝手だけど全部押さえた。」
『え…全部?』
「うん……迷惑だった…?」
『嬉しい、すごく嬉しい』
「良かった…楽しみにしててね!凛の卒業・就職祝いしようね!」
涙で汚くなった顔で何回も何回も恵一にキスをした。
こんな人いない…
恵一はあたしにとって今もそんな存在の人…
大好きだった……人…
え……
なんだろう…忘れ物でもしたのか…そう思いたかった。
息を切らせて酒井あゆみがやってきた。
〔こんにちは。大荷物で旅行でも行くんですか?〕
『あ…まぁ…』
〔卒業おめでとうございます〕
『あ…ありがとうございます…』
〔いつから向こうへ?〕
『3月末には…』
〔そうですか…じゃぁ恵一君と会えなくなりますね〕
『……』
〔彼に淋しい思いさせないで。あなたを大好きだから遠距離でも離れたくないんだと思います。でも彼を思うなら淋しい思いさせるくらいなら…彼を解放してあげてください〕
『解放って…』
〔可哀相で見てられないんです〕
『……電車乗らないの?もう来ますよ』
〔次でも間に合うので。恵一君と別れて下さい。恵一君は私が大事にします〕
『それは恵一が決める事だよ。あたし達のこと、これ以上あなたにガタガタ言われたくない。恵一を好きなのは勝手だけど、あたしと恵一は好き同士で付き合ってるから』
〔余計な事だと思います。でも…〕
『じゃぁ黙って。口出ししないで。あたしを睨んだり文句言うのは好きなだけしたらいい。でもあたしと恵一の関係まで入り込んでこないで。異常だよ。』
〔すみませんでした…〕
『あきらめないのは別に勝手にして。好きなのも。恵一に告白したいならしたらいい。恵一が全て決めること。あたしもあなたも恵一が決めた事にガタガタ言わないのがルールでしょ…もういいかな…あなたとは話したくない。旅行がつまらなくなるから』
〔でも、わた…〕
『うるさい。だから勝手にして。お節介だと思わない?叶わない恋をあたしのせいにしないでくれる?もう行って』
〔すみませんでした。出過ぎた真似をして…あなたが今まで何も言わなかったから…調子に乗りました。言う通りだと思いました…〕
『…ごめん。言い過ぎた…』
〔いえ、逆に言ってもらってよかった。私、あなたとちゃんと話したかったから。〕
『……』
〔恵一君と旅行楽しんできて下さい。さようなら〕
『さようなら』
あたしは怒りはなかった。
言葉はスラスラ出てきたけど、恵一が決めること。
でも、あたしも決めること。
そう思った。
酒井あゆみはまたホームに戻り、電車に乗って消えた。
ペコッと頭を下げたのであたしも下げた。
顔を上げると恵一がいた。
「凛、お待たせ!早かったね~誰に頭下げてたの?」
『恵一!おはよ!知り合いだよ、なんでもない!』
「そか、じゃ、行こう!」
『うん!あ、電車くるね!』
「お菓子と飲み物は買ってきたよ」
『ありがとう!さすが!楽しみだぁ!』
「来てくれてありがとう、凛」
『なんで、あたしこそありがとう!すごく嬉しい!楽しみ!』
「いい想い出出来るよ楽しもうね」
『うんっ』
電車に乗って遠くまで来た。
今まで来たことない位、3回乗り換えで3時間位で目的地に着いた。
ここに着くまで恵一とずっと手を繋いでいた。
ニコニコ話す恵一は目的地に着くまでどこに行くのか教えてくれなかった。
「凛、着いたよ」
ん~!と思い切り伸びをしながら周りを見渡すと海が広がっていた
『わぁぁ…』
「すごいよね、海は広いね」
『広いね、気持ちいいね、天気もよくてサイコーだね』
「今日泊まるとこはもっと感動するよ」
『楽しみ!本当にありがとう』
周りを見て誰もいないことを確認し、恵一にキスをした。
「ビックリしたぁ!はは」
『ありがとう恵一』
「うん」
ニコニコしながらあたしの頭を撫でてくれた
荷物をコインロッカーに預け、海まで歩いた。
手をつないで歩いた。
この時間が終わらなければいいのに。
今さらながら就職なんてしなきゃ良かったな…
地元を離れる事…
友達と離れる事…
家族と離れる事…
なにより
恵一と離れる事…
考える度に今ならまだ引き返せる。
そんな思いに揺らいでいた。
泣きそうになったけど今日は、恵一と目一杯旅行を楽しむんだ!って気持ちをいれかえた。
顔を上げたら目の前には果てしなく広いブルーの海だった。
「おおー!!」
『おおー!!』
「海だぁ!」
『波打際まで行ってみようよ』
「うん!凛、海は広いねぇ」
『うん!大きいねぇ』
「水冷たいけど裸足になってみる?」
『うんっ!もちろん!』
あたしと恵一は裸足になって手をつないで、ふくらはぎ位までの深さの位置まで歩いた。
水はとても冷たかった。
「凛!一緒に撮ろう!」
恵一はデジカメを持ってきていた。
何枚も何枚も二人の写真を撮った。
海で散々遊び、あたしと恵一は街を散策し、恵一が調べていたカフェでお茶をして、お土産屋さんをフラフラした。
夕方4時になり、今夜の宿泊先へ向かった。
ワクワクしてたまらなかった
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