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初めて愛した女性

レス101 HIT数 57077 あ+ あ-

仕事女( ♀ 0BNvnb )
10/12/17 19:18(更新日時)

私や経験豊富な友人の体験談に、フィクション、ノンフィクションを混ぜて恋愛小説を書きたいと思います。

初参加なので、下手で不快に思われる方はスルーでお願い致します。

一応、恋人達のすること全般をエッチで楽しめるように作るつもりです。

最後まで書けなかったらごめんなさいです🙇💦

No.1291352 10/04/07 07:30(スレ作成日時)

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No.1 10/04/07 07:48
仕事女 ( ♀ 0BNvnb )

リツコはその職場の人間関係が上手くいってない事に気付く。

転職した先の、出勤初日。


実家の店の経営が厳しいため、正社員で働ける会社を探していた。

焦って探して雰囲気まで読み取れなかった。


笑顔のない、ギスギスした職場。

「まずったなぁ~」


そんな中、ピカイチに冷酷な睨みを効かせる男がいる。

No.2 10/04/07 08:00
仕事女 ( ♀ 0BNvnb )

リツコの直属の上司の山根さん。


人事担当がついて回り、社員一人一人に顔合わせをしていく。

山根さんはギロリと少し斜め下から視線をあげて挨拶をする。

「宜しくお願い致します。」


🐰こ、こわい…

「宜しく、お願い致します。」

見渡して一番キツそうなのが、この人だ。

🐰私の上司…

最悪な第一印象だった。

No.3 10/04/07 19:12
仕事女 ( ♀ 0BNvnb )

最悪な第一印象よりもっと凄かったのが山根さんの言動。

彼は次から次へと毒を吐く。

誰に対しても態度は同じで、もちろん新人のリツコにも容赦ない。


🐰冷たい…そしてコワイ…


色白でスラリと背が高い痩せ型、言動に似合わず童顔。

年齢の話しになって驚いた。
リツコは25、山根さんは34。

🐰え⁉若く見える‼どう見ても同い年。

No.4 10/04/07 19:21
仕事女 ( ♀ 0BNvnb )

山根さんはリツコに仕事を教え始める。

ニコリともしない。

黙々と教える。


そしてまた毒を吐く。


「辞めるなら、仕事を後任に引き継いでから辞めてくれ。」


🐰きぃ~💢入ったばかりなのにぃ‼

「なんなんですか、それは‼」

リツコは内心、何て酷い事を言うんだとビックリしながらも、

笑い飛ばして突っ込んだ。

No.5 10/04/08 07:16
仕事女 ( ♀ 0BNvnb )

山根さんの反応が少しあった。

見るからにサディスティックな彼に対する返しとしてパンチがあったのか…


この時の事は山根さん自身も覚えていて、
「反応の仕方が面白かった。」と、後に表現している。


黙ったり、困ったり、普通の女性なら傷付くセリフをいなすどころか

打ち返して来たリツコに山根さんは興味を持った。

No.6 10/04/08 07:37
仕事女 ( ♀ 0BNvnb )

リツコには付き合って3年になる彼氏、順也がいる。


今時⁉


なのだが、リツコは家の関係で婿養子をとらねばならないと、幼少の頃より洗脳されてきた。

そのためだろう、中高生の時の派手な遊びも男関係も、両親は寛容だった。


妊娠だけはしてはならないと、性教育もしつこく受けた。


好き勝手遊ばせてもらったお陰か、二十歳を迎えた頃には落ち着いて、友達付き合いも大きく変化していた。

No.7 10/04/08 07:54
仕事女 ( ♀ 0BNvnb )

順也とは、派遣で働き始めた職場の友人がらみから始まった。

容姿は可もなく不可もなく、特に目立つ特徴はないが、悪くもない。至って普通の男性。


誠実で優しい、一緒に居て安心できる心地好さに、リツコは惹かれ、彼からのアプローチにも答えた。


チャラチャラした男、女友達の遊び、恋愛、同じく過去のリツコにも考えられない。

真面目な順也との付き合いに、リツコは何とも言えない幸福感で満たされていた。

No.8 10/04/08 08:11
仕事女 ( ♀ 0BNvnb )

順也の家は普通のサラリーマン。家を継ぐのうんぬんとの話もないし、彼は次男だ。


近々、婚約予定。

お互いの両親との挨拶も済ませており、婿養子にも抵抗がないようだ。


リツコ的には家系なんてどうでもいいが、親のため。

ただそれだけ。

順也とだって自由恋愛、何の不満もない。


🐰ただ、順也は本当にいいのだろうか…⁉

No.9 10/04/08 18:49
仕事女 ( ♀ 0BNvnb )

「ねぇ順也、お腹すいた。」

「はぁい。リツコは何食べたい⁉」

「順也は⁉」

「リツコの好きなものでイイヨ。」

🐰ドラマか‼

と思うほどベタな会話。

でも順也とリツコにとっては日常なのだ。

「たまには順也が決めてょ。」

「う~~ん、ラーメン。」

「リツコは和食キボー✌」


「じゃあ、和食にしよ。」

🐰おぃ‼ラーメン食べたいんじゃないのかい⁉



順也はこうしてリツコに合わせる。

リツコはそんな優しい順也にいつもキュンとする。

No.10 10/04/08 19:09
仕事女 ( ♀ 0BNvnb )

今日は順也が独り暮しをしている部屋におとまり。


彼女なら、手料理ぐらい作ってあげたいトコロだが、花嫁修行は停滞中。

苦手なだけだけど。


「デザート食べたいの‼」


「はぃはぃ。食べに行こ。」


「違う、今‼」


リツコは順也をベッドに押し付ける。

唇に何度も何度も軽いキスをして、順也を求めるディープキスをする。


「デザートフルコース欲しいの⁉」

順也がよりいっそう優しい声で囁く。

「うん、スィーツ順也のフランクフルト‼」

「露店かょ‼スィーツじゃないし。」

バカな会話をしながら、じゃれついて脱いで行く。

No.11 10/04/08 19:38
仕事女 ( ♀ 0BNvnb )

順也は優しくゆっくりとした深いキスをしながら、リツコをベッドに寝かせる。


リツコは順也に身を委ねて唇を味わう。

「んっ…んん…」


リツコの性感帯を知り尽くした順也の舌は、リツコの口の中でうごめく。


「もぅう…濡れ濡れ…」


順也は愛しいリツコを見てクスっと笑い、一つ一つ大切にキスをしていく。

No.12 10/04/09 07:25
仕事女 ( ♀ 0BNvnb )

「可愛い下着だね、リツコにぴったり」

順也は下着姿になったリツコの肌を手で撫でながら首筋を唇で愛撫する。

「あっ、ん。あはは…感じるぅ」

🐰当然✌
だって、いつも順也に気に入ってもらえるようなの買うんだもん☺💕


「でも、脱がしちゃう。」


順也は後ろからブラを外すと肩紐をかけたまま下から手を入れて胸を揉む。


「はぁあ…あ…あん」


順也の声、吐息、体温、腕…順也を全身で感じて、感じて…


「順也…大好き、愛してる。」

「リツコ、愛してるよ。」


二人はお互いを求めて肌で会話をしていく。

No.13 10/04/09 07:38
仕事女 ( ♀ 0BNvnb )

「昨日はお楽しみ⁉」

🐰え⁉

「何がですか⁉」

山根さんは唐突にリツコに話しかける。


「いや、ウキウキしてるように見えたから。」


🐰なんだぁ、お楽しみってセックスの事かと思っちゃったぁ。焦った‼


「はい、次はこれ。」


「わかりました。」


黙々と仕事。


「じゃあ、少し休憩しよう。」

「はい。」


山根さんは集中力が切れる前に休憩を入れてくれる。


「何がいい⁉」

「あ、なんでも」


「いいよ。好きなの押して。」

「有り難うございます。」


自販機の前のいつものやりとり。
山根さんと少しずつ話をするようになって、見えてきた事がある。

No.14 10/04/09 07:51
仕事女 ( ♀ 0BNvnb )

見た目に反して熱心だと言うこと。

見た目に反して言葉遣いは丁寧なこと。

見た目に反して…


🐰失礼だな、わたし‼


「ここ、跡ついてるみたい。気を付けた方がいいよ。」


山根さんがコーヒーを飲みながら自分の首を指差す。


🐰え⁉


「鏡、見てきたら⁉」

彼はニヤリと笑う。


🐰まさか、まさかっ


トイレ、トイレ、鏡、かがみ~‼



🐰ぎゃ―‼‼



制服のシャツ、ギリギリの所にキスマーク。
山根さんの座っている方だ。

首を傾げると見える。


🐰きぃ~‼💢順也めぇ~‼

No.15 10/04/09 08:14
仕事女 ( ♀ 0BNvnb )

前にもあった。

派遣先が変わった時にキスマーク。

順也から周りの男へのメッセージだ。

俺の女に手を出すな、と。


🐰それにしても…ここは露骨すぎるょ‼もぉ~‼


「有り難うございました。なんか、虫にさされたみたいで。」

顔から火が出そうだが席に戻り、冷静を装って山根さんにお礼と言い逃れ⁉をしてみた。


「随分、大きな虫だね。」

「……………」

またしても、ニヤリ。



🐰ぎゃ~‼
こいつ絶対にドSだぁ~😱💦


「愛されてるんだね。さ、気持ち切り替えて仕事するよ。」


「はい。お願いします。」


🐰ん⁉

🐰あら⁉


羨ましいよ、と聞こえたそのセリフ。


何だか、耳に残った。

No.16 10/04/09 18:58
仕事女 ( ♀ 0BNvnb )

ギスギスした会社でも関係なぃ、とは言わないが。

とにかくリツコの最優先は稼ぐ事だった。


🐰固定資産税払うぞ~‼


それは自社ビルの税金。

ビルと言っても、たいした大きさではない。
自宅がに毛が生えた程度。

三階建て。一階は店舗。家賃収入はあるが、マイナスもある。

何でこんなの建てちゃったのか…
今さら言っても仕方ない。


とにかく、稼ぐのだ‼


元々、人見知りをしないリツコは、すぐに職場の人達とも仲良くなった。


毒吐きの山根さんとも。


彼の厳しいオーダーにも答え、いつしか頼りにされる存在になていった。

No.17 10/04/09 19:28
仕事女 ( ♀ 0BNvnb )

「お主、なかなか辞めないのぅ。根性あるな。誉めてツカワス。」


「はっ‼有り難うございます。って、なんなんすか、感じ悪い‼」


「ははは。ノリツッコミしてる。」


山根さんはお殿様のよう。
ワガママ放題。
でも、何気に頼られている。

歯に絹着せぬ言動にヒヤリとする事もあるが、仕事はいたって真面目だ。



ある時、気付いた。


「お主」と呼ぶのはリツコだけであることに。


🐰沼の主、とかみたいでチョットやだなぁ…

No.18 10/04/10 08:31
仕事女 ( ♀ 0BNvnb )

入社後、半年ほど経って仕事もだいぶ覚えてラクになってきた。

雰囲気も馴染んでみれば、そう悪くも感じなくなってきた。

とにかく稼ぐ‼

だけではなく、先輩達とお茶やお酒の付き合いもさせてもらうようになった。



順也との婚約を落ち着いて考えた。


借金や婿養子のことも含めて、もう一度、順也の意思を確認したい。

No.19 10/04/12 07:13
仕事女 ( ♀ 0BNvnb )

彼を思って選択肢を用意したつもりだった。


何が最良なのか、判断ができなかったから。


彼の将来を思えばこそ…





けれど、リツコは酷く後悔する。

No.20 10/04/12 07:43
仕事女 ( ♀ 0BNvnb )

その日もリツコは順也の部屋に来ていた。


いつもと違うのは、手料理で順也を迎えようと、せっせと慣れない手付きで奮闘していたこと。


「もう、着く⁉、あ~…」


順也からのメールを見て焦る。

簡単なものしか出来ていない。リツコは自分の腕のなさを痛感する。


インターホンがなり、リツコは忙しく順也を迎える。


「おかえりぃ🙌⤴」


「お、いいね奥さん、ただいま。」


順也は珍しいリツコのエプロン姿を嬉しそうに眺めると、軽くキスをして抱きしめる。


「ほら、テーブルワインだけど、美味しそうなの買って来たよ。」


「有り難う‼本当に美味しいかなぁ⁉」


「勘だよ、勘。当たりゃあラッキー🍀主役はリツコの料理だから」


🐰ひぇ~‼主役、無理くさい‼

「あんのぉ~…」


「ん⁉」


「おつまみとサラダしか出来てなくて…」


「何⁉充分だよ。乾杯しよ。」

順也は二人で買った安物のワイングラスを用意する。

No.21 10/04/13 08:09
仕事女 ( ♀ 0BNvnb )

コルクもない、回して開けるタイプのテーブルワイン。


そんな安物の情熱の赤い液体は、幸せイッパイの笑みで乾杯した二人に揺らされて美しく輝く。


気のせいか、物静かな順也のテンションが異様に高い。


「来月で付き合って、まる4年になるね。」

順也が懐かしむように言う。



「本当だ、早いね‼ケンカもお出掛けもしまくったね‼」


リツコはいつもの様にしゃいで言う。

No.22 10/04/13 18:58
仕事女 ( ♀ 0BNvnb )

「リツコ、お願いがある。」


「え⁉順也も⁉」


「え⁉」

順也がキョトンとする。


「リツコのお願いって何⁉」


「いいよ、たまには順也から。」

「なんだよ、らしくない。いつもなら、もう勝手にお願いしてるだろ。」


「う~ん……そうだっけ⁉」


そう言われると、どんだけ自分勝手かと申し訳なくなった。


「じゃ、じゃあさ、ジャンケンしようょ‼」


🐰え~~‼
我が提案ながらベタ過ぎるぅ😱💦


「いいよ。」


順也が少年のように目をキラキラさせてやる気、満々。


🐰こうなりゃ、勝つぜっ✌

No.23 10/04/13 19:06
仕事女 ( ♀ 0BNvnb )

ガックシ…



🐰あぁ…何故わたしは本当に勝ってしまったのか…


リツコは順也に勝って、先にお願いを言う事になった。



🐰う~ん、気が重い。



「あのね、」


「うん。」



🐰あ、また目をキラキラさせてる…可愛い…


「う~んとね、」



「うん。」



「え~…っとね、」



「うん⁉」

No.24 10/04/13 19:12
仕事女 ( ♀ 0BNvnb )

「あ゛~…」

アホ面になるリツコ。

「こらっ。」


順也のツッコミが入った。


「すんまへん。真面目にやりやす。」

「はい。宜しく。」




リツコは少し咳払いをして話し始める。

「あのね……順也に確認したいんだ。」



「何を⁉」

No.25 10/04/14 18:54
仕事女 ( ♀ 0BNvnb )

「ほら、あの、結婚のこと…

婿養子のこと…

家の借金のこと…」



「うん。解ってるよ。」



「じゃなくて。」




「じゃなくて⁉」




「本当に順也はこのまま私と結婚して、いいのかってこと。」





「……………………」



順也は沈黙の後で短くため息をつく。

No.26 10/04/19 18:54
仕事女 ( ♀ 0BNvnb )

「俺では不安⁉」




ドキっとした。

いや、ハッとしたのか…

確かに不安はあった。



順也はとても優しい。

私にはもったいないくらいの男性。


優しさと紙一重に、優柔不断ではあるけれど。

プライベートはいつも私を優先にして、私のクダラナイ話や愚痴も聞き、私のワガママを聞き、借金を抱えた店を背負った我が家の婿養子になると言う。


考えられないお人好しだ。


不安…



順也は嫌な思いをしても我慢して、だんだん私から、私達から離れていくのか不安。


愛しい順也を幸せにしてあげる自信がない。


他の女性、普通に結婚ができて借金がない人なんて、いくらでもいるのに。



「不安だょ…。順也が原因じゃなくて、自分に自信がないから。」

No.27 10/04/20 08:07
仕事女 ( ♀ 0BNvnb )

ゆっくりと話した。

リツコの今、思っていることを。



順也は黙って聞いていた。




順也をとても愛していること。


現時点での結婚は、順也を犠牲にしてしまうリスクが大きいこと。


順也の幸せを考えると、不安でたまらなくなること。

No.28 10/04/21 08:09
仕事女 ( ♀ 0BNvnb )

「よくよく考えてみると、最初から虫のいい話なんだもん。借金返してからにしろってね。普通さ。」


自分に突っ込むリツコ。



順也はそんなリツコを複雑な、しかし愛しい者を見る瞳で見つめ、


「そんな風に考えてたんだ…」

No.29 10/04/21 19:18
仕事女 ( ♀ 0BNvnb )

リツコの隣に座り直すと、順也は優しく抱き寄せてキスをした。


🐰バレてたか…


涙が溢れないように我慢していたが順也にはバレバレだった。

一気に涙が溢れ出す。



順也は何も言わずに優しく強くリツコを抱きしめる。



わぁわぁとなくリツコの声と乱れる呼吸、何かを言おうとしても上手く表現できない言葉の断片が部屋に響く。


髪を撫で、肩を撫で…


順也がリツコを落ち着かせようとして、どれくらい経っただろう…



「はい、ティッシュ。」


「有り難う…」


感動しぃで泣き虫なリツコに、いつも手渡すみたいに順也はティッシュボックスを渡す。


「涙は映画で流しなさい。」

No.30 10/04/22 19:03
仕事女 ( ♀ 0BNvnb )

「ぶっ」

リツコは思わず吹き出してしまった。



「あっ、今度は笑った。忙しいねぇ、リツコは。」

順也は明るい調子で話し出す。



「もぅ‼何だょお~‼」


悲しいやら、恥ずかしいやら訳が判らなくなってリツコは順也の首に飛び付く。


「血をよこせぇ~👿💕」

ふざけて首筋に噛み付いた。


「いやだぁ~アホ血鬼になるぅ~‼」


「チョット、何それ‼」


二人はいつもみたいにじゃれ始める。


キスをして、キスをして…
たくさんして。



「いやな思いさせてゴメンね、順也。」

リツコは愛しい順也に抱きつく。

No.31 10/05/06 19:17
仕事女 ( ♀ 0BNvnb )

それでも、順也は誤魔化さずに答えてくれた。


「リツコが俺を心配してくれる気持ちも踏まえて、もう一度考えてみるよ、結婚のこと。」

また涙が溢れて、言葉もなく頷くリツコ。


「解ってるよ。リツコの気持ちは。」


順也はいつになく情熱的なキスをし始める。


ラグの上にペタンと座っているのに、リツコは腰が抜けそうな感覚に襲われる。


少し離した唇から、思わず声が漏れる。


「あぁ、順也、順也ぁ‼」

No.32 10/05/28 07:35
仕事女 ( ♀ 0BNvnb )

>> 31 愛しくて愛しくて、考えすぎて不安になる。

お互い、目の前に居るのに。


愛する気持ちも思いやる気持ちも本物なのに。

変に…、いや、だからか…



順也の優しい体温にまどろみながらリツコは自分の素直な気持ちも確認する。


🐰私を離さないで…


声に出せない気持ちがリツコの身体を伝って順也にキスを返す。

腕をまわしてしがみつくように引き寄せる。


二人はお互いを、まるで食べるように愛撫していく。

No.33 10/06/02 19:21
仕事女 ( ♀ 0BNvnb )

🐰順也を愛している事だけでもいいから伝えたい…


吐き出せないで隠る気持ちが涙に、汗になるよう。

順也を引き寄せた手と腕が汗ばむ。



順也は熱っぽく濡れた唇で涙を優しくぬぐう。




「泣かないで…」




「…うん」





🐰順也を傷付けた。

…私が弱いばっかりに。

…彼を信じてなかったの⁉

…私は何を確かめたかったの⁉
…彼を愛しているんでしょ⁉



……何なの、私。

No.34 10/06/02 19:51
仕事女 ( ♀ 0BNvnb )

…後悔して欲しくない。

順也の大切な未来。



でも、今。
私は後悔をした。



くだらない、お願い。


🐰リツコの馬鹿…




もう一度、私との結婚を考えて欲しい、なんて。



真面目な順也は付き合っている間ずっと考えてくれていただろうに…

自分の気持ちの整理ができないからって、順也に余計な事を言って傷付けた。



🐰リツコのアホ‼

No.35 10/06/03 19:06
仕事女 ( ♀ 0BNvnb )

「お疲れ⁉」


いつもの休憩中、コーヒーを飲みながら山根さんが自分の目元を指差す。


「いえ…」


泣き腫らしたやら、寝不足やらでリツコの目は大変な事になっていた。

誤魔化すため濃いめにしたアイメイクは、仲良しの女性と山根さんには気づかれた。


昨日はいつもの感じからのセックスにはならなかった。


急にテンションが下がって、順也には散々申し訳ない事をした。

それと言うのも、偶然、順也の部屋にあったクレジットカードの明細を見てしまったから。

No.36 10/06/03 19:17
仕事女 ( ♀ 0BNvnb )

地味に地味に、倹約家の順也。

料理前、片付けをしていた時に、ダイレクトメールの山を端に寄せたらカード会社の明細が見えた。


桁が違うのでビックリしたが、見てはいけないと、すぐに隠した。


順也が帰宅して、自分がグダグダ泣いて…


少しの間、忘れていた。




ギュッと抱きしめてくれた順也の肩の向こうに小さな紙袋が見えた。


順也の鞄の裏に隠されている。


ちらりと見えた、ブランドロゴ。

No.37 10/06/03 19:21
仕事女 ( ♀ 0BNvnb )

リツコの大好きなブランド。



あの桁違いの利用明細。



小さな紙袋。




……指輪。





婚約指輪。

No.38 10/06/09 07:32
仕事女 ( ♀ 0BNvnb )

数ヵ月前、順也が指輪を買おうと連れていってくれたけど、決められずに帰って来た。


正直、欲しいけれど、婚約指輪って無駄だと思ったから。


結婚指輪とセットでできるタイプの邪魔にならないデザインで好みのものがあった。


…値段を見て引いた。


順也がなになにと寄って来たが、すぐに他の物に目をやった。


過去に気に入って試した指輪をプレゼントしてくれた事がある。

欲しいのかと聞かれ、いらないと答えたのに。


後日、順也が一人でショップに行って買ってきたのだ。

リツコが号泣して喜んだのは言うまでもない。


自分の物は贅沢一つしない順也。
リツコを喜ばせるイベントには大枚をはたく。


そんな順也だから。

No.39 10/06/09 08:21
仕事女 ( ♀ 0BNvnb )

小さな紙袋を見て胸が痛くなった。


あの時と同じ、小さな紙袋。




指輪を渡して…


改めてプロポーズを…


…してくれるするはずだったんだろう。



上機嫌の順也の笑顔、声がリツコの脳天を直撃する。

繰り返すシーン。


耳の奧にに響く声…

No.40 10/06/09 08:34
仕事女 ( ♀ 0BNvnb )

「あっ‼」



山根さんの短く叫ぶ声が聞こえた。



一瞬意識が遠のいて、気が付くと山根さんの腕に支えられていた。



「しゃがんでて。」

山根さんはリツコをその場にしゃがませると素早く近くの電話で誰かを呼び出す。


ほどなくして、仲良しのケイちゃんか来た。
息をあげてバタバタと急いで来てくれた。


「りっちゃん‼どうしたの、大丈夫⁉」


「少し疲れているんだろう。少し休んだら、今日は帰った方がいい。」


冷静な山根さん。



🐰恥ずかしい所を見られちゃったなぁ…

No.41 10/06/11 07:54
仕事女 ( ♀ 0BNvnb )

帰った方がいいと言われても気になる仕事がある。


リツコは休憩室のソファで少し休ませてもらい、すぐに席に戻った。


「大丈夫なの⁉」


「あ、はい。大丈夫です。ご迷惑をおかけして、すみませんでした。」


「別に、何も。」

特に心配している風にも見えない山根さんの表情と言動。


ペンっとリツコの額を何かで叩き、机の上におく。


「⁉」


ビニール袋を丸めて、ゴミ箱に捨てると自分のパソコンに向きなおして仕事を始める。

山根さんがリツコの机の上に置いたのは…


飲み物と、頭すっきりチョコパン。


🐰……
あれか、ドクター○松の頭が良くなるパンのパチもんかぃ‼

き~‼💢



反応を見た山根さんがニヤリとしたのを、リツコは見逃さなかった。

No.42 10/06/11 08:13
仕事女 ( ♀ 0BNvnb )

「え⁉そうなの⁉」


「うん」


すっかり元気になったリツコは帰りにケイとお茶をしていた。


昼間のパンはリツコが休んでいる間に山根さんがコンビニで買ってきたんだそう。

多分、気になって帰らないと思うからエネルギー補給にと気を使って。


それにしてもあの、メッセージ性の高いパンのチョイス。


「どうせ私は馬鹿ですょお‼」

「⁉…何むくれてるのリツコ⁉」

だんだん解って来た。


怒りパワーで元気にさせようと言う山根さんのやり方。


あんなに華奢なのに、精神は体育会系なのか…

No.43 10/06/11 19:09
仕事女 ( ♀ 0BNvnb )

>> 42 「…系、ではない。本当にそうなのだ。悪いか。」


「いえ…」


翌日、山根さんにスポーツをやっていたか聞いたが機嫌が悪い。

🐰聞き方に問題あったかな…
「体育会系ですか⁉」の「系」に反応したし。

「失礼しました。」


「うむ。細いからって馬鹿にするでないぞ。」



「馬鹿になんかしてません‼」

🐰…していないけど、華奢だよなぁ…



何だかちょっと、面白い。

No.44 10/06/11 19:30
仕事女 ( ♀ 0BNvnb )

あれから、



順也と会って話をした夜から、半月くらい経った。



順也からのメール、電話着信が徐々に増え始めた。




🐰リツコも会いたいってば、
可愛い順也…💘
ちょっとエッチなメール送っちゃおうかなぁ~✌



別に距離を置いていた訳でもないが、お互い仕事ですれ違いが続いていた。



スケジュール帳を広げながら会う日を決めようとするが、なかなか予定が合わない。


順也はしょんぼりとした声で、また確認して電話すると切った。

No.45 10/06/17 19:12
仕事女 ( ♀ 0BNvnb )

ケイちゃん、遠藤さん、山根さん、私、で飲みに行くことになった。

遠藤さんはケイちゃん狙い。
丸出しなんだよね。


仲良しのケイちゃんとはよく飲みに行くけど、2対2で何だか合コンみたい。

2人の微妙な駆引きが楽しみで、ただの会社帰りの飲みなのに、何だかウキウキ。


🐰妄想合コン…💘えへへ~


順也と付き合い始めてから合コンは行ってなかった。


🐰いいわぁ~恋せよオトメン‼(イマイチ⁉)

1人、ノリツッコミで、ニヤつくリツコ。


「そんなに嬉しいのか。」

山根さんの低くサディスティックな声が割って入る。


「それなりに。」


ちょっと不機嫌に返すと、山根さんが指を指して言った。

典型的な草食系男子の遠藤さんと横に並んで歩くケイちゃん。
後ろ姿の2人を交互に指差して。

「あれだろ、あれ‼」


ニヤリと意地悪そうに笑う。

No.46 10/06/17 19:36
仕事女 ( ♀ 0BNvnb )

「ぶ‼…はっはっ‼ははは‼」

堪えきれずに吹き出した。
口元を手で隠しながらリツコはバカ笑い。

イジワル山根さんも大きな声で笑う。


笑い声に気が付いて振り向いた二人も楽しそうに笑う。


「何、大爆笑してんのリツコ‼笑い上戸だなぁ。」

いつものケイちゃん。

「何、何⁉楽しそうじゃん。」

明らかにご機嫌な遠藤さん。



🐰うが~‼こそばゆい‼
頑張れ、遠藤さん‼



ふと、山根さんと目が合った。




山根さんは満足そうに、



フンと鼻で笑った。

偉そうに腕を組ながら。

No.47 10/06/21 08:12
仕事女 ( ♀ 0BNvnb )

遠藤さんは一生懸命にケイちゃんに話しかけて、Loveモード全開。それをニヤニヤと見学するリツコと山根さん。


「りっ…ちぁ~~~ん⁉」


ケイちゃんの不気味な声がリツコの笑顔を奪う。

トイレに立った遠藤さんを見送ってすかさず襟首を捕まれた感覚だ。

「へい、へいへい。なんでやしょ⁉」

「そこの二人、アカラサマに見学し過ぎ‼」


ケイちゃんが怒ると山根さんが片方の口の端を少し上げて一言。


「ボランティアだ、遠藤を宜しく頼む。」



何の遠慮も躊躇もなく言い放った山根さんに口を開けたケイちゃんだったが、すかさず言い返す。


「もぅ‼私、帰るからね‼」


「まぁまぁ、落ち着きたまえ。」

それでも茶化した調子の山根さん。


🐰…帰る‼と言い切らない微妙さがいいね、ケイちゃん☺✨


今回の飲みは、
遠藤さんを可愛がる山根さんが言い出した。


社内でも判りやすく「ケイちゃん大好き‼」な遠藤さんへのプレゼント🎁


今月、誕生日だそうだ。

No.48 10/06/21 19:00
仕事女 ( ♀ 0BNvnb )

「ん⁉誰かのケータイ、鳴ってるよ。」


山根さんが言った。


マナーモードにしているリツコのケータイだった。


店の騒がしさに全然気づかなかった。



🐰あ、順也からだ。

え⁉





リツコは画面を見て




ギョッとした。

No.49 10/06/21 19:09
仕事女 ( ♀ 0BNvnb )

着信あり…






過ぎる‼‼



会社が終わって飲み始めてから約1時間、着信履歴は順也からばかり、24件。


メールも8件。


尋常じゃない‼





心臓がバクバクする。



嫌な予感がして、慌てて店を出てかけ直した。

No.50 10/06/22 07:24
仕事女 ( ♀ 0BNvnb )

着歴からソッコー発信‼





「もしもし、順也⁉」




「あ、リツコ‼やっと繋がった‼」

鳴るかならないかのコールで順也はすぐに出た。




「どしたの、何かあったの⁉」

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