泚目の話題
いじめなのか本圓に息子が悪いのか
私が悪いのですが、新入瀟員に腹が立ちたす。
䜎収入だけど優しくお暎力(DV)をしない旊那ならいい

🌻小説・14の魂🌻

レス215 HIT数 17894 あ+ あ-

ピペ ♀ YaJIh 
23/07/23 09:37(曎新日時)

ご芧いただき、ありがずうございたす☺この物語は、あらかじめ決められた、14人の登堎人物たち(1目に掲茉)によっお、繰り広げられたす。圹名以倖は䜕も決たっおおりたせん。

メンバヌの皆さん、読んでくださる方ずもに、人物たちのキャラクタヌができあがる様子を楜しんでいただけるず幞いです🐀💕

※ただいたメンバヌ募集は〆切っおおりたす。

※盞談やご意芋などは、「小説③メン募・盞談🐀💚」たでお願いしたす✚

それでは、はじたりはじたり  

No.1160948 09/06/27 23:29(スレ䜜成日時)

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䞻のみ
付箋

No.1 09/06/27 23:34
ピペ ( ♀ YaJIh )

【登堎人物玹介】

真壁韍平

綟野真理

バむオレット矢島

鳥を連れた少女

霧島恭介

䞭䞞矎姫

盲目の少幎(少女)

老人

猫

青幎

ガブリ゚ル

効

゚スパヌ塔子

䞍良少女A

(順䞍同)

No.2 09/06/28 00:03
ピペ ( ♀ YaJIh )

《第䞀堎 䞍幞な》

 䞍運ずいうのは、埀々にしお、぀づけざたにやっおくるものだ。

今朝の占いじゃ倩秀座が最䞋䜍だったし、

女房は掗い立おのコック服にコヌヒヌをこがした。

店に来る途䞭、車のフロントガラスには鳩にフンを萜ずされた。

しかし、い぀ものように店に足を螏み入れるず、さらなる䞍運の幕開けが、おれを埅っおいたのだった。

「どうしお猫を連れおきちゃいけないの」

入り口で金切り声が聞こえる。

No.3 09/06/28 18:28
笑い袋 ( 40代 ♂ xcYYh )

>> 2 入り口に向かっおドアを開けたずたん 


「むテッ」


飛んで来た猫に顔を匕っ掻かれた。


たったく、぀いおない時はずこずん、぀いおない。


が 䟋倖もあるらしい。


「すみたせんうちのタマ゚が、ここの䞀番高い料理をお願いしたす。」


絆創膏を顔に貌っお、出おくるず飌い䞻が平謝りしおきた。


さすがに、女房には、爆笑されたが。

No.4 09/06/28 19:56
りん ( 40代 ♀ wGqSh )

この店のシェフの名は、
霧島恭平――。

料理の腕は超䞀流ながら、その人間性には誰もがず思う異端児だ。

厚房に戻った恭平は、䞀人ごちた。
「ったく、なんで俺が猫なんかに料理を䜜らなきゃならないんだ。しかも䞀番高い料理っお簡単に蚀うが、鉄板の䞊でいっおる肉料理をあの猫ちゃんが食べられるのかね」

熱いものは熱いうちに、
冷たいものは冷たいうちずいうスタンスの圌に、このオヌダヌは蚱しがたい。




ああ、今日は䜕おいう日なんだチクショり。

あ、そうだ、タマ゚ずやらの猫ちゃんぞスペシャルメニュヌを出しおやろう  

高くお矎味いや぀をな。

そしお恭平が厚房に立ち、料理を䜜り始めるず厚房の空気がピンず匵り詰めた。

No.5 09/06/28 22:57
なおさん ( 40代 ♂ eqOJh )

>> 4 恭平は たず鰹節ず鯖節を 甚意した 厚切りにした物を 鍋に入れお火に掛けた

最高のスヌプを 䜜っおやるよ 

恭平は 䞀切味付けを せず 魚のダシだけのスヌプを䜜っお出しおきた 熱々のスヌプを

さあ タマ゚ちゃん 飲んでちょうだい どうしたの

女性が スヌプを飲んで芋せお 激怒した

䜕よ このスヌプ 䜕の味も しないじゃ無い

恭平は 厚房から出おくるず 猫に 牛の骚を 䞎えた

あなた 䜕やっおるの 犬じゃ無いのよ

恭平は ゆっくり話出した

奥さん 本圓に飌い䞻なのか 猫が猫舌なのは 子どもでも知っおるよ 猫の舌は ざらざらしおお 骚に付いた小さな肉を こ削ぎ取るんだよ だいたい 塩からいスヌプなんか 飲むかよ 倧事な猫なら 逌ぐらい 自分で 甚意しな

な、なんお倱瀌な店なの 垰らせおもらいたす

そのたた 猫を鷲づかみにするず 怒りながら 垰っおしたった

ぞっ ざたあみろ

こらっ 真面目に仕事しろ

恭平は 嫁に倧根で ど぀かれた。

次の方 どうぞ

No.6 09/06/29 03:08
カルファヌレ ( Uc1Hh )

>> 5 恭平は殎られた頭をさすりさすり、厚房に戻った。
そしお、ため息を付くべく、深々ず息を吞い蟌む。
だが次の瞬間、恭平はそのたたはっず息を止めた。

「ハァヌ ツむテナむ」
ヘリりムガスを吞ったかのような甲高い声が、恭平のかわりにそう蚀ったのだ。
恭平はぎょっずしお、厚房を芋回した。

なんず、黒玫色の小鳥が、ボりルなどを眮いた棚にずたっおいるではないか。

「なっ」恭平は驚きず怒りから、舌を噛みそうになる。「なんでこんなずころに九官鳥が」
さっきの猫ずいい、ここは動物園じゃないんだぞ
内心そう思いながら、恭平は手を突き出しお、そうっず九官鳥に迫った。

「サむコり ノ スヌプ ヒヒヒ」
「うるさい 䞍衛生だ、出お行け」
恭平は怒鳎っお飛び掛ったが、䞡手は空を掎んでいた。
九官鳥はぱっず飛び立ち、恭平の頭䞊を越えた。
「あっ」

恭平は小鳥を芋䞊げ、その姿を远っお振り返った。
そしお、厚房の入り口に、九官鳥を肩に乗せた少女の姿を発芋し、再びぎょっずしたのである。

No.7 09/06/29 16:01
I'key ( 10代 ♂ GDnM )

>> 6 䜕故恭介がぎょっずしたのかず蚀えば、少女の持぀比喩し難い印象からだった。
背䞈はただ小孊生だった。真っ癜のワンピヌスの䞊に真っ黒の薄手のカヌディガンを重ねおいる。
少女の肩に九官鳥は倧きすぎた。身じろぎする鳥に遠近感が狂う。
ストレヌトのロングヘアは倜闇を切り出しかの劂く挆黒だ。巊手の小さな窓から射し蟌む陜光を反射しお完璧な倩䜿の茪を描く。
䞀方の肌はたるで倪陜を知らない癜さで、透けおしたいそうなその色は病的にさえ芋える。
培底的  人工物を思わせる培底的なモノトヌンの少女は、唯䞀圩床を持った深い鳶色の瞳で恭介を芋据えおいた。
奜意も敵意もない、無衚情。
䞍気味だ。普段は匷気の恭介も少しばかりたじろいだ。
その䞊、圓然ながら恭介は子䟛が苊手だった。
今日はやはり、぀いおない。
「  䜕だお嬢ちゃん、䞀人か」
流石に子䟛に暎蚀を吐くわけにもいかず、恭介は今にも肩を離陞しそうな九官鳥に苛立ちながら、ぎこちなく話掛けた。
少女は返事をせず九官鳥を撫でる。
そしおふず、思い出したように唯䞀蚀、こう呟いた。
「貎方  幞せ」





人物名を蚭定通り『恭平』➡『恭介』ず修正したした。読者の皆様倱瀌したした。

No.8 09/06/29 18:38
麗 ( hXqgi )

>> 7 「幞せかっお」

たたも、突拍子も無い蚀葉に驚き、恭介は蚀いながら少女を芋぀めた。


九官鳥を撫でたたた、芖線を合わそうずもせず少女は続けた。

「うん。 幞せっお聞いおるの」



盞手は少女だ、䞍幞か幞せか真面目に答えた所で、䜕も倉わりはしないだろう 

「幞せな気分には、党くなれないね。さっきから苛々しっぱなしだよお嬢ちゃん、甚が無いならさっさず垰っおくれないかな」

恭介は、面倒臭そうに適圓に答えたその時 

バサバサッ

少女の肩から九官鳥が矜ばたき、倩井を倧きく数回飛び回り、少女の肩に飛び乗りたた

「トヌコトヌコ」

甲高い声をあげた。

少女は恭介に人差し指を向けた。

芖線を蟿るず、歳はただ二十歳くらいだろうか 

矎しい少女がもう䞀人恭介のすぐ埌ろに立っおいた。

「き、君い぀の間に」

九官鳥を目で远った時にでも入っお来たのか

目を癜黒させお驚く恭介に少女はポツリず䞀蚀 

「ふふ  あたし塔子、おじさんよろしくね」

少し倧人びた䞊目䜿いで恭介を芋぀めた。

No.9 09/06/30 00:30
ピペ ( ♀ YaJIh )

>> 8 恭介のギョッずした様子に、塔子は悪戯っぜい笑みを浮かべた。

「あたしね 動物の心が分かるんです」

「䜕を蚀っおるだいたいどこから厚房に入っおきた」

「さっきの䞉毛猫 真理っお飌い䞻に䞉回捚おられおる。高玚なご飯を残したからだっお。あなたに感謝しおたわ」

(あの状況を芋おいれば誰だっお蚀える

ず劄想女に付き合っおる暇はない、ずばかりに、恭介は二人の背を抌しお勝手口の戞を開けた。

するず、

ニャヌ

先ほどの猫が、䞀䞇円札を口からヒラリず萜ずし、走り去っおいった。

No.10 09/06/30 11:33
笑い袋 ( 40代 ♂ xcYYh )

>> 9 思わず、埌退り戞を閉めた。

有り埗ない
頭を抱えお振り返るず


「だから、蚀った通りでしょ。はい忘れ物」
ず、䞀䞇円札を差し出した。

えビックリしお 腰が抜けた。


確かに倖ぞ出したはず なのに
なんで

それも二人ずも おたけに九官鳥たで


「バヌカ、バヌカ」

九官鳥が頭の䞊で隒いでいる。

塔子は恭介に語り始めた 

No.11 09/06/30 13:11
りん ( 40代 ♀ wGqSh )

>> 10 「あのね、動物だっお人間ず同じ”心”をもっおいるのよ。ただ動物によっおは忘れっぜい子もいるけどね」ず塔子はいった。

恭介は塔子の蚀っおる事が、ようやく理解できたようだ。
 他人に理解されにくい恭介にずっお、塔子は遥か䞊をいっおるようだ  
逆に塔子にしおみれば、恭介が倉わっおいるこずなど党く意に介さず、圓たり前のように接する事ができるのだ。


恭介は譊戒し぀぀も、塔子の噚の倧きさを感じ取っおいた。

「それで」
恭介はいった。
「幞せかどうかなんかあんたに関係があるのか」



「あるわよ、圓然でしょ」 塔子が口を開くず、次の瞬間信じられない事が起こった。


  こえる  聞こえるでしょ



わたしは動物ず心を繋げる事ができるの。あなたに幞せになっおもらわなきゃならない理由があるのよ


「なんでだ」
恭介がようやく蚀葉を発するず、塔子は驚くべき真実を口にした。




「この九官鳥はね、あなたが幞せになっおくれないず身䜓をなくしおしたうの。芁するに死んじゃうっおこず――」

No.12 09/06/30 18:59
なおさん ( 40代 ♂ eqOJh )

>> 11 少女が、口をはさむ

お姉ちゃん、この人䜕も芚えお無いよ

あんたは、黙っおな。この九官鳥は、おじさんが昔飌っおた九官鳥だよ。籠から飛び出した埌、自由を求めお田舎に行ったんだよ。そこで䜜物を荒らすカラスに間違われ、猟銃に打たれお亡くなったんだよ。あんたに恩返しもできずに亡くなるのは、嫌だっおやっず神様から蚱しを貰っお再生したんだよ、矛盟しおるけど、あんたの幞せを芋届けおから消えたいっお

No.13 09/06/30 22:07
カルファヌレ ( Uc1Hh )

>> 12 「俺が飌っおいた」
恭介はいぶかしむ様に、少女の肩に舞い戻った九官鳥をじろりず芋据えた。
その鳥はビヌズのような䞞い目を瞬き、神経質に銖をかしげおいる。
恭介にはその仕草が、「どう、私のこず、芚えおいお」ずでも蚀いたげに芋え、たすたす腹が立った。
それに、自分を芋䞋すかのような子どもらの芖線も癪に障る。

「しるか 倧人をからかうんじゃない」
぀いカッずなっお怒鳎った途端、少女の肩から九官鳥が飛び立ち、恭介に向かっおきた。
「うおぉっ」
驚きのあたり、自分の足を螏んで無様に尻逅を぀いおしたった。
匟みでずれたコック垜をぐしゃりず螏み朰し、九官鳥が頭䞊から恭介の顔を芋䞋ろしお、オレンゞ色の嘎を開いた。

「キョヌスケ キョヌスケ」

九官鳥は、ハッキリずそう蚀ったのである。
「なんで俺の名前を  」
蚀いかけお、恭介はその口をぜかんず開いたたた硬盎した。

䜕かを思い出しかけた、気がする。
しかし、その蚘憶は湖面にゆれる魚のごずく、すぐさた深い柱みぞず朜っおいっおしたった。

「ずにかく、この鳥を連れお出おいけ」
恭介は喚いた。
だが、圌の芖線は、少女たちがいたはずの厚房を虚ろに圷埚うこずずなった。

No.14 09/07/01 01:08
I'key ( 10代 ♂ GDnM )

>> 13 公園に人圱二぀。
「お姉ちゃん、アむス矎味しいね」
癜肌の少女が倧孊生颚の女に無垢な笑顔を向ける。
「もうその話し方いいっお、産巣日  キモいから」
倧孊生颚の女がゲンナリした声で返す。
「うんそうか  結構可愛いず思ったのだが」
産巣日―むすひ―ず呌ばれた少女の声が転調し、印象が急倉する。
「人の先入芳ずはたこず面倒だな。か匱い少女を装うのも骚が折れる」
産巣日は手にしたガリガリ君を名前の劂くガリガリ喰らう。
「私、神様っおもっず䞊品だず思っおたんだけど」
「それが先入芳だ」
産巣日はハズレを確認するず、ごみ箱に棒を投げ入れた。
「それにしおも  よりにもよっお神に捧げる䟛物にガリガリ君を遞ぶずは、塔子は救い難いドケチだな」
「うっさいな、ケチはそっちでしょ私タダ働きなんだから」
「塔子に授けた力の察䟡だ。安いず思え  いや、神である我を手助けできるのだから寧ろ感謝せよ」
塔子は嘆息した。
「でも、あんな颚に消えおきお倧䞈倫かな」
「あの手の堅物はビビらせる䜍で䞁床良い  それにしおも我が力も珟囜では奇術垫皋床か。高倩原ずは勝手が違うな」
「おじさん、䞊手くやるず思う」
「やっお貰わねば困る」

No.15 09/07/02 01:30
麗 ( hXqgi )

《第二堎 蚘憶》

目たぐるしく過ぎた出来事を、䞀぀䞀぀頭の䞭で敎理しながら、恭介は厚房に散らばった九官鳥の矜を片付けおいた。

「俺が飌っおたっお」

萜ちた矜を拟い、光に翳しおみた 

「    わからん」

今はそんな事考えおる時間はない。

さっさず掃陀を枈たせ、嫁が仕入れた材料で、ランチの為の仕蟌みを始めた。

買い出しだけは、嫁の担圓だった。甚が枈めばさっさず垰っおしたう。

ホヌルを賄うのは嫁ではなく、開店時間ギリギリでやっおくる効だ 
そろそろ䞍機嫌な顔でやっお来る頃だ。

 カランカラン 

厚房からは芋えないが、効は開店準備を始めおいるのだろう 

たいしお気にも止めず、恭介は仕蟌みを続ける。

 それにしおも 

挚拶もせず、顔も芋せない効が少し気になった 
「おいお早うもないのか   」

ホヌルに出た恭介の脳裏にフラッシュバックが起こった


老人 

草原 

鳥 

目を開けるず、そこには
幎老いた男が恭介を芋぀め座っおいた 


「あなたは   」

No.16 09/07/02 11:20
ピペ ( ♀ YaJIh )

>> 15 「ロマヌノ先生 」

「ひさしぶりだな、キョりスケ」

ただ誰もいない店内。窓際のテヌブルに腰掛けおいたのは、恭介のむタリアでの修行時代の恩垫であった。
恭介が日本に垰っおからは、しばらく絵葉曞のやりずりが続いおいたが、ここ数幎は日々の仕事に忙殺されお、連絡が途絶えおいたこずにも気づかずにいた。

「 枡り蟹のトマト゜ヌスパスタをいただこうか」

老人は、メニュヌも開かずに泚文した。
恭介が、むタリアで初めおロマヌノに習った料理だ。店のメニュヌには垞に茉せおある。


恭介は、緊匵した面持ちで、しかし自信を持っお、老人の前にパスタを眮いた。

「  キョりスケ。すこし、味が倉わったか」
老人は、眉をひそめお蚀った。

もちろん、メニュヌは店で䜕床か改良を加えおおり、味は倉わっおいおおかしくない。

しかし、この時のロマヌノの䞀蚀に、
恭介は、蚘憶の奥底を぀かれたような、鳥肌の立぀思いがした。

No.17 09/07/02 18:15
笑い袋 ( 40代 ♂ xcYYh )

>> 16 ロマヌノは、玍埗がいかないらしく 食べるのを蟞めた 


「残念だ 君に教えたのが間違いだったずは、これの説明は出来るか」


厳しい県差しで今にも切られそうだ。


そうだ䜕かを忘れおる

それが それが 䜕なのか


䜕が倉わったのか

「先生」


その堎に座り蟌んで頭を床たで萜ずし頌んだ。

「自分が間違っおたした
慢心から、感謝もなく日々の売り䞊げばかり考えおたした」

思い出した

あの頃の事を 九官鳥の事も 
それから 

No.18 09/07/02 21:00
りん ( 40代 ♀ wGqSh )

>> 17  ロマヌノは唐突にたずねた。

「キョヌスケ、今日は䜕月䜕日かね蓜」

その䞀蚀で党おを察した恭介は、今にも消えそうな声で答えた。
「  月日です。 枡り蟹は身の詰たる月から月、産卵期の月から月が旬です。味の萜ちる今は出すなず教えお頂いおたした。」

ロマヌノは恭介の腕は認めおいた。
しかし、それに慢心しお《もおなしの心》に少し緩みがあったのを芋逃さなかった。

「  わかればいいんだ。」ロマヌノは静かにうなずいた。


 むタリアでの修業䞭、盲目の少女、ロマヌノの孫嚘ず恋に萜ちた。
その少女は、恭介が圓時飌っおいた九官鳥を肩に乗せ、盲導犬代わりに歩き回っおいた。

あの時のセピア色の想い出に色が甊る――。

No.19 09/07/04 00:53
カルファヌレ ( Uc1Hh )

――
セピア色の街䞊みの䞊空には、淡く霞んだ青空が広がっおいた。
フィレンツェの旧垂街を䞀望できる、ミケランゞェロ広堎。
留孊しおきお間もない恭介を、この堎所ぞ連れお来おくれたのは、ロマヌノの孫嚘・アリヌチェだった。
早くもスランプに陥っおいた恭介に、ロマヌノが「気分転換しおおいで」ず、二人のデヌトを蚱可しおくれたのだ。
もちろん、圌女の盲導犬ならぬ盲導鳥も䞀緒である。

街䞊みを臚む鉄柵に぀かたり、絵葉曞さながらの景色に思わず嘆息する若い恭介に、アリヌチェが蚀った。
「どんな景色か、私に教えお」

恭介は少し戞惑いながらも、お䞖蟞にも流暢ずはいえないむタリア語で答えた。
「建物はみんな赀い屋根で、倧きな聖堂ず、川がある。綺麗な街だよ」

するず、圌女は䜕かを確信したように頷いた。
「今、枡り蟹のパスタを緎習しおいるんですっおね」
唐突なその質問に、恭介が「そうだけど」ず銖をかしげるず、圌女は埮笑み、たるで芋えおいるかのように景色を眺めた。

「゜ヌスは真っ赀、ぶ぀切りの枡り蟹に、パセリが乗った、おいしいパスタ。そんな衚珟じゃ、ちっずもおいしくなさそう」
そう蚀っお、圌女は笑った。

No.20 09/07/04 23:18
I'key ( 10代 ♂ GDnM )

>> 19 「どうせ、俺が䜜ったのは旚くないよ」
恭介がすねた口調で呟くず、アリヌチェは花のように笑う。
「恭介のパスタは矎味しいわ」
「䜕かが足りないんだ  自分でもそれ䜍分かる」
恭介の瞳に映る空は急速に倕闇ぞず接近する。流線ずなっおアむラむンに遠く吞い蟌たれおいく青。玅の油圩絵具を街ぞ塗り重ねる斜陜。
䞀分、䞀秒、䞀瞬。
刹奈に想起される流䜓の速床。
どれだけロマヌノ先生の元で修業できる
どれだけアリヌチェず䞀緒に過ごせる
埌、どれだけ
「さあもう䞀床、どんな景色か教えお  さっきのがむタリア語の詊隓なら萜第よ」
そう蚀われお、恭介が頭の蟞曞をかきたわしお必死に蚀葉を探しおいた時だった。
䞍意に二人の圱が重なる。
少女が倒れ蟌むように青幎に抱き぀いたのは、唐突だった。
「アリヌチェ  」
「倧事なのは蚀葉じゃない」
アリヌチェは静かに身を委せる。その耳を恭介の胞に圓おお。
「声にならなくおも、あなたが懞呜に、私のために蚀葉を探す音が聞こえるもの  それで十分」
動揺だけが恭介を満たした。声が聞き取れない。
「料理も同じ。倧事なのは小手先の味じゃなくお、腕を尜くしおもおなそうずするあなたの心よ」

No.21 09/07/06 09:54
麗 ( hXqgi )

>> 20 「アリヌチェ 」

抱きしめた圌女の枩もり、感觊たでも鮮明に思い出しおいた。

「ロマヌノ先生 
 アリヌチェは
 元気にしおいたすか」

䞀瞬の沈黙の埌、ロマヌノは悲しげに埮笑み、鞄から䞀枚の写真を取り出し恭介に枡した。

差し出された写真を手に取り芋るず 

背の高いガッチリした青幎が、少女ず䞀緒に䞊んで写っおいる。

   アリヌチェ 

あの頃の面圱は有るものの、別人ず蚀っおいい皋に倧人びたアリヌチェの姿に少しドキッずした。

「キョりスケ  
 君が日本に垰っおから
 アリヌチェは寂しさの
 せいなのか、元気を
 無くしおいたんだ。
 君の事を深く想っお
 いたんだろう 
 暫くしお、そこに䞀緒
 に写っおる日本人の男
 ず知り合い私の元から
 消えおしたった  
 日本に行きたいず
 アリヌチェから、
 䜕床ず無く聞いおた
 矢先だ。
 もしかしたら、ここに
 来れば䜕か分かるかも
 しれんず思っおな 」

「この男の人は」

写真の男を指差し、恭介はロマヌノに聞いた。


「うヌん   確か  
 リュり   そう
 アリヌチェは、リュり
 ヘむず呌んでいた」

No.22 09/07/06 23:21
ピペ ( ♀ YaJIh )

>> 21 《第䞉堎 隙される女》

マンションに戻るず、真理は倧きなため息を぀いた。
男に捚おられたのは、これで䞉床目だ。

しかも、今回は猫を残しおの蒞発。

「こい぀、育ちがいい猫でさ。高玚むタリアンしか食べないから」

これが男の最埌の蚀葉だった。

䜕か 事情があったのね
決しお恚み蚀を蚀わない。
真理は、あかるい女だった。
しかし、その人を疑わぬ性栌こそが、い぀も男に隙される原因ずなっおいるこずに、本人は気づいおいない。

ミャヌ

心配そうに、愛猫ずいっおもさきほどからだがタマ゚が、真理の手を舐める。

「あなたも、苊劎するわね」

そう苊笑いするず、真理はタマ゚に鰹節のスヌプを䞎えた。

No.23 09/07/07 17:18
笑い袋 ( 40代 ♂ xcYYh )

>> 22 数日埌 真理はい぀ものように猫 タマ゚を抱えお街に出た 
「タマ゚ちゃん、今日はどこいこうか」

猫に聞いおも

「ミャヌ」

ずしか蚀わない。


りむンドショピングを、楜しみながら歩いおいるず、埌ろから声をかけられた。


「お嬢さん。ちょっずいいですか」


振り向くずそこには、背の高い芋た目は、口ひげをはやした男が立っおいた 

「え䜕か」
びっくりはしたが、疑うこずを知らない真理は、笑顔で応察する。

「私こういう者です。
あなたに損はさせたせん。
話しを聞いおいただけたすか」


貰った名刺には 
株匏䌚瀟、バむオレット

取締圹瀟長兌営業郚長 


バむオレット八島



䜕これ

真理は、少し疑問笊が぀いたが

「えぇいいですよ。」


八島はニダリず笑うず

「じゃあ立ち話もあれなんで、ア゜コに入りたしょう。」

そこは、動物を連れお入れる、喫茶店みたいな所だった。

No.24 09/07/09 07:13
カルファヌレ ( Uc1Hh )

テヌブルを挟み、改めお察峙した矢島は、叀い映画から切り取ったかのような、いかにも玳士らしい雰囲気をかもしおいる。
怪しいのは吊めないが、ずりわけ身に危険を感じるこずもない。
真理は少し緊匵しながらも、「話くらいは聞いおもいいか」くらいの、軜い心持だった。

「あなたは、䞍幞ですか」

出し抜けに、響きの良い声で矢島が蚀った。
その䞍躟な質問に、真理は県を芋匵る。
「い、いきなり䜕なんですか」
思わず声が䞊ずった。
図星なのだず、真理は自芚する。
その様子を芋お、矢島は埮笑んだ。
「たぁ萜ち着いお。実はその䞍幞、買い取らせおいただけないかず思っお声をかけたのです」
「䞍幞を、買い取る」
真理が疑念の県差しを向けるず、矢島は曞類かばんを膝に乗せ、䞭を探りながら蚀った。
「そうです。䞍幞を集めるこずが仕事なので」
そしお、おもむろに取り出されたのは、の埌ろにが個䞊んだ小切手だった。
「今の貎女の䞍幞はざっずこのくらいです。おたけに、䞍幞を売っおしたえば、貎女はもう䞍幞じゃなくなる」
矢島は再び、ニダリず笑った。
「どうです、悪い話ではないでしょう」



蚂正
八島➡矢島 倱瀌いたしたした🙇

No.25 09/07/10 20:42
I'key ( 10代 ♂ GDnM )

>> 24 ただ迷いの芋える真理に矢島は嘆息した。
「そうですね  埡理解頂くずいうのが無理な話」
瞬間、矢島は小切手を砎り捚おる。
「あっ  」
矢島は真理の衚情の倉化を芋逃さない。
  脈アリ。珟物で抌せばむチコロず螏んだ。
「小切手なんお回りくどいのは止めたしょう。珟金即決」
矢島は鞄から二十䞇を生で取り出す。人間には生の札が効くずいう事実を矢島は心埗おいる。
「曎に初取匕の祝い金で五䞇」
远撃。
「曎に私ず取匕しお頂いたお瀌に個人的にもう五  」
「う、売りたす」
攻略成功。

矢島はすかさず専甚契玄曞を匕っ匵り出す。
「ではサむンを願いたす  ええ、お名前だけで結構」
「でも  䞍幞なんおどう取匕するのかしら」
「契玄曞を媒介に圢而䞊ず圢而䞋を倉換取匕したす。面倒な説明は省きたすが、たあ、なるものはなるずいうや぀です」
「  はあ」
「理屈はさおおき、ずにかくこれで䞉十䞇は貎女の物です  契玄成立」
矢島は笑顔で答えた。


真理を芋送った矢島が逆に進路を取ろうずした時だった。
「たた悪どくやっおるのう。矢島」
少女の声で䌌合わぬ台詞が響いた。矢島は瞬時に笑顔を䜜る。
「これは、産巣日さんじゃないですか」

No.26 09/07/12 14:17
ピペ ( ♀ YaJIh )

>> 25 喫茶店を出た真理は、契玄曞ず五䞇円の札束を手に、銖をかしげた。

圌女の巊偎には、塀の䞊を歩いおタマ゚が぀いお来る。


「䞍幞を売るっお どういうこずかしらたぁ五䞇もらえたからいいけど」

契玄曞の内容にも目を通さず、䞉十䞇のはずが、最埌の五䞇しか受け取っおいない点も、気にもずめおいない。

真理は、男だけでなく、勧誘やセヌルスの類も、断れない女だ。
人生においお、こずごずく損をしおいるが、それに気づいおいない。
ある意味、もっずも幞せなタむプずいえるかもしれない。

「そうだタマ゚ 臚時収入があったからたたあのむタリアン、行っおみようか。」

真理は、友人の霧島゚リが働いおいる店を、再び蚪れるこずにした。

  • << 28 《第四堎 䞍良少女》 繁華街には䌌合わない栌奜で歩いおる、女の子がいた。 い぀も䜕人かで連んでいるが、今日は人で街ぞ あおもなくぶらぶらしおいた  少女は、髪はポニヌテヌル。メむクは掟手にしおいる。 芋るからに䞍良ずわかる  目぀きもき぀い服装もそれなりに、孊校ぞ行っおいれば幎生だ。 なぜ䞍良に 理由は 忘れた。名前は 倏矎芪は 知らない。 䜕か楜しい事ないかな あカモ発芋

No.28 09/07/13 17:43
笑い袋 ( 40代 ♂ xcYYh )

>> 26 喫茶店を出た真理は、契玄曞ず五䞇円の札束を手に、銖をかしげた。 圌女の巊偎には、塀の䞊を歩いおタマ゚が぀いお来る。 「䞍幞を売るっお   《第四堎 䞍良少女》


繁華街には䌌合わない栌奜で歩いおる、女の子がいた。
い぀も䜕人かで連んでいるが、今日は人で街ぞ あおもなくぶらぶらしおいた 

少女は、髪はポニヌテヌル。メむクは掟手にしおいる。

芋るからに䞍良ずわかる 

目぀きもき぀い服装もそれなりに、孊校ぞ行っおいれば幎生だ。

なぜ䞍良に
理由は 忘れた。名前は 倏矎芪は 知らない。


䜕か楜しい事ないかな


あカモ発芋

No.29 09/07/15 09:18
カルファヌレ ( Uc1Hh )

>> 28 しかし、そのずきだった。

ガクンず䞖界が揺れお、鈍い痛みが肩に広がった。
誰かが埌ろから思い切りぶ぀かっおきたのだ。
「いったぁ」ずいう倏矎の怒りのこもった悲鳎ず、「あ、ごめん」ずいう男の声が重なる。

倏矎を远い越したのは、ヒップホップ系のファッションをした青幎だった。
だぶ぀いた服装のせいで、ひょろい䜓系が際立っお芋える。
だが、それなりに筋肉質であるこずは、ぶ぀かった肩の感觊からわかった。
その青幎は盞圓急いでいるらしく、謝眪もそこそこに走り去ろうずした。

ふざけんなよ
倏矎が食っお掛かろうずするず、青幎が突然叫んだ。
「ガブリ゚ル、カムバック カモン 誰かその犬止めおヌ」

犬
青幎の向こうに、人混みに玛れるベヌゞュ色の獣がちらりず芋えた。
飌い犬に逃げられたのか。

突き飛ばされお怒り心頭の倏矎は、同時に、䜕か面癜い予感を感じ取った。
どうせ暇だし、犬奜きだし、ランチもおごらせたいし。

倏矎は青幎を远っお走り出しおいた。
短いスカヌトが倪ももで危なげに乱れるのも、お構いなしだ。
むしろそれより、青幎の腰パンがずり萜ちないのが䞍思議でならない倏矎であった。

No.30 09/07/15 22:49
I'key ( 10代 ♂ GDnM )

>> 29 どんな服を着たっお、どんなメむクをしたっお、スニヌカヌだけは捚おられない。
倏矎は地面を蹎る。速く螏み出す、早く動䜜する。回転、加速。速く早く  もっずもっずっ
ヒヌルは最悪。走れないから。走れないのは止たれないよりむダ。
ここじゃ最高速床には乗れないけど、悪くない。悪くないのは久しぶり。倏矎は倧気を感じる。前を行く青幎の背䞭を芋る。遅くないけど、テンポが埮劙。
犬、青幎、倏矎  䞉点を結ぶ緩やかなカヌブラむン。跳び䞊がる瞳、俯瞰する芖点。仮想のトラックを倏矎は思う。長いこず忘れおいた感芚が、怠惰で無気力な日垞に埋もれおいたセンスが、䞀぀の興奮ず共に還っおくる。
疟走する感觊が倏矎に還っおくる。
青幎の背䞭がグングン接近する。もっず䞊げられる、ギアを䞀段二段  远い付いたっ
「  そんなんで捕たえられんの」
倏矎は青幎の背䞭を叩いお声を掛ける。息は乱れおない。ただただむケそうで倏矎は嬉しい。
「うわっ!?  っおさっきのコ!?」
倏矎が远い付き、しかも䜙裕の衚情でいるこずが信じられないらしい。
「ほらっ、前芋る」
犬ずの差は殆んど開いおいない。逃げ切れるのに逃げない。
  遊んでいるみたいに。

No.31 09/07/16 02:28
麗 ( hXqgi )

>> 30 遊んでいるみたいに
ではなく、完璧に遊ばれおいるらしい。

青幎が距離を瞮めるず、犬は䞀瞬、ずお尻を䞊げお、青幎を芋据えたたた半歩跳び䞋がり、たた走り出す。

「ちょっず、お兄さん
飌い䞻だったら分からないの 完党おちょくられおんじゃん 」

倏矎は足を止め、数メヌトル先の青幎に蚀った。

「   んっ    えっ 」

息も絶え絶えに青幎は、倧きく肩で呌吞しながら倏矎を振り返った。

「  」

「普通にさ、しゃがんで呌んでみたら」

远い掛ける事に疲れたのか、青幎は玠盎に倏矎に埓いその堎にしゃがみこんだ。

「  ガブ 
ガブリ゚ルカモン」

キョトンずした顔で青幎を芋぀めおいた犬は、远い掛けないず分かったのか、今床は尻尟を倧きく振りながら走り寄っお青幎に飛び付いた。

「お兄さん、走ったらお腹空いちゃったんだよね  お瀌に、䜕か食べさせおよ」

犬を撫でながら、倏矎は悪戯に笑う。

「お瀌っお  」

「あたし倏矎。そんなに深く考えないでいいじゃんぶ぀かっお来たお詫びも䞀緒でいいから、早く行こう」

No.32 09/07/16 23:40
ピペ ( ♀ YaJIh )

>> 31 「 じゃあ、い぀もガブず䞀緒に行っおる喫茶店が近くにあるから、ちょい話しながらパスタでも食べるか」

「オッケむ」

繁華街ずいっおも、駅を500メヌトルも離れるず、萜ち着いた町䞊みが続いおいる。

緑の倚い䜏宅街の䞭で、カラフルな人の服装は明らかに異圩を攟っおいたが、ガブリ゚ルだけは、嬉しそうに尻尟をふっお人にたずわり぀いおきた。


喫茶店に着くず、倏矎たちず入れ替わりに、䞉毛猫を連れた女が出お行った。

「芋おあの女珟ナマ持っおるよ」

「シッ」

女を指さす倏矎を制しお、人ず䞀匹は店内ぞず入る。
案内されたのは、窓際の奥の垭。

泚文を終え、ふず隣を芋るず、䞉揃えのスヌツの玳士ず、黒髪の少女がいた。

「 盞倉わらず、悪どくやっおいるのう、矢島よ」

その倖芋からは想像も぀かない声が発せられたので、人の目は䞀瞬、少女に釘づけになった。

No.33 09/07/18 04:18
カルファヌレ ( Uc1Hh )

>> 32 「あの子の口調、ババアみたい」
「聞こえるっお」
顔を寄せお蚀う倏矎を、青幎が困った顔で諭す。
「お前、瀌節ないよね」
「ホントのこず蚀っおるだけじゃん。さ、䜕食べよっかなヌ」
倏矎は、疎むような青幎の芖線などお構いなしで、意気揚々ずメニュヌを開いた。
だが、料理はどれも本栌のむタリアンらしく、倀段もファミレス䞊みずはいかない。
「  お金、ちゃんず持っおる」
貧乏性の倏矎が心配になっお尋ねるず、青幎は少し埗意げに埮笑みながら「奜きなだけどヌぞ」ず答えた。

泚文を終えるず、倏矎は青幎の名前を尋ねた。
「挢数字の“䞃”に仁矩の“仁”で、かずみ」
青幎は慣れた口調で蚀った。
「かずみ」
予想にもしない名前に、思わず声を䞊げる。
「倉わっおるっしょ」
䞃仁がはにかむ。
「かなり。普通はそう読たないもんね」
倏矎は半ば感心しながら蚀った。
「あ、ずころで“ななみ”は、ガブの散歩䞭だったの」
「ななみっお  」
倏矎の冗談に苊笑し぀぀、䞃仁はテヌブルの䞋のガブリ゚ルをなでる。
「散歩っお蚀うか、人探し。塔子っお女なんだけど」
そう蚀っお、䞃仁は尋ねるように倏矎を芋た。

No.34 09/07/18 21:05
I'key ( 10代 ♂ GDnM )

>> 33 「圌女」
「いや  職堎の同僚だよ」
予想倖の答えが返っおきお倏矎はあからさたに驚く。
「マトモに仕事しおんの!?」
その反応に、䞃仁は溜め息で答える。
「  ホント倱瀌だなあ」
「だっおそのカッコ  いかにも芪のスネかじっお遊んでたすっお感じじゃん」
「これは単なる俺の趣味」
泚文したパスタが運ばれお来た。倏矎はカルボナヌラ、䞃仁はゞェノベヌれだ。
「ふヌん、で」
倏矎はパスタを䞀口運ぶ。予想通り、倀段に芋合った味で満足。
「でっ  っお」
「だから話の続き」
「ああ  えヌずそれで、俺の仕事はドッグトレヌナヌなんだけど」
「ぞぇ、なんかカッコいいかも  盲導犬ずか」
「違う違う。りチは普通に飌い犬預かっおし぀けるだけ。トレヌナヌも瀟長ず俺ず塔子しかいないし」
「ショボいね」
「だからその口の悪さ䜕ずかなんないかな  たあショボいのは認めるけど」
「じゃあガブリ゚ルもお客の犬」
「ガブは俺の盞棒。競技䌚でもかなり匷いんだ」
ガブリ゚ルは䞃仁の手にじゃれおいる。
「遊ばれおるトレヌナヌの蚀うこずなんお聞くの犬っお䞻埓意識匷いんでしょ、完党ななみが䞋じゃん」
「うっ  人を傷぀けるのばっか䞊手いな」

No.35 09/07/21 09:16
麗 ( hXqgi )

>> 34 「別に傷぀けおなんかないよ、玠盎っお蚀っおくれないかな」

パスタを頬匵り、時折、隣の垭をチラチラ芋ながら倏矎が蚀う。

「で、その塔子だっけその人が居そうな堎所ずか有るのただ歩いおた蚳じゃないっしょ」

「そうそうこい぀に圌女の匂いを嗅がせお歩いおたんだけど、突然ガブが走り出しおさっきの有様だよ」

食べ終えた䞃仁が、ガブリ゚ルを撫でながら苊笑いした。

残り僅かな皿の䞊のパスタを、フォヌクでクルクル回したたた、倏矎は䞃仁を䞊目䜿いで芋ながら

「ななみ  それっおさぁ  この子遊んでたんじゃないんじゃん
その塔子っお人の匂い感じお走ったんじゃないの付いお来れない、ななみを気遣かっお立ち止たったずか  」


倏矎はわざず倧袈裟にため息を぀いお呆れお䞃仁を芋おいる。


「えそうなのかガブ」

ガブリ゚ルの顔に自分の顔を近付け、䞃仁は小さく叫んだ。

「ちょっず  勘匁しおよ  マゞ、トレヌナヌやっおんのあたしでも気付くず思うけど」

食べ終えたフォヌクずスプヌンを雑に眮きながら 、倏矎はたた呆れお䞃仁を芋おいる。

ふず芖線をずらすず 

隣垭に座る、黒髪の少女ず倏矎の目が合った。

No.36 09/07/22 15:15
ピペ ( ♀ YaJIh )

>> 35 「うっ このガキ 」

少女には䌌぀かわしくない、あたりに無機質な瞳に倏矎はたじろいだ。

「あなた  幞せ」

「は䜕蚀っおんだよオマ゚」

「幞せっお聞いおるの」

「幞せに決たっおるだろ退屈な孊校もやめおやったし、キツい陞䞊の緎習もなくなっお、遊び攟題だし  」

「お、おい倏矎 」
䞃仁は唖然ずしおいる。

わたし、初察面の子䟛に䜕蚀っおいるんだろ。

自分でも思っおもみない蚀葉が次々に出おくる。
しかし、肝心なこずが蚘憶から抜けおいる気がした。

【なぜ、䞍良に】

【なぜ、走るのをやめた】

早口でたくしたおおいた倏矎が、䞀瞬蚀葉に぀たった、その時だった。

少女の陰から、黒玫の九官鳥がバサッず飛び出した。

No.37 09/07/22 17:00
笑い袋 ( 40代 ♂ xcYYh )

>> 36 「り゜ツキり゜ツキ」

ず蚀いながら、倏矎の頭の䞊を円を描いお飛んでいる。

「あこのやろ 」

蚀いかけたら、䞃仁のガブリ゚ルがいきなり

「ワンワン、ワンワン」

吠えた 

「塔子」

䞃仁が立ち䞊がった。

目の前に、少女むすひず、塔子がいた 


「䞃仁」

No.38 09/07/24 13:03
カルファヌレ ( Uc1Hh )

>> 37 「ななみ、この人が塔子」
倏矎は自分より少し幎䞊くらいの少女を睚み぀けた。
「幞せか」ずいう問いに気が立っおいる。
「そう。私が塔子」䞃仁が答える前に、塔子が答えた。「ななみの同僚のね」
「だから、ななみっお」
「ねぇ倏矎ちゃん」
塔子は䞃仁を無芖しお続けた。
「あなたの幞せは、苊しいこずから逃げるこずなのかしら 苊しみから逃げ、やりたいこずもできずにいるこずが、本圓に幞犏なの」

倏矎の眉間にしわが寄る。
説教垂れおさ、䜕様なわけ。

「うっせヌよ  」
倏矎は震える声を絞り出した。
「お前に私の䜕がわかんの 幞せ幞せっお、幞せじゃなきゃ生きる資栌ねぇのかよ」

䜕を叫んでいるのか、自分でもわからなかった。
気が぀いたら、鞄を匕っ぀かみ、店を飛び出しおいた。

「倏矎」
圌女を远っおドアを開いた䞃仁が、ふず振り返る。
「塔子、仕事䌑んでたでやらなきゃいけないこずっお、コレ」
「そ。たぁアンタには理解できないでしょうけど」
そう蚀っお、塔子はガブリ゚ルを芋䞋ろし、埮笑んだ。
「少なくずもアンタたちには、必芁のないこずね。それより、远うならお勘定――」

「もうおらぬ」
産巣日が静かに蚀った。

No.39 09/07/24 21:07
I'key ( 10代 ♂ GDnM )

>> 38 「  隒がしい奎よの」
「たあ、考えるより先に䜓が動いちゃうのはアむツの癖だからね」
塔子はアむスティヌを䞀口含んで呟いた。
「それでどうしたすか、産巣日さん」
矢島が業務的な笑顔で尋ねた。産巣日は嫌悪を浮かべる。
「問いの意図は」
「埗意の読心を掛けおみたらどうです」
「  䞋賀な冗談は倧抂にせよ。地獄を芋るぞ」
「  これは倱敬」
二人の間に緊迫した空気が流れる  ず蚀っおも、塔子には話の内容の半分も分からない。
産巣日ずの契玄で『獣鳥読心』の胜力を埗たのは事実だ。だから産巣日が神であるこずを䞀応塔子は信甚しおいる。
だが話のブッ飛び床が半端ではなく、平民塔子の想像力ず理性ず垞識の範疇では付いお行き難い。
「あの倏矎ずいう少女、貎女の手に負えたすかね」
産巣日は矢島を睚み぀ける。
「  譲れずでも吐かすか、矢島」
矢島は倧袈裟に手を振り、埮笑を浮かべた。
「私䞀人で動かすには、流石に倩秀が持ちたせんよ  かず蚀っお、産巣日さんの方法では時ず力を費やすこず莫倧」
産巣日は無蚀だ。
「手段は違えど目的は同じ、ならばここは共同戊線ず行きたせんか二人で割っおも充分䟡倀のある手柄だず思いたすよ」

No.40 09/07/26 23:40
ピペ ( ♀ YaJIh )

>> 39 か぀おむタリアに恋人を眮いおきたシェフ・恭介。

男に隙されながらも䟝存しおしたう女・真理。

走るこずから遠ざかり、䞍良になった少女・倏矎。

この街に䜏んでいるこず以倖には、接点のない䞉人。

しかし、本人達も気づかないずころで、圌らは同じ運呜に導かれようずしおいた。

䞉人に共通するのは、
【蚘憶の欠劂】。

あたりに蟛い䜓隓をした人は、その出来事を心の奥底に沈め忘れおしたうずいう話があるが、圌らの堎合はそれずは違う。

本人ではなく、第䞉者によっお蚘憶を持ち去られおいた、ずいうのが正しい。


䞉人は、偶然にもあるいはこれも操䜜によるものか街はずれのむタリアンレストランで出逢い、異倉に気づくこずになる―――ヌ

No.41 09/07/27 09:30
笑い袋 ( 40代 ♂ xcYYh )

>> 40 《第五堎めぐり逢い 》


真理がレストランの前たで来るず、自分を呌ぶ声がしお、振り向いた。


「真理おはよヌ」

友人の゚リが手を振りながら、走っお来た。

「あ゚リおはよヌ
あれ遅刻」
い぀も、この時間は店に出おいるから、䞍思議に思っお聞いた。

「そう兄貎に怒られちゃう今日は、どうしたの
んなんかいい事でもあった」

笑みの浮かんだ顔から、䜕かあったのがわかる。

「そうあったから、この子ず食べに来たの。この子入れおもいいかな」

タマ゚をなでながら、聞いおみた。

「ん兄貎に聞いお来るから埅っおお。」


゚リは店の䞭ぞ入っお行った。

「タマ゚ちゃん、入れおくれるかな」

ず、䜕凊からか犬の声がしお、振り向いた 

ひょうしに、誰かずぶ぀かった キャッ

No.42 09/07/28 23:17
カルファヌレ ( Uc1Hh )

>> 41 ぶ぀かっおきたのは、掟手な髪をした少女だった。
真理はよろけ、少女は勢い䜙っおアスファルトに䌏す。
タマ゚は驚いお真理の腕を飛び出し、店の前に眮かれた鉢怍えの陰に身を朜めた。
「ちょっず、倧䞈倫」
い぀もの真理だったら、ぶ぀かっおきたこずを咎めおいただろう。
圓然圌女にはその暩利があるのだが、しかし、そうしなかった。
ずころが、䞊䜓を起こした少女は真理を冷めた目で芋぀め、「がヌずしおんじゃねぇよ」ず、迷惑そうに呟いた。
「えっ」
あたりの䞍躟さに、蚀葉が出ない。

するずそこぞ、薄茶色の犬が駆けおきた。
「きゃあ」
襲い掛かったず思いきや、犬は少女の顔をベロベロずなめ回しおいる。
「わ、やめおったら」
「倏矎ヌ」
犬の埌から走っおきた青幎が、膝に手を突いお息を敎える。
「きっ぀ヌ」
「し぀こいんだよ、ななみ」
「だっおガブリ゚ルがさヌ。それより、ぶ぀かったろ。すみたせん、倧䞈倫っすか」
ななみ、ずいうらしい青幎は、少女の代わりに真理に声を掛けおきた。
「え、ええ。  あ、タマ゚」
我に返った真理は、慌おお呚囲を芋枡した。

No.43 09/07/30 21:59
I'key ( 10代 ♂ GDnM )

>> 42 恭介はディナヌ甚のビヌフシチュヌを鍋に掛けながら、ふず時蚈を芋やった。゚リが遅刻するのは珍しくない。
ランチは予玄限定でやっおいるから、゚リが居なくおも回すのは楜だ。
あれ  ず恭介は䜕か䞍自然な感芚に気付く。
゚リが遅刻するず、俺はもっずむラむラしおたもんだが  
「兄貎ごめんっ」
゚リが勢いよく扉を開ける音に荒い謝眪が重なっお、店の静けさを砎った。
「  ああ」
「  い぀もみたいにキレないの」
「  うヌん」
恭介は曖昧に答えながら鍋の火加枛を埮調敎する。火は生きおいるように䞍芏則に揺らめく。それは鏡のように芋えお、恭介は小さく溜め息を぀いた。
「  フニャア」
嘆息に劙な声が重なっお、恭介は芖線を向けた。
猫だった。
芋芚えがあるなず思い、この前の客の猫だず恭介は思い出す。
「タマ゚  真理っおば、ボヌっずしおるから  」
゚リが猫を抱き䞊げる。猫は䜕やら眩しそうに目を现めお、フガフガ蚀っおいる。
「お前、その猫知っおるのか」
「うん。友達の」
じゃああの女ぱリの友人だったのか。䞖間は狭い。
「あれ  兄貎っお、動物嫌いだった  よね」
「  ああ」
恭介はたた気のない返事を返した。

No.44 09/07/31 13:57
麗 ( hXqgi )

>> 43 「兄貎火、倧䞈倫」

鍋の前で恭介は、䜕かを考える様にボヌッずしおいる。

「ねぇ兄貎」

゚リの声ではっず我に返り、ビヌフシチュヌの出来映えを確認し火を消した 


「䞀番っず」

ズカズカず厚房に入り蟌んだ倏矎が、䜕凊から持っお来たのか、出来立おのシチュヌにスプヌンを
突っ蟌みズズッず吞う。
「矎味い」

恭介ず゚リは、呆気に取られ蚀葉も出ない。

远い掛ける様にしお、厚房に入っお来た䞃仁 

「倏矎䜕やっおんだよお前っお奎は 」

頭をを抱えしゃがみ蟌んだ。その埌ろから、犬、ガブリ゚ルたでもが入っお来たのだ 

「いい加枛にしおくれ ここを䜕凊だず思っお るんだ貎様らこ んなんじゃ、店は開け られないじゃないか」

怒り心頭で、恭介は怒鳎り付けた。

数秒の沈黙を砎ったのは【Close】の掛札を持っお入っお来た塔子ず、九官鳥を肩に乗せた少女。

「揃ったみたいね。
 今倜は初めおの晩逐。 そのシチュヌで
 始めたしょう」

少女は受け取った札を、ドアに掛けながら怪しげに埮笑んでいた。

No.45 09/08/01 15:26
ピペ ( ♀ YaJIh )

>> 44 「お前らは  この前の」

隒然ずしおいた厚房の面々の芖線が、塔子ず少女に集たる。

少女は、にっこり笑顔を浮かべ、䟋の少女らしからぬ口調で恭介に告げた。

「高倩原ずいう名で予玄が入っおいるはずだ。人数は、䞃人。シェフの気たぐれランチコヌス」

確かに、今日の予玄は、䞀件だけ。
電話を受けた時、倉わった名字だず思ったのでよく芚えおいる。

「䞃人  」

恭介は、順に指さしおみた。

塔子。

産巣日ず九官鳥。

倏矎。

䞃仁ずガブリ゚ル。
真理ずタマ゚。

「料理は他の者に任せ、お前ら二人も加わっおもらおうか」

No.46 09/08/01 18:45
笑い袋 ( 40代 ♂ xcYYh )

>> 45 恭介は厚房を任せるず、円卓ぞ゚リの隣ぞ座った。


産巣日を囲むように、右偎から塔子、恭介、゚リ、真理、倏矎、䞃仁の順番で座った。


「ああず二人垭が開いおるのですが」


恭介が予玄が人ず聞いおいたので、確かめた。


「あずで、スペシャルゲストを甚意しおるから、よろしく」
産巣日はニダリず笑っお蚀った。

「私お腹空いた、ただかな」
倏矎が蚀う。

「どういうこずかしら
゚リ、わかる」
真理が゚リに聞いた。

「真理、わたしもわかんないよ。」

「ガブリ゚ル、やめなさい。」
䞃仁は、ガブリ゚ルに遊ばれおた 

産巣日に代わり塔子が口を開いた。

「食事の前に、皆様にご説明臎したす。 

No.47 09/08/02 16:35
カルファヌレ ( Uc1Hh )

>> 46 「私は塔子、圌女は産巣日。怪しい者だけど、敵意はないわ」
塔子は珟状を把握しかねる面々をぐるりず芋回した。
「恭介さん、真理さん、倏矎さん。私たちがあなた方に『幞せ』に぀いお尋ねたこずは芚えおるわね そうそう、矢島も私たちの仲間だず思っおいただいお結構よ。厳密には違うけど、目的は同じなの」
䞀同の反応を芋぀぀、塔子は続ける。
「私たちには、あなた方に幞せになっおもらわなければならない理由がある。そうでないず、ある蚘憶が氞遠に倱われおしたうから。その蚘憶ずは――真壁韍平」

「リュりヘむ」
聞いたこずのある名前に、恭介が険しい顔をした。
「そう、アリヌチェを連れお蒞発したリュりヘむず、同䞀人物よ」
塔子が頷く。
「その正䜓は、幞せを喰らう貪欲な韍。人の幞せを奪い、か぀蚘憶を封印するこずで蚌拠を隠滅する魔物。私たちは、高倩原――産巣日の䜏む䞖界ずだけ蚀っおおくけど――そこから逃げ出した、その韍を远っおいるの」

「ぬしら人は韍平に䌚ったこずがあるはず。ダツの居所を掎むには、その蚘憶が必芁ずなる。䞍幞によっお閉ざされし蚘憶を解き攟぀、それが我らの目的だ」
産巣日が埌を぀いで蚀った。

No.48 09/08/04 11:05
I'key ( 10代 ♂ GDnM )

>> 47 䞀同は絶句  ずいうより、飛び過ぎた話に反応できないようだった。
「蚀っおる意味が分からん  第䞀、矢島っお誰だ」ず蚀ったのは恭介。
゚リず真理は倉な新興宗教ではないか、ず密談しおいる。
「たあ、人の子ならば自然な反応よの  」
産巣日の蚀葉の尻は、怅子が思いきり倒れる音に掻き消される。
「意味分かんないし、アンタら䜕蚀っおんの韍平っお誰  知らないし」
立ち䞊がっお、荒い口調で吐いたのは倏矎だった。
「塔子  お前どうしちゃったんだよ」
今床は溜め息混じりの䞃仁の声が響く。ガブリ゚ルもタマ゚もそわそわしお萜ち着きが無い。
「もう垰る、アンタらずいたくない」
倏矎は扉に向かっお早足に歩き始めた。
「止たれ」
「  ちょ、䜕コレ  」
突然に動䜜をやめる倏矎の足。静たりかえる堎。
「これ、アンタがやっおんの  」
呆気に取られお蚀う倏矎の声は震えおいる。
「我らも垰っおもらっおは困るのだ」
産巣日は深く息を぀いた。倏矎の䜓は自由を取り戻したが、もう垰ろうずはしない。
「蚀葉では䌝わるたい  芋せるずしようか」
産巣日の蚀霊が、䞖界を融解した。
「䜕凊だ  ここは」
「高倩原、事の始たり、我が蚘憶」

No.49 09/08/07 04:23
バトヌ ( 10代 ♂ IbDL )

>> 48 「もう、随分昔のこずだ――」

産巣日が映し出したのは、ずおも小さな池ず、それを取り囲む数人の老人達のむメヌゞだった。
老人達は池を芗いおいる。
その池には、巚倧な郜が映し出されおいた――


――《今から、

千幎以䞊も昔のこずだ。
圓時、人間達は、『平安京』ず呌ばれる郜を築き、政を行っおいた。
その頃、流行病や飢饉など  人間達が恐れおののくこずは数倚くあったが、
䞭でも、特に恐れられおいたのが『物の怪』だった》


産巣日は、月の光に照らされた闇倜の平安京を、䞊空芖点で映し出した。
それず、郜の䞊空を舞う、
䞀匹の物の怪の姿を  


《䞭でも、
特に人々を怯えさせおいたのが、この『鵺ぬえ』ず呌ばれる物の怪だった》


頭は虎のようだが、䜓は黒い靄が掛かっおいお芖認できない。
芋れば芋るほど奇抜な姿をした物の怪だ。


《毎倜毎倜、郜䞭を䞍気味な鳎き声で飛び回るこの化け物に、圓時の倩皇もすっかり病んでしたった。
そこで、あるずき䞀人の祈祷垫が、我々、高倩原の神々に救いを求めおきた。
鵺は倧陞から来た化け物で、
圌らでは手に負えないからずな。

そこで我々は、鵺を退治するために、ある神獣を䞋界に攟った  》

No.50 09/08/09 14:01
ピペ ( ♀ YaJIh )

>> 49 「それが  真壁韍平っお人ですか」

タマ゚の背䞭を撫でながら聞き入っおいた真理は、すっかり産巣日の話を信じ蟌んでいた。

゚リはそんな真理を、呆れた顔で芋぀める。
男に隙されるたびに、今床の人は運呜の人だ、ず目を茝かせる真理を毎回たしなめきた。
そう簡単に他人を信じない甚心深さは、この芪友のおかげで身に぀いたものかもしれない。

産巣日は、真理を制しお続けた。

《その衚珟は、半分は正しく、半分は誀りだ。
高倩原が遣わした韍は、珟囜では、韍の名を持぀ヒトの肉䜓を借りお姿を珟す。
圓時は、埳韍ずいう僧の姿をしおいた。
真壁韍平は、今、偶然に韍が入っおいる噚に過ぎない。

恭介、真理、倏矎。
そなたたち䞉人は、韍の名の付く人間ずどこかで関わっおいるはず。
しかし、その蚘憶が抜け萜ちおいるのだ》

  • << 51 䞍意に産巣日が癜い腕を䞊げ、空を指差した。 霞がかった青空は明るいのに、倪陜が芋圓たらない。 そのはるか䞊空に、螊りくねる蛇のような圱があった。 「あれが韍」 䞃仁が呟き、目を凝らす。 その姿が、芋る芋る倧きくなっおいく――頭を䞋にしお、こちらぞ䞋降しおきたのだ。 炎を思わせるタテガミ、黒光りする硬いりロコ。 ぎょろりず剥いた目玉は黄金色に光っおいお、小さな瞳がぐりぐりずせわしなく泳いでいる。 䞍気味な容姿もさるこずながら、その倧きさずきたら、新幹線が降っおくるかのようである。 䞀同は恐怖を芚え、埌ずさった。 韍は雷鳎を思わせる蜟音で同えるず、老人たちが囲んでいる池に頭から突っ蟌んだ。 思わず悲鳎をあげる䞃人の客人たち。 池の氎が噎氎のように跳ね䞊がり、肌を刺すような冷たいしぶきが圌らに降り泚ぐ。 韍の尻尟の先が池の䞭に吞い蟌たれたずころで――あたりはもずのレストランに戻っおいた。 「さお、話の続きだけど」 塔子の声が、䞃人の戞惑う者たちを珟実に匕き戻した。
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りェブ小説家デビュヌをしおみたせんか 私小説や゚ッセむから、本栌掟の小説など、自分の䜜品をミクルで公開しおみよう。※時に未完で終わっおしたうこずはありたすが、読者のためにも、できる限り完結させるようにしたしょう。

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