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旅人~生き続ける意味

レス478 HIT数 29324 あ+ あ-

kei( QEMUh )
09/10/02 22:14(更新日時)

人はこの世に産まれ出た時から 生きる意味を探し歩く 旅人である


何故生きるのか・・・ 死ぬ為に生きるのか・・・ 



*小説の中に不快に思われる表現が出ます。嫌な方はスルーでお願いします。

内容については、フィクション・ノンフィクションは読者様のご想像にお任せ致します。

誹謗・中傷等一切不要です。

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No.1159930 09/05/30 15:28(スレ作成日時)

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No.1 09/05/30 15:38
kei ( QEMUh )

今日は私の母の誕生日

何回目の誕生日なんだろう

親の年も覚えて無い

最後に覚えてるのは小学生の頃 母の33回目の誕生日を祝った時だ

あれから何年経ったのかな

そういえば家を出てから何年経ったっけ?

それすら覚えていない

とりあえず心の中でオメデトウと言った

生きてるのか死んでるのか分からないけど

多分生きてると思う

憎まれっ子世にはばかる

母にピッタリの言葉だ 

私が憎んでいる限り

母は生きてるんだって思える

そしてまた 私は『あの時』の事を思い出すんだ・・・

No.2 09/05/30 15:58
kei ( QEMUh )

思い出せる記憶の一番古い部分は 雨風が吹き荒れ雷が鳴ってる空を

家の中から 姉と男の人と私の三人で眺めてる

雷を怖がる私の頭を ポンポンと撫でながら

『大丈夫だよ』と私を安心させてくれる優しい声だけが印象に残ってる

なぜか思い出そうとしても 男の人の胸から上は 黒い影が覆いかぶさっている

だから声と大きな手しか覚えていない

夢の中の出来事だったのかな

数年後 私はこの思い出が 夢では無い事を知る

次に古い記憶は 両親と姉と私で商店街の裏通りにある 6畳の貸家に住んでる頃 

多分4歳くらいかな

姉が小学校入学をした年だった 

父は昼家に居て ビールを飲みながらテレビを観てた

母は昼は近所の食堂で働き 夜は父と何処かへ行ってしまってた

だから夜は姉と二人で寝てた

ある夜 眠りから覚めた私は 急に寂しくなった 母が家に居ない 

いつもなら姉を起こして 二人で抱き合って眠るのだ だけどこの日は母の温もりが欲しかった

No.3 09/05/30 16:07
kei ( QEMUh )

何処に居るのか分からないのに 夜中パジャマのまま裸足で外に出た

クマの縫い包みと手を繋ぎながら 『ママーママー』って泣きながら探して歩いてた

後ろから『ミキーミキー』って姉が私を呼びながら走って来た

私に追いついた姉は『帰ろう。家に居ないとママに怒られるよ』と姉も泣きそうな顔で私の手を掴んだ

私は姉の手を振り払い 『ママーママー何処なの?ママ知りませんか?』と道行く酔っ払いに声を掛けて歩いた

酔っ払いは『こんな時間に子供が歩いてたら駄目だろ!』って怒ってたけど

そんな言葉も耳に入らなかった

とにかくママを探してた 捨てられたのかな そんな事ばかり考えてた

商店街を抜け 国道に出た私と姉 信号は赤だった

正面には交番があった 交番からお巡りさんが出てきた

お巡りさんにママの居場所を聞こうと思い 私は赤信号なのに走り出した

『危ない!』姉の声がした その後凄いブレーキ音がした ボンッと何かが当たった音が聞こえた

道に横たわり 苦しそうに呻いてる姉

大人たちが姉の周りに集まってきた

No.4 09/05/30 16:15
kei ( QEMUh )

車道に飛び出しそうになった私を 力いっぱい歩道に引き寄せた反動で 姉は車道に飛び出す形になってしまった

小さい身体で 力いっぱい私を守ってくれた姉 まだ小学生なのに泣かないで痛みに耐えてる

私は何が起こったのか分からず ただ車道に転がり痛さに耐えてる姉を眺めてるしか出来なかった

お巡りさんは私に名前を聞いてきた 怖くなって何も言えずに居た

『お父さんやお母さんは何処なの?家は?』

私は『お母さん』の言葉に 『ママ居ないの』としか言えなかった

お巡りさんが横たわる姉に『大丈夫だよ。もう直ぐ救急車来るからね。痛いのに泣かないで偉いね』って励ましてた

姉は『泣くとお母さんに怒られるから』と苦しそうに答えてた

暫くして救急車が到着した

救急車のサイレンで 商店街の飲み屋や麻雀店から人が出てきた

その中から『ミキ!何してるの!』と母の声が聞こえた

母は父と二人で 夜な夜な麻雀店に入り浸り 賭け事を楽しんでいた事を 幼いながらも理解できた

この時初めて 母親に不信感を持ってしまった

No.5 09/05/30 16:32
kei ( QEMUh )

母はお巡りさんと何かを話してた 私は父に抱きかかえられた

目線が高くなり 横たわる姉を上から見た

道路に血が流れてた 足から白い物が見えた 姉の右足はピンクになってた

姉は担架で救急車に乗せられ 母も救急車に乗り込んだ

父は車の運転手と何か話してた 車は乗用車ではなく 何処かの会社のトラックだった

私と父はタクシーで救急車の後を追った

病院に着くと母と父が言い争いを始めた

『あんたの所為で車に轢かれたじゃない!』『俺だけが悪いのか!』

手術室から医者が出てきた

母と父に怪我の説明をしていた

右足の膝から下の肉がタイヤの下敷きになり 捲れて剥がれてしまった事

剥がれた下の骨が露出してしまってる事

手術をしても剥がれた部分が 再び元に戻る可能性が無い事

出血量が多く輸血が大量に必要な事 なんとか命だけは助かった事 

No.6 09/05/30 16:50
kei ( QEMUh )

その日の記憶は ここで途切れてる

次に思い出せるのは 病室に無数の花束と果物等のお見舞い品に囲まれてる姉の姿と

スーツを着たオジサン2人に頭を下げられてる母の姿だ

母はスーツのオジサンに泣きながら怒鳴ってた

オジサン達はベットに寝ている姉に土下座してた

幼心に『悪いのはミキなのに、どうして怒らないの?どうしてオジサン謝ってるの?』と思っていた

怖くて口には出せなかった 出してはイケナイ気がしてた

それからは母の運転するママチャリの後ろに座り病院まで毎日通ってた

病院から帰ると父と母は喧嘩ばかりしてた

意味が分からなかったが 母はいつも父に『あの子の事故はアンタが原因なんだから』と言っていた

父は姉に会いに行かなかった 日が経つにつれ母にしてみたら幼い私も邪魔だったのか 家に置いて行かれる事が多くなってた

たまに病院に一緒に行くと 姉は計算ドリルをやってたり お見舞いの果物を私にくれたりした

果物を食べようとした私に 母は『そんな物食べるんじゃない!』と強く叱った

今思うとトラックの運転手や会社から頂いた物だから 手をつけるんじゃない!って母なりの考えだったんだと思う

No.7 09/05/30 17:00
kei ( QEMUh )

事故から1年が経ち 姉の再手術の話が出た

結局剥がれた足の肉が元に戻らず腐った為 他の部位からの移植をする手術だ

移植しても完全に元に戻らない事 移植しても再び腐る可能性がある事

移植する為に剥がした皮膚等は再生しない事 つまり一生跡が残るという事

母は移植に反対した

女の子だしこれ以上傷を残したくないと

しかし骨が露出し筋肉層が見えてる状態では 感染症や壊死してしまう可能性がある事を説明された

母は納得出来ないが 命に関わるならと移植を承諾した

数日後 手術室に向かう姉を見送る私 姉を励ます母の姿

病院での思い出はココで途切れてしまう

手術から数日後か数ヵ月後か思い出せないが 夜私は父に寝かしつけて貰っている所から記憶に残ってる

No.8 09/05/30 17:14
kei ( QEMUh )

お気に入りのクマの縫い包みと一緒に 父が読み聞かせてくれてる絵本にウトウトしてた時だった

夜中なのに玄関のドアを叩く音がした

『開けてくれ。ミキ居るんだろ。開けてくれパパだよ』

ドアを叩きながら言っていた

『パパ?パパなら居ますよー』と返事をした途端 絵本を読んでいた父が私の口を手で塞いだ

そして『絶対開けたら駄目だぞ。』と少し震えながら小声で私に言った

ドアの外からは『開けないとドア壊すぞ!開けろオラァ!』と怒鳴り声がしている

父は私の口から手を外した そして窓を開けて玄関に靴を取りに向かった

私も玄関に一緒に向かった 

玄関に人が居る気配を感じたのか ドアの外の声は優しそうに『パパだよ。開けて』と言った

私は聞き覚えのある優しい声だったので 父が側に居る安心感もあり玄関の鍵を回した

ガチャッと鍵の開く音と共にドアの向こうから見知らぬ男の人が何か怒鳴りながら父に向かって来た

父は靴を片手に窓に猛ダッシュ 窓の外に逃げるように出て行った

『待てコラァ!逃げても無駄だぞ!』と怒鳴りながら男の人は父を追いかけて行った

No.9 09/05/30 17:15
kei ( QEMUh )

私は怖くて布団の中で泣きながらクマの縫い包みを抱きしめた

明け方帰ってきた母は私を抱き起こし『何があったの』と心配そうにしていた

この時の事は母は本気で私を心配してくれてたと思う

ただ後にも先にも 本気で心配してくれたのはこの時だけ

No.10 09/05/30 20:17
kei ( QEMUh )

姉の再手術の経過は最悪だった

移植する為に剥がした皮膚層が化膿し 移植した皮膚層は結局腐ってしまったのだ

母は姉に病状を隠さず全て話してた

まだ小学生低学年なのに 理解できてたのだろうか

私もそろそろ小学校入学する時期が来た

数ヶ月もすると 姉は退院し学校には杖を突いて通っていた

後一週間で私が入学式だと思ってたのに その夜は父と母の様子がいつもと違ってた

母は姉に『ランドセル持ちなさい』と言っていた 中身は勉強道具ではない 下着や洋服等がランドセルに入るだけ詰めてあった

私には『これ持って』と小さなカバンを持たされた

父も母も身支度が済むと『行くわよ』と私達の手を引いて何処かに向かった

No.11 09/05/30 20:30
kei ( QEMUh )

夜の電車に揺られながら 2回ほど乗り換えしたのは覚えてる

電車のシートに座ると そのまま眠ってしまっていたから どれくらいの時間 電車に乗っていたのか覚えていない

母に『着いたから起きなさい』と声を掛けられた

ホームに降りると 初めて来る場所だった

この時商店街のあの家には 二度と戻る事は無いんだと思った

真っ暗で駅員も居ないホームを歩き 無人の改札を出て 私達は無言で両親の後をついて行くしか無かった

何処に向かっているのかも分からず ただ父と母の後を追うしかなかった

杖をつきながら歩く姉は 眠気と疲労からか 『もう歩くの嫌だ』と母に言った

母は『もう少しだから』と言い 姉の持ってたランドセルを持ってあげてた

田んぼと畑しかない暗闇を 親子4人で歩いた

それから暫く歩くと 一軒の家が見えてきた 『あそこに着けば大丈夫』と母が言った

何が大丈夫なのか分からないが とにかく早く座りたかった 眠りたかった

田んぼと畑に囲まれた数軒の家があった その中の一軒に父は向かって行った

私達は少し離れた場所から 父が帰ってくるのを待っていた

No.12 09/05/30 20:45
kei ( QEMUh )

どれくらい待っただろう 父が足早に私達に向かって来た

それを見た母は私と姉に『行くわよ』と言って 父の方に向かっていった

父と母が何かを話してた どうやら父の知り合いの家らしい 3日間泊めてくれるとの事

母と姉と私を連れて 父は知り合いの家に向かった

父の知り合いだと言うお宅に入ると 優しそうな奥さんと怖そうな旦那さんが居た

奥から眠そうな目を擦りながら 私達姉妹と同じ年の姉妹が出てきた

奥さんが私達姉妹に『ゆっくり休んでね。お腹空いてない?お風呂入ろうか?』と気遣ってくれた

私も姉も恥ずかしいのと 人見知りをしていた為 何も言えずにいました

母に『お風呂頂きなさい』と促され 一人でお風呂に入れない姉と 二人でお風呂に入る事になった

私達がお風呂に入ってる間に 大人たちで何かを話し合ってる様だった

ここに連れて来られた理由や 何があったのか等を聞いてはイケナイと思った

それは姉も同じ気持ちだったのだろう

姉に『何があってもミキと一緒だからね』と私に言い聞かせてた

No.13 09/05/30 20:57
kei ( QEMUh )

翌日眠りから覚めると 両親の姿は無かった

昨日初めて会った知らない人の家 隣で寝てる姉を起こした

『お姉ちゃん起きて トイレに行きたいよ 漏れちゃうよ』

姉は直ぐに起きてくれた 

父も母も居ない知らない家 トイレが何処に有るのか姉にも分からない

家の人を探すと 奥さんが台所から顔を出してきた

『おはよう~よく寝たね。ご飯食べるでしょ?出来てるから食べなさい』と笑顔で言ってくれた

姉は『すみません、妹がトイレに行きたがってるので トイレ貸してください』と私の代わりに言ってくれた

奥さんは『しっかりしてるのね。偉いのね。』と姉を褒めた

奥さんにトイレまで案内され用を足すと トイレのドアの前で姉が待っててくれた

姉にもトイレ行かないのか聞くと 姉も用を足すから待っててくれと言われた

姉が入ってる間 キョロキョロと家の中を見渡した

子供用の玩具やタンス 勉強机などが目に飛び込んできた

私の家に無い物ばかりの部屋に 凄いお金持ちなんだって勝手に思い込んでた

No.14 09/05/30 21:06
kei ( QEMUh )

トイレから出た姉と一緒に 再び台所に向かい 奥さんに『ありがとうございました』とお礼を言った

奥さんは笑いながら『お礼なんて言わなくて良いのよ~家に居る間は私の子供と同じだと思ってるから』と優しく言ってくれた

夕方になり 父と母が帰ってきた とても嬉しかった

このまま帰ってこないんじゃないかって 凄く心配だったからだ

父が奥さんに『空き家があったので明日出て行きます。お世話になりっぱなしで申し訳ない』と言った

それを聞いた私は 心の中で「明日この家から別の家に行くのか また歩くのかな 嫌だな」って考えてた

翌日父と母に連れられて 私と姉は新たな家に向かった

知り合いの家を出る時 奥さんが『またいつでもおいでね』と声を掛けてくれたが 子供なりに社交辞令だろうって思った 全く素直じゃない子供だった 

No.15 09/05/30 21:28
kei ( QEMUh )

新しい家で新しい生活が始まった

母に連れられて 姉と私は新しい小学校へ向かった

私は小学校に通うのが始めてなので嬉かったが 姉は転校するのが嫌だったみたいだ

姉と私はそれぞれ教室に案内された

教室に入り自己紹介をした 名前を名乗るのが精一杯だった

休み時間はクラスの子達が興味津々で私に話しかけてきた

『何処から来たの?』『兄弟居るの?』『何処に住んでるの?』

何処から来たのか自分でも判らない 何処に住んでるのかも畑と田んぼばかりだから分からない

姉が居る事しか答える事が出来なかった

授業が終わり一緒に帰ろうと声を掛けてくれる子が居たが 姉と帰るからと断った

家までの帰り道は分からない 来る時はキョロキョロしながら母と来たから道順なんか覚えて無い

姉に頼るしかないのだ 私の中で姉は何でも知ってるって思ってた

田んぼと畑ばかりの道を 姉と手を繋いで帰るのが 知らない環境で不安だらけの私にはとても安心できた

No.16 09/05/30 21:47
kei ( QEMUh )

学校が終わり家に着いても誰も居ない

両親は毎日夜の11時を過ぎないと帰ってこないのだ

学校が終わると 家で姉と色んなことをして遊ぶのが楽しかった

母の洋服や化粧品を使って アイドルごっこをして遊んだりした

夕飯は食べない日が殆どだった

食べないというより 食べる物が無いと言った方が正しい

ある日カップラーメンが一個戸棚から出てきた

姉に食べたいからお湯を沸かしてと頼んだ

姉は『お父さんのだから食べたら怒られるよ』と言ったが 私には怒られない自信があった

父は小さい子供が好きだった

姉より可愛がられてると私は分かってた

だから姉に『ミキが食べたって言えば平気だよ』と言い 二人で一個のカップ麺を食べた

お腹が空いてたからとても美味しく感じた

このカップ麺一個を食べた事を後悔するのに そう時間は掛からなかった

23時になり両親が帰宅した そして食べ終えたカップ麺を見て 父が『俺のカップラーメン喰われた』と母に言った

No.17 09/05/30 21:57
kei ( QEMUh )

父が『カップラーメン食べたのか!どっちが喰ったんだ!』と怒り始めた

ここまでは想定内だった 

だから用意していた言葉を言った『ミキお腹空いたから一人で食べちゃった』

姉と食べた事を言うと 姉だけが怒られるのは分かってた

裸で外に放り出される姉を 何度も見てきたからだ

その度に私は父に『お姉ちゃん家に入れてよ。ミキ悲しいよ』と頼んでいたのだ

父はカップ麺を食べた私に怒る事は無かったが いつまでも『ラーメン食べたかったのに』と言っていた

それを見ていた母がキレたのだ

『そんなに食べたかったら 今ミキのお腹切って出すから!!』と怒鳴ると台所から包丁を両手で掴み 私に迫ってきたのだ

私は恐怖で身体が動かず 泣く事も出来なかった 何故こんなに怒ってるのか意味が分からなかった

包丁の先を私に向け 今にも刺しそうな母に 父が『やめろ!』と言いながら手首を掴んで離さなかった

もみ合ってるうちに 包丁が父の左腕をかすった

父の腕から血がツーッっと流れた 母は泣きながら包丁を床に落とした

No.18 09/05/30 22:03
kei ( QEMUh )

『パパ大丈夫?』私は震えながら精一杯声を出した

『お前なんか産まなきゃ良かった!』母は泣きながら私に怒鳴った

後日分かった事だが 両親はパチンコ屋に毎日行ってて 閉店まで遊んでいたのだ

包丁を握り締めた日 父も母も所持金を使い果たし 明日の生活も出来ないほどだったようだ

『もう遅いから寝なさい』と父に言われ 泣きながら姉と布団に入った事を覚えている

隣の部屋から両親の話し声が聞こえる度に 父が母に殺されないか不安で仕方なかった

翌朝起きて姉と学校へ向かった

姉と歩きながら『昨日怖かったね』って話した 姉も『うん。お母さん疲れてるんだね』と言っていた

私は姉に言われて納得した 

母は疲れると包丁持ち出すんだって思うようになった

No.19 09/05/30 22:13
kei ( QEMUh )

学校にもなれた頃 姉には友達が出来たので 学校の帰りは友達と帰ると言われた

私には友達が居なかった

姉の足にはいつも包帯が巻かれていたのだが クラスメイトに包帯の事を聞かれた事があった

それで喧嘩になり クラスの殆どと口も利かない状態だった

学校の行きと帰りだけが 唯一の楽しい時間だった

『ミキも一緒が良い』と姉を困らせた 姉は渋々了承してくれた

だけど姉達が話す内容も分からず ただ一緒に歩いてるだけだった

それでも一人じゃないと思うだけで良かった

翌日から私と姉は もう学校に行かなくて良いと両親に言われたのだ

学費も給食費も払えないから 担任の先生が家に来たのだ

そして両親と言い争いになり お金が無いから学校には行かせないと両親は宣言したのだ

No.20 09/05/30 22:18
kei ( QEMUh )

学校に行かなくなった姉と私は 一日中家の中に居た

眠くなったら寝て お腹が空いたら水を飲む生活だった

たまに両親が帰ってきた時 食べ物を買って帰ってきてくれた

それを翌日・翌々日まで残して 少しずつ食べていた

そんな生活が何週間か続いた日 スーツを来た人が家に来たのだ

両親が居ない時間の昼間 

知らない人が来ても 玄関は開けたら駄目だと言われていた

部屋の隅で身を潜めて スーツの人が帰るのを 息を殺して待った

両親が帰宅した時 スーツの人が来たと伝えた

スーツの人がポストに置手紙をしていたらしく 翌日は両親とも出かけないで家に居た

そして翌朝 私は母の怒鳴り声で目が覚めたのだ

No.21 09/05/30 23:15
kei ( QEMUh )

『義務教育だか何だか知らないけど、うちには関係無いから!お金が無いから学費も給食費も払えないんだから 通わせたくても通えばお金が掛かるでしょ!だから行かせられないの!』

母が誰かに怒鳴ってた

昨日のスーツのオジサンだった 担任の先生も一緒だ

父は母のやり取りを聞いてるだけだった

私の姿を見た父が私に尋ねた 『ミキは学校楽しいか?行きたいか?』

私は『楽しくないし行きたくない。家にいたい』と正直に答えた

担任の先生が登校しない事が非常に困ると母に言った

『うちは学校に行かせなくても困らない!勉強ぐらい私が教える!そんなに勉強教えたかったら 家に毎日教えに来い!』

母は怒鳴り終えると玄関のドアをピシャリと閉めた

それから三日後 担任の先生が毎日家に来るようになった

一時間~二時間程 姉と私に勉強を教えて帰って行きました

勿論放課後の時間に家に来て 勉強を教え終わると再び学校へ戻っていきました

両親は相変わらず不在でした

勉強を教えながら 先生は家の状況を見ていたのでしょう

一ヶ月も経たない頃 市役所の人が私と姉を施設に入れるよう 両親に話しに来ました

No.22 09/05/30 23:31
kei ( QEMUh )

その夜から両親の激しい言い争いが毎晩続きました

『自分の子供じゃないから何でも言えるのよ!』と母

『ミカ(姉)は父親ソックリだしな!俺はミキが居れば良いんだ!早く施設に入れちまえ』と父

『ミカのお金を全部遣っておきながら 施設に入れろって言うんじゃないわよ!あの子達は私の子よ!ミカに対して申し訳ない気持ちが無いわけ?!』と母

『お前だって慰謝料遣っただろ!俺だけの責任みたいに言うな!』と父

これだけの会話で私は父が自分の父親じゃない事を知った

姉に辛くあたる父が不思議だったが この時色々な事に納得してしまった

いつだったか姉が寝てる布団に 父が酔っ払って一緒に寝てた事があった

翌朝 母が凄い剣幕で父に『何処で寝てんのよ!何してたのよ!』姉には『何もされてない?大丈夫?』と凄く心配していたのを覚えている

当時は何でそんなに怒るのか分からなかったが 言い争いを聞いてれば 自然と理解してしまう物なんだ

No.23 09/05/30 23:38
kei ( QEMUh )

言い争いを聞きながら どうやら姉に支払われた事故の慰謝料が一銭も残っていないみたいだ

私と姉を捨てるか捨てないか相談してるんだって思った

いつかの男の人が言っていた『ミキーパパだよ 開けて』と言ってた怖い人が本当の父親だと 何となく分かってしまった

そしてあの時逃げた父は きっと実の父親と母を取り合ってたんだろうと思った

姉の事を悪く言う父が嫌いになった

姉の慰謝料を遣った両親が嫌いになった

姉の事故の原因は私なんだとずっと負い目を感じてた 

母も姉の事故で自分を責め続けて居る だから私より姉の方が愛されてたんだ

母は私を産んだ事を後悔してる 包丁で殺そうとした 私が嫌いだからだ

何がなんだか分からなくなった

私は姉と一緒に施設に行きたかった 母の怒鳴り声を聞きたくなかったからだ

No.24 09/05/30 23:47
kei ( QEMUh )

結局学校に登校する事を条件に 施設に保護される事は無くなってしまった

姉は母から離れたくないと 泣きながらお願いしていた

私は心の中で落胆したのを今でも覚えている

それから私は自分の考えだけで生きていこうと決めた

小学校2年生の頃だった

母が大切に貯めていた500円貯金を 少しづつ拝借してはゲームセンターに通った

デパートで欲しい玩具があると 500円貯金を必要なだけ持ち出し買い込んだ

姉は泣きながら私を止めたが 姉の欲しいと言っていた色鉛筆のセットを買ったりしてた

ある時は母宛に届いた宅急便の荷物を勝手に開けた

中にはお米や野菜等が詰まってた 

一緒に封筒が入っていた 学校で勉強してないから字が読めない

しかし現金が3万一緒に入っていた

姉に手紙を読んでもらうと母方の祖母からだった

『お金は子供の為に遣いなさい』と書いてあった

だから1万抜いてそのままゲームセンターに行った 私の分は私が遣う

No.25 09/05/31 00:28
kei ( QEMUh )

ゲームセンターに行くと 顔見知りの男友達が出来た 多分中学生か高校生だろう

私がいつもお金を持っていることを知ってるから 良いカモだったのだろう

誰が話しかけてきても 私には関係無いって思っていた

ゲーム操作が分からない私に優しく教えてくれたお兄ちゃんが居た

このお兄ちゃんとゲームしてる時が 一番の楽しい時間になっていった

一万を握り締め ゲームセンターに行くと お兄ちゃんが居た

一緒に遊ぼうと声を掛けようと近寄った

お兄ちゃんは友達と話してた

話しかけにくい空気だったから お兄ちゃん達の近くのゲームで遊んでた

すると後ろから『あの子いつも金持ってるんだぜ。言えばお金くれるんだ』とお兄ちゃんの声が聞こえた

私は振り向く事が出来なかった 聞こえてないフリをするのが精一杯だった

私がゲームに夢中になってると思ったのか 何事も無かったかの様にお兄ちゃんが話しかけてきた

私はゲーム機の上に2千円分の100円玉を乗せていた

お金目当てで優しかったのかって思うと悲しくなった

だから何も言わず そのまま席を立った 

ゲームは途中 お金はそのまま

No.26 09/05/31 00:34
kei ( QEMUh )

出口に向かう私に向かって お兄ちゃんが『おい!お金忘れてるぞ!遣っちゃうぞ!』と叫んでた

好きにすれば良い 言いたかったけど涙が出そうだから 何も言えず店を出た

足早に家に向かい 誰も居ない家に姉を独り残して遊んでた事に気付いた

姉に寂しい思いをさせた

また姉に辛い思いをさせている 早く帰らなきゃ

家に着くといつもより早い時間に両親が帰宅していた

そして私が帰って来た時間も気に留めず 家の中の空気は重苦しい状態だった

私が拝借してた500円貯金が減っている事に気付いてしまったのだ

それもその筈 拝借していた時は気付かなかったが 貯金していた入れ物の3分の2を遣い込んでしまっていたのだ

母は怒るでもなく ただ無言で500円貯金の入れ物をじっと見つめていた

No.27 09/05/31 21:37
kei ( QEMUh )

『ただいま・・・』私は怒られる以上の事を 母にされると覚悟しながら言葉を出した

母は何も言わず 私の方も向かなかった

父が『ミキが遣ってたのか?』と静かに尋ねた

私は震えながら『・・・うん。ごめんなさい』とだけ答えた

家のお金を勝手に持ち出してしまった お母さんが貯めてたお金を遣ってしまった

お母さんに・・・謝らなきゃ

『お母さん・・・ごめんなさい』

母の目が私に向いた

そして母は怒鳴る事は無く 静かに・・そして憎悪に満ちた目つきで とても冷静に私に話した

『良いのよ。子供の手の届くところに置いていたお母さんが悪いんだから。でもね、貯めてたお金で家賃を払おうと思ってたの。もう何ヶ月も家賃払えなかったから、この500円貯金で払おうと思ってたのに・・・何に遣ったの?』

いつもと全く違う様子に 子供ながらに間違いなく取り返しのつかない事をしてしまったと思った

No.28 09/05/31 21:54
kei ( QEMUh )

私は母と話しながら 頭の中で過去に戻れないか考えてた

タイムマシーンがあったら・・・と空想の世界に行ってしまっていた

『欲しい玩具とか食べ物買って食べてた』嘘をつく事も考えてた

だけど今は正直に話して これ以上怒られないように必死だった

母は『どこで買ってたの?子供が大金を持って一人で買い物してて、何も言わない店員に文句を言わないと。買った物も返品して貰わなきゃ』と言った

買った場所で母が怒鳴るであろう事は分かっていた

そして私は買った物を手離したくはなかった

何よりも 母が自分以外に怒鳴るのがとても嫌だった

だから母の質問には答えたくなく ただ黙るしかなかった

黙り込んでる私を見つめる母は 次第に怒りが増してきたようだった

『何処で買ったか聞いてるのよ!耳ついてるんでしょ!聞こえないの?!早く言いなさい!』まくし立てるように 母は私に怒鳴った

『ヒック・・ウウ・・ごめんなさい』泣きながら謝るしかなかった

私が自分で悪い事をしたのだ 

だから関係ない人に怒らないで欲しい 私が母に何をされても 耐えていれば良いんだ

怒鳴っても謝るしか出来ない私を 母はビンタを何度も何度も私の頬にした

No.29 09/05/31 22:01
kei ( QEMUh )

それを見ていた姉が 突然 泣きながら『本当はミカが遣ったの!一緒に遣おうってミキを誘ったの!だからミキは悪くないから!ミカをぶって!』と母に駆け寄ったのだ

母は姉の行動に驚きをみせた

そして姉に『ミキを庇う必要は無い!ママはミカがミキを庇ってるって分かってるんだから!』と母は涙を浮かべながら姉に言った

それでも私を叩く手は止まらなかった

私は叩かれながら 心の中で『お姉ちゃんアリガトウ』と何度も言っていた

父は傍観者になっていた

私を庇う訳でも無く 母と私のやり取りを 関わりたくないという感じで 見ているだけだった

結局お金は知り合いから借り 何とか家賃は払えたらしい

この時 母のお腹には 新しい命が宿っていた

幼い私には 新しい命が宿っているなんて 全く分からなかった

数ヵ月後 一週間留守にすると母が言って家を出てから 赤ちゃんを連れて帰ってくるまで 母の妊娠なんて全く知らなかった

No.30 09/05/31 22:14
kei ( QEMUh )

500円貯金を遣い込んでから数日間は いつもより激しく母は私に辛くあたっていた

久しぶりのご飯も お茶碗に少しだけだった

姉が私のお茶碗に 自分のご飯を少し入れようとしたら 母は姉を叱った

『泥棒に飯分けてやる必要は無い!』

姉は母の言葉を無視し 私のお茶碗にご飯を分けてくれた

それを見ていた母は 私に『あ~あ 何で泥棒なんか産んでしまったのかしら。私が産んだんだから、私が殺しても誰も文句言えないわよね?あー殺したい。ミキ・・・消えてくれないかなぁ?』と言い放った

楽しいはずの食事の時間も 私が原因で皆が嫌な思いをしている 消えてしまいたい

殺すなら いっそ殺して欲しい 私が消えれば 姉も父に可愛がって貰える

私が居なくなれば・・・居なくなれば・・・神様私を消してください 何度も心の中で神様にお願いをした

数日続いた母の言葉の暴力にも 父は何も言ってはくれなかった

私が泥棒だからパパに嫌われちゃったんだ・・・

No.31 09/05/31 22:20
kei ( QEMUh )

いつのまにか 私は言葉を発しない 笑わない子供になっていった

そんな私を姉は心配し 面白い事をやって 私を笑わせようとしたり 一所懸命に話しかけたりしてくれてた

なのに私は答える事が出来なかった 

言葉を出す事も 笑う事も許されない人間なんだと思い込んでいたからだ

学校でも周りからはイジメの対象になっていた

いつも同じTシャツ 汚れた靴 何日もお風呂に入れて貰えないから髪はボサボサ

私に話しかける子は居なかった

話すとバイ菌が遷ると 皆で言っていたのだ

家でも学校でも孤立していた

唯一 姉は母の目を盗んで 私と仲良くしていてくれた

それでも私は そんな姉に『お母さんに怒られるから話しかけなくて良い』と紙に書いて渡した事もあった

No.32 09/05/31 22:33
kei ( QEMUh )

学校が終わり 家に帰るのがとても嫌だった

でも行く場所も他に無く 帰る場所は 母の居るあの家しか無かったのだ

ある日 母が『一週間帰ってこないけど 留守番しててね。学校には行かなくて良いから。』と1万円を姉に渡し 両親で何処かへ行ってしまったのだ

私はとても嬉しかった

母の居ない家 帰ってこない家 嫌味も暴力も無い家 つまらない学校にも行かなくて良いんだ

3日もするとリラックスできたのか 姉と笑いあえるまでになっていた

その日の夕飯を何にするか姉と相談してるだけで笑えてた

『ミキ今夜は何食べたい?』

『ワカメラーメンが良い!お姉ちゃんは?』

『またワカメラーメン?昨日も食べたでしょー。お姉ちゃんはミキが食べたい物で良いんだけどワカメラーメンは止めようよ』

こんな会話なのに 物心ついてから 初めて感じる暖かい気持ちになった

母が帰ると言った一週間目が来た

昼過ぎに両親は帰って来た

母は大事そうに タオルに包まれた赤ちゃんを抱いていた

No.33 09/05/31 22:43
kei ( QEMUh )

当時の私は 赤ちゃんを見て 母が誘拐して来たんだと本気で思った

きっとお金が無いから 赤ちゃんを誘拐して来て お金を要求するんだと思ってた

『ミカとミキ 今日から妹が出来たから面倒見てね』母は言った

私と姉は妹の顔を覗き込んだ

私は思わず『顔クチャクチャで猿みたい!』と言ってしまった

父のビンタが飛んできた

産まれて初めて 父に叩かれた瞬間だった

『お前より可愛いじゃないか!自分の顔を鏡で見て来い!』

怒鳴りながら父は私を睨み付けた

この時私は 父の態度が 姉に対する仕打ちと同じ事に気付いた

これから先 もう以前みたいに 優しく『ミキ』と呼んでくれることは無いと思った

妹が出来て 父も母も姉にオシメの仕方やミルクの作り方を教えていた

スパルタ式で教え込んでいた

母は将来の為と姉に言っていたが 私は絶対違う!と思っていた

姉が妹のオシメやミルク作りに慣れたのが 妹が生後3週間程経った時だった

まだ首も据わっていない妹を 優しくあやし 寝かしつけるまでになっていた

夜中のミルクも姉が与えていた

まるで姉が母親のようだった 

この時 姉はまだ10歳だった

No.34 09/05/31 22:52
kei ( QEMUh )

姉が妹の面倒を見るようになってから 学校を姉妹で早退する事が多くなっていた

1時間目の授業が始まると 担任の先生に家に帰るように言われた

母方の祖母が危篤だから 直ぐに帰る様に 母から学校に電話があったと言うのだ

私は姉に手を引かれながら『おばあちゃん 大丈夫かなー。ミキ会った事無いけどお姉ちゃん会った事あるの?覚えてる?』と姉に尋ねた

食べ物やお金を送ってくれる優しいお祖母ちゃん

会った事も無いけれど 私は心配でたまらなかった

姉は『どうせ嘘だよ。パチンコ屋に行きたいから帰って来いって事だよ。おばあちゃんは大丈夫だよ。』と冷めた口調で言った

私は何も言えなくなった

嘘じゃないって信じたかった

子供を学校から呼び寄せてまで パチンコに行くような親じゃないって思いたかった

No.35 09/05/31 23:08
kei ( QEMUh )

家に着き 玄関を開けると 父と妹しか居なかった

父が姉に『面倒みてて。お父さん行くからな』と言った

私は『お祖母ちゃん大丈夫なの?ミキたち待ってるの?一緒に行きたい』と父に言った

父は笑いながら『お祖母ちゃんねぇ・・・嘘だよ。嘘。お母さんが出てるって言うから今から急いで行かないとな。じゃ留守番頼んだぞ』とだけ言い 出かけてしまったのだ

私は呆然とした

姉はため息をつき『今日はお昼給食食べれなかったね。夜まで我慢できる?』と私に聞いた

私は我慢できるとだけ伝えた

こんな事が何回か繰り返し続いたある日 姉と妹と3人で遊んでいた時だった

姉が妹を肩車し 部屋の中を走り回り 妹が喜んで笑っていたのだ

私は妹と姉の笑顔を見ながら 一緒になって笑っていた

妹を肩車した姉が 電灯の下を走り抜けたとき 妹が小さく『グエッ』と言ったのだ

私は驚き姉に『お姉ちゃん!首絞まってる!』と叫んだ

No.36 09/05/31 23:16
kei ( QEMUh )

電灯の明かりを 寝たまま消せるようにと 長めのヒモを結んであったのだ

その紐が妹の首に巻きつき 運悪く締める事になってしまったのだ

幸い姉が妹を下に降ろす事無く私が外した為 首吊り状態にはならず

妹の首に薄っすら跡が残る程度で 妹も泣いてはいたが 直ぐに泣き止み笑っていたのだ

私と姉はホッとした

『サヤ(妹)大丈夫だね。あ~ビックリした』と私は姉に言ったが 姉は顔を青くしていた

『どうしよう・・・お父さんに怒られる・・・どうしよう』姉は呟いていた 

私はワザと首を絞めた訳じゃ無いんだから 怒られないよと内心思っていた

もしお父さんがお姉ちゃんを怒ったら 今度は私が守ってやる!と決心していた

その夜 両親が帰ってくると 父は真っ先に妹の顔を見に部屋の中に入った

母は疲れていたようだった

妹が寝てる部屋から 父が『サヤの首に跡がある!首絞めたのか!』と怒鳴りながら私と姉の元に来たのだ

姉が遊んでいた時の状況を説明し ワザとじゃないと何度も説明していた

No.37 09/05/31 23:29
kei ( QEMUh )

父は余程頭にきたのか 姉の首を締め上げたのだ

『どうだ!苦しいだろ!サヤも苦しい思いをしたんだぞ!分かったか!』

姉に馬乗りになり 首を絞めながら怒鳴っていた

姉は足をバタバタさせもがいていた

私は母の顔を見た

いつもなら母が庇うのに この日は何か有ったのだろうか 一向に庇ってくれなかった

私は玩具のオルゴールを手にし 姉に馬乗りになってる父の背後から近づいた

『お姉ちゃんをイジメるな!』と泣きながら手にしたオルゴールを父の後頭部めがけて振り下ろしたのだ

こんな事をしたら 自分がどうなるか分からない

きっと今度こそ殺されるかもしれない

でも良いんだ!お姉ちゃんを守るんだって決めたんだから!こんなヤツお父さんじゃない!

8歳の子供が力いっぱい殴っても 大人の男には効かないのは分かっていた

だからオルゴールで力いっぱい殴ったんだ

No.38 09/05/31 23:49
kei ( QEMUh )

殴られた父は 姉の首を絞めていた手を外し 後頭部を両手で抱え 馬乗りになっていた姉の上から 床に転がり落ちた

『痛い!痛い!』父は相当痛かったらしく 床を転げまわっていた

父の後頭部に上手い具合にヒットしたのだろう

それを見ていた母が笑いながら『もう良いじゃない。面倒見させた自分が悪いんだから』と痛がる父に言った

父の後頭部からは少し血が出ていた

私は姉を守ったという 達成感に酔いしれていた

姉を守ったんだ!いつも守られてばかりだけど これからは私も姉を守ってあげられるんだ!

この後自分が何をされるか分からない

それでも姉に恩返しが出来たような気がしていた

父は起き上がり『これからは気をつけろよ!』とだけ言った

私を叩かない 私に怒鳴らない もしかしたら寝ている間に殺そうとしてるのかも

こんな不安が頭を過ぎった

その夜は眠る事が出来なかった

父や母が寝返りを打つたびに 恐怖で身体が強張った

早く朝にならないかな・・・寝たふりをしながら 朝が来るのを待っていた

妹が起きたのか暫くモゾモゾと音がしていた 様子を見ようかと思っていたら泣き出したのだ

No.39 09/05/31 23:58
kei ( QEMUh )

姉が起き上がり『よしよし。ミルクかな?オムツかな?』と妹に話しかけていた

母も起きたようだ『オムツ交換するから、ミルク作って来て』と小声で姉に言っていた

オシメを交換する音が 静かな部屋に響いていた

『ミルク持って来たよ』姉が戻ってきたみたいだ

私は寝ているフリを続けていた

母が『お姉ちゃんには苦労ばかり掛けてゴメンネ。本当にゴメンネ』と言った

私はビックリした

母がこんな言葉を言う人だと思っていなかったからだ

姉は『ううん。良いの。サヤもミキも可愛いから。お母さんも疲れているんだね。後は大丈夫だから寝て』と母を気遣っていた

母は泣いているようだった

『こんな男と一緒になったから、子供達に苦労かけてしまって。お祖母ちゃんの所にも行けないし。ごめんね。母さん行く場所無いから・・・ごめんね』

私は母の言ってる意味が理解できなかったが 姉には理解できていたみたいだった

『もう良いから。寝て。お母さんが泣くと悲しいから泣かないで』と姉も涙声で言っていた

姉と母には二人だけの世界があった事を知った夜だった

No.40 09/06/01 00:41
kei ( QEMUh )

その夜から徐々に 私は姉と母を見る目が変わっていった

父が姉に躾だと言いながら 叩いたりすると 母が毎回庇っていた

私が父に 姉の時と同じように叩かれていても 母は庇ってくれる事は無かった

母は妹を抱きながら『ミキが悪い』それだけ言っていたのを覚えている

私は母に嫌われている 痛いほど分かりきっている事だ

父も私の本当の父親じゃないから 私より自分の子が可愛いんだ

だから私は両親に叩かれるんだ

ある時は眼つきが気に入らないと言われ叩かれる

両親と顔を合わせるから 叩かれる

なら顔を合わせなければ良いんだ 

そう思ったら下を向いて過ごすしか無かった

両親に話しかけられても 家に居る時はずっと下を向いていた

ある日下を向いていたら 母に髪の毛を思い切り引っ張られた

『髪の毛が長いから根暗に見える』そう言って いきなりハサミで髪の毛を切られた

文房具用のハサミで切られたので 髪の毛はガチャガチャになった

母は笑いながら『狼カットで良いじゃない』と泣いてる私に言ったのだ

No.41 09/06/01 00:52
kei ( QEMUh )

こんな髪型で学校に行ったら 余計イジメられる 学校に行きたくない

母に行きたくないと言ったら『もともとイジメられてるんだから、別に平気なんじゃないの?』と冷たく言われてしまった

私が学校でイジメに遭ってることを 担任の先生から聞いていたのだ

私のイジメられて居る原因が 少なからず家庭環境にある事を 先生が伝えたのだ

目の前が真っ暗になった

イジメにあっているって 母に知られたくなかった

母に学校で虐められている事を知られると 何かにつけて言われるからだ

『根暗だから苛められるんだ』『泥棒は苛められる運命だから、学校でも苛められるんだ』『友達1人も居なくて可哀相ね』

母の口から虐めにあってる事実を言われる度に 悔しいと感じる事より先に 恥ずかしい気持ちになった

姉がたまらず助けに入った時があった

『関係ないでしょ!』と私は姉に言った

お母さんに対して 「良い子ちゃん点数」を稼ぐ為に 私を庇ってるって思っていた

No.42 09/06/01 01:02
kei ( QEMUh )

私にとって地獄とも思える日常に 終止符が打たれる日が来たのだ

姉が小学校5年 私が小学校4年 

11月 学校の授業が終わり 姉を下駄箱で待っていた

姉の友達が『ミキちゃん?ミカちゃんはもう帰ったよ?』と教えてくれた

先に帰るなんて!と腹を立てながら家に向かった

玄関を開けると 姉の姿は無かった

妹も居なかった 両親の姿も無かった

私を家に残して 皆で何処かに行ってしまったんだって分かった

姉のランドセルが無かった

捨てられたって寂しさよりも 叩かれなくても良くなったと真っ先に思った

その日は夜まで 誰か帰ってこないか 心配でたまらなかった

食べる事の心配より 誰かが帰ってきてしまうのではないか という不安の方が大きかった

結局誰も帰ってくることは無かった

翌日 私は学校には行かなかった

独りで家に居る事しか出来なかった

No.43 09/06/01 01:10
kei ( QEMUh )

家族が居なくなって 3日が経った頃 大家さんが家に来た

私は両親以外の大人に助けを求めようと 玄関を開けようとした

その時大家さんが男の人と玄関先で話している声が聞こえた 父だった

玄関を開け外に出ると 父が『中に入ってないさい』と言った

見ると父と大家さんの姿しかなく 母や姉達の姿は無かった

暫くして父が家に入ってきた 私は父が帰って来た事でホッとしていた

『一人なのか?お姉ちゃんは?』父は何も知らない様子だった

私しか居ない日が3日続いてる事と 何も分からない事を説明した

父が言うには 母と4日前の夜喧嘩をして父は家を出て行った という事だった

私が一人家に居る事より 妹が何処に居るのかの心配ばかりしていた

探しに行くと言い残しご飯代として三千円を置いて 父は何処かに行ってしまった

また私は家に独りになってしまった

No.44 09/06/01 01:20
kei ( QEMUh )

家族が居なくなって一週間が過ぎた

父はあれ以来戻ってこない

貰った三千円も残り16円になっていた

その日の夜 母が姉と妹を連れて帰って来た

私の姿を見て『お父さんは?』と聞いた

数日前に来た事とお金を貰った事を伝えた

母は私と姉に『急いで荷物を纏めなさい』と言った

以前の母の様子とは明らかに違っていた

何があったのか 何がこれから起きるのか

聞きたかったけど 今は急いで荷物をランドセルに入れるしかなかった

少しの洋服と下着を入れて 教科書を詰めようとしたら母に持っていかなくて良いと言われた

少しの荷物を抱えた私達は 母の後について行くしかなかった

この土地に来た時と同じだ

途中母は交番に寄った お巡りさんに何かを話してお金を借りていた

そして駅に向かい私達は電車に乗った

No.45 09/06/01 01:28
kei ( QEMUh )

夜の電車に揺られながら 何処に向かっているのか分からないのは 私だけだった

姉に『パパは?』とコッソリ聞いてみた

姉は『あんなヤツ、もうパパじゃない!パパって呼ぶな!』と怒りながら言っていた

この時もう父の話は禁句なのだと思った

電車を2回乗り換えた

見覚えのある駅に着いた

駅の横にある商店街を歩いた

昔住んでいた商店街だった

私は昔の家に戻るのかと思った

しかし母の足は止まる事は無かった

暗い夜道をただ無言で歩いていた

とても寒い夜だった

No.46 09/06/01 01:37
kei ( QEMUh )

どれくらい歩いただろう

もう皆寝てる時間なのに 母は何処に行こうとしているんだろう

暗い住宅街に入ると 母は同じ道を何度も行き来した

『もう歩き疲れた』私は母に言った

母は何も言わなかった

公衆電話を見つけると 母は暫く公衆電話を見つめていた

そして何処かに電話を掛けた

電話を切ると 母は再び今来た道を戻り 住宅街に向かって歩き始めた

さっきまで真っ暗だった住宅街に 一軒だけ明かりを点けた家があった

母は私の背中を押し『あの明かりの家に行って こんばんはって言ってきなさい』と言った

何が何だか分からない 

知らない人の家に『こんばんは』と言える時間では無い事ぐらい 私には分かっていた

姉に連れられてその家の前まで行った

玄関のドアは開けてあり 姉が小さな声で『こんばんは』と顔を覗かせ言った

私も『こんばんは』と言いながら家の中を覗いた

家の中には 一人のお婆ちゃんが座っていた

No.47 09/06/01 01:44
kei ( QEMUh )

お婆ちゃんは姉と私の顔を見るなり 怒鳴るように『こんな時間に何の用だ』と言った

その声は母にも聞こえていた

私はお婆ちゃんが怖かった

声は大きいし いきなり怒るし 何より年寄りと話したことが初めてだったからだ

母は泣きながら中に居るお婆ちゃんに『こんな時間にごめんなさい。最後に顔だけでも見たかった』と言い 私達の手を引きその場を去ろうとしたのだ

お婆ちゃんが再び怒鳴るように『待ちなさい!中に入りなさい!』と言った

母は足を止めた だけど家に背を向けたままだった

『ママ中に入ろう』と姉が言った

母は泣きながら 玄関に入ると いきなりお婆ちゃんに土下座をしたのだ

『ごめんなさい。本当にごめんなさい』

深夜にお邪魔したから謝ってるの?と思った

お婆ちゃんは『良いから入りなさい』と言った

二階から誰かが降りてきた

『お義母さん、こんな時間に大きな声出したら近所迷惑ですよ』

どうやらお婆ちゃんのお嫁さんみたいだ

No.48 09/06/01 01:56
kei ( QEMUh )

家にあがるとお嫁さんは 姉と私に『疲れたでしょ?ミカちゃんもミキちゃんも大きくなったねー』と笑顔で話しかけてくれた

ポカンとしている私に 母が『お母さんのお母さんだよ。』と教えてくれた

お祖母ちゃんは母に小言を言い出した

『全く・・子供三人も連れてこんな時間に帰って来たと思ったら・・だからあれ程反対しただろ!それでも聞かないで好き勝手にやってたんだろ!これから子供三人も抱えてどうやって生活していく気だ!だからあれ程・・』

お祖母ちゃんが言いかけたとき お嫁さんが『お義母さん!』と強く制止した

『子供の前ですよ。今夜は遅いから明日ゆっくり話せば良いでしょ。子供達は二階で寝ましょうね』とお嫁さんは言い 私達を二階へ連れて行った

二階には布団とパジャマが用意されていた

ピンクの可愛いパジャマだった

パジャマを着て寝る事が初めてだ

今までパジャマで寝る習慣が無かったからだ

布団もフワフワで何処も切れていない

何もかもが輝いていた

No.49 09/06/01 02:01
kei ( QEMUh )

パジャマに着替え 布団に入ると姉と二人で お嫁さんに『おやすみなさい』と言った

私は眠りに落ちるまで お祖母ちゃんの事を考えていた

送ってくれたお金 遣っちゃったんだよな・・・

今頃お母さん お祖母ちゃんに私が泥棒だって言ってるのかな・・・

翌日目を覚ますと 姉の姿もお嫁さんの姿も無かった

洋服に着替え 一階に降りた

姉がリビングでご飯を食べていた

その隣には一人分の食事の支度がしてあった

お祖母ちゃんが『おはよう。トイレは済ましてきたの?』と私に話しかけてきた

昨夜の怖いお祖母ちゃんとは違って とても優しい感じで話しかけてくれた

それでも声が大きいから 少し怖かった

『おはようございます。トイレ・・・何処ですか?』私はオドオドしながら返事をした

お祖母ちゃんがトイレに案内してくれた

『トイレが済んだら、そこの洗面台で顔と歯磨きしてから来なさい』とお祖母ちゃんに言われた

トイレで用を済ますと 言われた通りに 顔を洗い 新しい歯ブラシで歯を磨いた

私は再びリビングに戻った

No.50 09/06/01 02:19
kei ( QEMUh )

リビングに戻ると お祖母ちゃんに『パンとご飯どっちが良いの?』と聞かれた

私は『え・・・ご飯で』と小さい声で答えた

姉に隣に座るように言われ 一人分の食事の用意は私の分だった事に気付いた

テーブルには 真っ赤じゃないウィンナーと目玉焼きと煮物が乗っていた

お祖母ちゃんが味噌汁とご飯を私の前に置いた

真っ赤じゃないウィンナーを見るのが初めてだった

それより食事らしい食事をするのが 何年か前に父の知り合いの家で朝ごはんをご馳走になった時以来だ

『いただきます』私は恐る恐る箸を手に取った

お祖母ちゃんは『足りなかったら言いな。食べたい物作ってやるから』と言ってくれた

言葉は乱暴だけど とても優しさを感じた

手紙の人に間違いないって思った

赤くないウィンナーを一番最初に口に入れた

パリッと音を立てて口の中に肉汁が溢れた 初めての食感だった

『おいしーい!』思わず声が出てしまった

お祖母ちゃんは 驚いた顔をした

それもその筈

世の中バブル期と言われている頃だ 皮付きウィンナーくらい何処の家庭でも買えるだろう

皮付きウィンナーを食べた事が無い 子供にお祖母ちゃんは驚いたのだ

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