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交換小説しませんか?

レス91 HIT数 5461 あ+ あ-

チキン( 30代 ♂ BMsZnb )
19/11/14 13:00(更新日時)

交換日記ならぬ、
交換小説しませんか?
先が読めない小説、
お互いの感性が試される小説。

流れに身を任せて繋げていきましょう。
どこまでやれるかわかりませんが、とりあえずノってみようということで。
主としては小説を書いたことありませんが。

まずはファンタジーなど書きたいなという思いです。

18/07/03 07:45 追記
スレ返信なかなかできなくて
すいませんm(_ _)m💦

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No.2665330 18/06/23 01:22(スレ作成日時)

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No.2 18/06/23 08:33
チキン ( 30代 ♂ BMsZnb )

>> 1 ここです。

No.4 18/06/23 09:37
チキン ( 30代 ♂ BMsZnb )

>> 3 どうぞどうぞ。

ぼく自身も不慣れなもので、小説になるのかわかんないけど、
話を繋げていけたらな、という次第です。

No.5 18/06/23 09:54
チキン ( 30代 ♂ BMsZnb )

ドッペルゲンガーって知ってるかい?

自分にそっくりな人物を見かけると、自分の死期が近いといわれている。

おとぎ話のような伝説のような、
本当にそういうことってあるのかねぇ。

No.7 18/06/23 10:24
チキン ( 30代 ♂ BMsZnb )

>> 6 「当たり前だろ、

見かけたら死ぬっつーの!」

俺はこいつに笑いながらツッコミを入れた。

No.9 18/06/23 13:00
チキン ( 30代 ♂ BMsZnb )

>> 8 「気になりだしてること?
何だよ?」

こいつは何気なしに切り出してきた。
何かとてつもないことを言うのか、それともとてつもないつまらない冗談でも言い出すのか、

俺はこいつの次の言葉を待つ。

No.11 18/06/23 19:05
チキン ( 30代 ♂ BMsZnb )

>> 10 「う~ん、ありきたりでは、ないな。
アリがよってくるほどお前、
甘い顔してねーもん、」

無反応。
てかちょっとイラッとしてるみたいだ。


「怒んなよ、悪かったよ、
俺の悪いクセ出ちまったなー。

ついお前がマジメな顔してると
からかいちまいたくなるんだわ。

でー、なんだ、」

気持ちを切り替え、真剣モードになる。


「話をまとめるとぉ、

お前が転勤先で見ず知らずのひとたちから
声をかけられまくった、

でも名前は違う。
でも本人と思われるほど
顔が似ている…」

一人ならまだしもそんなに何人もの人から間違われることなんて、
そうそうあることではない。

こいつの顔に目を移す、
目がマジだ。


、そいつが本当にドッペルゲンガーならヤバイよなぁ…

え!?
てか、ドッペルゲンガーって普通に生活してんの?
普通にコミュニケーションとれんの?
俺のイメージでは死神っていう感じなんですけど?
突然フッって現れる感じなんですけど?
でも実際のところわからねーし…


俺の悪いクセその2。
ついつい考えだしたら話が膨らみすぎちゃう。

案の定、目の前のやつは首を傾けてこっちを見ている。

気をとりなおして。

「お前の転勤先ってどこだっけ?」

No.13 18/06/23 20:24
チキン ( 30代 ♂ BMsZnb )

>> 12 「あぁそうだ、S区だったよなぁ、
言ってた言ってた、
ハハ、」

そうだったそうだった、
右から左に流れてたわ、

「俺んちから近けぇじゃん。
で、

お前仕事、いつ休みだっけ?」

No.15 18/06/23 23:49
チキン ( 30代 ♂ BMsZnb )

>> 14 「どうするって?決まってンだろ。
お前のソックリさんがどんなヤツなのか調べるんだよ。
調べる為にはお前の顔が必要だろ?
俺一人じゃあどうにもならん!
だから次、出社した時にシフト
調べとけよ。」


わかりましたよ、としょうがなさそうにおどけるこいつ。

こいつ、自分のことなのに他人事のように言うところあるよな。
お前には危機感というものがないのか?

ほんと、正反対な性格だぜ。
まぁだからこそ、一緒にいて
楽しんだけどよ。

「あとお前の命の危険は大丈夫そうだな、
だってお前のソックリさんはだいぶ前に姿を消してんだろ?
まぁ帰ってくるかは別としてな。」

なんてついつい自分の感情だけで喋っちまってるど、当の被害者の意見も聞かねえとな。

「お前は自分のソックリさんのこと知りたいか?

正直、ドッペルゲンガー説が本物ならよぉ、
知ることが安全なのか知らないことが安全なのかわかんねえけどさぁ、
お前が望む方に俺は力を貸すぜ。


俺はお前の反応を待つ。
お前が出す答えに俺はついていくだけ。

  • << 17 ああ。 やっぱり。 きっとそうやって力になろうとしてくれると思ったよ。 だけど、僕の顔が必要なら何も本人を連れて歩かなくても写メで十分じゃないか? もしもうっかり出会ってしまって僕がどうにかなっちゃったらどうするんだよ。 全く昔からこいつはこうだ。 本当に… 思わず笑みがこぼれてしまう。 どんなにちいさなつまらない事でも、いつもお前は僕を助けようとしてくれた。 嬉しさをひた隠し、 「わかりましたよ。」 と軽く答えてみせる。 だが… 「いや、お前勘違いしてるぞ? その相手さんは消えてはいない。 今でも、昨日〇〇にいたよね? と、声をかけられる時がある。 僕のソックリさんとやらはなかなか人気者の様だな。」 そう言いながら親友の顔を見る。 そういや、こいつも昔から人気者だった。 僕はずっとこいつに憧れていた。 先日、中学を卒業以来10年ぶりに偶然僕を見かけて、 「もしかして…高橋? いつこっちに戻って来てたんだ?」 と声をかけてくれたお前。 またこうやってお前と話せる様になったのが心から嬉しいよ。 「なあ、ずっと会っていなくてもこうやって親身になってくれるお前は 中学生の頃と全然変わらないな。」 僕は懐かしさと親しみを込めた目で更めて親友を見つめた。

No.18 18/06/24 18:37
チキン ( 30代 ♂ BMsZnb )

>> 17 「僕のソックリさんとやらはなかなか人気者の様だな。
、じゃねぇよ!!
お前自分のおかれてる状況わかってるっ!?
これはあなたの事件なんですよ!
た、か、は、し、くんっ!

ほんっと、お前危機感ねえよなぁ。
たく、

なぁに笑ってんだよぉ、
なに昔の思い出がよみがえってきました、みたいな目ェしてんだよ。」

俺はこいつの飄々としてるところにあきれるが、
あきれる反面おかしさもこみ上げてくる。

変わってねえな…

「ソックリさん、今もS区にいるのか…」
ならこいつを連れまわすのも危険ってことか…

俺はおもむろに携帯電話をとりだし、
はいちーず、と油断丸出しの
こいつの顔をフォルダにおさめた。

「とりあえずよぉ、
俺も時間がある時にS区に行って
お前のソックリさんに関する情報、探ってみるわ。

お前には、遭遇しないように気をつけろ、ぐらいしか言えねーけどよ、
気をつけろっつってもなぁ、ハハハ、」

俺はちょっとでもこいつの気持ちを軽くしようと
軽口をまぜてみる。
どうやら軽口につられたようだ。

最後に、仕事意外はS区内をぶらつかないのが賢明だな、と当然事を念押した。


それから気を取り直すように
中学校時代の話で盛り上がり、
あの時はこうだったああだったとお互いの記憶を確認し合いながら
夜は過ぎてゆき、
そして二人は別れた。


さっそく俺は次の日から行動を開始した。
仕事が終わり次第、急いで車でS区へと向かった。

なにから始めようか…
聞き込み、か?
でも下手に聞き込んで
そのことがソックリさんに知られるとマズくないか?
どこにいるのかもわからねえのに…

、ちょっとあいつに電話して聞いてみるか。
こういうことに関してはあいつの方が賢いからなぁ。


『プルルルル、プルルルル、プル、ガチャ』

「あ、もしもし、俺だけど……」

No.20 18/06/26 10:23
チキン ( 30代 ♂ BMsZnb )

>> 19 俺はあいつに電話をし
以前ソックリさんと間違われた美容院の場所を聞き出し
行ってみることにした。

「すみません、ちょっとお訪ねしたいのですが、」

受付のいかにも美容師らしいオシャレな女の子に携帯電話をかざし、
この人ってここに来たことありませんか?と訪ねたところ、
女の子は知っていた。
『あー河村さんですね、これ』
という返答。

あいつのソックリさんは河村という名前なのか…

俺は気持ちが高ぶるのを抑え
つとめて冷静なのを装い、
でも、何と言ってソックリさんの情報を聞き出そうかと考えていると、

女の子は親切に自分の方から
『河村さん、すごく楽しい方でスタッフの中でもとても評判がよかったんですよ。
しばらく顔を見かけなかったんですけど、つい先日いらっしゃったみたいで。
でも、どうも河村さんじゃなかったみたいで。
すごく顔はソックリだったんですけれどね、
本人と見間違うぐらい』

そうか、あいつが言っていた通りの人気者らしい。

「そうですよねぇ、
オモシロイヤツですよねーあいつ、」

とっさに俺は思いつき、
「河村からここの美容室がとてもイイと聞いていたもので、
あいつのススメで今日は髪を切りに、きました、」

そうですか、がとうございます、ではこちらにお名前の記入をお願いします、といわれるがまま
ペンを動かしソックリさんと同じ担当者の方でお願いした。

その担当者から出来る限りのソックリさんの情報を集めることにつとめた。

ソックリさん情報
・俺らと同じ歳ぐらい
・仕事は営業マン
・住まいはS区のS駅周辺

怪しまれることに注意しながら得た情報はこれぐらいだった。

とりあえずこれだけの情報を電話代であいつに伝えた。

No.22 18/06/27 10:47
チキン ( 30代 ♂ BMsZnb )

>> 21 『いらっしゃいませっ、』

「予約していた足原ですけど、

ってファミレスに予約って必要なのかよっ!!」

目の前の男ノーリアクション。

「てへ、来ちゃった」

『お客さま、お一人様ですか、
席は禁煙席と喫煙席がござ』

「お~い、高橋くん、
俺だよ俺!中学の同級生の足原ですよ~
ってまあボケはこのへんにしといてと。
なかなか様になってんじゃないの、高橋 店 長。」



俺は休みを利用してこいつのお店を訪れた。

どっきりドンキー。
ファミリーレストラン。

ランチタイムは混雑しているので
ちょっと時間をずらしてきた。

さすがに仕事となるとこいつの顔はびしっとしている。
仕事をしているという面構え。

ここに来た理由は、
友人が働いているから食べにきたというのもあるし、
来週のこいつの休みの日に久しぶりに俺らの中学校に行ってみないか?と誘う為だ。

大丈夫ならば職場の同僚に休みを変わってもらうつもり。

俺はこいつに案内された禁煙席に腰を落ち着ける。

「おススメは?」
俺は座るなりこいつに向かって言った。

No.24 18/06/28 17:56
チキン ( 30代 ♂ BMsZnb )

>> 23 休みの日、あいつとの待ち合わせ場所まで車で向かえにいく。

あいにくの雨だ。

この時期は雨がよく降る。

ワイパーのスイッチをひねりフロントガラスに張りつく水滴をはきとる。

ウイン、ウー。ウイン、ウー。

せっかくの休みの日だっていうのに何だかな…

俺が休みの日はけっこう雨が降っている気がする。

俺はどうやら雨男の才能をもって!?っ

キィィィッーー!!

あぶねぇ、危うく猫をひきそうになったぜ、

ふぅ~。

いきなり飛び出しきたらあぶないよ黒ネコちゃん、

気を取り直しあいつが待っている場所へ向かう。

ここのコンビニだったよな。

ウインカーを出しコンビニの駐車場にバックで停める。


「もしもし、ついたぞー
赤の軽だから。」

『わかった』


ウイン、ウー。ウイン、ウー。

ウイン、ウー。ウイン、ウー。

ウイ
ガチャ。

助手席のドアが開いた。

「よぉ、今日はあいにくの雨だなぁ、」
『そうだな、』

こいつは雨などお構い無しといった感じで飄々と助手席に座った。

No.26 18/07/04 05:13
チキン ( 30代 ♂ BMsZnb )

>> 25 「ドッペルゲンガーって
一体何なんだろうなぁ。」

俺は何となく吐き出した。

「一体何の為に現れるんだろ。」

助手席に座っているこいつは
黙って俺の言葉が途切れるまで
聞いてくれている。

「現れるからには何か意味があるんだろうな。」

ただ前方の雨がぶつかるフロントガラスごしに
過ぎ行く風景を見つめるこいつ。

「俺は、なんだろうな…
それらしい解答が浮かばねーや。」

当事者の方が感慨深いものが
あるかもしれない。

雨が強くなってきた。

「お前は、どう思う?」

No.28 18/07/08 18:30
チキン ( 30代 ♂ BMsZnb )

>> 27 「なんとなく思いついた。

ほら、お前との関係って
中学の時しか知らないからさ、

お前も変な事件みたいなもんに
巻き込まれてるみたいだし、

なんか行きたくなったんだよな。

俺の直感がそういってんだよ。」


車で走り始めて1時間と少し。

車内はぽつりぽつりといった会話。

外の雨はぽつりぽつりといったふうではなくザーといった感じ。

雨の音と車から流れてるラジオの音で会話に間ができても
居心地は悪くない。

俺はなんとなく口から言葉を発した。

「お前さぁ、
俺の両親見たことないよなぁ。

実はさぁ誰にも言ったことは
ないんだけどさぁ

俺、

クローン人間なんだわ。」


助手席のこいつは無反応。
思ってた通りの反応。
かわらず左側の過ぎ去る景色を眺めている。

気にせず言葉を続ける。

「右肩に“3”という刺青が刻まれてるんだ。

何の番号かわかるか?

3番目に造られたっていう
製造番号だよ。

まぁ、今度見せてやるよ」


「ふ-んそうかい

じゃあ楽しみ待ってるよ、
ナンバースリーさん」

やっとノッてきてくれた。
すかさず俺も返す。

「ああ楽しみに待っとけ

お前には写メぐらい撮らせてやるからよ」


雨が少し
弱くなってきたような気がした。

No.30 18/07/11 17:09
チキン ( 30代 ♂ BMsZnb )

>> 29 懐かしい街並みが見えてきた。

外は雨の影響で薄暗いが、

成長とともに過ごしてきた場所は
心が疼いてくる。

中学卒業以来だ。


何棟か知らないマンションが
建っている。

「あ、駄菓子屋潰れてんじゃん、」

俺は反射的に言葉を吐いた。

「ああ、あの駄菓子屋ね。
あれは5年前~」

隣のやつが説明してくれる。

しかし俺はところどころ変わった街並みに意識が向いて
横からの言葉に
気持ちの込もってない返事。

ため息を吐くように
「そっか~
10年だもんな~

そりゃ変わるよな~」

と、プチ浦島ショックを受けていた。


この緩めの坂を登っていったら
俺達の中学校だ。

只今 PM4:42

見覚えあるの制服の集団が
坂を下ってくる。
懐かしい~、

男子の制服はどこにでもありそうな黒の制服なんだけど、

女子の夏服だけは
スカートがブルースカイの色
なんだ。

どいつもこいつもガキだなぁ-
へへっ。


着いた。

何も変わってない。
匂いがただよってきそうな
あのままの風景。

遠くの方から聞こえてくる
吹奏楽部の音楽。

サッカー部と野球部が練習している。

とりあえず正門から離れ
外周の
車を停車できそうなところへ
車をとめた。


「来たのはいいけどよ-、
部外者はいれてくんねぇよな。

まぁ、
生徒がいなくなるまで待つか。」

俺はその判断は
決定事のように
隣のやつに訪ねる風でもなく
言った。

No.32 18/07/12 20:51
チキン ( 30代 ♂ BMsZnb )

>> 31 「なんだよ、急にハリキリだしやがって。」

俺は嬉しさがこみあげてくる。

「お前最高だな。

どこまで用意周到なんだよ-

お前高橋名人だよっ!

16連写だよっ!」

俺は、勢いにまかせて
そんな言葉を吐き出す。

これで正々堂々正門から入っていける。

最悪忍び込むっていう考えはあったが、
25歳のオトナとしては
やっぱそういうの
よくねぇか。

こいつはいつだって俺の欠けているところを補ってくれた。
月が丸くみえるのも影があるからだ、と何気なしに頭に浮かんできた。

「老けてっかな、トンボ。」

俺は10年ぶりに見るクラスの中のただひとりのオトナの顔を
どんな風に変わったのか
10年でオトナはどんな風に変わるのか
じじいになってる様を思い浮かべながら
同じ歩幅で歩く隣のやつに
言うようなひとりごとのような
風に口にだした。

トンボは言葉のまま
トンボのような大きな眼鏡を
かけていたからだ。

大まかに言えば
話しのわかる良いオトナだったよ。

先生と呼べる
良いオトナだった。

「10年だからな、
老けないほうがウソだよ。

でも教頭先生だから
それなりに威厳は出てるかもな。」

そう答えるこいつ。

野球部が練習をしている脇を抜け校舎の中へ足を踏み入れた俺達。

見ず知らずの若いオトナに
こんにちは、とあいさつしてくれる2組の
よくできた女子生徒。

職員室。

なんか緊張してくる。

苦手なんだよなぁ、
このオトナたちだけの棲みかが。

と一瞬躊躇している俺をよそに

ガラガラ、


と、隣の名人は何の躊躇もなく
扉を横にズラした。

No.34 18/07/17 19:10
チキン ( 30代 ♂ BMsZnb )

>> 33 「真面目に働いてますよ~、

先生もしっかり出世しちゃて~

給料いくらもらってんすか~

今度飲みいきましょうよ~
もちろん先生のおごりでね!」

と久し振りに先生と顔を合わすなり、
俺は先生との再開をよろこんだ。

見た目はぴしっとしているが
雰囲気は変わってない。
ただあの頃とちゅっと違うのは、

若干痩せてることと
目尻あたりにしわが増えたこと、
そしてトンボめがねじゃ
なくなっていることだ。

あのめがねは
今の時代、合わねえもんな。

少しばかり身の上話を交わしつつ、
同級生のあいつはこんな仕事しているだの
女子のあいつは結婚しただの
子供産んだだのと
先生は自分から語りだした。

ちょうど話の区切りがいいところで俺は今回の目的をきりだす。

「で、先生あのさぁ

タイムカプセルって
どこに埋めたっけ?

俺、イマイチ覚えてなくてさぁ」


「ああそうだったな、

高橋から電話もらって
調べといたよ。

ちゃんと地図に書いて
わかりやすく記してあるよ、」

「ありがと、先生。」

そう言って俺は
先生からタイムカプセルを埋めた場所の地図が書かれている
一枚の紙をもらった。

「学校は7時には閉まるからな、
それまでに用を済ませるんだぞ。

学校から出ていく時は
もう一度職員室にきて、
わたしに言ってくれ。
わたしがいなければ
他の先生にでも構わないから」

「うん、わかった」

そして職員室の入口の扉に手をかけ俺は出ていこうとし、
後ろから続いてくるこいつは
失礼しました、と一言言ってから
職員室の扉を閉めた。


さっそく職員室前の廊下で
こいつと並んだ状態で
地図の記された紙を広げた。

「どれどれ…」

No.36 18/07/22 18:13
チキン ( 30代 ♂ BMsZnb )

>> 35 俺の記憶が甦ってきた。

俺の中学三年生。

高校受験を控えた時期。

その為自習時間が増え

その中の1時間
タイムカプセルの中に入れる
10年後の自分にあてたメッセージ
を書いたんだっけ。

何を書いたんだっけ、

……、


「お前さ-10年後の自分に
何て書いたか覚えてるか?

俺は、えっ!?」

(確か、ここに埋めたはずだぞ、
なんか建ってんぞ、えっ、)

俺は後ろを振り向き、

「確かここだったよなぁ、
ここに埋めたよぁ、

俺の記憶が確かなら
もうタイムカプセルは
二度と掘り返せねぇぞ…

いっそのことトンボに頼んで
この建物爆破してもらうか?」

俺は冗談でなく
本気でそうおもった。

知らない建物 < 思い出

勝る!

No.38 18/07/30 17:13
チキン ( 30代 ♂ BMsZnb )

>> 37 俺は少し間を空けて
静かに口を開いた。

「俺の願いはきっと叶わないから

叶わないとわかりきってる
願いだから」


二人の間に沈黙が流れる。


そういえば
いつの間にか
雨、

あがってたんだな。


そして俺は
こいつがクシャクシャにした地図を拾いにいく。


クシャクシャになった紙を
開いて
できるだけ伸ばせるだけ
伸ばしながら

ちょっと困ったような笑顔で

「帰るか」

と訪ねる風でもなく

言った。






「先生、ゴメン、

俺ついうっかり
地図の紙、丸めて
クシャクシャにしちゃったよ、

気持ちがあの頃に戻って
0点のテストと
思っちゃたみたい。ハハ」

職員室に
トンボ先生はまだいた。

たくお前ってやつは、
お前は答案用紙を
そんな扱いにしてたのか、

そして軽く小突かれた。

懐かしい痛みに
うれしくなる。



じゃあ先生、
今度は居酒屋で会おうね、
失礼しまぁす、

と職員室をあとにした。


そこから
どちらとも口を開くことなく
校門を出て


車に乗り込んだ。

No.40 18/07/30 23:50
チキン ( 30代 ♂ BMsZnb )

>> 39 お前は…自分が何者なのかを本当に知っているのか?


隣のやつから吐き出されたコトバは
自分で何十回も何百回も
自分に吐き出したコトバだ。

へたすりゃ何千回に
到達しているかもしれない。


何者か?

なんてわかるわけない。


ただ俺の代わりは
他にいるってことくらいしか
わからない。
いた、ってことしか。


そう


俺は代わりでしかなかった。



どうやら俺は
人類第1号らしい。


どうやら俺達は。





俺は物心ついた時には
籠の中にいた。


俺の家は研究所

親は…
見当もつかない。


じゃあ兄弟は?
っていえば


3人。


3人の兄。



一人は歳の大きく離れた
絶対的な兄。


他の二人は
歳の近い
同じ境遇の兄達。
生き方が決まってる兄達。
生き方を決められてる兄達。



そして俺。



俺達3人は
絶対的な兄の為に生きていた。


絶対的な兄の部品になる
為に生きていた。


絶対的な兄の部品は
壊れていたからだ。



家族っていうのは
足りないものを
補ってゆくものだろ。


支え合ってゆくものだろ。



絶対的な兄の為なら。


絶対的に兄の為なら。





絶対的な兄の部品になるには
15年かかるらしい。


早くて15年
成長しだして
一番活きのいい15年。


だが、

15年たたずして
2番目の兄は無くなった。


そして3番目の兄も。



そして俺が15年を迎える前に



絶対的な兄も無くなった。




そして

俺の意味も



無くなった。




俺に価値は無くなった。





生きてる理由も無くなった








俺は中学を卒業したあとに

よく面倒をみてくれていた
研究員の女性の養子として
ひきとられた。



多江子さん




河村 多江子さん










「高橋、



この世によぉ


この世に自分が何者か
わかってるやつなんて


どんだけ

いるんだろうな 」




俺はなんとなく


その時おもったんだ。




コイツと友達になったのは


なりたいと思ったのは




自分と似ていたから、




だったんじゃないだろうか


って。

No.42 18/08/12 13:46
チキン ( 30代 ♂ BMsZnb )

>> 41 ・・・・・・・




俺は自分の思考を

落ち着かせるため


車を路肩に寄せ

とめた




隣のやつからの

衝撃的な言葉。


隣のやつから出された

真実。




俺と同じような人間…




車内では緊張感の混じった

沈黙が続く




隣のこいつは

額に手をあて

どんな表情をしてるのか


手でかくれてみえないが、

口元には緊張がかいまみえるのが
横目でわかる。




こいつは



こいつは




お前が高橋でないにせよ

本心を明かしてくれたんだ


本心には本心で返さねぇと

いけねぇよな、






俺は今までの生い立ちを

静かに語りだした。




自分は研究施設で育ったということ、

3人の兄がいたということ、


その中の一番上の兄の為だけに

自分が存在していたということ、


そしてその兄は中学卒業前に

なくなったということ。


そして…



俺は中学を卒業後、

河村姓を名のっているということ…



全てが裏返ってあべこべ。

それはまるでオセロのようだ。

リバーシする



全てが何か繋がっていたんじゃかないかと

気づき始めているということ。


俺は少し語気を強くなるのを
隠せない。


「俺は、


ドッペルゲンガーの名前が河村

という名前だと知ったとき、

なんだか胸騒ぎがした…


終ったと思っていたものが

実はまだ続いていた、



感じたんだよ、 」


少し間を空けて口を開く。

それは自分を落ち着かせる為

の間でもある。



「真相をつきとめようにも

今は研究施設も取り壊されてるし、

養母の多江子さんも

2年前に亡くなっている。


このドッペルゲンガーの問題は

よぉ、

実は俺の問題だったんじゃねぇ

のか?」


俺は気持ちが高ぶっているのを

なんとか落ち着けようとつとめているが、

落ち着けてないだろう。

それでも

隣のやつに問う。


「お前は一体、何を知っている?


お前は一体、何の為に俺のことを

調べてた?」


…、…、…



No.44 18/08/21 18:57
チキン ( 30代 ♂ BMsZnb )

>> 43 「多江子さんが本物の高橋のお母さん…

そしてお前は高橋のふりをしていたゲンガ-…」


そうか…


そうなんだ…



なんだろう、

驚きはするものの

騙されたと怒りが沸いてくるわけでもない…



さっきまで動揺してたものの

答えがわかると、


なんとなく受け入れられてくるのは。


俺の良いところ?




繋がってんなぁ、

繋がってる、

よくできてる、

ヨノナカってやつは。


俺はなんだか嬉しくなってきて

頬がゆるむ。



「お前スゲーな、

全然気づかなかったぞ、ハハ


でも、

お前も父ちゃんが双子なら
高橋のはずだろ?

なんで高橋じゃなかったんだ?



俺さぁ、

人の名前って覚えても忘れっぽいからさぁ。


ゴメンなぁ、

お前の中学生当時の名前、

思い出せねぇや。」


そして俺はあらためて言う。


「お前の名前、


教えてくれよ。」

No.46 18/08/22 20:54
チキン ( 30代 ♂ BMsZnb )

>> 45 そういう経緯があったのか…


「あとう…

そうだったな、


阿藤。



出席番号二番、

背の順は一番、


だったよなぁ。


出席番号では俺が一番

だったけどなぁ、へへッ」


気持ちをあらため俺は続ける。



「あらためて言うのも
なんだか照れくさいのがあるけどさぁ


なんだか言いたくなったから、




久しぶりだな、阿藤 亮平。




足原、



足原十人(たすと)だ」



ああ。と返事をする阿藤




「お前はどう思う?

この因果関係をさ。


これから先、

自分に及ぼすものが

あるのならば

それを突きとめなければならないと思うんだ。


でも、

今までの俺の人生が
仕組まれたものであったとしても


このまま普通に暮らせるのであれば俺は今のままでかまわない。」



代用品だろうとかまわない。


それでも俺の心は



満たされているから。



「俺さぁ


ウェディングプランナーの仕事してんだ。


笑っちゃうだろ。



今まで何組もの家族が誕生するのを見届けてきた。


家族っていいもんだよなぁ~



俺さぁ


タイムカプセルにこう書いたんだ。




家族がほしい



って」



俺の


変わらぬ願い。

No.48 18/08/24 20:31
チキン ( 30代 ♂ BMsZnb )

>> 47 「お前の父ちゃんも研究員だったのか…

多江子さんに続いて…」


そっか。

阿藤…


さん…


優しい人


メガネをかけていた


痩せ気味の…


そうだったんだな。


俺は阿藤に投げかけるでもなく
ぼーっとした口調で

「クローンって

なんだろ…


エゴ


だよなぁ…


科学は何かの犠牲のうえに


生まれる…




新しいものには


犠牲が…


ひつよう」



俺にはその時


“生け贄”


という言葉が浮かんでいた。


いつかのテレビ画面で見た

昔ばなし…


神の怒りを静める為には
生け贄が必要なのです


俺は生け贄だったんだ。


そう思うと




誇らしい、




なんてちっとも思えねぇ



、、!




俺はハンドルを握り
アクセルを踏みこむ。


強く握ったハンドル、


衝動が体を突き動かす、


阿藤は黙ったまま
俺の行動を見つめる


「悪いなぁ、阿藤、

もう少しだけ、


俺のわがままに

付き合ってくれや、」


俺はインターチェンジを目指した



どこにいくのかだって?


きまってんだろ、


クソ研究所だよ。

No.50 18/08/25 18:39
チキン ( 30代 ♂ BMsZnb )

>> 49 「おかえり

たすと。」


「たっ、ただいま

多江子さん、」


「疲れたでしょ

今日はあなたの好きな
カレーライスよ。」


「マジ?
ちょうどカレーライス食べたいなぁって
思ってたとこだよ、」


「さ、
手を洗って着替えてらっしゃい。」


「うん」




「やっぱ多江子さんのカレーが
一番うまいや。」

「ありがと。」



「おかわり!」

「はい」




「おかわりっ!」

「はいはい」





「おかわり!」

「ほんとたすとはよく食べるわねぇ。
作りがいがあるわ。」


「だって、ふまいものあ、
しょうがないよ」

「ふふ
うれしい。

よく噛むのよ」



「、っ、っ、

おかわり!」


「っは~い」


「~わり!」
「~~るの?」
「~~~だもん」
「~~」
「っ~」



・・・・・・



まわりの風景が
早いスピードで
後ろに吸い込まれてゆく。


阿藤も黙って
ただ俺と同じように
前だけを向いてるみたいだ。

目の前の風景が
同じように見えてるのか
わからないが。


PM 8:41



次のインターチェンジだな。


なんだか無償にカレーが
食べたくなってきた。




『ごめんね…

ごめんね…』


亡くなる間際の多江子さん…




俺は視線は前に向けたまま
阿藤に言葉を投げかけた


「阿藤は食べ物

何が好きなんだ?」



どうでもいい会話だけど



なんとなく。


No.52 18/08/31 19:28
チキン ( 30代 ♂ BMsZnb )

>> 51 「そっか!

最高だよなカレーライス」


相手と好みが合うと
嬉しくなるなぁ。




車はインターチェンジを降り
繁華街へ。

そして繁華街を抜け
山道に入っていく。

だんだんと気持ちが高ぶっていく。

条件反射。


嫌な場所へ
自分の故郷へ
自分の生まれた場所へ
自分が死んだ場所へ


心臓がひとりでに激しく脈打ち始める。

ドクドクドク…


何かに引き寄せられるような

何かに導かれてるような

誰かに呼ばれてるような



ぐねぐねとした道を
登ってゆく。

辺りには全く街灯はない。

車のライトが唯一の頼み。


闇の中を小さな光が突き進む。


阿藤が固唾を飲んでるのが気配で感じる。

連れてきてよかったのかと今さらながら思う。
巻き込んでよかったのか?


高鳴る気持ちをやわらげるように
俺は口を開いた。


「俺は闇の中って
けっこう平気なんだ。

阿藤お前はどうだ?

お化けとか苦手な方か?


俺はお化けだって平気さ。

今じゃあ研究所も
有名な心霊スポット
とかになってたりして。」


道が大きく開けてきた。


そして

車のスポットライトが照らした先に

大きなゲートが立ち塞がる


「ここが俺が生まれ育った場所。
そしてお前の父ちゃんが
勤めていた場所。


アシメトリックバイオ研究所。


じゃあ今から胆試しと
洒落こむか。」

No.54 18/09/10 11:02
チキン ( 30代 ♂ BMsZnb )

>> 53 「阿藤、…阿藤!」


ハッ、とした表情で
こっちを振り向く阿藤。

顔が恐怖で強張ってるように見える。


「どうやら阿藤にも何か嫌な感じが伝わるんだな。


なんか俺、
ひとりで突っ走りすぎたわ。


そうだよな、
怖いよな

正直俺も怖い。

あいかわらず
威圧感がある場所だぜ。

きっとここは
有名な心霊スポットになってるに違いねぇだろうな。
ハハ…


…悪いな阿藤
嫌な思いさせちまって。

引き返そう」


俺は車のギアをRに切り替え
車をバックさせて方向転換をしようと車が下がり出したその時、

ザッ
プツッ


「ようこそ
アシンメトリーバイオ研究所へ」

!?

瞬間的にブレーキを踏む、
いきなりの声、
突然の出来事に体が硬直する。

暗くて気づかなかったが、
声の発信源はどうやら
ゲートの右上に付いている拡声器からしい、

拡声器に釘づけになる。


「いや
おかえりというべきだね


足原くん」


!!


俺の存在がバレてる!
相手は俺が来てるのがわかっている!
ナゼだっ!?
監視カメラは、
右上、左上、正面中央に小さな丸が、これもか、
でも監視カメラだけで
ハッキリとわかるはずがねぇ、
というこは事前に俺が来るというのは知られていたのか!?

「そして阿藤くんも
一緒だね」

!!!っ

阿藤の名前まで出されて
俺は咄嗟に
「お前は誰だっ!」
と叫んだ。


「わたしが誰かは
会えばわかるよ」


俺は恐怖のあまり
瞬時の判断で
急いで車を引き返そうと、


「足原くん

真実を知りたくないかい」


その真実というワードに
耳がビクッ、
同時に足が自然とブレーキペダルを踏み込む、


「きみは真実を知らない

きみの存在理由を


警戒しなくていい
きみの研究はすでに
終わったんだ

無理矢理また研究所に
引き戻そうなんてことはしないし
危害をくわえないと約束する
阿藤くんにもね


そして阿藤くん
この話はきみにも関係してることだよ」

阿藤にも関係している!?
なんで!?

阿藤の方をふり向くと、
阿藤も驚きと恐怖が入り交じった表情で
こちらを見つめ返す、

それでも俺たちは
じっと固まったままで
その場から動けずにいると、

No.55 18/09/10 11:06
チキン ( 30代 ♂ BMsZnb )

>> 54 「まあ確かにこれでもこちらに入ってくる気にはなれないだろうね

じゃあもし

ぼくが高橋 遼だとしたらどうする

きみたちの同級生の
高橋だったら

どうする足原」

この声の主が高橋?
探していた河村?
なぜこの研究所にいるんだ?
なぜだ?

確かめたい、

確かめたい、

知りたい、

真実


「阿藤、

お前はコイツが本当に
高橋だと思うか?

俺は
コイツが高橋というのは本当のような気がする、
なんとなくわかるんだ、

俺はコイツに会って
話をきいてみたいと
思っている、

お前はどう思う?」

と、突然ゲートが動きだした

除々に開いていく扉

ゆっくりと姿を表わにしてゆく研究所

建物まではまだ遠いもののその輪郭が目に入ると
過去の記憶がフラッシュバックしてくる。

建物を見てるようで
頭の中を見てるようで


「ぼくは第七研究棟で待ってるよ

足原」


プツッ

No.57 18/09/29 07:12
チキン ( 30代 ♂ BMsZnb )

>> 56 「俺は今まで自分が存在する意味を考えていた。

俺は代用品でしかなかった。

誰かの替わりでしかなかった。

唯一本物の為に生きることが役目だった。

俺は偽者でしかなかった。

存在理由がほしかった。


ずっとカゴの中で飼われた鳥は
いつか大空で羽ばたくことを夢みていた。

そして鳥はとうとう大空へ羽ばたける時がやってきた。

自由だ自由だ。

そして鳥は再びカゴの中へもどってくることはなかった。

でも人間は違うと思う。

いくら逃げても心は逃げ切れない。

だから決着つけねぇと。


やばそうだったらそん時に考えればいい。
俺はどっちに転ぶかわからない不安よりも何もしないでじわじわと押し潰される不安の方がよっぽど怖ええよ。
行動しようが行動しなかろうが
結局は不安になるんだったら
俺は変えられるチャンスがある不安の方を選ぶよ。

へへ、俺は一度死を覚悟していた人間だぜ?
それがもう一度死をかけることになっただけのことさ。
それにこう見えても俺はギャンブルは強い方なんだぜ。



俺は今から自分に
決着をつけに行く。」


俺は阿藤の方は見ずに
ただ前だけを向いて言葉を紡いだ。
それは前方に重くかまえる研究所に向けて言っていたのかもしれない。



No.59 18/10/17 20:10
チキン ( 30代 ♂ BMsZnb )

>> 58 「ボクは思うんだよ
犠牲は必要だって」

「……」

「築いていく為には犠牲は必要さ
国だってそうだろ?
組織だってそうだろ?
上にたつ為には必要不可欠
何かを捨てなきゃ次には進めない」

「……」

「循環だよ循環
空気が汚れれば新鮮な空気を取り込むだろ?」

「……」

「ボクは思ったんだよ
あの時にね

ボクが犠牲の上に生きられた時にね」

「……」

「足原
きみもその犠牲の上に生きてるんだぜ?」

「!!っ、

…どういうことだ?」

「やはり知らなかったか
そしてやはり母さんは足原には
何も語らなかったみたいだなぁ」

固い唾が喉元から落ちてゆく。

「足原
きみはパーツじゃないんだよ
きみは本体なんだ
きみは生かされてる側なんだよ」

「、生かされてるっ?

、俺は、クローンじゃないってのか?」

「そう
きみはクローンじゃない
きみはオリジナルなんだよ」


クローンじゃない…

オリジナル…





第七研究棟。

敷地内の最後部に位置する七つある棟のなかで一番大きな建物だ。

子供の頃
俺たち兄弟は王のいえと呼んでいた。
ただ単に一番でかい建物だったからの理由で。
その王のいえに俺は今いる。
高橋と向き合う形で。

こいつこんなヤツだったっけ?
中学の時こんな感じだったっけ?
なんだろう、掴めない。
久しぶりが久しく感じれない。
余裕と貫禄が感じられる。
その余裕はどことなく鼻について。
その貫禄もどことなく鼻について。

そしてこいつから放たれる言葉はつくづく
俺の心をかき乱してゆく…

No.61 18/11/02 18:57
チキン ( 30代 ♂ BMsZnb )

>> 60 「オリジナルか…

てかなんでお前がそんなこと知ってんだよ高橋、」


「それはね足原

それはぼくがこの研究所の研究員だからだよ」


「研究員だぁ?」
語気が強くなってしまったが
内心の驚きは隠せない。

このクソ研究所で働いているっていうのかよ、
この研究所は閉鎖されていなかった?


「こんな夜遅くまでお勤めご苦労さま、
研究員さんよぉ、」


俺のことばに目を閉じて笑う反応をみせる高橋。


「足原にとっては本当に
ココは嫌な場所だったみたいだね
ムリもない

きみはクローンとして過ごしてきた
クローンとして考えてきた

でもね

ボクにとっては命を救ってくれた場所だよ
ボクはボクの命を救ってくれた場所に恩返しがしたい力になりたい
それは不純なのかな?」


「、それは返す言葉もねぇけど、
でもな、」


「足原
きみの言いたいことはわかる
犠牲を払って生きるということ
犠牲になる立場で生きてきたから犠牲者側の気持ちがわかる
犠牲になる気持ちをわかってるのかと」


「、、、」


「わからないよ
わかるわけないじゃないか
わかってる気になることすらおこがましい
でもボクは感謝している
感謝しかできない
生かされた命を生きてくだけだよ」


「……」


「そしてボクは
自身の身をもって体験したこの研究所の偉業を

人類に役立てたいと思っている。
願っている。」




………


No.63 18/11/20 12:42
チキン ( 30代 ♂ BMsZnb )

>> 62 「ボクはね思うんだ

生きたいという気持ちは犠牲を返りみないことだって

生きたいという強い気持ちは
犠牲をはらってでも成し遂げたいことなんだって

ぼくは犠牲をはらうことをいとわない

犠牲の代償は強さを持つ責任が枷られる

強くならなければならない責任がある
強くなる覚悟をもたなければならない

ぼくは犠牲を無駄にはしない

次に繋がらない犠牲はやるべきではない

強くなることができないのであれば
犠牲をともなう資格はない」


高橋の口から発せられる“犠牲”という言葉。


こいつのいう犠牲に対する思いは
なにか強い信念のようなものが伝わってくる。


こいつの考え方に同調できなくもないのだが…

でも俺としてはどこか反発意識というか府に落ちることができない気持ちがある。


「話を元に戻そう

きみがオリジナルということは


きみにも父親と母親がいるということだよね」


「、ああ、
そうなるよな…
普通に考えたら」


「足原
知りたいか?

自分の父親と母親のことを?」


……

「ああ、

教えてくれ」


「きみの




どうやらタイミングよく
きみの友人もきたようだよ」


っ!?
友人といわれて阿藤が来たのかとすぐに理解できた。


高橋はツカツカと扉の方へ歩いていき客人を招き入れるため扉を開いた。

なだれこむように勢いよく入ってくる阿藤。
なんだかほんのさっきまで一緒にいたのに
久しぶりに顔をみたように感じる。

来ちまったか。


「ようこそ阿藤くん
待ってたよ」

高橋はそう言って阿藤を向かい入れた。

No.65 19/01/01 16:50
チキン ( 30代 ♂ BMsZnb )

>> 64 反射的に叫んだ

叫ばずにはいられなかった




阿藤の真実…




俺が阿藤をここへ連れてきたから


阿藤を苦しめる結果になってしまった…



知らない方がよかった真実。



知らない方がよかったよな、



阿藤…



知らないで



何も知らないで
変わらないまま過ごせていければ



よかったかな、




阿藤…




ごめん…





すまん…




俺は激しく上下した肩で

床に膝まついている阿藤の姿を見つめ続けることしかできない。



「足原ァ

きみはここへ何をしに来たんだ?」


高橋の少し苛立った声に
俺は目を見開く。


「きみはボクに会いたかったんじゃないのか?

真実を知りにきたんじゃないのか?

それなりの覚悟をもって
ここに来たんじゃないのか?」


…そうだ…そうだよ…

そうだけど…



「自分が何者か知ろよ、

何ノコノコ生きてんだよ、


背負えよ、自分をさァ、


何ごともなかったかのように
ぬくぬく生きてんじゃねーぞっ!!」


俺は高橋の怒りの声に
本人に目を向ける。


「いやー、
きみたちは甘ちゃんだね

甘ったるいよ

甘すぎてついボクも感情的になってしまった」


高橋は落ち着きを
取り戻そうとしている。


「足原、

きみの覚悟は違うよね?

どんなことも受け入れられるよねえ?


では話を元に戻すとしよう


きみの両親のこと」


「ああ、」



「きみは自分の両親はどんな人だと思う?

優しい人かな?

厳しい人かな?

それとも自分のことを
こんな生き方をさせた
自分勝手な人たちと思ってるのかな?」


「わかんねぇよ…」

俺はこいつから出てくる言葉を
ただ待つ、しかできない。


「きみの父はここの研究者だった。かなり優秀なね。

母はきみを産むと同時に亡くなったらしい。


父の名は河村夬人(かいと)

母の名は河村夕貴女(ゆきめ)


二人は血が繋がった兄妹だ」



!!!?っ、


「…きょう…だい…?」



「血が繋がったもの同士のあいだに

きみが生まれたんだ。


ボクときみが。」

No.67 19/02/16 21:48
チキン ( 30代 ♂ BMsZnb )

>> 66 阿藤が俺のクローン…


もうなにがなんだか頭で整理できない俺に構わず、
目の前の男は話を続ける。


「クローンに名前なんて必要あると思うかい?

阿藤くん
きみは足原に加えられればいいだけの存在だろ?

触るだけの存在でよかった

だからタストだよ…」


…たすと…



―――『ナンバースリー、
きみは今日から足原十人(たすと)と名乗りなさい』


そう研究所の人間から突如いわれたのは中学に入る前。

それまでは研究所で基礎的な
教育は受けていたものの
学校というものに行き始めたのは中学から。


俺たちクローンには名前なんてなかった。

自分の名前は数字だった。

クローンに名前はいらない。

そのうちに役目を終える時が
やってくるから。



ナンバーワン。

ナンバーツー。

ナンバースリー。俺。


数字だった俺に名前がつけられた。

一人だけ残った俺に
名前が足された。

その日から俺はタストだ…


そして阿藤もタスト…


じゃあ俺が王で阿藤は玉ってわけだな、将棋的には。


って、俺はなんで緊張のこのさなかこんなこと考えてんだよ…

No.68 19/03/30 19:35
チキン ( 30代 ♂ BMsZnb )

>> 67 「ボクが知ってるのはこれだけだ。

自分が何者かっていうのはわかったかな」


時が止まる。

自分が何者か思いしらされ
過去にどんなことがあって自分が誕生したのか
塗り替えられた…

知らなかった方がよかったかな…

知ってよかったのかな…

だってカゾクがいたんだぜ…?
血の繋がったカゾクがいたんだぜ…?


「高橋さぁ…
お前、いつから知ってたんだよ…?

俺とお前は血の繋がった兄弟だって…?
それと阿藤のことも…」


「中学校の卒業式の日のこと覚えてるか?」


中学の卒業式…


「、あぁ、お前その日学校休んだよな?よりによって最後の日に。
それを最後にお前と連絡がとれなくなって…」

「足原、
ボクは卒業式の前日に知ったんだよ。

キミたちのこと」



そうなのか、としか返せない…
なぜそのタイミングで…


「ボクにはクローンがいたことは知っている。
こうやって元気な姿でいれるのもクローンのお陰だ。

そして生まれて初めて学校に通い出したのは中学校から
そこでも生まれて初めて友達と呼べる者に出会った。

そいつといるととても楽しかったしボクが何者かさえ忘れることができた。
ボクは普通になれるんだ
ボクは普通に溶け混んでていいんだって。


でも違った…
キミは違った
キミはボクと同じだった。

しかも血の繋がった兄弟でさえあった。


今までのものが全てつくり物のように思えてボクは行くのをやめたんだ」


高橋の心痛をフォローするかのように俺は口を挟む、
「、でもよぉ、嬉しくねぇか?
血の繋がった兄弟がすぐ近くにいたんだぜ?
俺だったら飛び上がるくらい喜んで、」

「その時に目の前にいる父が実の父でないことも知った!母も!
すべてがつくり物だった!自分のカラダのように!
真実を知るということはとても残酷で、知らない方がまだ幸せだった!


って、今のキミたちもそうはおもわないかい?」


高橋のあまりにも説得力のある言葉にその場で固まって自分を見つめ返すが、
真実を知ったのがあまりにも今すぎて、
納得できるまでの時間が欲しい…


「た、助け…」

!?、突然のただ言ならない声の方へ顔を向けると、阿藤が何者かに羽交い締めにされ、その傍らには年老いた男が立っていた。


「話が違うじゃないか!ッ、父さん!ッ」


父さん…?、………

No.69 19/09/22 17:41
チキン ( 30代 ♂ BMsZnb )

>> 68 「立派に育ったもんだこのフェイクも」

高橋の父と思われる初老の男は意識が遠のく阿藤の顔を見つめながらそう口を開いた。
俺はこの男の顔を見るのは初めてだ、


「弟もさぞ喜んだことだろう」

弟?阿藤さんのことを言ってるのか?
しみじみと言葉を吐き出す男。




「遼。この子はワタシが預からせてもらうよ」


「ちょっと待ってよ!、コイツには何もしないって約束したじゃないか、」


「遼。
『人類の為犠牲はつきもの』
この言葉はこの研究所の命訓だよな
それを忘れてしまったのかい」


「それはわかってる、
でもコイツはもう実験対象ではなく一人の人間として生きているんだよ!?」


「でもクローンであることには代わりはない
とても優秀な実験対象だ」


「ふざけんなッ!!

勝手なことばっかり言いやがって、
アンタに何の権限があるってんだよオッサンッ!!」

と俺は無我夢中で阿藤を羽交い締めにしているもう一人の男から奪いとるべく向かって行く、


「ングフッ、」と跳ね返されるように俺の体は地面に叩き付けられる、

はるか上の天井が霞んで…、それでも上体を建て直し、起き上がろうと、
足にうまく力が入らず前のめりに地面に突っ込んでしまう

ハァ…、ハァ…、ハァ…




「──タストくん悪いねぇ──

──この男はプロの用心棒だから手荒なことはしない方が得策だよ──

しかしキミの無鉄砲な行動──


──実に快人にそっくりだ───




キミも────れて────つも──






快人、……親父がなんだって、……





グッ…ソッタレェ……



くそっ……、




「があ゙あ゙ァァァ!!ッ、」

俺はもう一度男の方へ向かっていく、

このッ、


…!!ブフッ、(阿藤…)

…!!ベフッ、(阿藤…)


…!!!あフっ、、、





(あとぉ…)……………………














No.70 19/09/22 19:10
チキン ( 30代 ♂ BMsZnb )

>> 69 ──りたいものってナンだろう──


守りたいもの──って───。




──「ねぇ多江子さん。守るってどういうことだと思う?」

「なに?急にィ」

「いや守りたいってどんな気持ちなのかなーっと思ってさあ」

「タストに守りものってないの?」

「その守りって感覚がイマイチわかんなくてさぁ、」

「じゃあ大事なものはある?」

「う~ん。今は多江子さんかなァ。」

「まぁ!うれしい。

じゃあ今日はタストの大好きなカレーにしよっか。」

「今日はってか昨日もカレーだったじゃん!
遠回しに昨日の残りものを食べろってことかよ、」

「うふふふ。」

「笑って誤魔化してるしィ」───









──ナンバー1が死んだ


その言葉を研究員から聞かされた時
別に怖いとか感じなくて次は俺の番かなってなんとなく思ったんだ



ナンバー2が死んだ時も
不思議と恐怖はなくて
次だなって



次は俺の番だなって思っていたところ
絶対的な兄キが死んでなぜか
涙がボロボロ流れてきて
なんで一番嫌いだった奴の時だけこんなに涙が出てくるんだろうって

自分でもよくわからなかった





何を守りたかったんだろう───




高橋───




阿藤───






また天井だ──



霞んだ天井が─────




──つぎこそは────守らなきゃ──


─────────










「ぐがが…が…、」


──男の顔がかすんでみえる──



男の顔がゆがんでる───




「──めろッ!──しはらァ!──」




──高橋──?──


──ナニさけんでんだ──?───





─今やつけてやるからな───




──たすけてやるから───



今たすけて────




「…めろ…足原……

やめろ…足原……

それ以上、やると…死んじゃうよ……



足原ァァーーーッ!!」


、!








気付けば足元に男が仰向けになって倒れていた


その隣で
阿藤の情けなく今にも泣き出しそうな顔が

こっちを見つめていた……

No.72 19/09/24 12:56
チキン ( 30代 ♂ BMsZnb )

>> 71 僅かに気が緩んだのもつかの間
その場の空気を一変するような乾いた破裂音が鳴り響いた。
同時に大腿部に衝撃が走る。


音の出どころをたどると初老の男がピストルをこちらへ向けて構えていて

視線を下げれば黒色の生地に赤色がじんわり侵食していくのが見てとれる。
その見た目から痛覚が目覚め噛み殺した歯の隙間からグゥ、と息が漏れる、


「いや実に驚いたよタストくん、
あの怪物的な力、クローン融合による暴走といったところかな?
なあ遼」



「…わからない、」


暴 走?、


「そんなバケモノが相手だ
こちらの正当防衛は認められる。
と、動くんじゃないよ。
まだ死にたくないだろう?」


クッ…

初老の男の表情はピストルの冷酷さを重ねたように冷えきっている、
感じとれるのはこの男はこの手のことに関して慣れていると、
この男は一体何者なんだ?、


「アンタ、一体何者なんだよ?、
ただの研究員にしちゃ物騒すぎやしねぇか?、」


「わたしはただの研究員だよ
アシンメトリー研究所直属のねぇ。
またディーラーでもあるがねぇ。」


「ディーラー?、」
売る…
クローンを売る?…


「タストくん。
人間ってものは何て儚いものなんだろうと思ったことはあるだろう?

病気をすれば死ぬこともあるし争いあえばその果てに死ぬこともある。
その争いを放棄して自ら死を選択することだってままある。

どうせ死ぬなら世の為人の為
それで死ねるなら本望。
それに自分の価値を見出だせる。
自分の役目を果たせると喜んで死んでゆく。
これが理想の死に方だ。

言い換えればこれが理想の生き方だといえるだろう。

人は意味ある死に場所を探して生きているのだよ。
わたしは思うね意味ある死に方をしてくれと。
次世代へつながる死に方をしてくれと。
それが人類の歴史というものだろう。


しかし人は生きたいというのが本音だ。
生きているうちにいろんなものを楽しみたい
生きてるうちにいろんなものに出逢いたい
世界にはいろんな楽しいことが溢れている
まだ知らない世界が自分を待っている
とね。


今キミは生きていて楽しいかい?タストくん。
楽しいのなら結構!

きっとキミの為に死んでいった兄弟も喜んでいることだろう。


キミの為に死ぬことができたとねぇ」



…ドク…ドク…ドク…ドク…




No.74 19/09/30 14:12
チキン ( 30代 ♂ BMsZnb )

>> 73 「やめッ、!」「バカが!ッ」


男は掴みかかってきた阿藤を難なくかわし、後頭部へ一重にピストルの柄の方をガンッと打ち降ろした。
それを合図に電池を切られたように阿藤の体は地面に重なり動かなくなる。
気を失ったのだろうか、


「この子は自分の立場がわかっているのかねぇ
狙われているのは自分だというのに」



「…そんな奴なんだよ、阿藤は

自分のことよりも目の前の誰かを救うことになりふり構わず体が反応すんだよ、
お前らよりよっぽど人間らしくなぁ、」

ホントにまっすぐすぎんだよオマエ、
地に伏せた背中がたくましく見えてくる



「まあ必要なのはこの子の知能じゃなく細胞だからねぇ。
多少頭が悪くても問題はない」


「アンタ、阿藤をまた実験材料に使うつもりだよなぁ?
それが済めば阿藤はまた元の生活に戻れんのかよ?、」


「無傷で返すのは保証しよう。
ただし拘束期間はどのぐらいかかるかわからんがね。
この子の細胞は唯一無二のもの
それはそれは丁重にもてなしてあげるつもりだよ
きっと人類の助けになることだろう」


「調子いいこと言ってくれんじゃねぇかよ、
散々武力で解決しようとしたクセによぉ、」

「それはキミたちの聞き分けが悪いから当然の処置をしたまでだよ」


と、ヤベェなぁ…
頭がぼーっとしてきやがった、
でも今倒れるわけにはいかねぇ…、


「正直さぁ、
今のこの状況でアンタをぶちのめして阿藤を連れて帰るのは難しそうだなぁ、

高橋、

俺はこのまま黙って帰った方がいいと思うか?、」


「、……」


「人類の為ならどうぞお役立て下さいって、阿藤を差し出した方がいいと思うか?、」


「……」


「お前言ってくれたよなぁ、
阿藤に手を出さないって

話してくれたよなぁ、自分の想い、

コイツはモノなんかじゃねぇぞ、

俺らと全く変わんねェ人間だぞ、

どんな生き方をしても人間なんだよ…、


わかってくれるよな… リョウ─」


意識が………


─────────────────



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No.76 19/10/08 20:30
チキン ( 30代 ♂ BMsZnb )

>> 75 ──ぼやっとなにかが形を表しはじめた…


目の前になにか立ち塞がってる…



仕切りのような…



その仕切りは曲線を描き小窓がついていて
その向こうにぼんやりと白いものが広がっている


視線を一周させると自分は今密閉された空間の中にいることがわかる

棺?…




なんでこんなところに…



うまく頭が機能しないせいかここにいるまでの経緯が全く思い出せない
脱力感に苛まれていて虚空を見つめる続ける…



その視界に人影が写った

『──い─ぞ』




ピーッ


プシュゥゥ



クリアな視界が広がる
こちらを覗きこむ二人


「気付かれましたか?」


認識のない顔が二つ
見た目で自分よりも歳上だろうことがわかる


足原さん気分はいかがですか?と問われ反射的に大丈夫ですと答えた
続けてここはどこですか?と訪ねると
国立の大学病院だという

周りを見渡せば確かにそれらしい機材が傍らに置かれていて
壁から天井にかけて白で統一され
いかにも病院といった感じだ


「足原さん
あなたの名前を言ってみてください」


「あしはらたすと」


「これ何本に見えますか」
白衣姿の男が指を出す


「3本」


白衣の男はコクリとうなずく


「足原さん
あなたは5日前にここへ意識不明の状態で運ばれてきました」


5日前…?


5日前に…




何かがあった…




「何があったのでしょうか」


「それは我々もわかりません。
何かわかれば警察の方が報告していただけると思いますので。
それよりも今はゆっくりと焦らずに体を治していくことに専念していきましょう」
と白衣の男はきっぱりと言った



焦らず…


その言葉に体がぴくっと反応したように感じた


たとえば
大切な約束ごとを忘れてしまっているのではないのかと…




なんとなく外の景色が見たくなり
カーテンを開けてもらう


開け放たれた窓ガラスにびっしりと貼りついた水滴
耳が認識し始めた音



雨──。



勝手に町並みを想像していたがそこには自然広がる山々の風景



薄い暗曇の空に陰を落とした緑の群れ



それを見ていてなんだか山が泣いているように思えてきて


じんわりと瞳の奥からこみあげるものを感じた───






なぜだろう…












  • << 78 「で先生、ここで何してんの?」 「見舞いだ。友達のな」 「そっか じゃあもし今度は先生が入院したら俺その時見舞いに行くよ。 もう歳なんだからさ」 「ばかもん、 人を年寄りあつかいするんじゃない まだまだおまえに負けないぐらい元気だよ!」 「左様でございますか それはなによりだ。ハハ」 「高橋は見舞いにきたのか?」 「高橋?」 「ほらこの前のタイムカプセルを掘り起こしにきた時に一緒だったじゃないか」 「タイムカプセル…」 卒業式の時に埋めたタイムカプセル… 「ああ、そうそう、 うん、高橋見舞いに来たよ、 なんかフルーツの詰め合わせ持ってきてくれてホント律義なやつなんだよアイツ」 「そうか。 まあ友達が弱ってる時に元気づけてやる もつべきものは友達だな」 なんとなく嘘をついて誤魔化してしまった。 その時の記憶がないなんて言って先生に余計な心配はかけたくなかった。 「しかし近いうちにまたお前に逢うとはなぁ」 「そうだね。 あの学校に来た日って何日前だったっけ?」 「あれは確か…10日前のことじゃなかったか?」 俺が病院に運ばれてきた日だ…! もしかして、高橋も事件に巻き込まれたとか…? 「お!そうだ 足原おまえに良いものやるよ」 「え!?なに?」 トンボ先生から差し出されたのは小さな御守りだった。 携帯用ストラップ付きの御守り。 「入院してる友達にやろうと思っていたんだがな、また次の機会にでも渡せるからな。 せっかくおまえに会ったんだ、ヤンチャ坊主がこれ以上怪我をしないように私からのプレゼントだ。 ケイタイにでもつけておきなさい」 「わかった。 ありがとう先生」 それから少し会話が続き話の区切りがついたところで先生と別れた。 俺はその背中を感慨深く見送った。
  • << 79 先生を見送った後、 担当医に自分と一緒に病院に運び込まれた人物はいなかったかと訪ねると 俺だけだったという。 とりあえず一安心といいたいところだが無事だという確証はないのでなんともいえない、 連絡をとろうにも… ん!? 高橋に会ったんだとしたら、連絡交換ぐらいしてるよなぁ!、 自分の病室に戻り携帯電話の電話帳を調べて、あった! 確かに『高橋』 という名前が登録してある。 早速電話してみる… が、留守電だ。 折り返し電話をくれるようメッセージは吹き込んでおいた 無事でいてくれたら何よりなんだが。 電話が返ってくるのは待つとして、 仰向けに寝転がり先生の話をもう一度整理することにする。 ──高橋と中学校へタイムカプセルを掘り出しに行った ──移動手段は? 自分の車で行っただろうと推測する。 助手席に座ってる高橋をイメージしてみる。 そして学校から出たその後に どこかに移動して他の目的があったのだろうか? 最終的に俺は繁華街で倒れていた… 何をしに繁華街に行ったのだろう… 事件前 確かに高橋にあった記憶は残っている。 偶然ばったりと再会して… 飲んで… 中学の思い出話に華を咲かせて… そういえばアイツ、 似た人に間違えられたとか言ってたよな… そいつを探しにも行ったんだよな、 見つからなかったけど… 確か…河村… ドッペルゲンガー…

No.77 19/10/11 19:19
チキン ( 30代 ♂ BMsZnb )

>> 76 「お大事に──」




退院した。


目覚めてから1週間
病院に運び込まれて12日間入院していたことになる。


病院に運び込まれる前の記憶は今だ思い出せない。病院にやってきた刑事の調べも今だ確証を得ていない。

なんでも外国人犯行グループの某かが俺のことをターゲットと間違えて暴行を加えた可能性があるとのこと。
俺が倒れていた繁華街には確かにそういった抗争が以前にもあったらしくそれに巻き込まれたのではないかと。
詳しいことがわかり次第連絡するとのこと。


まるで刑事ドラマの世界だ。

でも俺もある意味近未来ドラマの登場人物なのかもな、

なんて。


まだ大腿部の傷口は多少疼くが歩くことに問題はない。
問題があるのは以前の記憶。

医者の話しでは
検査の結果とくに脳などに損傷はなくそれでなければ断片的な記憶障害だという。
とてもショッキングな出来事が起こると脳が心の平安を保つためにその記憶を忘れさせてしまう働きが稀に起こるらしい。

そういうのなんて言ってたっけ?

ブレーンバスターだっけ?

まるで牛丼好きの屁のつっぱりはいらんヒーローの得意技みたいだ。
額に『足』とでも書いてみるか?



あと入院中にばったり知り合いに会った。








────「足原ぁ」




廊下を松葉杖をついて歩いている時に後ろから俺を呼ぶ声がした。


振り返るとそこにいたのは
中学の担任のトンボ先生だった。



「どうしたんすか?こんなところに」


「いやいやお前こそどうしたんだ?松葉杖なんかついて
また悪さでもしたんか?」


「いやだなぁ、
もうそんな無茶する歳じゃないっすよ。
ちょっと事故に巻き込まれちゃって」


「事故?」


「事故というか
まあ、俺はその被害者というか、」


「そうか、
そらあ災難だったなぁ。
ちゃんと相手から被害金がっぽりもらうんだぞ」


「そんなこと教師が言っていいんすかぁ」


「教師ったってなぁ聖人君子じゃないんだぞ。
欲深き一人の人間だ。
もらえるものはしっかりもらう!」


「久しぶりに聞いたなァ、
先生の口グセ聖人君子っていうやつ」



トンボ先生は教師のくせに偉ぶらない。俺はそういうところを慕ってた



No.78 19/10/11 19:57
チキン ( 30代 ♂ BMsZnb )

>> 76 ──ぼやっとなにかが形を表しはじめた… 目の前になにか立ち塞がってる… 仕切りのような… その仕切りは… 「で先生、ここで何してんの?」


「見舞いだ。友達のな」


「そっか
じゃあもし今度は先生が入院したら俺その時見舞いに行くよ。
もう歳なんだからさ」


「ばかもん、
人を年寄りあつかいするんじゃない
まだまだおまえに負けないぐらい元気だよ!」


「左様でございますか
それはなによりだ。ハハ」



「高橋は見舞いにきたのか?」


「高橋?」


「ほらこの前のタイムカプセルを掘り起こしにきた時に一緒だったじゃないか」


「タイムカプセル…」
卒業式の時に埋めたタイムカプセル…



「ああ、そうそう、
うん、高橋見舞いに来たよ、
なんかフルーツの詰め合わせ持ってきてくれてホント律義なやつなんだよアイツ」


「そうか。
まあ友達が弱ってる時に元気づけてやる
もつべきものは友達だな」


なんとなく嘘をついて誤魔化してしまった。
その時の記憶がないなんて言って先生に余計な心配はかけたくなかった。


「しかし近いうちにまたお前に逢うとはなぁ」


「そうだね。

あの学校に来た日って何日前だったっけ?」


「あれは確か…10日前のことじゃなかったか?」

俺が病院に運ばれてきた日だ…!
もしかして、高橋も事件に巻き込まれたとか…?


「お!そうだ
足原おまえに良いものやるよ」


「え!?なに?」


トンボ先生から差し出されたのは小さな御守りだった。
携帯用ストラップ付きの御守り。


「入院してる友達にやろうと思っていたんだがな、また次の機会にでも渡せるからな。
せっかくおまえに会ったんだ、ヤンチャ坊主がこれ以上怪我をしないように私からのプレゼントだ。
ケイタイにでもつけておきなさい」


「わかった。
ありがとう先生」


それから少し会話が続き話の区切りがついたところで先生と別れた。
俺はその背中を感慨深く見送った。



No.79 19/10/11 19:58
チキン ( 30代 ♂ BMsZnb )

>> 76 ──ぼやっとなにかが形を表しはじめた… 目の前になにか立ち塞がってる… 仕切りのような… その仕切りは… 先生を見送った後、
担当医に自分と一緒に病院に運び込まれた人物はいなかったかと訪ねると
俺だけだったという。
とりあえず一安心といいたいところだが無事だという確証はないのでなんともいえない、
連絡をとろうにも… ん!?


高橋に会ったんだとしたら、連絡交換ぐらいしてるよなぁ!、




自分の病室に戻り携帯電話の電話帳を調べて、あった!

確かに『高橋』
という名前が登録してある。

早速電話してみる…


が、留守電だ。

折り返し電話をくれるようメッセージは吹き込んでおいた

無事でいてくれたら何よりなんだが。



電話が返ってくるのは待つとして、
仰向けに寝転がり先生の話をもう一度整理することにする。



──高橋と中学校へタイムカプセルを掘り出しに行った


──移動手段は?


自分の車で行っただろうと推測する。
助手席に座ってる高橋をイメージしてみる。


そして学校から出たその後に
どこかに移動して他の目的があったのだろうか?


最終的に俺は繁華街で倒れていた…


何をしに繁華街に行ったのだろう…




事件前
確かに高橋にあった記憶は残っている。

偶然ばったりと再会して…
飲んで… 中学の思い出話に華を咲かせて…

そういえばアイツ、
似た人に間違えられたとか言ってたよな…


そいつを探しにも行ったんだよな、
見つからなかったけど…



確か…河村…


ドッペルゲンガー…

No.81 19/10/20 17:22
チキン ( 30代 ♂ BMsZnb )

>> 80 高橋からの折り返しの電話は今だ無い、無いのなら行動で確めるしかない。
ということで高橋の職場のファミレスへやってきた


「いらっしゃいませ~」

「あのぉ高橋店長って出勤されてますか?」



─女性店員によれば
もう2週間もの間出勤していないという。おまけに本人との連絡もとれていない。
真面目なあの店長が何も連絡もせずに休むなんて考えられない。
最後は冗談気味に変な事件にでも巻き込まれてしまったのではないか、なんて言っていた。

俺はその変な事件というワードに現実味を感じずにはいられない。
俺が病院に運び込まれたのと時を同じくして高橋にも何かあったのは確かだ…


これはもう事件なのかもしれない、
警察の力を借りて解決、
刑事事件…


そして俺は警察署へやってきた。


警察に事件を解決してもらう…


というにはまだ早いのかもしれないと思いたった。

そもそも警察署に来たのは自分の車を取りに来たからであって。
繁華街の駐車場で見つかって警察署で保管されていたからだ。


記憶を思い出す為にはその当時と同じシュチエーションを再現すること。
これが今の最善方法。
悠長に待ってはいられない。
あの『河村』という名前にたどり着いた時から何かが始まった気がしてならないから…



とりあえず車に乗りこみ繁華街の辺りを一周してみる。
なにか目に入るものはないだろうかと探ってみるが全くといっていいほどピンとこない。
本当にここに来たのかと疑わしく思うほどだ。


ここは離れて別のところへ行くとしよう。
どこへ?中学校だろう。



中学校までの距離はけっこうあるのでその移動中にでも何か浮かんでくれば…


ラジオの音と共に街並みが過ぎ去っていく

その時は何か聴いていたんだろうか…


そういえば病院から家に帰った時に中学校同窓生名義で封筒届いてたよな、
タイムカプセル開封のお知らせって。

ということは高橋と行った時はまだ掘り起こしていなかったってことだよな?
何か違う目的があったのだろうか?
いや、俺のことだからなんとなくなノリで行ったような気がしないでもない…



どこかの学校を通りかかったとこで運動場に先生らしき声がマイクごしに聞こえていた。
その声の調子から察するに運動会の練習をしているのだとわかった。



アイツもけっこう足早かったよな…


No.84 19/10/27 19:25
チキン ( 30代 ♂ BMsZnb )

>> 83 『──オリオン座流星群の活動がピークを向かえます。
今夜未明から明け方にかけてが見ごろでしょう。しかしこの時間帯には下弦の月が夜空を照らしているので、条件は良いとはいえないでしょう──』



何気ないラジオからの情報が耳に入る。


流星群か
見たことがない。

いくつもの流れ星が駆け巡って
それはとても神秘的なんだろうな


人の手には届かない世界
それは魔法のようでいて
魔法という言い方が違うのなら神秘という言い方になるだろう
神秘的なものは特別な光を放っている


俺の走ってる車も流星の一つで
誰かの願いを叶えたりできるのかねぇ…
アマゾンの宅配便とかなら、

「ふっ」

何を考えているんだと自分のことが可笑しくなり気の緩んだ息が漏れる。
入院してる間考える時間がありすぎて
そんな考え方も身についてしまったのだろうか。



ちょっとあそこのセブンでコーヒーでも買って小休憩にしようか。




車内に漂うコーヒーの香りを堪能しながら啜っていると、
ふと頭にある映像が浮かんできた。


目先のフロントガラスに雨粒が貼りつきワイパーが目の前をかすめてゆく。
粒が溜まってきては掃き溜まってきては掃きを決まったテンポで繰り返す。


その心地よいテンポに見とれているところへ左側のドアが開いて誰かが乗り込んできた。

誰かと問うまでもなくそれは高橋だろう。
そう直感する。

だろうと思っていても顔から下しか捉えてなくて表情までは読み取ることができない。

高橋の顔のはず、
はずの顔が浮かんでこない。


なぜだろう。


映像はそこまで。



この場所に来ていたのかもしれない。

その日は雨が降っていたんだろうおそらく。


もう一口コーヒーを啜って車を発進し始めようと思っていた矢先
左側のドアの窓をコンコンとノックする音が聞こえた。

咄嗟に高橋?と音の方を向く。

つい先ほどまで頭の中に浮かんでいた映像と現実に境界を引く間がなかったので気持ちが延長していた。


窓の向こうに見えるのはスーツの衣装。
なんとなく高橋ぽさに欠けるような

ガチャっとドアが開きその人物が顔を覗かせるのと口を開くのは同時で開口一番


「こんにちは足原さん
わたくしドッペルゲンガーです」と

全く見覚えのない男が
全くとはいえない身に覚えのあるワードを口にしていた──

No.86 19/10/28 12:19
チキン ( 30代 ♂ BMsZnb )

>> 85 こういうことを青天の霹靂というのだと身をもって知ることになる。

突然の出来事

雷に打たれたみたいに。


探し人登場!見つかりましたよ!ステキやん
なんて感動はなく、いきなり目の前に現れたらビビってしまう、
追ってるつもりが追われていたなんて。

血の気が退いて
青顔の霹靂になってないだろうか?



相手さんは何もかもお見通しのようなのでそれならそれで手間が省けていいだろう、
しかしひっかかったのはアシメ製薬…


なにかが繋がりそうな予感。


その感覚に混じってるのは嫌悪感



「あんたが河村さんか、
探してたよ。まさかいきなりご本人登場だなんてニクい演出してくれちゃってとんだサプライズだなぁ、」

内心動揺しまくりだが努めて気丈に振る舞う。
でもこういう時こそ口数を重ねるべきだという持論。


高橋を探してるところへ河村がでてくるなんて
棚からぼた餅ってやつ?


「目的はあんたの言う通り高橋とあんたがどれほど顔が似ているのか確かめたかったんだ、それだけ。

初めのうちはそれだけだった、
でも今は違う。
あんたの顔だけじゃなくあんた自身のことが知りたくなった」


「それは恋とでもいうのかな?」
と余裕たっぷりに冗談をかます河村


「恋に近い感情なのかもしれないな。
いや、正確にいうなら恋以上の感情なのかもしれない」
微かに河村の口角が上がる。


「じゃああんたに告白をするとしようか。
『あなたは河村多江子という女性を知っていますね?』」


河村の目が少し見開く。続けて

「『あなたの旧姓は高橋ですね?』」


「『あなたはわたしのことをずっと以前から知っていましたね?』」


「『あなたはアシンメトリー研究所の関係者ですね?』」


訪ねるというより断定的な問い方をしてみたのは名探偵コナンの影響だろうか?


「『あなたの名前は高橋遼。
そしてわたしとあなたは中学の同級生ですね?』」


河村の表情が懐かしいものを見るかのように変わり
「はい。その通りです」と答えた。


「高橋、」

「足原。」




高橋と再会を果たした。
しかし記憶が戻ったわけではない。
再会をすんなりと飲み込めたわけではない。
微かな違和感を感じて。
ドッペルゲンガーには表と裏があるのかなと疑問が浮かんで。


この高橋はどっちだ…


  • << 89 『遼』という名にすぐにピンときた。こいつは中学を共に過ごしてきた高橋遼じゃないかと。 そしてアシメ製薬、河村とくると、多江子さんとなんらかの関係はあるだろうと。 なかば当てずっぽうなところもあったがなんとなくな確信もあった。 点と点が繋がったような感覚。 しかし、中学時代の友達の顔を忘れてるとはいかがなものだろう… それはちゃんと詫びたがしかし、高橋はそれを当然事のように受けとめ 今までの事の真相を語り始める。 俺たちは血が繋がった双子の兄弟だということ 俺はオリジナルで阿藤は俺の細胞から作りあげた失敗作のクローンだということ 俺たちの両親 そして多江子さんのこと など 俺はその話しを黙って聞いた。 自分の肌感覚で確認するかのように、 記憶が甦ってくるというよりはその記憶に実感が持てるかどうかといった感じ。 点字に沿って上から線でたどっていくみたいな。 俺が黙って何か得体の知れないものを飲み込むのに専念してる間、 高橋は場の空気を揉みほぐすように昔の思い出をはさんできた。 「中学の時さポケモン流行ってただろ?」 「ああ。よく教室の中でやってるやついたなぁ 俺は全然やってなかったけど」 「そのポケモンブームの時にクラスメイトをポケモンのキャラに当てはめるって遊びがあったんだよ」 「なんかあったような…」 「足原 お前はブースターって言われてたんだ。 阿藤はゲンガー。 覚えてるか?」 「そのブースターって何なの?」 「炎タイプのポケモン。 最強クラスの強さを誇るといわれてる。 お前けっこう熱血タイプの性格だろ? クラスメイトも満場一致で納得してたよ」 「ハハ、そうなのか?」 「そのブースターってのはイーブイにほのおの石を与えると進化してブースターになるんだよ。 で面白いことに そのブースターの原形のイーブイはみずの石を与えるとシャワーズに進化してかみなりの石を与えるとサンダースに進化する。 イーブイだけなんだよ 3通りに進化できるポケモンって。 それにゲーム中で1匹しか入手できない貴重なポケモンでもあるんだ」 「3通りに進化できるね… 確かに俺にそっくりかもな。」 自分の生い立ちと重ね合うかのようなそのブースターに 親近感を覚えざるをえなかった。
  • << 90 「お前はなんのポケモンだったんだ?」 「僕はミュウツーだ」 「ミュウツー?」 「ゲームクリア後にしかゲットできない最強ポケモン」 「なんかめちゃくちゃイイやつじゃねぇかよ!」 「まあな」 「まあなじゃねぇよ!どんだけ自信に満ち溢れてんだよ。 まぁ、学年一の成績を誇っていたお前にはピッタリなのかもしんねぇな」 「それに僕はポケモンを10回クリアしてる。 ミュウツーと呼ばれても伊達じゃないさ」 「10回って、どれだけ飽きを知らないんだよ! 確かにお前の飽くなき探求心は伊達じゃないよ、」 伊達じゃない… その探求心は研究者として必要な能力なのかもな。 それにしてもポケモンの話しをしてる時の高橋の表情 あの頃の面影が垣間見えた。 近い存在に感じた。 付け足すように高橋は言う。 『ゲンガーをゲットする方法はゴーストを通信交換すること。』 その目がどこか虚ろげだったのは 俺の気のせいだろうか──

No.88 19/11/03 11:25
チキン ( 30代 ♂ BMsZnb )

>> 87 違います。
すいませんがこのレス削除してもらえますか?

No.89 19/11/06 18:07
チキン ( 30代 ♂ BMsZnb )

>> 86 こういうことを青天の霹靂というのだと身をもって知ることになる。 突然の出来事 雷に打たれたみたいに。 探し人登場!見つ… 『遼』という名にすぐにピンときた。こいつは中学を共に過ごしてきた高橋遼じゃないかと。

そしてアシメ製薬、河村とくると、多江子さんとなんらかの関係はあるだろうと。

なかば当てずっぽうなところもあったがなんとなくな確信もあった。
点と点が繋がったような感覚。


しかし、中学時代の友達の顔を忘れてるとはいかがなものだろう…
それはちゃんと詫びたがしかし、高橋はそれを当然事のように受けとめ
今までの事の真相を語り始める。

俺たちは血が繋がった双子の兄弟だということ
俺はオリジナルで阿藤は俺の細胞から作りあげた失敗作のクローンだということ
俺たちの両親
そして多江子さんのこと
など


俺はその話しを黙って聞いた。
自分の肌感覚で確認するかのように、
記憶が甦ってくるというよりはその記憶に実感が持てるかどうかといった感じ。
点字に沿って上から線でたどっていくみたいな。


俺が黙って何か得体の知れないものを飲み込むのに専念してる間、
高橋は場の空気を揉みほぐすように昔の思い出をはさんできた。



「中学の時さポケモン流行ってただろ?」


「ああ。よく教室の中でやってるやついたなぁ
俺は全然やってなかったけど」


「そのポケモンブームの時にクラスメイトをポケモンのキャラに当てはめるって遊びがあったんだよ」


「なんかあったような…」


「足原
お前はブースターって言われてたんだ。
阿藤はゲンガー。
覚えてるか?」


「そのブースターって何なの?」


「炎タイプのポケモン。
最強クラスの強さを誇るといわれてる。
お前けっこう熱血タイプの性格だろ?
クラスメイトも満場一致で納得してたよ」


「ハハ、そうなのか?」


「そのブースターってのはイーブイにほのおの石を与えると進化してブースターになるんだよ。
で面白いことに
そのブースターの原形のイーブイはみずの石を与えるとシャワーズに進化してかみなりの石を与えるとサンダースに進化する。
イーブイだけなんだよ
3通りに進化できるポケモンって。
それにゲーム中で1匹しか入手できない貴重なポケモンでもあるんだ」


「3通りに進化できるね…
確かに俺にそっくりかもな。」

自分の生い立ちと重ね合うかのようなそのブースターに
親近感を覚えざるをえなかった。

No.90 19/11/06 18:32
チキン ( 30代 ♂ BMsZnb )

>> 86 こういうことを青天の霹靂というのだと身をもって知ることになる。 突然の出来事 雷に打たれたみたいに。 探し人登場!見つ… 「お前はなんのポケモンだったんだ?」


「僕はミュウツーだ」


「ミュウツー?」


「ゲームクリア後にしかゲットできない最強ポケモン」


「なんかめちゃくちゃイイやつじゃねぇかよ!」


「まあな」


「まあなじゃねぇよ!どんだけ自信に満ち溢れてんだよ。
まぁ、学年一の成績を誇っていたお前にはピッタリなのかもしんねぇな」


「それに僕はポケモンを10回クリアしてる。
ミュウツーと呼ばれても伊達じゃないさ」


「10回って、どれだけ飽きを知らないんだよ!
確かにお前の飽くなき探求心は伊達じゃないよ、」


伊達じゃない…


その探求心は研究者として必要な能力なのかもな。

それにしてもポケモンの話しをしてる時の高橋の表情
あの頃の面影が垣間見えた。
近い存在に感じた。



付け足すように高橋は言う。
『ゲンガーをゲットする方法はゴーストを通信交換すること。』


その目がどこか虚ろげだったのは
俺の気のせいだろうか──

  • << 91 「これからどうする? お前が俺の前に顔を出したということは何か考えがあるんだろう?」 俺の説明話が終わり、懐かしいポケモン話も一区切りついた頃、それまでの笑顔を急に引っ込めて少し探る様な顔で足原がそう切り出してきた。 足原の真剣なその表情と言葉に俺は少し躊躇った後、 「ああ」 と短く答えた。 足原には一応ざっくりと今までの事のあらましは伝えたが、頷いてはいるもののどこか少しピンときていない様子が俺は気になっていた。 記憶を失っていた人間が、他者から欠けた記憶の部分の話を聞いたからといって急に記憶を取り戻せるものだろうか? 俺はその疑問を口に出さなかったが、足原も何となくもどかしいような今いちスッキリできていない様な複雑な表情をしている。 少し沈黙が続いた後、 「なあ!中学校に行ってみないか?!」 俺達はほぼ同時に同じ言葉を口にした。 やはり足原も俺と同じく、阿藤と辿った道をもう一度辿って朧気な記憶をハッキリさせる努力をしたいのか? 「なあ、今からならまだトンボ先生は学校にいるよな?」 だが、そんな俺の考えをキッパリ否定する様に足原が何かを考え込む様にしながらそう言い出した。 「トンボ…先生?」 何故、急にトンボ先生の話題が出てくるんだ? 戸惑う俺の表情に足原は少し笑うと、 「あのさ、俺が入院してた病院でトンボ先生に会ったのよ。 最初は凄い偶然だな思って素直に喜んでたんだけどさ…」 ここで足原を言葉を切って少し辺りを見回すと、 「これ、俺の勘だけどトンボ先生は何か俺達の事を探ってる。 もしかしたら色々も俺達の知りたい事も掴んでいるのかも。 だからとりあえずはトンボ先生に会いに行ってみようぜ!!」 と俺の耳元でヒソヒソとささやく様に言った。 「は?なに?お前?何かトンボ先生について掴んでるの? その考えの根拠ってなに?」 足原の突飛な考えに戸惑う俺の言葉に、 「根拠?ないよ。 俺の勘だって言っただろ?」 と、足原は昔と変わらない屈託のない笑顔でそう答えた。
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