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雨が降っていた2

39レス 2528 Hit

以前「雨が降っていた」を投稿していた者です。


こちらの都合で中途半端になってしまっていました。読んでくださっていた方がいたらごめんなさい。

新たにこちらで続きを書きます。
どうか引き続きよろしくお願い致します。

17/08/21 00:20(スレ作成日時) [RSS]

  • No: 30パンダっ子(FWvYnb)スレ主更新時刻17/09/21 10:04

    「あれはきっと恋だと、今でも言い切れる。私の生涯において、たった一度の真実の恋。」

    純さんは淡々と語った。史織さんと離れたくなくて、四年間寮に住み続けた事、就職後も結婚後も、親友として交友関係を続けた事、史織さんがアメリカに行ってしまってからは、一度も会えないままだった事・・・

    「亡くなった主人には、感謝しているわ。私に娘を・・・家族を与えてくれたし、なに不自由ない生活をさせてくれた。だから、私の生き方が不幸だったとは決して思わない。」

    「世の中には愛し合って伴侶になった夫婦も、もちろんいると思うけれど、それはほんの一握りの人達なの。大抵は打算なり諦めなり、妥協なりが働いて結婚に到るものよ。愛さえあれば、なんてのは通用しない。こと結婚に関しては。」

    純さんは5歳年上のご主人が、どうして自分を結婚相手に選んだのか、結局分からなかったと言った。聞いたことさえなかったという。自分が史織さんとの恋を諦めて結婚は条件のみで決めたのだから、ご主人がどんな理由で結婚しようが構わなかった、と純さんは言い切った。

    ご主人との結婚生活は、純さんが史織さんを忘れることができなかったせいでどこか一線を引いたままだったという。いつまでも自分に心を開かない純さんに、ご主人は業を煮やしたらしい。浮気をするようになってしまった。

    それでも純さんはご主人に嫉妬したりしなかった。娘も産まれ子育ても忙しかったし、なんなら夜の生活から開放されると不謹慎にも少しほっとしたらしい。

    浮気をしていても、ご主人の態度は紳士だった。子供も可愛がっていた。常に家族と仕事を第一に考えていたから、浮気相手には割り切って付き合える女しか選ばなかった。

    それだけでもありがたいと純さんは静かに笑った。自分のせいで浮気をさせてしまったのだから、家庭を壊さないだけでも立派だと妙な褒め方をした。

  • No: 31パンダっ子(FWvYnb)スレ主更新時刻17/09/24 23:59

    「・・・おばあちゃん・・・」
    友香は何か言いかけて、でも結局それしか言わなかった。

    「私は幸せに今までの人生を送って来られたと、大抵の人は思うのでしょうね。実際、幸せだったのだし。だけどね、心の中に澱のように何かが溜まっているの。・・・いいえ、何かじゃないわね、それを口に出すのは怖いから普段考えないようにしているのだもの。」

    「・・・一旦考え出してしまうと、私にもっと勇気があったらなんて、思っても仕方のない後悔ばかりしてしまう。」
    純さんは目を瞑った。瞼がひくひく震えている。涙を堪えているのが伝わって、私の目頭も熱くなった。

    「ただ、史織に・・私も愛していると・・言いたか・・った。史織を抱き締めて・・・その・・頬に・・触れたかった・・・」
    純さんの閉じた目から、涙がこぼれ落ちた。

    私は純さんに掛ける言葉も無くて、でも純さんの哀しみややるせない悔しさも、何となく分かってしまった。史織さんに伝えたくて出来なかった言葉が、抱き締めたくて広げたその腕が、行き場を無くして純さんの心の中に澱として残っている。

    友香が純さんの隣りに行き、純さんを抱いた。純さんは友香の肩に額をつけて、友香に背中をさすられるまま、身体中を震わせて泣いていた。

    「おばあちゃん・・・誰かに話したかったんだね。おばあちゃんと史織さんの事を、今までずっと言えなかったんだね。おばあちゃん、辛かったよね。史織さんと気持ちが繫がっていたのに、史織さんに言えないまま、永遠に会えなくなってしまったんだもんね。」

    友香の声の優しさに、私は胸が詰まった。そうだ。純さんはずっと誰かに言いたかったのだ。愛する史織さんを無くして哀しいと、愛していると打ち明けたら受け入れて貰えたのに、それを言えなかったのが悔しいと、ずっとずっと言いたかったのだ。

  • No: 32パンダっ子(FWvYnb)スレ主更新時刻17/09/30 15:34

    身体を震わせて、哀しみを吐き出すように号泣する純さんを私はただ黙って見ていた。
    それは愛する人を亡くした者の、正しい慟哭に思えた。

    「おばあちゃん、こんな風に泣いた事あった?」
    友香の問いかけに、純さんは頭を横に振った。
    「そっか・・・」
    友香は純さんの背中をさすり続けた。

    純さんはきっと、史織さんへの想いを終わらせる為にこんな風に泣く事が必要だったのだ。なのにそれをしないで、今日まで長い間いたずらに時を重ねてしまったのだろうと思った。

    違う。そうじゃない。しなかったのではなくて出来なかったのだ。
    純さんの涙を受け止める人間がいなかったのだから。今日までは。


    「おばあちゃん、私達明日帰るのやめるね。おばあちゃんが落ち着いたら、また明日史織さんの話聞かせて欲しい。」
    友香は私に顔を向けて、声を出さずに口だけ動かした。
    『ごめんね。』

    私は微笑んで首を左右に振った。
    私もこのまま純さんを残して明日帰れないと思っていた。


  • No: 33パンダっ子(FWvYnb)スレ主更新時刻17/10/02 21:42

    「私も、聞きたいです。もっともっと、純さんと史織さんの話を、聞きたいです。」
    声を出すと涙が出そうになる。

    「ね、おばあちゃん、いいよね?」
    純さんは何度も頷いた。
    「あ・・りが・・と・うね。」
    しゃくり上げながら、それでもお礼を口にする純さんを、私はやっぱり好きだと思った。

    純さんが泣き止んで、私達が部屋に戻ったのは真夜中を過ぎていた。
    書斎を出る時にはもう落ち着いた様子の純さんだったが、一人になったらまた何か考えてしまうのだろうと思った。

    私は窓のカーテンを開け、真冬の澄んだ夜空を見上げた。綺麗だった。
    こんな心中で眺めているのにも関わらず、雲のない月の明るい夜空はとても綺麗だった。

    「何を見ているの?」
    友香が隣りに立った。
    「うん・・・月を見てた。」
    「そう・・・」
    友香はそれ以上何も言わなかった。

    「純さんの話、切なかったね。」
    「うん。」
    「史織さん、素敵な人だったね。」
    「うん。」
    「純さん、私達をどんな思いで見てたんだろう。」

    「・・・琴乃」
    「・・何?」
    「・・・泣いてもいい?」
    「・・いいよ。」

    友香のしゃくり上げる声が、徐々に大きくなっていった。私はあえてそちらを見ず、手探りで友香の手を掴んだ。友香は指を絡めて私の手をしっかり握った。

    友香の泣きかたは純さんと似ていた。それに気付いて、私はより一層友香を愛しく思った。
    純さんの一途な片想いの行方が哀しい結果に終わったからこそ、私は友香を出来るだけ笑顔にしたいと思った。それは決意のようなものになって、私の心に刻まれた。

    見上げている月がいびつな形に滲んでいた。そっと目を閉じると、涙が一筋頬を伝っていった。
    再び目を開けると、月はさっきよりはまともな輪郭に見え、私は友香の手を強く握り返した。

  • No: 34パンダっ子(FWvYnb)スレ主更新時刻17/10/08 13:23

    愛する人がこうして側にいるのが、奇跡みたいなんだと今夜改めて思った。そしてこうしていられる時間は、私が思うよりも短いのかもしれないとも。

    今日はこうしていられても、明日のその保証はどこにもありはしない。私の心が何度も叫んでいた。
    だから、今を大切にしなければ。
    愛する人を、大切にしなければ。
    友香を、大切にしなければ。

    私は友香を抱き寄せた。
    「私の肩で泣いて。胸に飛び込んでって言いたい所だけど、あなたの方が背が高いから、肩で我慢してね。」
    優しく髪をなでると、友香の泣き声に笑いが混ざった。

    「友香・・・私達、ずっと一緒にいましょう。・・・純さんと史織さんの分まで。」
    友香の嗚咽が強くなった。そして何度も頷いた。

    「愛しているわ。何度でも言う。あなたは私にとって最高のパートナーよ。」
    私の言葉が友香のなぐさめになればいいのだけど、それは期待出来そうもなかった。だけど今夜それを言わずにいたら、私は友香の恋人失格だ。今の友香に寄り添えるのは、私しかいないのだから。

  • No: 35パンダっ子(FWvYnb)スレ主更新時刻18/01/01 04:23

    >> 34

    「私ね、自分がどうして泣いているのか自分でも良くわからないの。おじいちゃんが可哀想だとか、おばあちゃんと史織さんだって可哀想だとか、何に思いを寄せればいいのか何にもわからないのに、涙だけは止まらないの。」

    友香の声が耳元で震えていた。私は黙って友香の背中をさすり続けた。

    夜が白々と明け始める。友香の啜り泣きは止んで、私達はただベッドに腰掛けて明るくなって行く窓の外をぼんやりと見ていた。


  • No: 36パンダっ子(FWvYnb)スレ主更新時刻18/01/09 00:13

    友香がぽつぽつと話し始めた。
    「私が男の人を好きになれないとおばあちゃんに打ち明けたのは、13歳の時だった。おばあちゃんは最初びっくりした様子だったけど、少し困った顔をして
    『それは大変だね』
    って言っただけだった。」

    「・・・正直拍子抜けした。私、てっきり怒られるか、たしなめられるか、呆れられるかだと思っていたから。私が相談相手におばあちゃんを選んだのは、どうせそのどれかの対応をされるなら、おばあちゃんなら我慢出来そうだったからなの。」

    「その時は、おばあちゃんも私と同じ理由で悩んでいたなんて思いもしなかった。ただ、おばあちゃんが『そんなのは気のせいだ』とか、『もう少し年を取れば変わる』なんて月並みな事を言わなかったのが嬉しかった。」

    「それでね、その時に言われたの。私が心から好きだと思った人が居たら、おばあちゃんの家に連れて来なさいって。もしその人が女の人でも、おばあちゃん気にしないからって。心のままに人を愛しなさいって言ってくれた。」

    友香が私を見た。私も友香を見た。私は友香を抱き寄せて『ありがとう』と一言言った。

    「おばあちゃん、嬉しかったと思う。史織さんとの事を聞いて私、はっきり分かった。おばあちゃんは私が心から愛する人に巡り会えた事を凄く喜んでくれてる。」

    純さんはきっと、友香が自分と同じ辛い想いをするのを知っていた。でも全く同じっていう訳じゃない。時代も環境も、何より自分という相談相手がいる。純さんはそれに賭けた。だから、友香に心のままに生きるように言ったのだ。



  • No: 37パンダっ子(FWvYnb)スレ主更新時刻18/07/16 01:39

    >> 36

    私は泣き疲れて眠った友香の深い息を確認すると、そっと部屋を出た。
    どうしても純さんと二人で話をしたかった。純さんはあの部屋で一人で居るはずだという頼りない根拠にすがってここに来てしまったけれど、小さくノックした後に『どうぞ』という声が聞こえた時は心底ホッとした。

    「眠れない?」
    静かに部屋に入ったまま、ドアの前で立ち尽くした私に純さんが声を掛けてくれた。
    「いえ・・・どうしても今日中に言いたい事があって、ここへ来ました。少しお時間を頂けないでしょうか?」

    「いいわ。私も今夜は眠れそうもないし、さっきは随分と重い話をしてしまったんだもの、次はあなたの話を聞きましょう。」
    純さんの柔らかな声が私を落ち着かせる。自分でも分からないうちに随分と緊張していたみたいだ。
    私はさっき座った位置に腰を下ろした。

    「純さん。率直に言ってください。私は友香さんの側にいる資格はありますか?私は友香さんのパートナーとして、純さんから及第点を頂けますか?」
    純さんは不思議そうな顔で私を見た。
    「何を言っているの?もし私がダメだと言ったら、あなたは友香を諦めるの?」

    私は唇を噛んだ。
    「無理・・・です。その場合、友香さんは私か家族か、どちらかを選んで貰わなければならなくなります。」

    純さんは私を見つめた。
    その瞳からは何の感情も読み取れない。

  • No: 38パンダっ子(FWvYnb)スレ主更新時刻18/07/16 14:54

    「友香から何か言われた?」
    「・・・この家に連れて来てくれた意味を、友香さんから聞きました。」
    純さんが納得したようにうなづいた。

    「それは友香の意思であって、友香自身の心の在り方を私に示してくれたのよ。あなたが友香にとってどれ程大切な人なのかを私に教えてくれたの。私があなたをどう思おうが、関係ないと思うのだけど。」
    「・・・関係なくありません。私にとっても友香さんは大切な人です。愛する人の大切な家族に気に入られたいと思うのは当然です。」
    「・・・友香を愛しているのね。」
    「愛しています。だから・・・私のせいで友香さんが家族と険悪になってしまうのは嫌なんです。特に・・・友香さんは純さんが大好きだし、そんな人に良く思われないのは嫌です。」

    純さんは少しだけ驚いたようだった。でもその後すぐに可笑しそうに笑った。
    「あなた・・・真面目な人なのね。私の事なんて気にせずに、もっと恋愛を楽しめばいいのに。せっかく両思いなんだから。」
    「そんな訳にはいきません。将来を考えるなら、尚更です。それに・・・私だって純さんが大好きになったんです。私の事を、認めて欲しいんです。」

    「ふふふ・・・。正直ね。それに欲張りだわ。反対されたら家族から奪ってでも一緒にいたい癖に、少しでも理解のある私には嫌われたくない。そうなんでしょう?」
    悔しいけどその通りだった。理解者は多い方がいい。私は黙って深くうなづいた。

    「・・・気に入ったわ。結論を言うなら、あなたは合格。可愛い孫娘が選んだ人なら、私はどんな人でも構わないと思っていたけれど、やっぱり気になるものね。あなたが友香をどれ程大事に思ってくれているか、良く分かったわ。友香だってあなたを見た目だけで選んだ訳ではないとはっきり分かったわ。あの子ったら、電話でもあなたの事ばかり話すのよ。べた惚れなのが丸わかり。」
    純さんはさも可笑しそうに口に手を当てて笑った。





  • No: 39パンダっ子(FWvYnb)スレ主更新時刻18/07/29 11:09

    >> 38

    「私もね、あなたに会うのは緊張したのよ。私の印象で友香が嫌われてしまわないか、とか、あなたが男性にも女性にもモテていて、何人かいるお相手の一人が友香なんじゃないか、とか随分余計な心配をしていたの。あなたみたいな人が友香のお相手で本当に良かったと思っているわ。友香のこと、これからもよろしくお願いします。」
    純さんは立ち上がって私に深々と一礼した。

    「そんな、こちらこそよろしくお願いします。」
    私も立ち上がって頭を下げた。純さんの言葉が嬉しかった。

    「友香には今日の話はきつかったでしょうね。。・・・ショックを受けていたようだった?」
    「そうですね。平気には見えませんでした。亡くなったお祖父様が可哀想だとも言っていました。でも、純さん達を理解しているようでした。お二人がどんなに辛くて切ない思いをされたか、痛いほど分かっていると思います。今は眠っています。私は友香さんが目を醒ます前に部屋に戻って、それからずっと友香さんに寄り添っていたいと思います。」

    「ありがとう。そうしてくれたら嬉しいわ。あの子は強いけれど繊細な部分もあるから。私にとって今はあの子が一番大切な存在なのよ。側にいて守ってあげたいけれど、それは無理なのは分かっているわ。だから、くれぐれもあの子の事、よろしくね。」
    純さんはもう一度、私に向かって頭を下げた。

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