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あづみ ~恋する小鳥~

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このお話は、あづみが神奈川から千葉の高校に転向した時期の物語です。

本編の《あづみ》では触れることがなかった、あづみの恋。




心をこめて、執筆させていただきます。



17/06/24 02:10(スレ作成日時) [RSS]

  • No: 10不知火ほのか(♀E4gYnb)スレ主更新時刻17/07/07 16:40



    「ない、ない、ないっ!!!」


    おじいちゃんと病院からタクシーで家に帰ってから
    私は自分のスマホが無いことに気がついた。




    ‘アニキが目を覚ましたら、すぐに電話します’

    リク君、そう言ってたのに…



    リク君はうちの電話番号まで知っているわけがない。
    私はリク君の番号を記憶していない。




    あの事件現場で落としたのかも…
    それなら、警察に保管されてるのかな…



    「あづみ、今夜はもう寝なさい」
    おばあちゃん、きっとして帰りを待ってたはず。
    でも、何も聞かずにそう言ってくれた。


    ごめんね…
    おばあちゃん
    おじいちゃん


    最近の私は、心配させてばっかりだ




    私は眠れないことが分かっていたけど…
    おばあちゃんの言うことをきいて、ベッドに入った。



  • No: 11不知火ほのか(♀E4gYnb)スレ主更新時刻17/07/07 16:56

    眠れないまま朝が訪れた。

    朝ごはん…
    食欲は無い。


    不安で、表現が難しいくらいのとっても嫌な気持ち。



    その時、
    静寂を覆い隠すようにけたたましく電話が鳴った。

    古い黒い電話機。




    ジリリリリーン!
    ジリリリリーン!




    おばあちゃんが受話器を上げて「もしもし」と言った。
    「あら、おはよう。あづみ?ちょっと待ってね」
    そして私を見て
    「あんたのお母さんからよ」
    おばあちゃんはそう言って受話器をこちらに差し出した。


    「もしもし…お母さん?」


    「え…?え…?そう、分かった!ありがとう!!!」



    「なんだって?」
    お茶碗を手にしたおじいちゃんが、電話を終えた私に聞いた。



    「私のケータイ、昨日のタクシーの中に落ちてたって!タクシーの運転手さんが警察に届けてくれて、私、住所変更してなかったから、神奈川の家に警察から電話があったって!」



    「そうか、じゃあワシが警察に取りに行ってやる」
    「え…?」

    「あづみ、おまえは学校に行きなさい」
    「うん…」



    「取りに行ったら学校に届けてやるから」



    「おじいちゃん、ありがとう」


    「あづみ、ちゃんとご飯食べないとダメだよ、あんた夕べは眠れてなかったんでしょう?栄養つけないと倒れちゃうよ」

    「うん、わかった。おばあちゃん」





    先輩の容態が気になる…



  • No: 12不知火ほのか(♀E4gYnb)スレ主更新時刻17/07/07 17:05


    ざわついた教室の中。


    早朝、この学校の一年生が三人、傷害容疑で逮捕されて、三年生の被害者が重体だという噂で持ちきりだった。



    「ねっ、重体の三年生って…もしかしてあづみの彼?」
    香奈が小さな声で私に聞いた。

    「彼…ではない…けど…」
    「やっぱり、そっか…あのさあ、私ね、前にね、逮捕されたっていう一年生達とケンカしてるとこを見たことがあるんだよね」

    「先輩が?」
    「うん…」



    先輩は、弟のためにずっと戦っていたんだ…





    そして、一時間目が終わった時におじいちゃんがスマホを持ってきてくれた。
    すぐに電源を入れた。

    リク君からの着信は無い…



    まだ、ICUにいるなら、電源を切っているはずだし迷惑をかけたらいけないと思って、こちらから電話はしないことにした。



    先輩…
    まだ意識がないんだ…



    私は机の上に置いた手をゆっくりと握り締め
    そうして泣きたい気持ちをぐっとこらえた。

  • No: 13不知火ほのか(♀E4gYnb)スレ主更新時刻17/07/07 17:09


    授業は上の空で終えた。




    昨日、バス停に置いたままにしていた自転車を取りに行って、その自転車に乗って病院に行った。




    「坂本さん、一般病棟に移られましたよ」
    「え…意識が…戻ったんですか?」



    私は看護師さんが教えてくれた病室に急いで行った。
    後ろから「走らないでくださいね!」と、声が聴こえたので、全力の早歩きで。




    先輩…
    先輩…




    白いスライドドアをそっと開けた…


    病室内の開け放たれた窓から入る風が
    ふぅっと…私の髪を揺らした。



    「セン…パイ…?」



  • No: 14不知火ほのか(♀E4gYnb)スレ主更新時刻17/07/07 22:39


    たっぷりと柔らかな風を孕んだカーテンが揺れている。


    先輩は、ベッドに上半身を起こしてカップのアイスを口にしたところだった。



    そして
    きょとんとした顔でこっちを見てる。




    後ろから「小鳥さん」とリク君の声、
    「アニキがICUから出て、電話したけど出ないから心配してました」


    「それって、思いっきり自転車こいでた時だと思う…」




    先輩がいつもと変わらない笑顔で
    「よう、あづみ」
    と言った。


    「先輩!もうっ!なんで、そんな…のん気に…」
    「あづみ?」

    私の名前を呼んだ先輩の頭の包帯や頬のガーゼが痛々しい…



    「うわぁああーん…」




    私はその場にペタンと座り、まるで子供みたいに大きな声で泣いた。


  • No: 15不知火ほのか(♀E4gYnb)スレ主更新時刻17/07/07 22:56


    その後でリク君に聞いた話では

    先輩は未明に意識が回復していたけどいろいろ検査があって、

    「あづみが不安になるとイヤだから…」

    って言って、リク君に結果が出てから私に連絡するようにって言ったんだって。



    で、検査結果が出て、異常がなくて一般病棟に移されて、
    それで私に電話したけど、私はそれに気が付かずに自転車で疾走してたってわけ。







                     ※








    転校してきてからの半年は、あっという間に過ぎた。



    先輩の卒業式。


    早咲きの桜はもう散ってしまっていた。

    先輩とのお別れに薄桃色の花びらがハラリと舞う、…そんな刹那過ぎるシチュエーション、私は嫌だったから…
    もう緑の見え始めた桜の木を見上げ、感謝。




    「あづみ…」
    後ろから、先輩の声。
    振り返ると、卒業証書の筒を手にした先輩が立っていた。


    私は
    いっぱいの笑顔を浮かべた…






  • No: 16不知火ほのか(♀E4gYnb)スレ主更新時刻17/07/07 23:08



    「先輩、ご卒業おめでとうございます」


    私、がんばった!
    笑顔で
    ちゃんと言えた。




    先輩は前に言っていた。
    将来は‘宇宙’を勉強したいって。



    その言葉通り、宮城県にある日本トップレベルの天文学研究機関がある大学に進学する。



  • No: 17不知火ほのか(♀E4gYnb)スレ主更新時刻17/07/09 04:06



    「アニキ、たまには帰って来いよな!」
    「おう!」

    駅のホーム。


    見送りにはリク君も来ていた。
    ご両親とは旅立ちの挨拶を自宅で済ませてから来たと言う。

    「夏休みには帰るからな」
    「うん!」

    先輩とリク君の会話…

    二人のやり取りが
    なんだか…遠く感じる。

    先輩の目を見ることができない。


    私はただ、にっこりと笑っていることが精一杯で…
    何も言えない。


    一言でも何か言ったら、涙がこぼれてしまう。




    ホームに発車のベルが鳴り響いた。



    先輩…
    先輩…


    プシューっと、音がしてドアが閉まる…




    その瞬間…




    先輩が私の手首を握って、力いっぱい引き寄せた。



    よみがえる記憶…



    『不良しちゃおっか?』
    いたずらっ子みたいな笑顔。

    『やっべ!もう2時間目が始まってるし…』

    『うそ!行かなきゃ!』
    『ちょっと待って…』

    私の手首を握って引き戻した先輩…
    振り返る私…



    あの時が…
    今と重なった。

  • No: 18不知火ほのか(♀E4gYnb)スレ主更新時刻17/07/09 04:21

    私の後ろでドアが閉まった…



    「え…?」

    電車が走り出した。



    「あづみ、必ず…」
    「……?」


    「必ず迎えに行くから、俺と…、結婚してください!」



    驚いた後に、こらえていた涙がぽろぽろと私の頬を転がり落ちた。


    「はいっ!」

    と、笑顔で涙をこぼしながら返事をした。



    先輩が、思いっきりのガッツポーズを見せてから、私をぎゅぅっと抱きしめた。


    「大好きだよ」
    「私も…先輩が好き!」


    そして、不器用なキスをした…











    私は次の駅で電車を降りると、先輩を乗せた電車が見えなくなるまで手を振り続けた。




    し…ん、と静まり返ったホームには春の匂いが漂った。


    電車のレールを見つめて、

    「繋がってるんだね」

    呟いた。



    レールも、心も…


    先輩に繋がっているんだね。


  • No: 19不知火ほのか(♀E4gYnb)スレ主更新時刻17/07/09 04:32


    「あづみ、遅れるわよ」
    「はーい!」

    高校を卒業した時に神奈川の実家に戻ったけど、おじいちゃんとおばあちゃんに会いに千葉にはよく行っている。



    大学では心理学を専攻して、自殺防止のサイトを立ち上げた。
    勉強するうちに、自殺に至る前の多くに何かしらの犯罪が絡んでいることを知って最近は法学部によく足を運ぶようになった。

    私なりに試行錯誤している。





    「あづみー!」
    「お母さん、聴こえてるって!」


    「待たせちゃ悪いでしょ?」
    「うん。行ってくるね」






    今日、
    先輩が…

    昂が帰ってくる!




                            【おわり】



                              

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