僕の苦い思い出。
僕には苦い思い出がある。
22歳の時に働いていた食品工場。
ブラジル人や国籍不明の人が日本に来て、働いていた。僕はその中に紛れ、食肉の運搬を保冷庫からリヤカーで出して製造機に入れるという重労働を経験した。
ブラジル人のボボ（僕の中だけのあだ名）は腕の毛が密集して生えていた。食肉のミンチがリヤカーの中に生で入ってるのも吐き気がしたが、ボボのそれはさらにミンチと絡み合い、毛が混じった食肉が冷凍食品としてライン工程で紛れないか心配した。
女性のパートは楽そうだった。工場の女性は比較的楽だ。ただ、同じ場所に立ち続けるという事が苦でないなら。
僕は冷凍庫にあるミンチを両手ですくってはリヤカーに移す作業と製造機に入れる作業をして、心底疲れた。
僕はボボが何か叫んでいるのを見た。「まだ終わらないのか？」みたいな事を工場長にボディランギレッジで示していた。
無理もない。朝8時からその工程で働き20時を回っていたからだ。まるで、映画カイジの様な世界だった。
仕事が終わってのビールは格別だった。
肉体労働の身に染み渡る。
結構筋肉質だったボボも疲労感を見ていたので、僕の疲労がどれほどのものか想像できるだろう。
女性のパートと僕の時給は同じだった。男女差別に感じた。食品工場は男にとって過酷なとこであった。
楽な食品工場も経験したが、やはり立ち続けるというのは至難の技だった。翌日仕事に行く気力さえ湧かなかった。
冷凍食品工場、だし巻き卵工場、コンビニおにぎり工場ライン、コンビニぶっかけうどん工場ライン…様々工場は毛がした。ライン以外は地獄だった。
ボボのその後は私は知らない。
休憩はAライン,Bライン…Dまであった。各ラインごとに休憩時間になると笛が吹かれて一斉に交代で休憩になる。
喫煙組と非喫煙組は同じ休憩室で休まねばならなかった。
覇気のない顔の数々…。若い女性はなかなか見かけなかった。見かけたら声をかけるつもりだったが、熟女しかいなかった。熟女にも一応声はかけた。
様々な仕事を私は経験してきた。
皆さんは冷凍食品食べますか？
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冷凍食品、日々お世話になっています。美味しいですし便利ですし、好きですよ。
主さんの勤めていたのはどこの会社ですか！？
うちのお母さん、大手冷凍食品会社にパートで勤めてるけど、衛生管理はすごい厳しいと聞きましたよ。外国人が多いとか、労働時間が長いとかは同じみたいですが、お給料はそれなりな貰えるみたいです。
- << 5 それは言わないし、言えない。 ただ、素手でミンチを触る事はない。 ビニール手袋のやつで触っていた。 ただ、ボボの腕の毛は密集していたから、ビニールからはみ出していたから、工場長がちゃんとビニール手袋を上までずらして毛が入らない様にしてやっていた。 たまにボボが試食を勧めてきた。 ラインの女性が味見にどうぞ？なんてボボに渡すのだった。 ボボはその試食を嬉しそうにしていた。 ブラジルでは奇跡の味らしい。 僕はボボの毛が入ってないだろうかと気が気でなく、苦笑いしながら遠慮した。 たまに、売られている冷凍食品のハンバーグを見ると一瞬だがそのボボを思い出す。
僕は何を思ったのかいきなり不動産の賃貸営業の仕事に就いてみた。
そこには変わり者の社長がいた。
坂本龍馬の大ファンらしく、龍馬の文庫本が社長室に並べられており、各社員は持ち帰って強制的に読まされ、感想文を書かせるという社長だった。
しかし、僕は坂本龍馬なんて別に好きではなかったから、心底読む気がしなかった。
坂本龍馬が何かしたのかも知れないが、さだまさしに似ている…位の感想しかないし、別にどうでも良かった。
賃貸営業の社員は4人で男2人、女2人だった。
僕を入れると5人になるが女2人はやはり違和感を感じつつも宿題の感想文を書いたりしていてかなり尊敬してしまった。
男一人は、ちょっとヤンキーというかリーゼントスタイルの人で営業成績がいいのか悪いのか異彩を放っていた。感想文は書いていたのか分からないが、社長からは一目置かれていた。
同じ様にもう一人男がいたが、契約を2件取ってきたという実績をやたらと自慢していた。
不動産営業の賃貸実績がどういう評価をするのか知らないが自慢していたからには自慢になるのだろう。彼は坂本龍馬の唯一のファンでもあった。
不動産営業は2日で辞めた。坂本龍馬の読書感想文がネックだったのと、毎朝、朝礼で新聞記事の見出しチェックで気になる話題を発表するという慣習があった。
それら慣習にも抵抗があった。
不動産の賃貸案内と営業は雲泥の差がある。
やはりなかなか簡単にはいかない仕事だと感じた。
>> 1
冷凍食品、日々お世話になっています。美味しいですし便利ですし、好きですよ。
主さんの勤めていたのはどこの会社ですか！？
うちのお…
それは言わないし、言えない。
ただ、素手でミンチを触る事はない。
ビニール手袋のやつで触っていた。
ただ、ボボの腕の毛は密集していたから、ビニールからはみ出していたから、工場長がちゃんとビニール手袋を上までずらして毛が入らない様にしてやっていた。
たまにボボが試食を勧めてきた。
ラインの女性が味見にどうぞ？なんてボボに渡すのだった。
ボボはその試食を嬉しそうにしていた。
ブラジルでは奇跡の味らしい。
僕はボボの毛が入ってないだろうかと気が気でなく、苦笑いしながら遠慮した。
たまに、売られている冷凍食品のハンバーグを見ると一瞬だがそのボボを思い出す。
そして、次に目をつけたのが地図を製作する仕事だった。
パソコン画面3台を見ながら2DCADで作業していく仕事だった。
有線が流れるオフィスで、しかもマウス操作だけで出来る仕事だった。
けど、ピタゴラスの定理だとか、数学を使わないとできない仕事だった。
2年働いたが数学の限界を感じて、諦めた。
何より業界自体が残業ありきなのだ。
徹夜で納期までに仕上げる…は日常茶飯事だった。
小さい仕事なら普通に帰れるが社員は大変そうだった。
僕はバイトで、時給だった。時給800円位だったと思う。
社長はバイトの子を愛人っぽく育てていた。
僕は何となくそんな気がした。彼女は有名大卒だったし、女性で唯一の社員だった。
だが、ちょっと闇がある様な妖艶な異彩を放っていた…。
©2024 秋山孝
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