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あの日のギター

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旅人
16/05/19 13:08(更新日時)

 一週間の中で最もテンションの低い月曜の朝、俺は校門に向かって全力で走っていた。ヤバイヤバイ、また寝過ごしちまった!吐く息白い寒さの中、汗ばみながら走っていると、後ろから「うぃ~っす!光永く~ん!」と声がした。
「森下!」
「ニシシッ(笑)」
「毎度の遅刻コンビだな、俺とお前は(笑)」
「ヒヒっ」
森下とは同じクラスで、いつもこうして駆け込み登校をしている仲だった。森下は見た目はインテリっぽい感じなのに、中身は気のいいバカで、無邪気な男だ。
「やべーよー、光永~、一時限目は帝王だろ?またヤラれちまうぜ」
「あ~、最悪だよな~、月曜の一時限目からアイツの授業なんて」
帝王とは数学の中村先生のあだ名で、Vシネマに出てくるヤクザみたいなコワモテの男教師なので、生徒の間で帝王と呼ばれていた。
学校に着くと急いで上履きに履き替え、廊下を走って教室に向かった。が、途中で帝王に見つかってしまった。
「こら!光永聡!森下康介!まーたお前らか!」
さっそく帝王の雷が落ちる。
「お前たちは~」「高校生にもなって~」「たるんでるんじゃないのか~」等々、毎度、お決まりの中村の台詞。
俺は帝王の説教には慣れっこだったから、左の耳から右の耳へと聞き流していた。そして叱られている間、先輩との事を思い出していた。

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No.2334490 16/05/19 12:56(スレ作成日時)

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No.1 16/05/19 12:58
旅人0 

 俺が先輩と知り合ったのは1週間前の事で、それはひょんな出会いだった。
俺の両親は不仲で、家の中はいつも殺伐としていて、それがイヤで家に居たくなかったあの日、俺は夜の街をブラブラしていたんだ。そこで前方から来たヤンキー二人組の男とすれ違いざまにぶつかって、喧嘩を売られてしまった。「すいません」と謝っておきゃ良かったのだけれど、俺もむしゃくしゃしていたから、つい喧嘩に乗ってしまって・・・。けど、相手は二人だったから、結構ボコボコにやられちゃって、その時に、助けてくれたのが先輩だった。
「おい、大丈夫か?ずいぶん派手にやったもんだな」
先輩は笑いながらそう言って、口が切れて出血している俺の手当てをしてくれた。
「お前、いくつなんだ?」
「あ、17歳・・・です」
「高校生か・・・。もう21時過ぎだぞ?こんな時間に一人で何やってんだ?バイトの帰りか何かか?」
「いや、その、ちょっと・・・」
「ふーん。まぁ、別にいいけどよ」
先輩は理由に触れられたくない俺を察知したのか、それ以上は聞いて来なかった。
そして側に置いてあったギターをケースにしまい始めた。
「あの、ギターやってるんすか?」
「ん?」
「いや、そのギター・・・」
「あぁ、これか。俺、ストリートで歌ってんだ」
「へぇ、そうなんだ!ギター弾けるって格好いいっすね!」
「そうか?」
先輩は照れたような顔でニヤリと笑った。
「さて、今夜は店終(じま)いだ」
「店終い?」
「今夜のストリートライブはおしまいって事さ」
「あぁ、そういう意味か」
「お前も早く帰れよ、高校生がこんな時間にフラフラしてっと舗道されちまうぞ?」
「うん」
「じゃあな」
「あっ、いつもここで歌ってんの?」
「そうだよ」
「そっか、分かった、じゃ!」
そう言って俺は走り去った。

No.2 16/05/19 13:08
旅人0 

 「分かったか!?光永!森下!今度遅刻したら校庭50周な!」という帝王の大きな声で、俺はハッと我に返った。先輩との出会いを思い出していて、帝王の説教なんて全く耳に入っていなかったのだ。ニヤリとした顔で、帝王が『早く教室に行け』と指で合図したので、俺たちは教室へ向かった。
「お叱りタイムがやっと終わった、長かった~」
「しっかしさ、校庭50周だってよ、冗談じゃねぇよなぁ」
森下は眼鏡を直しながらぼやいた。
「ただの脅しだろ(笑)」
「そうかぁ?アイツの事だからマジでやりかねないぞ?おーイヤだイヤだ」
「だったら遅刻すんな!(笑)」
「あいあいさ~(笑)」
月曜の学校はかったるかった。これから長い一週間が始まると思うと、気が滅入った。

3日後、俺は再び夜の街に繰り出した。もう一度先輩と会って話をしたかったのと、どんな感じで歌っているのかを見てみたかったのだ。駅前通りはサラリーマンやOL、酔っ払って騒ぐ若者達、風俗店の呼び込みの兄ちゃんなどで溢れ、賑わっていた。高校生の自分には場違いのような気がしたけれど、行き交う大人達を観察するのは面白かった。夜のネオン街は刺激的で、何だか分からないけれど、ワクワクするような、ドキドキするような興奮を俺に与えてくれた。先輩の姿を探して暫くうろうろ歩いていると、駅前広場の芝生の所でギターを弾きながら歌っている先輩の姿を見付けた。先輩の歌を聞くのは初めてで、俺は少し離れた所からその様子を見ていた。先輩の周りには若い女の子を中心に人だかりが出来ていて、結構な集客だった。1時間くらい経っただろうか・・・ストリートライブが終わり、俺は先輩の元に近付いて行った。

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