ブン太と愉快な仲間達
俺さまの名前は、石動ブン太。
人間で言う前世から、石動家の用心棒のツモリだ。
人間で言う、思念でご主人さまとやりとり出来る。
ま、人間には『にゃ〜』しか解らんだろう。
後から、僕(しもべ)が出来るかもしれん。
犬も我慢するが、猫が良い。可愛い仔なら大歓迎かな?
勿論話し方は、俺さまの目線で話す。
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あ、忘れるところだった。
俺様は只今、独り身だ。折を見て涼太さん妻を希望する。
涼太は、医師になる少し前に妻を娶った。
ま、人間には長生きして貰いたいからソレは構わんよ。
涼太の妻・美弥子は、看護師から看護師長への昇進時期だから機嫌が悪い。
『おい、ブン太』
有ろう事か、俺様を呼び捨てにする。
でも…
『おい、ブン太。』
段々美弥子の機嫌が悪くなるのだ。
『にゃ〜?』
ブン太は美弥子の機嫌を確かめる様に返事する。
ドタ
千鳥足の美弥子は、廊下で失神したのだ。
コレは天下に一大事とばかりにブン太は、泣き喚く。
『煩いな、ブン・タ』
一旦目が覚めた美弥子。だが、所詮は一旦である。
更にブン太は、泣き喚く。
『大変だ〜、涼太は、こんな時涼太は?』
ブン太も少しパニック人間にはなりながら、涼太を探す。
『ただいま〜』
涼太が残業を終えて帰宅する。
ブン太は、涼太の足音と匂いを察知して居たがパニックから醒めない。
面倒になるブン太
涼太への報告が、やや涙組む。
『美弥子、どうした。』
涼太はリビングで倒れて居た美弥子を見付けると直ぐに抱き起こす。
『貴方、お帰りなさい。』
何とか呂律は、整って居る。
『皆んなに、看護師長への昇進試験合格の前祝いして、・・・の、飲み過ぎたかな?』
『飲み過ぎです。』
部屋に入ると、何処と無く漂うアルコール臭。
涼太でなくとも、美弥子が飲み過ぎたのは一目瞭然です。
『風呂は毒だから、シャワーにするか?』
医師として的確な質問だ。
しかし此処まで酔うと、シャワーも機嫌かもしれない。
『もう少し、寝かせて。』
看護師となった美弥子も、夫にこれ以上に痴態を見せたく無かったのだ。
午前3時頃美弥子は、起きてシャワーを浴びる。
美弥子がシャワーを浴びる内に涼太も起き出した。
涼太は美弥子がシャワーを浴びている内に、豆乳ベースの冬瓜スープを手早く作る。
>> 2
何時もの夜勤をして居ると、1本の電話が鳴る。
『はい、石動総合病院です。』
何時もの様に電話が入った。
『あの、犬や猫を治してくれる病院ですか?』
何だか幼い声が聞こえた。
病院の浮沈に関わる電話は、9割りが涼太に繫がる。
『あの…』
何だか言い淀む電話の相手だ。
『私は、宮下美和です。娘が可愛がって居た三毛猫が、瀕死の重症です。娘の美也に聞くと、そちらの石動総合病院さんに頼むと良いとか。』
何だか要領を得ない涼太だ。
『犬や猫は、検査し無いと何とも申し上げ兼ねます。でも、検査為されますか?
勿論検査は、料金頂きません。』
相手の母親の最大関心事だったらしい。
でも、暗闇から光が射し込む。
『宮下公園は、御存知ですか?』
涼太も、宮下公園は運動の場所として愛用するのだ。
それから数分で宮下公園に到着する、石動総合病院サポートカーだ。
石動総合病院サポートカーとは、トラックの荷台を改造して簡単な手術が可能だ。
勿論動物のレントゲン撮影の可能なトラック。
『宮下さんですか?』
涼太は確認を取るのだ。
『・・・』
予想以上のトラックで、些か返事に途惑う。
『お母さん、早く』
娘に急かされる宮下美和。
『はいはい。』
仕方なく腰を上げる美和。
>> 3
サポートカーは、運転席に涼太。助手席に美和。後部座席に娘の沙希が乗り込んだ。
更に後ろのレントゲン併設車には、複雑骨折した三毛猫。
『猫のミャーヤは助かりますか?』
少女には、それが精一杯なのだ。
『まず、検査し無いと良く判りません。』医師として涼太は見立てた。
その後三毛猫を暴れない様にネットに入れる涼太。
最初は少し抵抗した三毛猫だが、涼太のして居る事はネコを治す為だと理解したのだろう。
それから数分後、猫の状況が判明した。
両脚複雑骨折。肋骨が折れて肺に刺さる。
人間なら動くのも辛い。
『先生、猫のミャーヤは如何ですか?』
母親は涼太に恐る恐る聞く。
『肋骨が折れて肺に、刺さったまま。
後ろ左足首は複雑骨折。全治半年位だと見受けました。』
涼太は見立てを、母親に話した。
『あの、…』
母親は自分の状況を話し出した。それに依れば今は離婚成立したが、育ち盛りの娘の将来を考えると、幾ら掛かるか不明な治療に多額は払えない。
『最終的に、猫を治すのにいくら必要ですか。?』
『娘がとの生活をしを護る為に高い様なら…』
どうやら安楽死も、視野に入れたらしい。
『ちょと待って下さい。娘さんの気持ちを確かめましょう。』涼太は、娘の気持ちを確かめた。
『沙希ちゃん、猫のミャーヤちゃんは助かるかもしれ無いがお母さんは、猫を諦めるらしいです。』
全て言い終わる前に娘は、声を荒げる。
『何言うの、お母さん。ミャーヤは生きて居る。今は痛くて動け無いだけだが、後何ヶ月かで動けるよね、先生。』
急に話を降られた、涼太である。
『2〜3ヶ月で動ける筈』
母親としたら、娘を諦めさせたかった。
『お金なら、お母さんから貰った小遣い貯金が有るよ。
足りないなら、大人になってから何年も働くから。』
沙希は必死だった。愛猫が死ぬかもしれない瀬戸際だったのだ。
少しして涼太口を開く。
『契約成立』
『お母さん、娘さんの意見を汲みましょう。将来娘さんが、獣医学を学びたいなら石動財団が経費を全額負担します。』
石動財団の超青田買いの瞬間だった。
『涼太、俺ミャーヤちゃんと結婚したい。』
ブン太からの猛烈な、思念が入る。
時々外歩きさせて居たが、周りを知らない猫にさせた事を少し後悔する涼太。
『ミャーヤちゃん、お母さんには此れから話す。我が石動財団であなたの面倒を、見させて欲しい。
『本当か、涼太』
一旦納得するブン太だが、急に考え込むのだ。
『まさか、ミャーヤちゃんを実験材料にするのか?』
それに対し黙る涼太。
『何とか、言えよ。お前は、ミャーヤちゃんを実験として、殺すのか?』
ブン太の思念が、更に飛ぶ。
それでも、黙々と探し物をしたりミャーヤの採寸を続ける涼太。
翌日ブン太と、ミャーヤが目を覚ますのだ。
目が醒めると、ミャーヤの為に急拵えしたクルマ椅子が有る。
『???』
何だか分からない二匹。
『この前のレントゲンで、ミャーヤの骨盤が治らない状況だったのでクルマ椅子を作ったよ。気に入って貰えると嬉しいのだが…』
夜中何度も目を覚ましたが、涼太を黙って見た二匹。
『ミャーヤちゃんが、大きく成る事を想定してサイズは変わる。』
『ミャーヤちゃんは、此処に入ったら直接身体に振動が伝わらない様に空してある。』
暫くクルマ椅子の匂いを嗅いで、一鳴きするミャーヤ。
するとブン太が、通訳する。
『そうか、使ってくれるのか。』
納得して、ミャーヤにクルマ椅子が装着する涼太。
クルマ椅子を着ける前は、少し歩き難そうなミャーヤである。
しかし、計算通りにミャーヤの身体に嵌る。
『さ、歩いてご覧。楽に歩けるから』
その声を聞く前に歩き出すミャーヤ。
『うわ、身体が軽い』
『空も飛べそう』
確かに猫は空を飛べない。
『気に入って貰えたかな?』
その確認に対して、納得した旨鳴き声を出すミャーヤ。
>> 7
石動財団のビル兼病院は、階段は全てスロープに成り階の上り下がりが楽に出来る。つまりクルマ椅子のミャーヤも同じである。
『石動院長。』
営業マンが、涼太を呼ぶ。
何かと、営業マンに訪ねる涼太。
新人営業マンの言い分には、新型MRIを売込みたい。
1台売れると、全社員の半数位の涼太臨時賞与を出す財源になるから夢中だ。
しかし涼太は、
『我財団に買取は、無い。そちらの財務状況迄、我財団には、感知し無い。』
取り付く島も無い。
ガックリする新人営業マンだ。前回涼太相手に大型納入するのを見たから、落胆は大きい。
まごまごしている内に、涼太に内線連絡が入る。
『石動院長、内線56番に連絡です。』
院長は、内線56番を取る。
そして数分後、涼太は緊急処置室に走る。
石動財団のビルは、全室ワイヤレスインカムが使える。
『データ室、患者番号123312番の詳細情報が欲しい。』
患者や観ているペット達の患者番号は涼太の頭に入っている。
緊急処置室に着く前に涼太は、患者番号123312の情報を調べだした。
>> 9
『宮下美和さん、最終経歴は△病院内科勤務であって居ますね。△病院をお辞めに成られた理由は何ですか?』
その他色々質疑応答があり、最終段階に入る。
宮下美和さん、何時から働いて頂けますか?』
看護師のキャリアを涼太は、宮下美和を雇う方向だ。
『来週月曜日から…』
恐る恐る美和は答える。
『今日明日は、不可能ですか?』
涼太は、聞き直す。
宮下美和は、35歳。娘の沙希は6歳。夫とは、離婚が成立して居た。
正直美和は、明日から路頭に迷う。
それを見越した涼太は、財団ビル12号室を勧める。
『宜しいのですか?』
美和は、恐る恐る問い掛ける。
『明日から来て頂く以上、財団の職員だから居る権利はある。それとも巨拒否為されます?』
宮下美和に取っては、『渡に船』状態だった為に涙が出るほど嬉しい話。
ミャーヤは、涼太と財団ビル気に入った。
『この家の子になるよ。』
ブン太は、更に喜んだ。
『ミャーヤちゃん、向こうに行こう。遊び場が、有るよ。』
ブン太がミャーヤを、遊びに誘う。
二匹で、裏の広場で遊ぶ。
『美和さん、貴女の立場は美弥子と同じ看護師長。貴女の全責任は、財団が持つ。勿論、妻の美弥子も我財団が持つ。』
途中で美弥子が不服な顔をしたので、涼太が美弥子に気を使う。
給与は月給で、毎月19日。
19日が日曜日なら、前払い。
賞与は、3月8月12月の年3回
何か質問は、有りますか?
涼太は畳み掛ける様に話す。
それと涼太は、更に話を続ける。
『そうだ、これは引越し費用。』
そうだ言って、最高紙幣を何枚か渡した。
『こんなにたくさん、入りません。』
流石に美和は固辞する。
一緒に渡して、美和にサインを求める。
最終的に美和が根負けして、引越し費用を受取る。
『沙希お金沢山貰ったから、美味しい物でも食べに行こう。』
その夜美和親子は、美味しい物を鱈腹食べた。
『お母さん、ここのお金大丈夫?』
娘の沙希は、美和に何度も聞く。勿論沙希の取り越し苦労だ。
『でもね、追加を頼むのならお母さんに聞いてね。』
娘の単独で高額オーダーし無い様に注意するのだ。
何時間かして、宮下親子はレストランから出た。
その後美和は石動財団より、親子二人が食べて貯金する事の可能な額を貰う。
『運が良かったね、お母さん。』
>> 10
翌日美和は、仕事に就く。
『此方は、宮下美和さん。前の仕事も、看護師長だったから此方でも同じ看護師長を務めて貰う。分からない事は、美弥子看護師長に聞いて下さい。』
涼太は、全職員に紹介した。
『皆さま、おはようございます。宮下美和です。…
』
美和の自己紹介が終り、美弥子のビルの案内に入る。
『ココは、1階フロアーです。全職員を集めて、ミーティングしたり患者さまとの交流を深める部屋です。』
『ココは、手術室。ココは第1薬剤室』
美和は、空かさず質問した。
『第1と言う事は、第2薬剤室もあるのですか?』
それに対して美弥子は、此れから第1薬剤室が手狭になったら使う予定だが、ある様だ。
『ココは、動物手術室、此方は人間様手術室』
『ココは、手術準備室。電気メス等必要な物は全て有ります。』
『ココは、院長室。』
涼太は、次の手術に入って居ない。
『あの、院長は何処ですか?』
美和は、急遽雇われた礼を一言言いたかった。
『院長は、今猫の手術に入って居ります。』
『そうそう、美和さん。此方がビル内のみで使えるインカム』
そう言って美弥子は美和にインカムを渡す。
『此れは右手操作様だが、使いにくいなら左手用に替えて貰いますか?』
美和は、右利きだからそのまま受け取る。
『此れは、看護師長専用だから一般の職員に使わせないでね。』
『一般用と看護師長専用とは、何処が変わるのですか。?』
何事にも、懸命な美和。
- << 13 『看護師長専用は、外線連絡可能です。院長連絡室にダイレクトに繋がります。』 何度か出てくる『院長連絡室』それが美和に引っかかる。 『院長連絡室とは、どの様な部屋ですか?』 『忙しく飛び回る院長への伝言を残したり、院長からの伝言を預かる部屋。言わば秘書室です。』 『そうそう、此れが美和さんのIDカード。口座直結するから取扱注意です。』 『此処まで何か質問は、有りますか?』 美弥子も、急ぎ紹介したから美和の質問を受ける。 『質料と、水道光熱費は?』 美弥子はそれに対して、的確に答える。 『水道は、15立方メートル迄は財団普段。超過分は個人負担。ガスは、全額個人負担。』 『下水は、財団負担。美和さんは保護プログラム加入されて居ますから、お嬢さまの沙希さんが医師か獣医師になる為の学部進学迄は入学金迄は財団負担です。』 美和は、娘の将来は娘と未だ話し合って居ない
>> 11
翌日美和は、仕事に就く。
『此方は、宮下美和さん。前の仕事も、看護師長だったから此方でも同じ看護師長を務めて貰う。分からない事は、美弥子看…
『看護師長専用は、外線連絡可能です。院長連絡室にダイレクトに繋がります。』
何度か出てくる『院長連絡室』それが美和に引っかかる。
『院長連絡室とは、どの様な部屋ですか?』
『忙しく飛び回る院長への伝言を残したり、院長からの伝言を預かる部屋。言わば秘書室です。』
『そうそう、此れが美和さんのIDカード。口座直結するから取扱注意です。』
『此処まで何か質問は、有りますか?』
美弥子も、急ぎ紹介したから美和の質問を受ける。
『質料と、水道光熱費は?』
美弥子はそれに対して、的確に答える。
『水道は、15立方メートル迄は財団普段。超過分は個人負担。ガスは、全額個人負担。』
『下水は、財団負担。美和さんは保護プログラム加入されて居ますから、お嬢さまの沙希さんが医師か獣医師になる為の学部進学迄は入学金迄は財団負担です。』
美和は、娘の将来は娘と未だ話し合って居ない
ある日沙希は勉強疲れが出たのか、うたた寝する。
勿論、怖い夢を見たのだ。
『宮下沙希さん、当初の規定通り成績が8割を切った。
取り敢えず今回は、初回だから後1回は余裕がある。
其れともプログラムを脱退します?』
母親は雇用契約が取り交わされて居るから、直ぐには解雇にはならない。しかし肩身の狭い思いをさせること間違い無い。』
更に援助された学費は、何年経ても返済義務が残る。
>> 18
『怖かった〜』
沙希は夢と気が付いて安堵の溜息を吐く。
『沙希、魘された様だか怖い夢でも見たの?』
丁度帰宅した母に声をかけられる。
『あ、お母さんお帰り』沙希は答えた。
丁度その頃まどの外ではブン太が、ミャーヤとデートのは最中でも有る。
『あ、ブンちゃんいらっしゃい。』
沙希は直ぐにブン太に気が着く。
それに対しブン太は、一鳴きした。
『偉いね、ブンちゃん。』
更にブン太を褒める沙希。
肝心のミャーヤは、腰にギブスが有るから動きがぎこちない。
その頃涼太より電話が入る。
『石動です、宮下沙希さんのお宅ですか?』
それに対して沙希は同意する。
『ミャーヤの腰を固定して居たギブスも明日で外せます。実際は様子見ですが、外しましょう。』
仕事や動物に忠実な涼太。
『お母さんが出勤する時に、連れて来るよう伝えて下さい。』
そう言い涼太は、電話を置く。
『お母さん、涼太先生が明日ミャーヤを連れて来てって。』
そう伝えた。
明日は幾らの診療報酬かドキドキして居る。
最悪給料天引きで、分解払いを頼もうかと考えたほどだ。
翌日、ミャーヤを連れて出勤する母親。
『おはようございます。言い付け通りはミャーヤを連れて参りました。』
そ言いキャリーを涼太に渡す。
『おはよう、ミャーヤちゃん。元気かなぁ?』
涼太がそう声を掛けるとミャーヤは、尻尾を立てて涼太先生頰擦りする。
それを見たブン太は、大いに嫉妬した。
>> 19
最初の緊急手術から、2ヶ月過ぎるとミャーヤの怪我は殆ど無い。
次のミャーヤの一言で、ブン太の嫉妬心は最高潮に達した。
『涼太さん、どうもありがとうございます。私今は子供だけど、将来あなた様の赤ちゃんを産みます。』
猫よりも女の思念でも有るのだ。
爆発したブン太は、嗤うのだ。
一頻り笑った後、ミャーヤが怒り出した。
『大笑いなんて酷い。今は子供だけど、将来アタシは、涼太さんの様な赤ちゃんの産んで見せる。』
それを聞いたブン太は、更に嗤う。
『良いか、よく聞け。涼太は人間でミャーヤちゃんは、猫。結婚しても、子供は産まれない。』
ブン太の肝心の一言で、ミャーヤは黙る。
と言うより、ミャーヤなりにショックを受ける。
『それより、オイラと結婚しよ』
ブン太一世一代のプロポーズ。
数秒沈黙してミャーヤは答える。
『私、ブン太さんのお嫁さんなる。』
その一言を一日千秋の思いで待ち望むブン太。
>> 21
『明日は、学校お休みしてお母さんと病院へ行こう。』
母親の美和は、沙希を説得する。
娘の熱は、38℃を超えて居る。
確かに、プログラム参加中は休みたく無い沙希。
『でも…』
将来自分の母親の借金に成るかもしれない事だから躊躇う沙希。
『大丈夫、涼太先生はああ見えて財団のトップ。高熱有る娘に無茶させないわよ。』
母親の美和は、石動医師を頼るしか無い。
病院辞めたところで、資格を返す訳でもない。石動財団病院以外でも、働き口は如何にも成る。
翌朝、沙希の体温は更に上がる。
『おはようございます、宮下美和です。娘の沙希が高熱出しました。インフルエンザの可能性もあります。』
美和は、看護師としての見立てを伝える。
結果沙希は、唯の風邪。だけど食欲が無いので大事を取り1日入院する。
半日も過ぎると、若い沙希は回復も早い。
『あ、ミャーヤ。今日は早く帰ってね。』
そう告げるとミャーヤは、然りとばかりに鳴く。
ミャーヤを先導するのは、石動財団の猫(ブン太)だ。
『おーい、ブンちゃん。ミャーヤを宜しくね。』
そう告げるとブン太も、納得の返事なのか一鳴きする。
>> 22
石動財団病院としても、看護師長の美和が何日も休まれると痛手だからか沙希の治療にも熱が篭る。
その日の午後3時頃には、寝続けるのが苦痛でも有るのだ。
『寝ているのも、苦痛だろうから外を歩いてもいいよ。』
院長でも有る涼太の許可も出たから、外の散歩でも出掛ける。
外の工房に立寄る沙希。
『何を為されて居られますか?』
足の動かないペットたちより採寸した図面を元に黙々とクルマ椅子を作る、涼太の部下たち。
『病気で動けない犬や猫の為の補助道具を作って居ます。ま、此れは犬用です。』
そう説明する工員。
『此れは犬用ですと言う事は、猫用のも有るのですか?』
沙希は目を輝かす。
猫好きの沙希としては、病気で歩けない猫を見聞きして心を痛めて居る。
『因みにお聞きします。あ、私は宮下沙希。此処の財団病院で看護師長を務める宮下美和の娘です。』
そう言いながら、IDカードを係員に読み込ませる。
沙希は学校の勉強も大事だが、此れも将来に繋がる勉強の一つだとして、財団の敷地を歩く。
最初見たのは、工房。その隣に財団病院ビルも有る。その隣に消防署、さらにその隣にヘリポートも有る。
更にその隣は、現在建設中のビル(学校や、老人ホーム)もある。
つまり財団が、一つの街として機能するのだ。
此れまで歩いた事は有るが、改めて再発見する。
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