母は霊能者
金曜日
家から二軒隣の歯科医院は
午後休診だった
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家の間取りは四畳半 六畳 六畳で
客は四畳半の部屋に招き入れた
私と敏春は六畳の部屋で トランプをして遊んでいた
最初の方でお経のようなものを読むのが聞こえたが
部屋を一つ挟んでいるので何を話ているのかまでは はほとんどわからなかった
約1時間ほどで客は部屋から出てきた
『ありがとうございました。お邪魔しました。』
心なしか初老の女性の表情が
来た時よりも明るく感じた
私はこの頃になると
母はうすうす霊的な相談を受けているのだなと気付いていた
『俺帰る』
トランプに飽きたのか
敏春が家を出ようとした
母は『トシくん またね ありがとうね』と玄関で手を振った
そして何故か 理解できない行動というか仕草を敏春に向かってしているのを
私はその時初めて見たのだった
それから2カ月ほどたったある日の土曜日
いつもの土曜日とはちがい 私はとても楽しみにしていた
母の弟 叔父の修一が来て図書館へ連れていってくれるからであった
私は学校から小走りで 家へ向かった
ランドセルに着けたお守りの鈴の音も
急いている私の気持ちを 表しているようだった
家の前には修一が来ている証の 白い乗用車が止まっていた
『ただいま!』
『おかえり 佐織』
すでに叔父は家にいた
祖父も母もまだ帰ってきていなかった
私は手洗いもそこそこに 急いでおにぎりを口にした
『あわてて食うなよ』と 叔父はにこにこしながら注意した
ガラッ 『すみません~』玄関の開ける音と聞き覚えのある声が聞こえた
『はい』
私はおにぎりを食べたので 叔父が出てくれた
訪ねてきたのは敏春の母 河村静子だった
『あの うちの敏春がお邪魔してませんでしょうか。』
『いえ 来てませんけど今日は』
『そうですか』
敏春が来てないとわかった静子さんは
軽く会釈をし玄関を閉めて家を後にした
『お兄ちゃん トシくんのお母さん?』
『ああ』
私は叔父の事を 『お兄ちゃん』と 呼んでいた
『お兄ちゃん おにぎり食べたよ もう(図書館)行けるよ』
『おっしゃ 行こうか』
家には自家用車がなかったので
叔父に車に乗せてもらえる事が 私はとても嬉しかった
叔父 秀一はフェンダーミラーで後ろを確かめ
静かにアクセルをふんだ
6月 初夏の日差しはきつく 車内は独特の蒸し暑さ
叔父はエアコンのボタンを押した
『あっつ~ ねえお兄ちゃん トシくんのお母さん知ってるの?』
『兄ちゃん2年前まであの家に住んどったの 忘れたんか 笑』
『あそっか 綺麗な人だよね トシくんのお母さん』
『ハハ… まあな』
静子さんは今で言うなら仲間由紀恵さんに似た感じの美人
旦那さんであり敏春の父親の 河村博は唐沢寿明に少し似ていて 美男美女のカップルだった
『でもさ 凄いケンカするんだよ あそこのお父さんとお母さん』
『ああ 有名だもんな この辺りじゃ 博も若い嫁さんもらったんだから 大事にすりゃええのに。』
叔父と敏春の父親は同級生だった
『トシくんが可哀想だよ ケンカばっかしてさ。』
『まあな 夫婦ゲンカ犬も食わないっちゅうしな 笑』
車内のエアコンがやっと効いてきた
『今日は静かだね お兄ちゃん』
『そう いつもいつもケンカしてないだろ 笑』
叔父はそう言ったが
私がこの家の前を通る時はいつも怒鳴り声がするのだ
敏春の家は自営業で 電気工事業をしてて
夫婦で家にいることが サラリーマンの家庭より多いのもあるかもしれなかったが
『静子さんなんて 姉貴にくらべりゃチョロいもんさ』
『え?』
叔父の言葉を聞いて私はちょっと驚いた
『お母さんは怒鳴ったりしないよ』
『まあ 今はな』
私は意外…としか言い様がなかった
壇ふみのような穏やかさをもち 声を荒げることなどほとんどなかった母だが 昔はそうではなかったというのが信じられなかった
変な気分のまま いつも通り神社の周りを歩きタバコ屋の角を曲がり家へ着いた
エルを柱に繋ぎ
家の中に入ろうとした時
『エル!』
門の外から敏春がエルを呼んだ
『お兄ちゃん トシくん トシくんのお母さんの子じゃないって ほんと?』
『んな訳ないよ 静子さんが敏春を妊娠して デッカイ腹してたたの俺知ってるし。トシの 冗談だよ。』
『そうか…そうだよね…。』
『二人とも 滅多な事外にいいふらすんじゃないよ? 修一 佐織。』
鋭い目で母が私達に釘をさした
修一『わかってます。』
私『うん。』
昨日とはうって変わって 複雑な心情でみんなと晩御飯を食べた
床に入っても トシくんの事やトシくんのお父さんと母の関係が気になりなかなか眠れなかった
(お母ちゃんの子じゃないて トシくん可愛がられてないのかなあ)
私は親の夫婦仲が悪いのだけでなく お母さんにも可愛がられてないなんて ますますトシくんが可哀想になった
放課後 加茂先生にコッテリとしぼられ 職員室を後にした
下駄箱に共犯の木村くんが待っていてくれた
『悪い 俺が大声で笑ったから。』
『木村くんのせいじゃないよ トシくんがからかうからさあ。』
『?』
『木村くん トシくん知らないよね。 さっき私の事 呼んだじゃん あの子だよ。』
『さっきって いつだよ?』
『だから 音楽室で…。そうか 木村くん後ろ向いてたからわからなかったよね、トシくんが 私の事呼んだんだよ。』
『へーそうだったんだ だから野間叫んだんだ!』
『そうそう 笑』
『いきなり コラッなんつーから 俺びっくりしたわ。』
『こっちこそゴメンね、 あのさ国語の宿題……』
(結構大きな声で呼んだんだと思ったんだけどな トシくん。)
その時は何も疑問に思わず木村くんと途中まで一緒に帰った
もう 雨はやんでいた
やや大き目の長靴は歩くのに少し重かった
翌朝 登校班で通学中 敏春に聞いてみた
『トシくん 昨日音楽室に来て あたしにアッカンベしたよね あのあと先生にすごく怒られたんだから!』
『しらねーよ 何それ』
『とぼけたってダメだよ あんな事するのトシくんしかいないもん』
『しらねぇって 俺音楽室 行ったことないし』
トシくんに言われてはっとした
音楽室は3年生からしか使わないんだった
しかも4階にある
一年生の教室は一階で東校舎
音楽室は西校舎だから一番離れている
わざわざ来る理由もない
『トシくん昨日は何時間目で授業終わったの?』
『4時間目だよ』
音楽は5時間目の授業だった
『帰りの会終わってすぐ帰ったんだよね』
『うん 口の湿疹診てもらうから病院行くから 母ちゃんがすぐ帰ってこいって』
『そう ゴメンね 誰かと間違えたみたい』
だとしたら誰だったんだろう…
学校に着いて 昨日トシくん(と思われる)が覗いたガラス窓近くに座っていた
優等生の松井さんに聞いてみた
『松井さん 昨日音楽室で このへんから男の子が覗いてなかった?』
『え?気がつかなかったけど…野間さんがコラッなんていうからそれにはびっくりしたよ笑 突然叫ぶんだもん 笑』
『誰か呼んだ気がしたんだけど勘違いだったのかな?』
『教頭先生がたまに見てる時あるよ それだったんじゃない?』
『うん…そうかも…』
その場では話をあわせたが
(違う あれは教頭先生なんかじゃない
敏春だよ絶対)
根拠は何も無かったし敏春自身も否定していたが
あの『佐織!』と呼ぶいつもの声とアッカンベの顔が
脳裏に焼き付いていて
あれが幻想だとも
他の人だとも まったく思えなかった
私はすべて母に話した 母が何というか不安だったが
言わずにはいられなかった
私はトシくんを見てる
でもみんなはわからなかった
『どちらも事実だよ』
こないだトシくんと色々あったから 幻でもみたのだろうか
『逆よ』
母は答えた
- << 41 『たぶんトシくんが 佐織の事考えてたんでしょう』 『考えてたって?考えてただけで見えちゃうもんなの? 』 『毎度見えるわけじゃないけど見たんでしょう?』 『そうだけど…。』 『気持ちがそっちに行ってたのよ』 母に『見えたんでしょう』と言われてしまうと何も聞き返せなかった 実際あれは敏春だった 『気のせいとか夢でも見てたとかいわれる そういう場合もあるし 幻想っていう病気が原因で見えるケースもある 佐織の場合 気のせいか夢って事で済まされるわね』 夢…夢なんかじゃなかった たしかにあれは…
>> 39
私はすべて母に話した 母が何というか不安だったが
言わずにはいられなかった
私はトシくんを見てる
でもみんなはわからなかった
『ど…
『たぶんトシくんが 佐織の事考えてたんでしょう』
『考えてたって?考えてただけで見えちゃうもんなの?
』
『毎度見えるわけじゃないけど見たんでしょう?』
『そうだけど…。』
『気持ちがそっちに行ってたのよ』
母に『見えたんでしょう』と言われてしまうと何も聞き返せなかった
実際あれは敏春だった
『気のせいとか夢でも見てたとかいわれる
そういう場合もあるし 幻想っていう病気が原因で見えるケースもある
佐織の場合 気のせいか夢って事で済まされるわね』
夢…夢なんかじゃなかった たしかにあれは…
母『きちんとお医者に行って 治療を受けていたら必ず治るわ』
母は言いきった
母『…あとちょっと気になることがあるんだけど トシくん、あのね トイレに何かしたかな?いたずらとかしてない?』
敏春はうつむいて考えてた
『つば…はいた』
静子『唾?はいたの?』
博『いつ?』
敏『毎日…』
博
静子『毎日ぃ~?』
敏くんはクセでトイレの便器に唾を吐いていたらしい
汚してやろうとかいう悪意な気持ちではないく 単に習慣だったようだ
母『トシくん、トイレは用をたすところだからね つばは吐いちゃいかんよ、あとね、ちゃんと治るから痛いけどお医者さん行ってきちんと治療してね』
母はほほえみながら敏春に言いきかせた
『すみません!!』
博さんと静子さんは深々と頭を下げた
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