初めての男
このお話しは、フィクションを含めた実話です。
過去…。
「あ!今日も会えた!ねぇねぇ、あの人カッコいいよね?」
私はとなりで眠たそうにあくびを繰り返す美幸に話しかけた。
通学のバスの中、たまに会う男子校の気になる彼。
この彼が、私の初めての男になった。
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>> 1
なおくんと付き合い始め、美幸となおくんの友達の彰君も付き合いだした。
グループ交際スタート♪
美幸と彰君は毎日の様に一緒に居たど、私となおくんは違った。
「なおくん、明日は遊べる?」
「ん…。明日は友達と遊ぶ」
付き合ってるけど、私は寂しかった。
毎日会いたい…。
私も美幸達みたいにいつも一緒に居たい…。
でもなおくんには言えなかった。
嫌われたくないから…。
なおくんは友達と遊ぶのに夢中。
特に高校を卒業して車の免許を取ってからは、毎晩の様にナンパに明け暮れてた様だ。
何となく気付いてはいたけど、やっぱり言えない私。
会えば優しいし、浮気をしても必ず私の所へ戻ってくれると信じてから。
>> 3
でも…。
やっぱりナンパに明け暮れてる様で、私は苦しかった。
会う約束をしてもドタキャンされたり。
ある日、私は賭けに出た。
思い切って電話する。
それで別れる事になっても…。
「なおくん、やっぱり私だけを見てくれなかったね?」
「…え?」
「ナンパも止めてくれないし、私はもういいよ!」
初めてなおくんに声を荒げた私。
「引き止めてよ‼」
心で叫ぶ私。
「…なおくん、今までありがとう。じゃあね…」
「…。」
「なおくん、電話切っていいよ?」
「…。」
長い長い沈黙。
「なおくん…切って…」
「…。」
「分かった…。うん…。じゃあね…。」
やがて電話は切られた。
息が出来なくなる位の号泣。
これは現実?
終わったの?
本当に私達別れちゃったんだ…。
>> 5
でもあの頃は若かった(笑)
出逢いはいっぱい?あったよなぁ。
この3年間、なおくんしか見てなくて他の男に興味も無かった私。
なおくんと別れて半年位して、友人の会社の同僚から告白をされた。
何度か会った事のある人でした。
正直、一般的にはなおくんよりカッコいい?(笑)
またその告白の仕方がカッコ良くてね(笑)
たまたまお互いに仕事帰りで、信号待ちで偶然隣になった。
クラクションを鳴らされ
「遥香ちゃん‼」
「あ、河合さん?」
「ねぇ‼ちょっと待って‼あー‼青になった‼」
「危ないから進むよ?」
お互いに窓を開けたままゆっくり発進。
「遥香ちゃん‼オレと付き合って下さい‼」
思いっきり叫ばれた。
「え?は?ちょっと待って(笑)」
「次の信号左に曲がって‼オレ着いて行くけん‼」
「え?は?分かった(笑)」
左に曲がってすぐ車を止めると、彼がバタバタ車を止めて降りて来た。
「遥香ちゃん、オレ遥香ちゃんに一目惚れしたんだけど、ずっと彼氏が居たから…。でも別れたって聞いたから!」
「うん…。」
「オレ、頑張るから!付き合って下さい‼」
どうしよう…。
確かになおくんを忘れた訳じゃない。
でも、なおくんとは終わった。
もう戻る事は無い。
あんなにアッサリ終わったんだもん。
他の人とも付き合ってみたい…かな?
「返事は今じゃ無くてもいい‼とりあえず、今度デートしよ?」
「うん、分かった」
「よっしゃー‼」
>> 7
なおくんと別れて初めてのバレンタイン。
私は思い切ってチョコを渡す事にした。
なおくんには妹が居て、私に凄くなついてくれてた。
別れてからも、たまに妹の七海ちゃんから電話があり、なおくんがどぅしてるか教えてくれてた。
相変わらずフラフラ遊んでるけど、彼女は居ないらしい。
「七海ちゃん、私なおくんにチョコを渡したいんだけど…。」
「マジで‼協力するから、どうしたらいい?」
「私とは会ってくれないだろうから、七海ちゃんが渡してくれる?」
「いいよいいよぉ♪私、遥香ちゃんの事応援するし♪」
実はこの頃、友達の彼氏の友達から「付き合ってほしい」って言われてた。
私は「忘れられない人が居る」
って伝えてたんだけど、周りの友達は
「絶対なおくんよりいい人だから!」
って私達をくっつけようとしてた。
何故か、私はなおくんと別れてからモテ期到来だった。
>> 8
でも私はなおくんに渡すチョコの事で頭がいっぱい。
バレンタインの少し前、七海ちゃんにチョコを預けた。
そしてホワイトデーの前日。
なおくんからポケベルが鳴った‼
ポケベル…。
懐かしいなぁ(笑)
懐かしいなおくんの実家の電話番号。
「どうしよう…」
私は震える手で番号を押した。
「もしもし」
「私。なおくん?」
「うん…オレ」
「元気?」
懐かしいなおくんの声。
心臓が飛び出しそうとはこの事か‼
「チョコ、ありがとう。お返しを渡したいんやけど」
「え?そんなのいいのに‼」
あぁ…。
お返しをくれるなんてニヤケが止まらん‼
「明日、夜⚪⚪まで来れる?」
そこは特に何てない場所だけど、少し夜景が見れて、よくデートで行ってた場所だ。
「うん、ありがとう…」
「じゃあ明日ね」
受話器を置いた後も、ドキドキが止まらない。
嬉しさの余り、とりあえず友達に電話しまくって報告した。
>> 9
ホワイトデー当日。
約束の時間まであと少し。
ギリギリまで何を着るか迷いに迷い、結局始めに決めてたミニワンピを着た。
約束の場所には駐車場がある。
早めに着いた私は、車を停めて自動販売機でなおくんの為の缶コーヒーを買った。
車に戻ろうと歩き出すと、前からなおくんの車参上‼
「なおくんだ…」
既に泣きそうな私。
「久しぶり。チョコありがとう。」
「うん、なおくん元気だった?」
「うん。あ、これお返し。」
車からゴソゴソと何かを取り出した。
それは…。
なんと指輪だった‼
「マジでー!指輪じゃーん(^o^)/」
んな事なおくんに言える訳も無く、
「え…。いいの?ありがとう…」
泣きそうになるのを堪えるのに必死な私。
と、その時。
予期せぬ事態が起こった。
>> 10
「遥香‼」
「え?静香‼」
そこに居たのは、私の友達カップル。
そして私に告白して来た例の彼だった。
「何でここに居るの?」
昨日、嬉しさの余りこの静香にも電話したんだっけ。
でも何でここに居るのよ?
嫌な予感…。
静香は、たまにとんでも無い事をやらかす。
「なおくん‼アンタ、遥香とよりを戻すつもり?あんだけ遥香を振り回してさ‼都合良くない?」
「待って静香‼そんな話しにもなって無いし!」
「遥香は黙ってて‼」
「ちょっと何言ってるの静香‼」
静香は、なおくんが浮気する度に泣く私を慰めてくれた友達。
親の離婚など、本当に複雑な環境で育ち、とにかくグレまくってた。
でも芯は強い。
優しい人。
静香はなおくんが嫌いだったみたい。
でもね静香、私はなおくんが好きなんだよ。
お願い、これ以上言わないで!
「静香、もう帰ってよ‼」
その時、例の彼が口を開いた。
「こんばんは。なおくんですか?自分は祐司といいます。」
祐司くーん!
ハッキリ言ってあなた見た目もろヤクザですからー!!!
なおくんも真面目じゃないけど、怖かっただろうな(笑)
「あ、はいこんばんは」
なおくんも冷静。
どどどどーなるの!?
>> 11
「なおくん、いやなおさん、遥香ちゃんの事好きなんですか?」
祐司君が冷静に聞いた。
「はい、好きですよ。もう一度付き合ってほしいと思ってます」
え?え?え?
な・ん・で・す・っ・て!?
気絶しそうー!!!!!
「なおさん、前付き合ってた時は散々遥香ちゃん泣かせたんですよね?」
だから、その敬語が逆に恐いんですけど…。
「遥香ちゃん」
「はい…」
「遥香ちゃんはなおさんが好きなん?」
「うん…。好き…。ごめんね祐司君」
「…そうか…」みんな暫く沈黙。
そしてなおくんが口を開いた。
「オレ、もぅ絶対泣かさん。大事にする。だから引いて貰えますか?」
「オレ、遥香ちゃんの事本気でした。なおさん、今度泣かせたら許しませんから。」
「分かってる。」
「遥香、良かったね!ちゃんと大事にしてもらいよ!」
静香が笑顔で言った。
「ごめんねみんな、ありがとう…ありがとう…」
堪えてた涙が一気に溢れ出した。
なおくんと別れて1年半。
こうしてよりが戻った。
>> 12
信じられない。
隣になおくんが居る。
しかも、あまり自分の感情を出す事の無かったなおくんが、祐司君に言った言葉。
「引いて貰えますか?」
惚れ直したよ。
嬉しくて嬉しくて♪
久しぶりになおくんのお母さんと妹にも会った。
「まぁ遥香ちゃん久しぶり!うちのなおがごめんね。私、ずっと遥香ちゃんが遊びに来るの待ってたのよ!」
「ありがとうございます!又お世話になります!」
幸せだった。
「ねぇ、後2年くらいしたら結婚しよう?今はまだお金が無いし、これから頑張って貯めるから」
幸せ…。とにかく幸せ…。
前よりも、頻繁に会う様にもなった。
後2年。
そしたら私、なおくんのお嫁さんになれるんだぁ♪
もぅなおくんが浮気しません様に!!
>> 14
そして1年後。
私もなおくんも、もうすぐ22才。
何か…。
最近…。
なおくんの様子がおかしい。
何だろう?この不安感。
電話をしてもあまり会話が続かない。
会っても私を見ていない気がする。
元々、優しさをもろに態度で表すタイプでは無かったけど、冷たくされた事は一度も無かった。
何だろう?
「もしもしなおくん?」
「うん」
「明日の夜会える?」
「うん」
「じゃあ明日、仕事が終わったら連絡してね」
やっぱり気になる。
怖いよ…。
私から離れて行くの?
違うよね?
ちゃんと聞こう!
私の性格は、ハッキリ言って気が強い。
でもなおくんと居る時だけは違った。
なおくんとは、何年一緒に居ても好きと言う気持ちは変わらず、「馴れ合い」にもならなかった。
それはなおくんも一緒だったと思う。
会った時は恥ずかしくて、お互いにケンカにもならない。
「浮気してるかも?」
って思っても、確たる証拠も無ければ私を粗末に扱う事も無かったから、「もうナンパもしないで!」「ごめん。でも浮気はしてないよ?」で終わる。
そして私が陰でメソメソ泣いて、でも又会った時は大好きだから、ただただ嬉しさと恥ずかしさでいっぱい。
そんな感じだった。
なおくんもあまり喜怒哀楽を出さない人だけど、なおくんもまた、私の本性を知らなかったかもしれない。
>> 15
翌日。
「ごめんね、仕事で疲れてるのに」
「いや、いいよ。どうした?」
「うん…何かさ、最近なおくんおかしいよね?」
「…うん」
「何かあった?」
暫く黙り込むなおくん。
もうやだ。
この場から逃げ出したい。
何?
本当に何なんだろう?
「オレ、まだやっぱり落ち着けない…」
「どぅ言う事?」
「まだ、友達とも遊びたいし…」
「遊べばいいじゃない?」
「でも、前にもそれで傷付けたし、これ以上一緒に居たら、又傷付けるかもしれない」
「…それって、まだまだナンパにも行きたいし、遊びたいって事?」
当時私の住む地域では、車でナンパすると言う何ともアホらしい場所がいくつかあった。
男連中は、自慢の車で乗り付け、女の子達はいわゆるギャルカーで参上する(笑)
携帯もまだ普及し始めた頃で、出逢い系サイトやらも無く、ナンパ目的の不良の溜まり場みたいなものだった。
>> 17
1年後。
なおくんが結婚した。
デキ婚だったらしい。
あれから暫くして、あの時なおくんの様子がおかしかった本当の理由を知った。
私とよりを戻して暫くは、なおくんも本当にマジメに仕事だけをして貯金してたらしい。
友達からのナンパの誘いも断ってたけど、やっぱりたまにはいいか、位の気持ちで久しぶりにナンパに出かけたらしい。
そこで知り合った女の子。
浮気では無く、本気になったんだね。
彼女と出会い、私と別れる決心をした様だ。
その彼女とデキ婚。
たまたまその彼女は、私の勤め先の同期と高校が一緒だったらしく、知りたくも無い事実を知ってしまった。
私の同期とは、そんなに仲が良かった訳ではないみたいだけど、彼女は凄く綺麗な人で、気が強い性格だったと聞いた。
なおくん…。
もぅ本当に戻る事は無くなったネ。
本当にさよならだよね。
私も前を向いて行かなくちゃね。
こんばんは(^.^)
主の旅人です。
読んで下さってる方?居るかな?(笑)
一応「小説」ですが、「日記」みたいになってしまいごめんなさい。
又、誤字脱字も多く読みにくいと思いますが、許してね(泣)
このお話しはほぼ実話で、現在私は40歳です(笑)
なので、遠い過去のお話しで記憶が交錯してしまい…。
「ナンパの名所」「ポケベル」
いつの時代の話しじゃい‼(笑)
って感じですよね?
皆さん、人生って本当に色々ありますよね?
あの日あの時、別の選択をしてれば‼
って事、きっと皆さんもあると思います。
でも、それがきっと自分の人生なんですよね…。
私の人生色々は、現在も続いてます。
この小説を書こうと思ったのは、今の悩み、現実に向き合う為に、自分なりの気持ちに整理をつけたいと思ったから。
ダラダラとすみません。
時々、こうして休憩タイムに入りますのでよろしく(笑)
>> 20
ある日、職場での出来事。
「遥香‼来たよぉー例の男前♪」
男前とは、他の支店の主任の山口博さん。
「男前かぁ?(笑)」
同期の美穂は朝から嬉しそう。
山口主任。
確かに爽やかだ。
私はあまり喋った事がない。
でも、紳士って感じで大人の男性。
年齢は36歳。
「遥香ちゃーん‼」
朝から何だよ、エロ上司。
うちの会社はそこそこ地元では有名な会社で、支店もいくつかあるけど、とにかくアットホーム。
このエロ上司も、事務員や営業の女性は下の名前で呼ぶ。
「はい、何ですか?」
「遥香ちゃん、⚪⚪の書類出来た?」
「…ギャー‼あれ来週の火曜日じゃ無かったんですか?今日だったんですか?」
ヤバイ…。
勘違いしてた…。
「すみません‼今からバタバタ作ります‼」
「でも、かなりの量だよ?間に合うかなぁ。遅くともお昼までには作らないと…」
「あ、自分が手伝いますよ!」
山口主任が言った。
「でも山口君、支店に戻らないといけないだろ?」
「大丈夫ですよ。夕方までに戻ればいいですから」
「…申し訳ありません」
私は焦り、バタバタと書類作成に取り掛かる。
「じゃあ、オレがここからここまで打ち込むから」
てか、さすが主任。
仕事が早い早い。
頭がいいんだろうな。
>> 21
その書類作成は難しくはないんだけど、いくつか計算をしなければならない。
その計算を誤ると、全てが狂うので集中しなければいけない。
「山口主任、本当にすみません!お忙しいのに…」
「あぁ、大丈夫だよ。あと少し!お昼は少し過ぎちゃうかなぁ。頑張ろう!」
「はい!」
結局出来上がったのは13時を少し回った位。
「良かった‼何とか間に合うよ。すまんね山口君」
ごめんよ、エロ上司…。
じゃなくて柴田係長。
「本当に申し訳ありませんでした。山口主任もありがとうございました」
「いえいえ。あ!お腹すいたね!お弁当持って来てる?」
「いえ、今日はコンビニで買うつもりです」
「じゃあ食べに行こうか‼」
「領収書貰っておいで。今日は私が奢るから!遥香ちゃんもいいから!仮が出来ちゃったねぇ♪」
だからエロ上司って言われるんだよ‼(笑)
でも悪い人では無いし、何だかんだお世話になってるからね。
「仮は返せませんが、以後気を付けます!」
>> 22
私はお腹がペコペコだった。
山口主任と焼き肉ランチに行く事にした。
エロ上司、いやいや柴田係長の奢りだと思ってちょっと贅沢(笑)
「すみません、お腹すきましたよね?」
「うん。いっぱい食べよう!」
山口主任は意外とよく喋る。
かと言って、一方的に喋るのでは無く、私の話しもよく聞いてくれる。
私はプライベートでは年上の男性とはほとんど接点は無い。
知り合いも居ない。
山口主任とは、仕事の話しはほとんどしなかった。
何の話しかと言われても、よく覚えては無いんだけど、焼き肉焼きながら食べながらあっと言う間に時間が過ぎた。
何か、凄く楽しい。
と言うか、心地良かった。
山口主任、本当に大人だなぁって思った。
>> 23
考えてみれば、ちょこちょこうちの営業所にも来てたよね。
毎年会社の忘年会でも会ってたんだよな。
お互いに挨拶しかした事無かったけど。
確かバツイチだと聞いた記憶がある。
美穂は、山口主任ファンだ。
と言っても彼氏は居る。
年下の彼氏だから大人に憧れるみたいだね。
それから山口主任が2回目に営業所に訪れた時。
丁度廊下ですれ違った。
「お疲れ様です」
「高木さん!」
名字で呼び止められた。
うちの会社はエロ上司だけでは無く、ほとんどの男性社員は私を下の名前で呼ぶから、何か不思議な感じがした。
「あ、山口主任。お疲れ様です」
「あのさ、ごめん。凄く迷ったんだけど…」
「何ですか?」
「今度、良かったら食事に行きませんか?」
「え?私とですか?」
「うん。彼氏に怒られるかなぁ?」
「現在彼氏はおられません」
何か突然だったから、変な言葉使いになったやないかい(笑)
「居ないの?良かったぁ!ごめん、でも迷惑ですか?」
山口主任も最後は敬語(笑)
「いえ、大丈夫です。でもびっくりしました(笑)」
「すみません。嫌じゃなければ、夕食を奢らせて下さい」
「はい。お願い致します」
私は山口主任と、いや、「ひろ」と大恋愛に落ちる事となる。
>> 24
ひろは初めて私を見た時、正直
「ちょっと苦手なタイプかも」
って思ったらしい。
私は初めてひろを見た時、
スルーした(笑)
と言うか正直覚えてない。
お互いに何も意識すらして無かったけど、やはりあの焼き肉ランチでお互いの印象が大きく変わった様だ。
ひろは、私がもっとキツイ性格だと思ってたらしい。
まぁ確かにキツイですが。
でも、素直に話す子だなって思い、もっと私を知りたくなったと言われた。
ひろは私の話を何でもよく聞いてくれる。
「あのね、今日ね、こんな事があってね」
「あの人とあの人、付き合ってるんだってよー!(芸能人の話しね)」
「今度あそこに行きたい!あれ食べたい!これ食べたい!」
思った事全部、全部、ひろに聞いてほしい。
あれ?
私ってこんなにお喋りだっけ?
こんなにワガママ言う人だっけ?
なおくんの時には考えられない事だった。
毎日メールと電話をくれるひろ。
それが日課となり、どんどんひろに溺れて行った…。
「ねぇひろ。私、ひろが居なかったら何にも出来ない…息も出来ないかもしれない」
「大丈夫だよ。俺はずっとはると一緒に居るから」
>> 25
なおくんと居た時、決して自分を押さえてた訳では無い。
ワガママを言えなかった訳でも無い。
上手く言えないけど、ワガママを言う必要も無かった。
ただ一緒に居るだけで嬉しくて幸せだったから。
彼女で居られるのが幸せだったから…。
でも、なおくんが離れる日が来たらどうしよう…って不安はあった。
でもひろとは違う。
ひろは私から離れて行かない。
絶対的な自信があった。
自惚れとは違う、人間的に全てが信頼出来た。
駆け引きなんかも必要無い。
そう、今流行りの⬅もう終了?「ありのままの私、姿」で居る事が出来た。
「彼氏」を超えて血の繋がった夫婦?
言い方は変だけど、そんな表現が合ってるかも。
>> 28
「はる…はるのご両親、結婚許してくれるかな…」
「うん、私もちょっと不安なんだよね…」
「だよな…でも、許してくれるまで何度でも頭を下げるよ、認めて貰えるまで絶対諦めないよ!」
「大丈夫だよ、ひろ‼ひろよりいい男なんて、この世に居ないよ?私、何があってもひろに着いて行くからね!」
「はる…愛してる。今まで生きて来て、こんな幸せを感じた事なんか無かった。結婚した時も…。誤魔化し誤魔化し夫婦をしてたんだよな。はると出逢えて良かったよ…」
「ひろ…私も愛してる」
「俺ははるの全てが愛しい。ワガママも、寝ぞうが悪いのも、泣いてる顔も笑ってる顔も。全部全部愛しくてたまらないよ」
ひろは照れる事無く続けた。
「はる、本当にこんな幸せをありがとう‼そして俺と一緒に居てくれてありがとう。」
もぅ…。
涙が出るじゃない…。
「はる、改めて言うね」
「はる、一生大切にします!俺と結婚して下さい‼」
「ひろ、ありがとう。こちらこそ…よろしくね…」
最後は涙で声にならなかった。
私、この人と出逢えて良かった。
こんなに誰かに守られてるって思ったの、初めて。
明日、両親に言おう!
>> 29
「お父さん、お母さん、ちょっと話しがあるんだけど…」
「なぁに?ご飯食べてからにしない?」
「いやお母さん、先に遥香の話しを聞こうか」
私の母はとにかく明るい人。
社交的で趣味も多く、毎日忙しそうだ。
逆に父はどちらかと言うと無口な方だ。
当時はまだバリバリの営業マンだったから、仕事柄逆に家では無口になってたのかもしれない。
「あのね…私、結婚しようと思ってるの」
「あらまぁ!本当に?そうよね!そうよね!もぅそんな年だもの。遅い位よね?ねぇお父さん?」
「ん?あ…あぁ…」
二人とも、私に彼氏が居る事位は知ってた様だ。
でもあまり聞いてこなかったし、私も両親と彼氏の話しをするのも照れ臭く、振り返ればそんな話題は我が家では1度も無かったな。
>> 30
「今付き合ってる人?」
「うん。同じ会社の人なの」
「どんな人?付き合ってどれ位?年齢は?」
興味津々に聞いて来る母。
「えーっと…。もうすぐ2年くらいかなぁ」
「へぇー、2年も付き合ってるの!」
「うん、凄くいい人!」
「年齢は?」
「…10歳年上なんだ」
「…」
「遥香」
父が口を開いた。
「その男は初婚か?」
「…ううん…1度結婚してたけど、今はバツイチなんだ」
「子供は居るのか?」
「うん…2人居るけど、前の奥さんが育ててる」
父も母も黙り込んでしまった。
「でもまぁね、バツイチなんて今時珍しくも無いし、どんな方か会ってみましょうよ。ね?お父さん」
「俺は会わんぞ‼」
そう怒鳴った後、父は部屋から出て行ってしまった。
>> 31
それまで、私達家族はわりと仲も良く会話も多かったと思う。
父は頭も良く、学生の頃は数学が苦手だった私によく勉強を教えてくれた。
社会人になってからも、一般常識や敬語など何か分からない事があれば何でも父に聞いていた。
でも…。
あの日以来、同じ家に住んでるのに殆ど顔も合わさなかった。
「遥香、お父さんも混乱してるのよ。一人娘のあなたから、いきなり年上のバツイチの人と結婚する!って言われたんだもの。もう少し日が経ってからもう一度話してみたら?」
「うん…。そうする…。お母さんは反対なの?」
「そうね…。出来れば初婚の人の方が嬉しいわ。遥香は初婚なんだしね。それに、いずれ遥香だって子供を産むでしょ?そうなれば、前妻さんとの子供さんだって居るんだし、経済的にも心配なのよ」
「彼、そんなにお給料悪く無いし、私だって働くつもりだよ?」
「子育てしながら働くのって、考えてる以上に大変なのよ?」
「でも、私頑張れるから!」
「遥香、とにかくもう一度よく考えなさい。どっちにしても、お父さんとももう一度話し合わないといけないしね」
「うん…。」
はぁ、、、
どうなるんだろ。
ひろに何て言えばいいんだろ…。
反対されてる事、ひろにはまだ言えずに居たのた。
>> 34
「遥香、やっぱりその彼の事は諦めなさい。私も女だから、遥香の気持ちはわかるのよ。でもね、お父さんは絶対に許してはくれないわよ?」
「お母さんまで!何で?何で会っても無いのに反対なの?バツイチだから?そんなの偏見じゃない‼」
何で母まで…。
あの頃は、両親を憎いとさえ思ってた。
もぅさすがにひろにも隠す事は出来ず、両親が反対してる事を告げた。
「反対されるのは覚悟してた。俺、とにかく会って貰える様にはるの家に行くよ!」
「ひろ…。ごめんね、私こんなに反対されるって思って無くて…」
「心配しなくていいよ!ちゃんとはるのご両親に認めて貰う様に頑張るから!俺、本当にはると幸せになりたいんだ…」
「ありがとう…ひろ」
>> 36
同棲生活を始めて3ヶ月位経った頃、私は仕事を辞めた。
とにかく私は、ひろとの生活の事だけをしたかった。
朝食をきちんと作り、それからお弁当作り。
ひろを見送った後は掃除に洗濯。
今思えば主婦なら当たり前の事だけど、それまで実家を出た事の無かった私は、とにかく料理がなかなか上手くいかなかった。
「初めてのお料理」
なんて本も何冊も買ったな(笑)
栄養バランスを徹底的に考えて作り、ただただひろに健康でいて欲しい、歳を重ねてもずっと元気で一緒に居たい…。
ひろは、そんな私に「ありがとう」の手紙も書いてくれたりもした。
でも…。
相変わらず私の両親はひろを拒絶したままだった。
>> 38
だから母は私を宿った時、嬉しさよりも恐怖でいっぱいだったそうだ。
「この子までだめだったらどうしよう」
私は現在1児の母親。
母の気持ちがよく分かる。
実はのちに私もひろとの子供を流産したから…。
妊娠生活に怯え半分ノイローゼになった母を、父は懸命に支えたそうだ。
「大丈夫!この子は絶対に俺が守る!」
家事もままらない程だった母は、父に支えられ少しずつ元気を取り戻し、二人でお腹に居る私を大事に大事に守ったそうだ。
出産当時も、急遽帝王切開になり他の病院からも医師が駆け付け、母は大量出血をして、父は医師から「もしからしたらどちらも駄目かもしれません」
と告げられた程。
私は、帝王切開で大変だった事は聞かされてたけど、流産の事は全く知らなかった。
「はるちゃん、だからアナタの両親はアナタが可愛くて大切で仕方ないのよ」
それと同時に、ひろの事も子供が居るにも関わらず、親の都合だけで離婚したというのが同じ父親として許せないらしい。
しかもまだ幼い2人の子供が居るのに…。
そんな男が私を幸せに出来る訳がない。
もし子供が産まれても、本当に子供に愛情をかけられるのかと…。
>> 39
「はるちゃん、その方はアナタにとっては本当にいい人かもしれない。でもね…。アナタはまだまだ若い。バツイチの人じゃなくても、もっといい人がいるわよ?きっと」
「バツイチがそんなにいけない?彼みたいに私を思ってくれる人は絶対にいない!」
「はるちゃん…。相手には子供さんも居るんでしょ?結婚となると、先々養育費やらお金の事で揉めたり色々あるわよ?私はそんな人をいっぱい見て来てるのよ…」
「私は贅沢なんかいらない。彼となら頑張れるから!」
暫くこんな押し問答が続いた。
「とにかく、今度会ってゆっくり話さない?私は何がなんでも反対してる訳じゃないのよ」
「ごめんなさい…。うん、会って話そ」
清美姉ちゃんは、子供が居ない。
出来なかったのだ。
だから私を本当に可愛がってくれた。
せめて清美姉ちゃんだけにはひろの事を認めてもらいたい。
>> 40
「はる、明日又はるの実家に行こう!」
もう何度目だろう…。
「今度こそは会ってくれるかも」
私とひろはそう願い、何度も私の実家へ足を運んだ。
でも…。
玄関を開けてくれた事さえ無かった。
「ひろ、もういいよ…。何度行っても会ってくれないよ。私、もう親に認めてもらおうなんて思ってない」
「はる、それじゃ駄目だ!俺は何度でも頭を下げるし、殴られたっていい。ちゃんと承諾を得たいんだ。男として、それはやらなきゃいけないんだ」
このやり取りも、もう何度して来た事か…。
正直、私は疲れていた。
「ひろ、来週清美姉ちゃんと会うんだ。相談に乗って貰うから少し待って」
「うん…。俺も行こうか?」
「ううん、とりあえず一人で行くから。ひろ、仕事も大変なのに本当にごめんなさい…」
私はひろが心配だった。
私の実家へ行く度、インターホンで母から
「お帰り下さい」
と冷たくあしらわれ、何度もチャイムを鳴らす訳にも行かず、ただ二人で立ちすくむだけ…。
悔しいと思う。
私は悔しい思いと両親への怒りでいっぱいだった。
>> 41
「はるちゃん、少し痩せたね…。ちゃんと食べてるの?」
「うん。大丈夫よ!」
数日後、私は清美姉ちゃんとランチをしてた。
「お母さんとお父さん、元気?」
「私も電話でしか話して無いのよ。」
「そっか…」
考えてみれば、私はこんな長い期間両親と会わずに居るのは初めてだった。
「ねぇはるちゃん、どうしてもその彼じゃないと駄目なの?」
「もちろんよ!」
「そっか…。そんなに好きになれる人は、なかなか居ないかもね。決して誠意を見せてない訳じゃ無いしね…」
「でも、何度家に行っても会ってくれない。もうぅどうしようも無くて…」
「実はね、お母さんはそこまで反対してないみたいなの。でも、お父さんがね…。お父さんの手前、なかなかね…あの夫婦の絆は本当に深いから」
過去に流産した時や、私を無事出産するまで懸命に母を支え続いた父。
私から見ても、子供ながらに何となく私でも入る隙が無い様に感じた両親。
本当に仲が良かった。
母も、私には父が本当に祝福出来る相手と結婚して欲しいのだろう。
>> 42
「とは言っても、はるちゃんももぅいい大人。自分の信じる道を歩んでもいい年よね」
「うん…」
「ただ、私が気になるのはやっぱり彼との結婚後の生活。はるちゃんにも子供が出来れば、当然お金がかかる。彼は養育費を払いながらの生活がちゃんと出来るの?」
「お給料は悪くないと思う」
「大事な事よ?お金が原因で駄目になる夫婦はいくらでも居るの。彼とちゃんと話し合ったほうがいいわよ?」
「そうだね…。正直、そんな話しはした事無かったから」
「ちゃんと話し合って、本当に二人が一緒になるなら私は応援するわ。だから、焦らないで決めるのよ?」
「本当に?ありがとう‼ありがとう‼」
嬉しかった。
本当に嬉しかった。
私ももぅいい大人。
ひろとの結婚は、間違いないじゃないと信じれる。
清美姉ちゃんと会って、久しぶりに笑顔になれた気がした。
>> 43
ある日の朝。
私は憂鬱だった。
正確に言えば、毎月決まって私には憂鬱な日があった。
彼が前の奥さんとの子供と会う日だ。
「今日は夕食いらないからね。帰る前に電話するから」
「うん、行ってらっしゃい」
まだ下の子が小さい為、会う時は前の奥さんも一緒だ。
仕方ないのは理解してるつもり。
でもやっぱり嫌だった。
ひろは、子供達と会えるのが本当に嬉しそうだった。
あの頃の私は、まだ出産経験も無かったから、我が子がどれだけ大切で愛しいものなのか分からなかった。
だから、余計にイライラしたのだと思う。
私と子供、どちらを愛してる?
どちらを選ぶ?
なんて最悪な事も考えたりした。
>> 44
「ただいま」
ひろが帰ったのは、ちょうど22時頃。
「お帰りなさい…。何食べたの?」
「ハンバーグ!子供が大好きだからね♪」
嬉しそうにひろが言う。
「先月会ったばかりなのに、又大きくなっててさ。子供の成長ってさ、本当に早いよね」
「…そうなの?私子供居ないから分かんない」
「早いよー‼特に下の子なんかさ、俺の中では未だにヨチヨチ歩きのイメージが強いんだけどさ♪」
そーですか。
「今はよく喋る様になってさ、びっくりだよ♪」
そーですか。
「大きなハンバーグも、ほとんど一人で食べたんだよね」
そーですか。
「でさ、」
「…止めてよ」
「ん?」
「もー止めてよ‼いい加減にしてよ‼」
あぁ…。
言ってしまった…。
>> 46
はぁ。
何か憂うつだなぁ…。
買い物にでも行くか!
車に乗ってglobeのCDを聴こうとしたら、
あれ?
音が鳴らない。
壊れたみたい。
もう古いからなぁ。
仕方なく少し遠いけど、昔よく行ったカー用品のお店に行く事にした。
安くていいのがあれば思い切って買い替え様と思い選んでた時、突然後ろから名前を呼ばれた。
「あれ?はるちゃん?」
ん?えっと…。
見た事あるけど…。
あ!
心臓が大きく鳴った。
「ゆたか君?…だよね?」
「やっぱり!凄い久しぶりだね!」
なお君の悪友、ゆたか君だった。
しかもここの定員さんみたいだ。
「俺、今ここで働いてんの。何?コンポ探してんの?」
「…うん、壊れたみたいだから」
「そっか、じゃあ安くするから決まったら教えて?」
「いいの?でもどれがいいかよく分からなくて」
結局、ゆたか君が勧めてくれたコンポをかなり安くして貰い購入した。
>> 47
ゆたか君…。
正直、あんまり会いたくなかったな。
なお君と同級生で、よく吊るんでナンパに明け暮れ、見た目もチャラい人だった。
何度も会った事はあったけど、あまり話した事は無かったかな。
「はるちゃん、コンポ付けるの工賃かかるから、俺が付けてあげようか?」
「えっ?いいよ、安くして貰ったし工賃払うから!」
「いやさ…。昔なおと付き合ってた時、俺もはるちゃんには悪い事したと言うか…迷惑かけたし…」
そう言えば、ゆたか君も落ち着いた感じがする。
大人になったと言うか、チャラい感じがなくなってる。
だから直ぐには分からなかったんだ。
あれからもぅ何年経っただろう…。
なお君との想い出が駆け巡り胸が熱くなった。
「俺、19時まで仕事だから終わったら○○の洗車場で待ってるよ!」
「いいの?昔の事ならもぅ気にしないでよ(笑)てか、いい加減立ち直ってるし(笑)」
>> 49
約束の時間になり、懐かしい洗車場へと着いた。
変わってないな…。
って、洗車場だから変わらないか。
車好きだったなお君は、ここでよくピカピカになるまで磨いてたっけ。
なお君との懐かしい想い出が甦る。
あの頃は、まさかなお君が想い出になるなんて思っても無かった。
「はるちゃんお待たせ!」
ゆたか君が助手席に彼女を乗せて現れた。
わぁ、どんな人だろ。
「初めまして、ゆかと言います」
想像とは違い、とても素朴で感じの良い彼女さんだった。
ゆたか君は昔、派手な女の子ばかり連れてたからなぁ。
本当に人って年月を重ねると変わるんだなぁ…。
大人になって行く。
「初めまして、遥香です。すみません、ゆたか君にお願いしてしまって…。」
「いえいえ。ゆたか、車をいじるのが好きだから全然気にしないで下さいね!」
早速ゆたか君がコンポの取り付けを始め、私はゆかさんと世間話をしながら待っていた。
- << 51 でも、ゆかさんは話してる最中どこかソワソワしてて、ゆたか君の車を気にしてる感じがした。 「どうしたんですか?ごめんなさい、あまり時間が無いんじゃないですか?忙しいのに本当にすみません」 「あっ、そんなんじゃないの。ねぇ、ゆたか…」 「う、うん…おい!もぅ出て来いよ!」 ゆたか君の車に誰か乗ってるのかなぁ。 …そう、車から降りて来たのはなお君だった。 「久しぶり…元気か…?」 照れた様に、でも真っ直ぐと私を見つめながら言った。 ギャー‼ まさにギャー‼だよ‼ 「なに…?どーしたのよ、何で居るのよ?」 言いながら、私は泣き笑いの様になってたと思う。 「はるちゃんごめん‼今日はるちゃんが店に来た事なおに言ったら、俺も洗車場に行きたいって言うから。びっくりさせてごめん‼」 「もー本当にびっくりだよ‼」 ねぇ…。 なお君、何年ぶりかな…? もぅ会う事なんて無いと思ってたよ…。 なお君と初めて会った日から、もぅ10年が過ぎていた。 お互いに、27歳。 会うのは5年ぶりだね…。
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