ミミコと白いバラ

幼い頃から思い描いていた。

23歳で結婚して、25歳で子供を産むと。

それも可愛い女の子。名前は、美魅子！

ちょっとネコみたいな響きだけど、この名前以外は考えられなかった。



私の理想は現実に近付こうとしてた。

23歳で、8歳上の洋介と結婚して、やがて妊娠した。


性別はまだわからなかったけど、たまらなくお腹の中の新しい命が愛しくて仕方なかったよ。

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目を真ん丸くしながら洋介が言った。


「百合！おかえり！男？女？」


その日の検診で性別がわかったので、私は嬉しさで声を大にして言った。


「女の子！！」


念願の女の子だった。


お腹に優しく触れながら、ミミコにいつも話しかけていた。


早く会いたい、ミミコに会いたい。


そして待ちに待った出産の日、7月25日。


26時間かけて出産した小さな命、ミミコ。


もみじみたいな小さな手を握りながら、こんなに愛おしい気持ちがあるなんて知らなかったねと洋介と飽きることなく、ミミコの姿を見つめていた。

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ミミコは五体満足で順調にスクスク成長していった。

夜泣きも少なく、オムツも早くとれて言葉を覚えるのも早かった。


本当に親バカだけど、将来は女優にでもなれるんじゃないかしらと本気で思う位、整った顔に天使のような笑顔。
真っ白なプルプルの肌。


何もかもが優れている気がして、本当に自慢の娘であり宝だった。

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私は、小さい頃に父親が蒸発し、極度の心労がたたったのか母は心筋梗塞で急死している。

だから、あたたかい家庭で、平凡だけど家族が揃っていて健康に暮らすということに人一倍憧れていた。


私は月並みの容姿で、話も上手くないし、特技もない。


こんな私を心から愛してくれる洋介がいて、二人の愛の結晶のミミコがいる。


ちなみに私は、白いバラが好きでたまに5本くらいフラワーショップでバラを買い、家族写真があるサイドボードに飾る。



大好きな白いバラがあると、自然と目を閉じて空想してしまう。


昔、夢で見たお菓子の家。どこから食べようか迷っちゃう。



あの時は一人で、お菓子の家をさまよったけど、今はミミコと手を繋いで甘～い香りのお菓子の家に行きましょう。

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「ママ！！」


ソファにもたれ掛かり、空想しているとウトウトしていた。


隣でお人形を撫でながら座っていた、愛らしいミミコの声で目が覚める。


「あっ！ママ寝ちゃってたね！」


「うん！口あいてたよ」


「ほんと？」


「うん！ミミコ、笑っちゃったよ」


「うふふ」


私はミミコを抱き寄せた。



「ねぇママ」


「なぁに？」


「ママはユリっていうお名前なのに、バラが好きなの？」


「うん、ママね、昔から白いバラが大好きなの。
見てると幸せな気分になれるの」


「じゃあミミコも白いバラを好きになる！」



ミミコは白いバラの側に歩いて行った。



白いバラも好きだけど、ミミコの方が計り知れないくらい好きだよ。

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