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起きたら無人島でした。

レス45 HIT数 3012 あ+ あ-

小説家( ♀ )
13/12/09 15:02(更新日時)



目の覚ましたら、青い空。 辺りを見れば青い海。 僕は今白い砂浜の上にいる。


感想よかったらココにお願いします。
一言でも嬉しい。

ちなみに他作品
①僕我俺私ー五人暮らし。
②包帯男と可愛い彼女。



13/12/08 00:29 追記
③読めば分かるっ



ついでに、最初スレ、から渡ってください。

13/12/08 00:30 追記
↑最初レスだった

ネタバレ防止のため。

No.2034943 13/12/07 23:51(スレ作成日時)

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No.1 13/12/07 23:53
小説家0 ( ♀ )


ザァァァァァァァァァァ

ザァァァァァァァァァァ




波の音。
海の匂い。
眩しい光。









目を開くと、青い空が一面に広がる。


ジャリ



(?ジャリ…?)


不可解な音をたてた自分の手の方を見ると、砂。



僕は、飛び起きて辺りを見渡す。


(バカな…バカな…)


そこはまさに海に囲まれた島だった。



唖然とする。



(どうして僕は、こんなところに…)



必死に記憶を呼び起こそうとする。




ズキッ



頭に痛みが走る。




それと同時に記憶が蘇る。




(そうだ、僕は…僕は、自殺しようとしたのだ。昨日学校の屋上から、飛び降りようとしたんだ。)



はっきりと思い出した。

いじめられているわけでも病気しているわけでもない。ただ毎日毎日繰り返されるつまらない日々に嫌気がさし、このまま何十年もなんにもなく空っぽに生きていく未来を想像して、自ら人生を終わらせようとしたのだ。



(さようなら、僕はこの世界に未練はありません)



空中に一歩を踏み出そうと足をあげたそのとき…




『待って!』


僕の腕を掴み、進もうとしたのと反対の方向へ引っ張られた。


( !! 邪魔をするな!邪魔を!)



その相手の顔をバッと見た途端、全身の抵抗力が一気に弱まる。



それは、僕が夢にまで見たあの子だった。


(ウソ…。)


これこそが夢じゃないかと疑う。



それから温もりを感じた。


一瞬何が起きたのか分からない。

No.2 13/12/07 23:54
小説家0 ( ♀ )

(…抱きしめられてる!?)




『お願い…そんなことするくらいなら、私に…』




隙間ひとつなく密着している。
僕は力が入らず呆然と彼女に身を預ける。



(声も匂いも、こんなに近くに…)




それは僕が好きで好きで大好きで、だけど絶対に手の届かないミューズ、クラスの誰もの憧れ、葉月琴音はづきことねだったのだ。


喋ったこともない。僕みたいな奴は同じクラスになれただけで最高の褒美、ばれないように遠くからそっと見ていられるだけで感謝しなくてはいけない。そんな認識で一年間過ごした。


なんにもない薄っぺらな僕の日常生活に唯一の楽しみを与えてくれたのが彼女だったのだ。だが、もうその楽しみも今日で終わり…このクラスで過ごす最後の日なんだ。

生徒の数こそ誇るこの高等学校のクラスは15クラスある。また来年も彼女と同じクラスになる確率は15分の1。運のない僕は、期待さえしない。



(彼女は僕の存在を認知さえしていないかもしれない。名前も知らないかもしれない。きっと彼女の人生で、高校のときに屋上から飛び降りて自殺した迷惑なクラスメイト、という嫌な記憶として刻まれるのだろう。)




そう思っていたのに…。



僕はその彼女に、触れている。
抱きしめられてる。



僕にとっては信じられない奇跡だった。




『私でよかったら、話、聞くよ?』





そして、思わぬ方向へ流れる。





『今日家に誰もいないから、真田君、うちおいで、話聞くから。』


僕の名前を彼女が口にしてくれたことに驚く。


『名前…知ってて…くれたの…?』


『もちろん。真田翔太さなだしょうた君でしょ?』



僕の中の冷えた心がトロトロと溶けていくように感じた。





(葉月さんの…家?)



それから僕はノコノコと彼女についていった。


『ここ、私の家。』

No.3 13/12/07 23:55
小説家0 ( ♀ )


僕はまたも驚く。華麗で上品な彼女のイメージとは似ても似つかないような、ボロボロな家だったのだ。



(和風…なんだな…。)




今風なドアではなく、昭和時代のような形式の、薄汚れた戸をガラガラと開け、彼女は入っていく。



『お…おじゃまします。』



本当にここが彼女の家なのかという疑いはすぐに晴れた。家に一歩入った途端、屋上で抱きしめられたときと同じ甘い香りが確かにただよった。



(同じ匂い…)





『座ってて。お茶いれてくるね。』



家の中は、物は少なく、リビングなのにテレビ一つも置かれていなかった。




(葉月さんって、意外に貧乏なのか…全然知らなかった…)




『どーぞ。』



彼女が俺のテーブル越しに目の前に座る。


『あ…どうも…』



長い沈黙が流れる。今目の前にいるのは、俺がずーっと好きだった彼女に確かに間違いない。授業中も、人目を盗んで一年間見つめ続けた彼女。遠い遠い存在だった彼女。




こんなチャンス、絶対にまたとないはずだ。




(なんか話さなきゃ…)




先に沈黙を破ったのは、僕だった。






『葉月さん!僕…僕はずーっと、君のことが好きだったんだ!』


この突然の状況に動揺していた僕は、勢いあまっていきなり告白してしまった。


僕は趣旨を思い出す。



(彼女が僕を家に連れてきてくれたのは、飛び降りようとした理由を聞いてくれるためだったのに…僕は何を口走って…)





『そうだったんだ。ありがとう。嬉しい。』





葉月さんは、きっと告白されることに慣れているのか、落ち着いた声で言った。




『でもごめんね、私、好きな人、いるんだ』





そりゃそうだろう。答えは分かっていた。一年間彼女をよく見ていたから知っていた。僕が見つめる彼女はいつだって、一之瀬蓮いちのせれんという男を見つめていたからだ。
顔もよし頭もよし運動神経もよし、全てを兼ね揃えた男だ。
僕が持ってないものを全部持っている、絶対にかなわない男。


最初から期待していなかったから、失恋したショックはほとんどなかった。

No.4 13/12/07 23:56
小説家0 ( ♀ )

『でも気持ちだけでも嬉しい。これからは、友達としてよろしくね。』




(友達…?)





正直彼女どころか友達と呼べる友達すらいなかった僕は戸惑う。





『葉月さん…僕なんかと友達…になってくれるの?』




『もちろん。本当は私、ずっと真田君と喋ってみたかったんだ。』


そんなはずはないはずだ。
僕は新しいクラスになった初日に葉月琴音に一目惚れをし、その日から一年間毎日彼女をことを気にしながら学校に通っていた。彼女からの視線をもし感じたとすれば、絶対に気付く自信だけはある。



しかし、そんなものは一度も感じなかった。それによくよく考えれば、何もかも完璧な彼女が空っぽな僕に興味を持ちさらに友達になりたいとまで思われるような魅力なんてあるはずがない。

(さすが葉月さん。告白を断るときも相手を嫌な気持ちにさせないように気を遣ってくれるとは。)

ますます彼女の好感度が高まった。
好感度はとっくに僕の中で最高潮に達していたが、その先を貫いてグングンと高まった。



そうしているうちに、夢見心地になって、だんだん意識が遠のいて、それで…………………





それからの記憶は途切れた。




(それで今起きたらここにいたんだ)




もう一度辺りを見渡す。



木々が茂って、鬱蒼としていて、テレビでよく見かけるのと同じ、まさに無人島というべき光景が広がる。




(誰もいないのだろうか…?)


僕は森の奥の方に歩き出す。



ジャリッ ジャリッ ジャリッ





(…僕、裸足だ…。)




それに、おかしなことに気付く。





(…僕、体操着だ…。)





上下学校のジャージを着用していて、上のジャージのジッパーを下げると、『真田さなだ』の文字が書かれた高校の体育の時間にいつも使っている見慣れたTシャツが覗く。



昨日が一学年最後の3月14日。
だとしたら今日は3月15日のはずだ。


なのに、暑い。まるで真夏日だ。
ジャージが鬱陶しいほどだ。



ジャージを脱ぎ腰に巻く。




やはり下のジャージの下にも短パンを履いている。



俺は夏の日の体育の授業と同じようにTシャツ短パンになって、森に入っていった。





(ここはどこなんだ。

なんで僕は体操着を着ているんだ。

なんで暑いんだ。

これは現実なのか?

夢じゃないのか? )





頭の中で自問しながら歩く。


聞きたいことは山ほどある。


だが、質問する相手がいない。

人の気配さえしないのだ。

No.5 13/12/07 23:57
小説家0 ( ♀ )

誰かいるかもしれないと信じて森の中を歩く。




道という道はなく、足場が悪い。裸足のせいで、土が爪の間に入りこみ、岩のゴツゴツとした感触も直に伝わる。草の匂いがする。



喉もカラカラに渇いている。




『誰か…いませんか…誰か…』



ザアァァァァ ザアァァァァ




ここは本当に無人島なのかもしれない。波の音しか聞こえてこない。




ザアァァァァ ザアァァァァ




そのとき、僕は足場を崩し、その場に転んだ。



ドサッ




『痛っ』




僕の左脚の膝に衝撃が走る。わずかに血が噴き出た。



その場にひざまづく。


(なんでだよ…なんなんだよこれは…意味わかんねえよ…)





『これからは、友達として、よろしくね』




ふと葉月さんの優しい声が頭の中で再生された。





『葉月さん……どこにいるの葉月さん!

はづ……う…うぅ…』




目に何かがたまる。涙だ。涙がこぼれる。




泣くのなんて、何年ぶりだろうか。最後に泣いたのは、父さんが母さんをぶった日、母さんが家を出た日だったはすだ。



あの日以降僕は笑うこともしなかったが、泣くこともしなかった。




なぜ涙が出てくるのか分からない。

どんどんどんどん溢れてくる。



わけもわからず無人島に残されたから?葉月さんがいないから?足が痛いから?





(僕は死ぬ覚悟をした人間…今更もう何も残らない人間。もう、泣く必要もないのに…)





そのとき、得体のしれないものが視界に入った。

最初は何か分からなかったが、それは蛇だった。





(き…気色悪い…)





怪我を負った左脚をかばいながら、先に進む。

No.6 13/12/07 23:58
小説家0 ( ♀ )

怪我を負った左脚をかばいながら、先に進む。



(水…水が飲みたい。)



時間が分かるものが何もないが、30分位歩いただろうか。そろそろ喉が限界に渇いたというところで、湖らしきものが見えた。






(あ!あれは…!!)







僕は目を輝かせ、できるだけ足を早める。



長く太い木々に囲われた湖はまるっきり日光が遮断されていて、日陰になっていた。その水は澄んでいて、飲んでも大丈夫そうだと判断し、両手ですくう。




ゴクッゴクッゴクッゴクッゴクッゴクッゴクッゴクッゴクッ





(おいしい!おいしい!)




ハァハァハァハァ…







一気に飲んだせいで息が切れる。
限界まで渇いていた喉が潤い、冷たい水が体に浸透していくのがよく分かる。






『い…生き返ったァァ』






自分が発した言葉に違和感を感じた。






〝生き返る〟





僕は本当だったら昨日の時点で消えていたはずだった。



それが、あろうことか想いを寄せていた葉月琴音に止められて、今こうして息をしているのだ。不思議だ。





膝に染み付いた乾いた血を見て、清い水で洗い流す。





冷たい水を顔に勢いよくかける。言葉の意味のままに、頭を冷やした。





喉の渇きがおさまると、さっきまでの動揺も混乱もなくなり、落ち着いた。



ちょうど場所が日陰で居やすかったから、
その場にゴロンと寝転ぶ。







(僕、ひょっとしてすでに死んでたりして。)








ふと考える。






もしかすると本当は、僕はあのとき誰にも止められることなく意のままに屋上から飛び降りて、死んだんじゃないかと考えた。そう考えれば全て納得できた。








(葉月琴音に間一髪止められたのも、抱きしめられたのも、そのあと家に招かれたのも、死んだ僕の勝手な妄想で、それでこの島はあの世だったりして…。)








空を向いて寝転びながら、どこまでも高くのびた木々についた沢山の葉っぱを眺める。






(一年間ずっと好きだった葉月さんに、飛び降りるのを止められるのなんて、今思えばすごく可能性が低いことじゃないか。運のない僕に限ってそんなこと、ありえない。)





僕は目を閉じながら考えた。




(ここ、天国なのかな、地獄なのかな…自殺したのに天国いけるわけないか…じゃあきっと地獄だな…)







『はは…あはははは。あはははははははは』




僕は一人不気味に笑った。
声に出して笑うのも何年ぶりだろうか。

No.7 13/12/07 23:59
小説家0 ( ♀ )

ふと視線を感じた。

誰か僕のことを見ている気がした。





ここはおそらくこの島で唯一の水源。さっき見た蛇のように、この島に存在する生命体にとって貴重な場所だ。僕はその貴重な場所に寝転ぶことへの迂闊さを思う。





ここは危険だ。
この島にはどんな生物が潜んでいるかも分からない。僕は初めて身の危険に対し恐怖を感じた。




昨日屋上から飛び降りるときも感じなかった死への恐怖を。



(死んだ後の世界で殺されてまた死ぬなんてことになるの嫌だしな)



僕は水源に近い場所でどこか身を隠せる場所を探そうと立ち上がった。



『あ、洞穴。』



3秒もしなかっただろうか。ものすごく見つけやすいところに入ってくださいと言わんばかりの洞穴を発見した。



水源から近い、とても都合良い位置だ。


僕は洞穴に恐る恐る入る。





(なにこれ。すごいいいじゃん。)




僕の170cmの身長にぴったりな洞穴だった。





(あの世では運がいいなんて。)




洞穴にはまってから、もう一度考えに更けった。



本で読んだことがある。
無人島に漂流してしまった人々の話。その人たちは大抵、水源を見つけ、寝場所を見つけ、共に漂流した仲間と励まし合い、ひたすら信じて助けを待つ。僕のようにこうして呑気にしてないで、必死で生きるために魚を素手で捕まえにいき、木で火を起こし、食糧源を確保したりするものだろう。



僕はそんなことをする気は起きなかった。ここがあの世なのかこの世なのかすら確証を持てない今、僕に何ができるっていうんだ。







(ここがあの世だってこの世だって、僕はこの島で飢え死にでもすればいい。)





こんな非常事態におかれてもなお、生きることに消極的な考え方は昨日までとなんら変わらなかった。




僕は腹が空いても洞穴から動こうともしなかった。




気付けば辺りは暗くなり初めていた。



火でも起こせばいいのかもしれないが、火の起こし方も知らないし、下手に起こして火事にでもなったら嫌である。




僕は洞穴から出なかった。





もっともっと暗くなっていく。
最後には、何も見えないほど闇に包まれた。




グォーギュギュルーン



暗闇の中僕の腹の音が響く。





何もしないで、意味も分からないまま、どこなのかわからないこの島で死んでいくのか…。





すでに死んでいると考えていたのに、生きているのと同じように腹がすく。






(やっぱりここは、地獄だ)





僕は暗闇の中絶望した。



No.8 13/12/07 23:59
小説家0 ( ♀ )

僕は暗闇の中絶望した。








『待って!』


葉月琴音の声を思い出す。


『友達として、よろしくね』


『本当はずっと私、真田君と喋ってみたかったんだ』


僕の中で何かがうずめいた。











(もしも…もしも昨日のことが全部、死んだ僕の妄想なんかじゃなくて、正真正銘真実だったら…僕はまだ生きていて、何かの手違いでこの島に流されたとしたなら…


僕はいつだって全部全部あきらめてきた。

いつしか頑張ることさえしなくなった。

つまんないって俯瞰ふかんして、始める前からダメだって決めつけて…



本気で楽しもうとしなかったのは僕だ。



葉月さんのことだって、僕なんか相手にしてくれないってあきらめて何にも努力してこなかった。


助かったら、葉月さんと友達になれるだろうか。

助かったら、葉月さんともっと喋れるだろうか。


友達……葉月さんと、葉月さんと…)






葉月琴音への気持ちがここまで大きいものだったとは、自覚していなかった。






(僕は本当に、友達ゼロの人生で、孤独で独りぼっちで、このまま死んでいいのか?それで本当に、未練はないのか?)





『変わりたい…もっと…知りたい…僕が知らない幸せを…仲間を…つくりたい…葉月さんとだって…クラスが替わったって…友達…としてでもいい…もっと…もっと………生きたい!!!!!』





洞穴の中で響く僕の叫び。







僕は初めての前向きな気持ちのまま眠りについた。

No.9 13/12/08 00:01
小説家0 ( ♀ )

明るい光に目が覚めた。



目の前に広がる光景に、昨日のことが夢ではなかったことを実感する。


目の前には、青々と茂った木々が立ち並び、湖がある。


そうだった、僕は今、無人島にいるのだ。





(喉渇いた…腹がへった…)





僕はたった一日、物を口にしないだけでこんなにも腹がすくことを身に持って知る。





喉の渇きは目の前にある湖で解決することが分かっているので、洞穴ほらあなから出ようと体を動かした。



(イタタタタタタ)





ゴツゴツとした狭い洞穴の中で、寝返りもうてない体勢で、しかもTシャツ短パンの薄い体操着で一晩寝たのだ。





体が痛くならないはずがない。




なんとか洞穴から出た僕は、危険生物が近くにいないか慎重になりながら、湖に近付いた。




ゴクッゴクッゴクッ




(ふぁーっやっぱりこの水うまい)





しかし、腹はすいたままだ。



水で若干落ち着いたとはいえ、
やはり食べ物を欲した。





家にいれば、
冷蔵庫を開ければ簡単に食べ物が手に入るし、クーラーの効いた部屋で快適に過ごせるし、布団の上で枕の上で、眠れるし、最も生命の危険を感じながら歩かなくて済むのだ。
それを当たり前だと思って生きてきた。





僕は、金持ちではないものの、父さんと二人暮らしで生活には困らなかった。しかし母さんが出ていった以来、僕の家に明るさは消えた。




学校でもいじめられる対象ではなかったものの、仲間はいなかった。

目立つといじめられる。
僕は必死に、自分の存在感を消した。そうした結果、クラスの奴らと関わりを遮断し、気付けば独りぼっちになってしまったのだ。







僕は置いてけぼりだった。



No.10 13/12/08 00:02
小説家0 ( ♀ )

するとそのとき、熊くまが目に入る。






(あ…あああああ熊…ああああ熊…!!熊!)






それはまだ僕が小さい頃の記憶、母さんと父さんが仲が良かった幸せな家族だった頃に連れていってもらった動物園で見た可愛い子熊とは訳が違う。





明らかにその目には殺気があった。





ヴヴヴヴヴ






僕を威嚇している…






殺される。








僕はそう直感した。






(家でも学校でも、みんなが僕を避ける。)


そうじゃない。
そんな考えは、昨日の夜変わったのだ。



(家でも学校でも、僕がみんなを避けてきただけなんだ。)



昨日の感情がジワジワと蘇る。




(そうだ、僕はこの島から出て、自分を変えるって決めたんだ。絶対に死ぬもんか!)








僕は握りこぶしに力をため、全力で、『うおーーーーーーー!!!』と吠えた。






僕は熊から目を離さないままに、頭の斜め上に見えた太めの木の枝をバチンとちぎり両手にかまえる。






(思い出せ…思い出すんだ…小学校のとき習っていた剣道で身に付けた感覚を…研ぎ澄ませ…熊の動く一瞬先を読むんだ……)






ザアァァァァァァァ

ザアァァァァァァァ




リズムを乱すことなく波の音が続く。


波のリズムに合わせて呼吸を整える。








(全てはタイミング……タイミングなんだ…)






熊と僕は睨み合った。
その距離は三mとないだろうか。










(……!今!)








熊が飛びかかろうとまっすぐ突進したその一秒先に、




僕は一歩斜め左前に踏み出し、

両手に持つ太い枝を地面よりやや高い高さで平行に仕掛ける。


熊は、意表を突かれたというように突進する方向を変えんとしたが、すでに遅かった。




僕の枝によりその立派な太い足がつまづき熊はバランスを崩した。


僕は余談を許さず左足を軸にクルっと方向転換して、剣道と同じように熊の頭に一本打つ。



ギャウッ


熊の悲鳴だ。




『突き!突き!突き!』


僕は無心に突きを続けた。



熊が抵抗を弱め、やがて気絶したのを確認し、僕は考える。





(僕のニオイを覚えているに違いない。一度戦ったら最後までトドメをささないと、必ずまたいつかは襲ってくる。 だけど、ここにこれよりもっとデカイこいつの親熊がやってきたら、そのときは間違いなく僕は、死ぬ。)




僕は気絶した熊を残し、足早に湖から離れ、安全性ができるだけ高そうな木と木の間に身を隠した。







手が、震えている。
僕は、熊と戦ったんだ。
生き残るために。

No.11 13/12/08 00:02
小説家0 ( ♀ )

この様子じゃ、この島に住む野生にいつどこで出くわすかも分からない。


その島の奥で助けを求めようとも、誰も気付くはずがないのだ。空から見ても、茂った木々に僕は隠されている。


せめて白い砂浜の上で待つことは助かるための最低条件だ。



かといって、この水源を離れ、また無事にここへ戻ってこれるとも限らない。


それに、高校で運動部でもなんでもなかった僕は、今すでに体力の限界が近付いているのだ。


気持ちだけで生き残れるほど、野生の世界は甘くないと思い知る。





(くそ…僕はやっぱり、死ぬにふさわしい人間だったんだな。今頃僕は、学校中で死んだことになっているのだろうか。いや、たしかに死んでいて、ここは死後の世界かもしれないが。)




心がどんどん萎縮していく。
さっき熊に勇敢に立ち向かった僕はどこにいってしまったのか、全く弱気な僕に戻ってしまった。




(だけどもう一度、葉月さんに会いたかったな。さっきの僕の姿、見てほしかった……)



そんなことを心に思いつつ、僕は気を失った。


No.12 13/12/08 00:04
小説家0 ( ♀ )








『真田くん?』




ん………

重い瞼まぶたをゆっくりと開ける。




『わ!本当に起きた!』





目の前には………


葉月琴音がいた。






『は、葉月さん、なんで!?僕は、熊と戦ってて、なのに、え!?』





パニックになる。


(ここは、どこ?)



フカフカのベッドの上で上半身を起こした。葉月さんはベッドの隣で立っている。






『ふふふっ』




葉月さんが笑う。






『夢でも見てたの?』






(…………夢?)




僕は呆然ぼうぜんとした。
夢のはずがない。




『夢なんかじゃない!!葉月さん信じ………あれ………なんで葉月さん私服なの?』






僕の知ってる葉月さんはいつだって制服だったから、違和感を感じた。



『なんでも。ちょっと待ってて♪』







僕は自分の姿を見る。





(あれ…僕、体操着じゃない…
制服でもない…なにこれ…)



知らない服を着ていた。




キョロキョロすると、すごく広い部屋…シャンデリアなんかもある。
このベッドだって、清潔で、触り心地がいい。それに、この甘い香り…



この香りを嗅ぐのは初めてじゃなかった。





(葉月さんのニオイだ…)






そのとき葉月さんが戻ってきた。







『用意できたから、いこっか。』





葉月さんが僕に華奢な手をさしだす。






『ど…どこへ? ねえ、この服、何?僕の服じゃないよ?』






『気に入った?私が選んだの。真田くんならどれが似合うかな〜ってすっごく迷って選んだんだよ♪今日は大事な日だからね♪』






訳が分からない。
僕は訳が分からないまま葉月さんの手を取って、ベッドから降りた。






葉月さんと手を握ったまま、歩きだす。葉月さんの手の温もりは本物だった。

No.13 13/12/08 00:05
小説家0 ( ♀ )

怪しげなドアの前で止まった。
繋がれていた手が自然と離された。






『じゃあ…入って。』




僕は恐る恐るドアノブに手をかける。







(この先に、いったい何が…?)




ギィ



暗い。





『足、気をつけてね。』


ドキッ


優しく僕の腰を支えてくれる。





(階段?)




暗い部屋に、広さを感じる。
階段を数段降りると、また階段があった。

今度は上がる階段だ。






『一番上まで上がって。』



僕の耳元に葉月さんの澄んだ声が響く。



ドキドキッ





僕は葉月さんの言う通り突き当たりまで階段を上がった。





『じゃあ、右に曲がって、ストップっていうまで歩いて。』





まるで僕は操り人形だ。
言葉のままに従う。







『ストップ。』



止まる。



『じゃあ、そこの椅子、座って。』



座る。



『あとはこれ掛けてね。』



葉月さんから渡された不気味なメガネを掛けた。


暗い。真っ暗だ。


(これから何が始まるっていうんだ?)



すると…









No.14 13/12/08 00:05
小説家0 ( ♀ )

ザアァァァァァァァ
ザアァァァァァァァ


聞き覚えのある音。
寂しくもあり、どこか不安な気持ちになる音。


ザアァァァァァァァ
ザアァァァァァァァ



目の前に光がさす。


………!?




僕だ。僕がいる。
上下ジャージに身をまとい、目を閉じて砂浜の上に仰向けになっている僕だ。









これは…スクリーン?



僕がアップで映る。目を覚ますなり、体を飛び起こし、辺りをキョロキョロする僕。



それを見る今の僕は瞬まばたきも出来ないほど唖然と固まっていた。



映像は景色に移り変わる。それは、僕があのとき見たまんまの景色だった。



しばらくして、砂浜に目が移る。


それから、再び僕が全身に映し出される。ジャージを脱ぎ腰に巻き、Tシャツ短パンの姿になる僕。とても眩しそうな顔をしている。




それから場面は変わり、視界が転ぶ。

僕の血が映る。僕が痛がる顔が映る。


『葉月さん……葉月さん!

はづ……う…うぅ…』



僕の蚊がなくような声。
地面の角度から僕の涙でいっぱいの顔が映る。





ダラランッ


心臓に悪いBGMと同時に蛇が映る。あの時見た蛇そのものだ。




それから、5分以上、僕がただ左足をかばいながら裸足で足場の悪い道と呼べぬ道をひたすら息を見出しながら歩く映像が続く。






(これ…なんなの……なんで僕が映ってんの……)





パニックだ。





僕は恐る恐る隣に座る葉月さんをチラッと覗いた。

葉月さんは僕の視線を気にすることなく目の前のスクリーンに釘付けになっているようだった。僕はその真剣な目に話かけられず、スクリーンに視線を戻す。





長く続くシーンのあと、僕の希望に満ちた顔がアップで映る。




湖が映る。透き通った色の水が映る。僕が映る。僕が水を飲む。





『い…生き返ったァァ』





部屋中に僕の声が響く。

その声と同時に明るい音楽が流れる。




♪ぼーくらはみんなーいーきているーいきーているからうたうんだー♪



子供の声で歌われるこの曲が、意外にも画面から伝わる雰囲気によく合っている。





その音楽は、僕の不気味な笑い声で
急に止まる。




『はは…あはははは。あはははははははは』



湖の手前に寝っ転がる僕が映る。




ダラララララン

またも心臓に悪いBGMがかかったと思うと、僕が飛び起きて見覚えのある洞穴に入る映像へ。

No.15 13/12/08 00:06
小説家0 ( ♀ )

それから洞穴から出た僕の顔をアップの映像。僕は死んだ魚のような目をしている。


僕は、自分の顔をじっくり見ることをしばらくしていなかったが、こんなに目が死んでいるとは知らなかった。




絶望を思わせる音楽が鳴り続ける。






意味も分からないままスクリーンを見続けていると…

だんだんスクリーンが暗くなる。






(終わったのか?)





そう思ったとき、


グォーギュギュルー


不気味なBGMが流れる。




『変わりたい…もっと…知りたい…僕が知らない幸せを…仲間を…つくりたい…葉月さんとだって…クラスが替わったって…友達…としてでもいい…もっと…もっと………生きたい!!!!!』


僕があの時確かに叫んだ言葉が、大音量で響く。


『ぐすっ』

そのとき真横から、泣き声がした。




(葉月さん…?泣いてるの…?)




僕は葉月さんが気になりながらも目の前の映像から目を離せない。





なぜなら、いきなり熊が映ったからだ。


ヴヴヴヴヴ




その声に鳥肌がたつ。

僕の恐怖が蘇る。


画面に、両手に枝をかまえる僕と熊が睨みつけ合う姿がかなり遠くから映される。


するとそのとき、隣にいる葉月さんが僕の腕をギュッとしてきた。




僕はドキドキが止まらない。


それは今腕の触覚からだけではなく、視覚からくるものもかなりあるだろう。



熊が立体的に浮かび上がった。



目を離そうにもあまりの迫力に目をそらせない。

あのときと同じ感覚。
目をそらせば殺される。
その感覚だ。


バッ


ギャウッ


『突きっ突きっ突きっ』


タタタタタタ


僕が逃げる。
木々の間に身を隠す僕。

スクリーンでは丸見えだった。


僕が倒れる。


(そうだ…僕はここで体力が尽きて気を失ったんだ…)


たった今、鮮明に思い出した。


映像は続く。3分以上、倒れた僕の姿が映る。

すると………


画面の右の方から、人影が映った。
顔は分からない。

遠くからとられていた画面はどんどんアップになっていく。



(あの長い髪…華奢な体型…もしかして…)



ついにその人影がはっきりとアップまで映る。


それは、今僕の隣に座っている葉月琴音はづきことねだったのだ!




僕は目を疑う。



(あの島に、葉月さんがいたというのか?)


僕はスクリーンを見続ける。

スクリーンの中の僕は目を閉じたままだ。

スクリーンの中の葉月さんが、僕のことを、屋上でしてくれたようにギューっと抱き締めた。

さっきまで流れていたアクションチックな音楽とは裏腹に、ロマンチックな音楽が流れ出す。


葉月さんが、目を閉じたままの僕の顔を片手で支え、倒れた僕の上半身を起こした。



(え……これって…まさか……)

No.16 13/12/08 00:07
小説家0 ( ♀ )


(え……これって…まさか……)




チュ




僕はスクリーンに身を乗り出して目撃した。


(葉月さんが、僕にキスを…………!?ウ…ソ………)


僕は自分の唇を押さえて呆然とした。

それから画面はまたも暗くなり、音楽が変わる。


スクリーンの右下には、endの文字がある。

ーーーーーーーーーーーーーーーー

主演


真田翔太さなだしょうた


葉月琴音はづきことね



音楽BGM


僕らはみんな生きている

ロマンチックラブリンス
…………………………
…………………………
…………………………


撮影協力

赤倉高等学校(ジャージ•体操着)

撮影

……………………

……………………

……………………

……………………


映画監督
坂倉宏

『起きたら無人島でした。完…』




ーーーーーーーーーーーーーーーー



部屋がだんだん明るくなった。




それと同時に、葉月さんと二人きりだと思っていた部屋から、盛大な拍手が鳴り響く。



パチパチパチパチパチパチパチパチ


隣にいる葉月さんも顔を赤くしながら拍手している。


そこは、まさに映画館であった。
映画館に小学生以来行ったことがない僕は、この映画館が大きいのか小さいのかも分からないが、とにかくスクリーンが、いつも見ていたテレビの何倍の大きさもあることだけは分かる。




僕の前に並ぶ席から、何人かの人々立ち上がった。みんなが僕に視線を集めている。僕はメガネをとり、よくその人達の顔を見た。みんな偉そうな人達ばかりだ。



それから僕は驚愕する。


(父さん!?)





『映画?意味わからないよ…


ほんとにこれ…なにこれ…


なんなの?…なんで?え?』


僕は全てへの驚きと混乱でいっぱいだった。





『ごめんね、驚かせちゃって。』





葉月さんが僕の髪を撫でて言う。




『ちゃんと全部話すね、今から。』



僕は意味もわからず涙を流した。


No.17 13/12/08 00:08
小説家0 ( ♀ )

起きたら無人島でした。
え…?
しおりを挿む
司会者のような人が言う。



『それでは試写会にご参加の皆さんは、隣の部屋に移動して下さい。』



(し…試写会?!)



気になる父さんは、下の方から隣の部屋に移動しているようだった。




(なんで父さんが?)



僕も隣の部屋に急ぐ。



移った部屋は、イスも何もない、ただの部屋だった。観客がゾロゾロと移動するため、父さんがどこにいるかわからなかった。


『それではここで、主演の真田翔太くんにもう一度盛大な拍手をお願いします。』


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(この人たちは誰なんだ…?)




『監督から一言挨拶をお願いします。』





観客のうちの一人の60歳くらいの金持ちそうなおじいさんがマイクを渡される。




『えー、どうもどうも、本日は、ワシ、坂倉宏さかくらひろしが監督いたしました、「起きたら無人島でした。」の試写会にご参加いただいてありがとうございます。』





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(坂倉宏!?坂倉宏って、あの大ヒット作品をつくったあの天才映画監督?!)




それから坂倉宏と名乗るおじいさんは、僕の肝を抜かしたような顔を見た。



『はっはっは、すまんすまん、そんな素っ頓狂な顔になるのも仕方ないことじゃ。』




みんなが一斉に僕を見る。






(嫌だ…恥ずかしい…今までこんな大人数に顔をじっと見られたことないよ…)




『可哀想じゃから、そろそろ趣しゅっ旨しを話すかね、琴音。』




葉月さんが小さくうなづいた。





『あのね、真田くん。

よーく聞いて。


…………私が真田くんを、この映画に推薦したの。』







(えぇ!?)






『実は私、たまたま知ったの。


坂倉宏監督が、朝起きたら突然無人島にいるって話で、〝生きる〟をテーマにした映画をつくってるってこと。



そして、主役になる高校生くらいの男の子を探してるってこと。




一学年最後の日、あんまり話したことのない真田くんが、一人で立ち入り禁止の階段を登ってるのを見かけて、すごく嫌な予感がした。


その予感はやっぱり当たってた。


真田くんが、そのまま飛び降りようとしてるって分かって、何が何でも止めなきゃーって。』



『…うん…それで?…』


No.18 13/12/08 00:09
小説家0 ( ♀ )


『そのときはもちろん、真田くんを助けることだけで必死だった。…だけど、しばらくして落ちついてから、坂倉監督の話思い出したの。』




『………うん。』






『私、絶対真田くんなら、坂倉監督からオッケーがでるって、なんでだかわかんないけど、直感したの。』






『………うん。』




『それで、私がたまに使ってる、強力な眠り薬を紅茶に混ぜた…。真田くんを眠らせて、ケータイで調べてすぐに坂倉監督の事務所に連絡したの。』






『……最初からそのつもりで、葉月さんは僕を家に入れたんだね。』






『…ごめんなさい。でも、私は、もし真田くんが映画に出れれば、きっと坂倉監督の作品で、何か真田くんにとって、生きるヒントが得られるような気がしたの。』




『…………』





『怒るよね…。本当にごめんなさい。本当だったら真田くんだけじゃなくて、ご両親にも、ちゃんと話してからしなきゃいけなかった。本当に勝手だけど、すぐに事務所に電話しちゃったの。』





『あれにはワシも驚きましたわ。いきなりワシと直接話したいゆうてはる高校二年生の女の子がいてはる聞いて、電話出てみたら、今眠らせとるからその男の子に今からどうしてもあって欲しいゆうてる。おまけに絶対後悔だけはさせませんゆうてはるし、おもろいから、こいつは一発かけてみよ思てなあ。』







『そうなんです。』







『よう話は聞けへんかったけど、自殺しよう計らった真田翔太っちゅう高校生ってのは分かってな。そのときピンと来たんや、ほんならその死にたい男の子、ワシの映画で変えちゃるってなぁ。』






『………。』





『どんな実力も実績もある役者でもワシの思うような演技できんかった。そいなら、なんも知らん男の子のほんまの反応をそんまま映画にしちゃったら、どないなるかって思ったんや。なんの脚色ものう、そんままの反応を。』





『普通無理だもんね、そんなこと。』






『せや。現実問題ほっぽって、急いで連絡先聞いて、実際会ってみたら、お前さんはスヤスヤ眠っとった。』





『すっごく気持ち良さそうに寝てたよ。』






(僕が寝てる間そんなことが起こってたなんて…)






No.19 13/12/08 00:10
小説家0 ( ♀ )

『一目見たかんじ、どこにでもいそうな子やった。だがな、ワシはそのどこにでもいそうな子を探しとったんや。その子が自殺するような心に重いもんせおっちょる子ぉやなんて到底思えんような寝顔やった。その寝顔見てな、やるだけやってみよ思たんじゃ。』







『!やるだけやるって、、、そんな無茶苦茶な依頼、僕の父さんは許したの!?』





僕は観客の中に父さんがいることを知っていたから、父さんの名をだした。





『翔太。』




父さんが姿を見せる。





『父さんはずっと、あの日からずっと、翔太に申し訳なく生きてきた。忘れるわけないさ…母さんをぶったあの日。俺はあの日、酒に飲まれて、仁美ひとみの誕生日忘れて遅くに帰ったよな…翔太と仁美がご馳走並べて 俺の帰りを待ってくれてたのに、帰るなり酔いつぶれてた俺は仁美をぶった。仁美が家を出るのも無理ないよな…。俺は仁美におめでとうの一言も言ってやれなかったんだから。それから仁美に対しても、翔太に心の傷を負わせたのも、ずっとずっと、申し訳なく思って生きてきた。』






『だったらなんで了承したんだよ?』






『坂倉監督から直接会って話を聞いてな、翔太が学校の屋上飛び降りようとしたことも聞いた。「翔太の心を明るくする」って言われて、俺は決心して、よろしくお願いしますと頼んだんだ。』






『!僕は、僕は本当に殺されそうになったんだぞ!熊に!』





『絶対に命の危険はないと約束してくれたんだ。』





『そんなの…うそだよ…』





『あの島に危険な生物は潜んでおらんよ。』


No.20 13/12/08 00:11
小説家0 ( ♀ )

『…はぁ?熊も……蛇だって僕は見たぞ!』





『あれは最新技術じゃ。』





『!?』




『この映画には最新技術を駆使しておる。熊や蛇の実物に負けない迫力は技術さんの力作や。それどころやない。あの島自体、作りもんや。さすがに海は本物やけどな。もともとなんもない孤島が海の中に浮かんでたんや。そこを撮影地にしよ最初に思いついたんは、今から一年以上前やったなあ。ワシの撮影地にばっちりな安全な無人島をつくったんじゃ。』



『!?あんぜんなむじんとう?!』





(僕が感じた身の危険は、つくりものに対しての恐怖だったということか?)





『しかし、熊の中の人はヒヤヒヤしただろうのぉ。怖がる顔を撮りとお思うて熊役の人に威嚇するよお頼んだら、翔太は枝ちぎって本気で立ち向うからなあ。』





会場に笑いが起きる。






『いや〜。僕がその熊やったんですけど〜本当に死ぬかと思いましたよ。参りました。』





観客の中の一人が手をあげながらそう言った。観客は全員この映画の関係者ということか。





『あれは翔太が小学校のとき習ってた剣道の技です。本当ご迷惑おかけして…まさかこんなところで活かされるとはね。はっはっは』

父さんが笑う。








(ふざけるな。ふざけるな!!僕がどんな思いで熊と戦ったと思って笑ってるんだ!)




『そいからお前さんにはカメラ機能のついた最新のコンタクトレンズを装着したんや。映画の中で、お前さんの見覚えあるカットが何枚かあったやろ?あれはお前さんの目線そんまんま伝えたかったんや。そいから、島の中に何台か隠しカメラ置いとうた。ちなみに、洞穴も見つけやすいとこにあったじゃろ?』





(感じた視線は隠しカメラだったんだ…)





『長い撮影になると踏んどったから、ほんまはおいしいパイナップルの木ィなんかも用意しとったんやけどな…無人島にいるのにあんなに呑気のんきにして食いもん探すそぶりもせーへんから、ある意味これもおもろい思たで。なかなか見応えあったわ。火も起こさん、真っ暗でなんも映らん、ヒヤヒヤしたわ。
けんど暗闇の中のあのセリフ、いただいたで!ワシはあの言葉でお前さんを映画の主演にしよて決定したんや。書いてた台本も捨てたぐらい本気の決定や。

しかしほんま、変に抵抗せんで運命やて受け入れるお前さん、なかなか肝座とるうて見直したで。』




(…いや、動かなかったのは、ただたんに生きる意志が湧かなかったからで…)




『それとも、一日目はそこまで生きる気せぇへんかったのかな?』





(う…見透かされてる…)




No.21 13/12/08 00:12
小説家0 ( ♀ )


『とにかくお疲れさまや。撮影自体がまさかたった二日で終わると思わんかったなあ。まさか二日であんなにいい映像とれる思てへんかったし、たった二日で倒れはるほど体力ないんやなあ最近の高校生男子は。せめて一週間見積もってたわ。いきなりクライマックスとはなぁ。』





(クライマックス…。!そうだ、最後に葉月さんが僕に、キ…キスを!)





『顔真っ赤しようて、かわいいもんよのお。ワシの初恋思い出すわ。ワシに依頼してきた琴音のことをあんなに大事に思てたとはなあ、その情報は入っとらんかったから、これは恋愛要素を入れてみてもええなあって思ったんや。そいで、どんな形で琴音を出演させようか迷っとったらなあ、お前さん、いきなり熊と戦いはって、それから気ぃ失いはるから。主人公が起きないんとなんもできひん。焦っとったら、琴音が「行かせてください」ゆうて、影で一緒に見とったワシが行かせたんや。』





(それで、葉月さんが映ってたんだ……くそぉ、気を失ってたから、全く覚えてねぇ!もったいなことを…)






『真田くん、いきなりあんな映像見てびっくりだよね ///// 本当ごめん。』





( /////// ごめんって…いや、全然嬉しい、むしろもっとしてほしいくらいだったけど………だけど葉月さんは………)



『なんで、あんなこと、したの?葉月さんは、僕なんかじゃなくて、一之瀬いちのせが好きなんでしょ?』



葉月さんは意外な顔をした。
困ったような顔だ。



『真田くんが熊と戦ってたあのとき、すっごくかっこよくて…。私が屋上で見た真田くんとは別人に見えた…。気づいたら、私から監督に出演を願い出てて…。勝手に体が動いてた。』





(…!今、僕をかっこいいって言ってくれた!?)



『お前さんには多大に迷惑をかけたな。すまん。混乱せんで落ち着いてよお聞いちょくれ。お前さんが無人島で目を覚ましたのは、4月16日じゃ。4月17日の朝に意識を失った。それで今日は、8月17日じゃ。最新の眠り薬と目覚め薬でちょいとお前さんの睡眠をコントローさせてもろたで。』





『えええ!?つい3日前、一学年最後の日だったはずでしょ!?それなら今日は、3月17日じゃないんですか!?』





僕はあまりの時間の流れに驚く。





『学校は!?学校側は許したのかよ!?』





『屋上から飛び降りんとしたことは伏せといたから心配せんでええ。君が、映画の撮影でしばらく学校を休むと言ったら許可してくれたんじゃ。もちろん公欠扱いでな。』





(そんな…。この人はどんだけ権力が強いんだ…。学校側もまるめこんでしまうなんて…。それに、海の孤島を安全な撮影地に変えるなんて…どれだけの費用をかけて作られた島だったんだ…信じられない…。)

No.22 13/12/08 00:13
小説家0 ( ♀ )

『でもなんで4ヶ月も僕を眠らせたままにする必要があったんですか!』





『琴音の希望じゃ。』





坂倉監督が葉月さんを見て言った。





『葉月さんが…なんで…?』






『私、真田くんを起こすときは、絶対この映画が完成してからって決めてたの。それで、内緒のまま一緒に試写会に出ようって。私も完成した作品は今日初めて見た。』






『まだ完成じゃあないんじゃが。翔太が良ければ、これから翔太の心の声を入れたり、映画パンフレットのインタビュウも、やることはまだまだたくさんあるんじゃ。一般初公開は、1ヶ月後を予定しちょる。


全て翔太が許可してくれんといかん。』






『それに、真田くんを四ヶ月も眠らせておいた理由は、もう一つあるの。』






沈黙が流れる。















No.23 13/12/08 00:14
小説家0 ( ♀ )




『真田くんのお父さんと………お母さん、前へ出てきてください。』



(!!)





僕は幻覚じゃないかと目をこする。

こすってもこすっても消えない。


僕の目の前には、僕が3年ぶりに見る母さんがいたのだ。



『翔太…ずっと帰ってこれなくてごめんね…淋しい想いさせてごめんね…』





会場に拍手が巻き起こる。





『実は映画の完成を待ってる4ヶ月間、真田くんのお父さんと一緒に、真田くんのお母さんの居場所を探したの。真田くんの頑張ってる姿を、どうしても真田くんのお母さんに見てほしくて。』







葉月さん…父さん…






『実家にはもちろん、どこでなにをしてるかも分からなかった。手当たり次第聞きこんで、やっと見つけたの。真田くんのお母さんの友達の妹さんの友達の家で元気にしてた。』




(そんなところにいたのか母さん…)




『ごめんな翔太…父さん、もっと早く母さんの居場所を探すべきだったよな。』




『どうしても発表を、今日に合わせてもらうように頼んだの。今日が、真田くんのお母さんの誕生日、8月17日だよね。』





そう、3年前の8月17日に母さんは出ていったんだ。







『ありがとう…ありがとう…葉月さん…父さん…監督…。母さんも、来てくれてありがとう…』





僕は泣いた。
母さんも泣いている。
父さんも泣いている。
喜びの涙だ。







『翔太…』

『母さん…おかえり…』

『ただいま…』




会場に今日一番の拍手が巻き起こる。




母さんは僕を静かに抱きしめると、父さんもそれに加わり、三人で泣きながら体を寄せ合った。





パチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチ


拍手がやまない。

僕たちはしばらくずっとそのままでいた。








No.24 13/12/08 00:15
小説家0 ( ♀ )

それからほとんど喋る隙のなかった司会者と、一般観客と思っていた金持ちそうな映画関係者の人々が、一言ずつ僕たちに挨拶して帰っていった。



残ったのは、僕と葉月さんと監督と父さんと…そして母さんだけになった。





『じゃあ翔太、この映画の上映を本当に認めてくれるんじゃな?』




『はい、もちろんです!』



『そいつはよかった。ここで主役の翔太が認めん言い張ったら、全部ボツじゃからな。』



監督は満足気な顔をした。




『翔太が無人島で感じた心の中を詳しくワシにさらけだしてくれ。翔太の心の声を映画に付け足す作業がまだ残っちょる。まあ今日は色々疲れちょるだろうから、また後日な。』



『はい!!!』




『人間は不思議じゃな。

何年もじーっと変わらんくても、生きるか死ぬかにちゃぁんと向き合ったときにゃ、本気で自分と向き合えるんじゃな。

変えんとすれば変わらんし、変わるて思えば変わるんじゃ。

ワシは翔太におもろいこと教えてもろたわ。』






『僕を変えてくれて、ありがとうございました!!』





『なぁに、礼をいうのはワシの方じゃ。ワシは島を一つ用意しただけじゃ。台本も脚本ものうて、ここまでええもんになったんは、お前さんが変わる決心みせてくれたからじゃ。』






『僕はこれから、もっともっと一生懸命に生きていきます!!』





僕は深い深いお辞儀をして監督を見送った。





『よぉし!今から仁美の誕生日会だ!』






父さんがはりきる。






『ちょっとあなた…翔太、私たちは先に帰ってるから、ちょっとしたら帰って来なさいね。今日の夜は、おいしいご馳走揃えて待ってるわ♪』




『おい仁美なんでだ?みんなで一緒に帰らないのか?』





『琴音ちゃん、本当にありがとうね。』







母さんが葉月さんに深々とお辞儀をした。



No.25 13/12/08 00:16
小説家0 ( ♀ )





『いえ、私は何も…』


『じゃ、翔太をよろしくね♪』


『え、あ、はい!!/////』




母さんが父さんをほとんど強制的に連れて部屋を出る。こんな2人を見るのは何日ぶりだろうか。本当に幸せな気持ちで眺めていた。






『さ…真田くんも行かなくていいの?』



『え…ああ…もう少しここにいようかな…』



(母さん…もしかして僕に気を遣って…)




あんなに大勢いた部屋が、あっという間に僕と葉月さんの2人きりになる。


何もない部屋で、あまりの静けさに緊張して、居ても立っても居られなくなる。何もないから自然と見つめあってしまう。


葉月さんが口を開いた。






『……あ……部屋戻ろっか…。』


『あ……うん。』





それから何もない部屋をでて、映画館に戻る。



薄暗い映画館で気になっていたことを聞いた。




『葉月さん…ところでここは、どこなの?ベッドもあったし、普通の映画館じゃないよね?』




僕は心のどこかで、もうあの監督と別れればこれ以上驚くことはないと安心していたが、その予想がすぐに破かれる答えが返ってきた。






『私の家だよ。』





『え…えええ!?』






葉月さんの家は、お世辞にもこんな豪邸であったとは言えないはずだった。僕が葉月さんの家におじゃましたとき、映画館どころかテレビさえ無かったのだから。





『驚いた?私もびっくり。まさか坂倉監督が、私の家まで改築してくれるなんて、思っても見なかった。』




(改築!?…いや、あの監督ならやりそうだ。)




『本当びっくり。私は何もしてないのに。私はただ、真田くんを紹介しただけなのに、監督が私にもプレゼントがしたいって。』





『本当すごい人なんだね…あの監督…。』


No.26 13/12/08 00:17
小説家0 ( ♀ )


『ふふっ。だけど監督、真田くんにずーっとベタ惚れだったよ。私がやいちゃうくらい真田くんのこといっぱい褒めてた。』



『そう……なんだ。』




思い違いだろうか、なんだか今、すごく嬉しいことを言われた気がする。





『真田くん……こんなのずるいかもしれないけど、あの日に言ってくれたこと…もう一回聞きたい。』






(……え!?)







『もう一回、聞きたい。』





僕は、〝あの日〟に言った〝あの言葉〟をはっきり覚えていた。

でも本当に、葉月さんが求めている言葉と、僕が覚えている言葉が、同じものなのか自信がない。






『早く………。/////』







(ええい!間違ってたらごめん葉月さん!)







僕は重い口を開いた。







『葉月さん!僕…僕はずーっと、君のことが好きだったんだ!』








天井が高いからか、僕の声が響いた。








『……私も真田くんが好きです。』




葉月さんの声が響いた。







僕はついに頭がいかれてしまったのだろうか、冷静に考えて、葉月さんが僕を好きなはずがない。
聞き間違いだろう。






『今、なんて?』






『………!///// 一回しか言わないよ!』






『え………』



僕が石のように固まっていると、葉月さんが、もう一度口を開いた。




『だからぁ……私は、真田翔太くんのことが、好きです。』






区切って、ゆっくりと、はっきりと、聞こえてくる葉月さんの声。





『う…そ……ほ……………ほんとうに?』






僕はそれよりもゆっくりと聞き返す。




『本当だよ。』







それから葉月さんは、僕に優しくキスをした。






No.27 13/12/08 00:18
小説家0 ( ♀ )


『いや〜初々しいのぉ〜。』



(!!!この声は!!!)



僕たちは密着していた体を咄嗟に離す。





『か…監督!?』




僕と葉月さんは声を合わせて言った。



『おぉすまんすまん。若い2人の初々しい告白シーン、ばっちりカメラに収めさせてもろたで。』




『ーーー!』





『ちょっと!坂倉監督!まだ居たんですか!?』




葉月さんが顔を赤くしながら怒っている。





『ワシからの翔太へのお礼じゃ。映画館で告白とは、映画監督も泣いて喜ぶわい。』




『…ま…まさか坂倉監督、あの映画に入いれるつもりで隠し撮りしたんですか!?』


僕は焦って質問する。



『はっはっは。そうしたいとこじゃが、これはあくまでもささいなプレゼントじゃ。琴音と翔太がそうしたいと望んじょるなら考えてもいいがのぉ。』






『結構です!』


2人で声を合わせた。






『息ぴったりじゃな♪ キッスの続きをどうぞ。ワシはお邪魔虫じゃな♪ ワシは行きます。さらばじゃ。』




坂倉監督がいたずらをする子供のように見える。映画監督にはこういう子供心が必要なのだろうか。






去り際に言い残した。




『一週間後には翔太の家に届けるから楽しみに待っちょっけぇ♪もちろんこの映画館でリピート再生してもええがな♥︎』




『ーーーっ!!』



僕らはしばらく言葉を失った。






『真田くんへのビックプレゼントって…このことだったの…何のことかと思ったら…。』



葉月さんが呆あきれたようにため息をつく。



『全くあの監督は天才なのか子供なのか分からないね。』




そう言いつつ僕は、一週間後届くというビデオを密かに楽しみにしていた。




















『じゃあ、僕もそろそろ、帰るね。多分、待ってるから。』



『うん。』



僕はまだ帰りたくないけど、同じ位帰りたかった。




父さんと母さんが僕を待つあたたかい家に、僕は帰る。






No.28 13/12/08 00:20
小説家0 ( ♀ )

〝真田〟








僕の家に明かりがついている。




これが僕の家なんだ。



キィ


僕は勢いよく門を開けて、勢いよくドアを開け、勢いよく叫ぶのだ。







『ただいまぁぁぁぁぁぁー‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎』







このただいまは、3年ぶりの本当のただいまだ。





『おかえりー♪♪♪♪♪』
『おかえりー♪♪♪♪♪』




3年ぶりにおかえりが2つ返ってくる。聞きたくても決して聞こえなかったおかえりと、見たくても決して見られなかった笑顔が僕を迎えてくれた。







幸せを胸いっぱいに感じる。








『翔太、待ったぞぉ♪』



『母さん予告通り、腕ふるったわよ♪』




いつもコンビニの惣菜が虚しく並んでいたはずの白いテーブルに、色とりどりの意匠を凝らしたご馳走が一面に広がっている。



誕生日ケーキや様々な具材の入ったトルティーヤ、カラフルな野菜のパーティーサラダ。



テーブルが生き返ったように見える。



それは母さんが出て行った3年前の今日と同じ光景だった。




そして3年前の今日とは明らかに違うことがある。







母さんが笑っていること。
父さんも一緒にいること。






僕は当たり前でない幸せを実感した。




にぎやかなテーブルを前にして座り、合唱する。




『ハッピバースデートゥーユー
ハッピバースデートゥーユー
ハッピバースデーィディーアかーさーん•ひーとみーハッピバースデーィトゥーユー♪♪♪イェーイ♪♪♪』








『よし、3人で消そう♪せーのっ』

『ふぅーっ』
『ふぅーっ』
『ふぅーっ』



(夢じゃないんだよね。映画じゃないんだよね。現実で日常なんだよね。)


僕はたまらない幸せを何度も何度も噛み締めながら食事した。







No.29 13/12/08 00:20
小説家0 ( ♀ )


『仁美、プレゼントがある。』





父さんが何やらケースを取り出してテーブルに出して開ける。中にはキラキラと美しい光を放つ指輪が入っていた。結婚指輪だ。




『俺は一生仁美と翔太を愛し、守り続ける。約束する。仁美、指を…』




左手の薬指を出す母さん。




『素敵…ありがとう。嬉しい!』





母さんは乙女のようだった。




結婚18周年で結婚指輪を渡すには訳がある。




母さんは、結婚指輪を川に投げた日の話を、笑いながら得意げに話した。






『風邪ひいたんだぞ?母さんが投げた後、川に入って見つけて来たんだから♪』


父さんがいくら頑張ってもできなかったこと、僕を笑わせること。

僕がいくらお笑い番組を見てもできなかったこと、僕が笑うこと。


それが今できている。

父さんのくだらない冗談がとても面白く思えた。






母さんの指に光る指輪を見て言った。




『母さん、僕からはプレゼントが用意できなくてごめんね。』




『……何言ってんの!翔太が今笑って生きててくれてることが最高のプレゼントよ。今日は本当に幸せな日。今日は私の誕生日なだけじゃないかもね♪8月17日は真田家一家の記念日!最っ高の映画作品を見せてもらったしね♪』



僕は得意な気持ちになる。
余計な一言が足されなければ武勇伝を語り始めていたところだろう。



『琴音ちゃん、大事にね♥︎』




クライマックスのシーンを親に見られたと思うと今更顔が赤くなる。





しかし僕は気付いた。あの映画が公開されるということは、僕が日本中に晒されるということ。そして赤倉高校の生徒にも先生にも保護者にも、全く見ず知らずの人にも見られるということ。さっきはありえない状況だったから承諾することになんの躊躇いもなかったが、今じわじわとそれを現実のものと実感すると、とても恐ろしい話ではないか。
ただ僕が自らの殻を破って勇敢な姿を見せるシーンが公開されることはとても光栄である。






No.30 13/12/08 00:21
小説家0 ( ♀ )






今日は暑いし暖かい。

幸せな家庭の暖かさにぬくぬくしながらフカフカのベッドに横になる。







(葉月さんは…今何してるかな。)




葉月さんとのさっきの出来事を思い出しにやにやしてしまう。
1週間後が非常に楽しみだ。







『だからぁ……私は、真田翔太くんのことが、好きです。』





ドキッ



まだ葉月さんの唇の感触が残っている。






(ああ………葉月さん…。今どうしてるかな…。もう寝たかな。あの家にいるんだよな。電話してみたりしても、いいかな…。……葉月さんの声が聞きたい…………。)


僕は登録された葉月さんの電話番号が表示された画面を出して、ケータイを握りしめる。




ドキ ドキ ドキ ドキ




ドキ ドキ ドキ ドキ




ドキ ドキ ドキ ドキ




ドキ ドキ ドキ ドキ




ドキ ドキ ドキ ドキ




ドキ ドキ ドキ ドキ





ピロロロロロロローン♪




『わっ!?』




メールの着信音に驚いて声を上げる。




(は、葉月さん!?)





思い立ってメールを開く。







ーーーーーーーーーーーーーーーー
差出人:葉月さん




今日は本当にありがとう。

お母さんに会えたときの真田くん、すごく幸せそうで、私も嬉しかった。

今日は真田くんにとったらすごく腹が立つこともあったよね。ごめんね。

もう嫌われちゃったかもしれないってすごく不安だったから、好きって言ってくれたとき、すごく嬉しかった。好きでいてくれてありがとう。

これからもよろしくね。

おやすみ!
ーーーーーーーーーーーーーーーー






ビョーンビョーン






僕はベッドで飛び跳ねた。





僕はケータイを握り締めながら深い眠りについた。











No.31 13/12/08 00:22
小説家0 ( ♀ )





ミーンミーンミーンミーンミーン






騒がしい蝉の声で目が覚める。









(ああ…起きても無人島じゃない…ああ…幸せ…)






僕は昨日の幸せが持続したままリビングへ向かう。



「母さん、ネクタイ。」
「はいはい。」




(あ……母さんがいる……本当に、夢じゃないんだ…。)



『じゃあ行ってくる♪』


父さんが嬉しそうに会社へ向かう。


『行ってらっしゃーい♪』


母さんと僕はそんな父さんの姿が見えなくなるまで見届けた。


父さんに夏休みは関係ない。
今日も仕事なのだ。





遠くで手を振る父さん。
振りかえす僕と母さん。






昨日までの僕にとっての苦しみは、家族がバラバラなことだった。









今は家族3人の仲が昔に増して深まり、とてもあたたかい家庭だ。





坂上監督と葉月さんのおかげで僕ら真田家に幸せな日常が戻ったのだ。




ピロロロロロロローン♪



その日の深夜1時、着信音に目覚めた。1通のメールが届いている。





ーーーーーーーーーーーーーーーー
差出人:坂倉監督

家のポスト見てみぃ〜

ーーーーーーーーーーーーーーーー





きっと僕がずっと楽しみにしていた例のプレゼントだ。




僕はベッドから飛び起きてそーっとドアを開けて忍び足で廊下を渡り玄関を飛び出してポストを確認した。



ブルーレイディスクだ。



直様リビングに向かいビデオデッキに設置する。リビングの電気はつけない。
その方が雰囲気がでるからだ。









【再生】



ピッ









♥︎翔太と琴音のラブメモリー♥︎




いきなりテレビに表示されたタイトルに僕は慌ててテレビを手で隠した。すぐに今は誰もいないことを思い出し手をどける。



No.32 13/12/08 00:22
小説家0 ( ♀ )

薄暗い映画館の中。
スクリーンが背景にドーンと構える。

左手の方から歩いてくる女の子と、それに続き歩いてくる男の子。

突然足を止める女の子。
それに合わせ足を止める男の子。
向かい合う2人。





ドキドキドキドキドキドキドキドキ




『真田くん………こんなのずるいかもしれないけど、あの日に言ってくれたこと…もう一回聞きたい。





…………もう一回、聞きたい。




…………早く………。










……………葉月さん!僕…僕はずーっと、君のことが好きだったんだ!









……………私も真田くんが好きです。





…………今、なんて?



………一回しか言わないよ!










え………だからぁ……私は、真田翔太くんのことが、好きです。










う…そ……ほ……………ほんとうに?










…………………本当だよ。』








ここでタイタニックの音楽が流れた。






『///////////////////////』





その後続く高画質で流れる映像に釘ずけになる。




僕は目の前の男女が本当に僕と葉月さんだということが信じられなかった。



薄暗い画面がさらに暗くなり、やがて真っ暗になり、映像は終わった。








(…リ、リピートリピート。///)






リピートボタンを押そうとしたそのとき…………………




No.33 13/12/08 00:23
小説家0 ( ♀ )


『どうじゃったか?』




(…………は?)




テレビに目を移すと、そこには坂倉監督がいた。白い部屋でイスに座っている。




『ゴホン 翔太。ワシは翔太にも、翔太をワシに会わせとれた琴音にも感謝しちょる。ありがとうな。ワシからの映画に対しての熱い魂を送ろう思うて挟んだ。まずはな、役者というのはついついその役に成り切るために没頭し過ぎてな、役訳分からんくなることがあるんじゃ。そーゆーときは、その役に成り切るんやなくて、その役と恋人になるんじゃ。自分のことより恋人のことの方がよう見えちょるはずなんじゃ。あとはなぁ、映画というのは………………』



映画語りが始まった。




それから3分待ってみたが、そろそろ限界だ。決して坂倉監督の話が退屈な訳じゃない。たださっきの映像をもう1度見たいのだ。




(ま、まあ坂倉監督の話は後で聞こう…)





巻き戻しボタンを押そうとしたそのとき…………





『とまあ、そろそろ巻き戻しボタンを押そうとしとる頃かな?』




ギクッ





『そろそろワシは、去ります。じゃっ』







坂倉監督はイスを立って画面の外へ消えた。その代わりに、別の人物が現れた。










(は、は、は、はづ…葉月さん!?)








目の前には、葉月さんがいた。
いつもに増して可愛い。化粧をしているように見える。












『あ…真田くん………。えーっと……どうしようかな………』









『琴音のハートをぶつけるんじゃ♪言わんと分からんこともある♪』










『あ…私、これからもっともっと真田くんのこと知っていきたい。


……だから私のことも知ってほしい。


学校が始まっても、クラス違うけど…真田くんの隣にいたい。


………終わります。/////』









映像はこれで完全に終わった。
















僕は全力をかけて葉月さんを大事にすると決めた。

No.34 13/12/08 00:24
小説家0 ( ♀ )


それから残りの夏休み、DVDを借りて葉月さんの家の映画館で鑑賞したり、坂倉監督と僕らでパンフレット用のインタビューをしたり、映画の僕に心の声をアフレコしたりした。





映画公開日まではキャストばれはしたくないと坂倉監督から言われた。理事長しか真田くんが休学した本当の理由を知らないから、先生も生徒もまさか僕が主演したとは思わないだろうが、休学してた僕とほとんど話したことなかった葉月さんが親しくしているのを見て感づく人も中にはいるかもしれないことと、葉月さんが僕と親しくなった理由をみんなに問い詰められたらボロが出そうで怖いと言ったことにより、


僕らは公なデートは映画公開後まで我慢することになる。







No.35 13/12/08 00:25
小説家0 ( ♀ )



9月1日。







ガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤ


「今日から〝真田〟が復活するらしいぜ」


「まじ?伝説の〝真田〟?」



「影薄過ぎて元1年M組だったらしいけど誰も覚えてはいっていうあの〝真田〟?」







新しいクラス、J組の中で僕は〝誰も知らない伝説の真田〟だった。








ガラガラガラガラ



「ホームルームやるぞー。」

「わっ来た!」

「あ〜。顔薄!こりゃ忘れられるわ。」

「シッ 聞こえるぞ。」


「真田は今日からこのクラスの仲間入りだ。みんな仲良くするように。真田、自己紹介。」



『初めまして!僕は真田翔太です!趣味は映画鑑賞!映画好きな人がいたらぜひ声かけてください。みんなと仲良くなりたいです!』
(上手く言えた!)



「よろしくぅ〜真田くん♪」


「うわっ 目つけられたな。終わりだな。」


「いいパシリにされるな。」









僕はクラスのリーダーからJ組の〝みんなのパシリ〟に認定された。

僕はパシリにされているという認識は無く、みんなが僕にお願い事をするたび頼られているのだと勘違いし、琴音にたくさん自慢した。琴音はパシリにされていることに気付いていたが、あまりにも楽しそうに電話で話す僕にはどうしても言えなかったらしい。









9月5日



「おいおいおいおい‼︎大ニュース‼︎」



「あんだよ?」


「我らのパシリ真田があの葉月琴音様の豪邸の周辺でほっつき歩いてるとこが目撃された!」


「狙ってんのかよ?」


「馬鹿かお前たち。真田は葉月さんのストーカーに違いねえよ。」


「あっストーカーか!納得!」


「ストーカー!」



『ち、違うよ‼︎‼︎僕は…僕は葉月さんのストーカーなんかじゃない‼︎ ……』
(映画公開まで付き合ってるとは言っちゃダメ…。)



「ふっ確信犯め。キョどり方が半端じゃねえよ。このストーカー野郎。」








僕は学年で〝葉月さんのストーカー野郎〟として認識された。




僕の友達が琴音のストーカーだと勘違いしている、と、電話で琴音と笑いながら話したものだ。


No.36 13/12/08 00:26
小説家0 ( ♀ )



9月15日(公開3日前)




「なぁなぁ。〝起きたら無人島でした。〟見ねえ?」

「あーCMでみた。坂倉宏のやつな。」

「起きたら無人島とか実際面白そうじゃね?」

「俺なら海に飛び込んで有人島に行くぜ♪」

「あたし達も混ざっていー?」

「あれ面白そーだよね♪」

「キャスト誰?」

「キャスト未発表ってか一般の高校生らしいよー!うちの学校だったらどーする?」

「その選ばれし男子高校生とぜひ友達になりたいぜ。運いい奴じゃん。映画に出れちゃうんだぜ?」



(僕だぜ。)






孤独で根暗で友達0だった僕と、クラス、いや、赤倉高等学校の生徒なら誰もの憧れでミューズだった琴音による映画があの有名な坂上監督に手がけられ公開されるとは誰1人思うはずなかっただろう。






9月18日(公開翌日)





「み、み、見たかよ?!」



「み、み、見たよ!!」


「俺、もう何を生きがいに…」


「俺も…」


ガラガラガラガラ


僕が登校するとみんな寄ってたかって僕を囲ったはずだ。


「さ、さ、さ、さなだ!」


「真田だよな!?」


「真田と葉月さんなんだよな?」


「映画!あの映画!!!」


『そうだよ♪僕はストーカー野郎じゃなかったんだ!ずっと前から葉月さんと正式に付き合っている!』


「う……そ…………」


「あのクライマックスのはもちろん合成だよね。」


『ぜーんぶホント♪』


「まぁぁぁぁぁぁじどぅえ!?」
「ぬうぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!」
「な…なんてこった…。」
「やっべーーーーーーーーーーーーーーー」



「真田!俺とチューしてくれ!」


「俺も!間接でもいい!」


「これからテレビとか出れちゃうのか!?俺も真田と友達として出演を願う!」


「あ、サインもらえる?」


「握手してくれ!葉月様と間接握手!」


「琴音姫について教えてくれ!」









No.37 13/12/08 00:26
小説家0 ( ♀ )









そして僕は今〝誰もが知る伝説の真田〟を目指している。














坂倉監督の伝説に残った映画の主人公としてだけではない。
























〝伝説の映画監督真田翔太〟として、いつか必ず歴史に名を残すのだ。







生きる希望をもたらし人生をも変えるような映画を作りたい。








20年後…………………















『カーーーーーーーーット!』









『じゃ、今日の撮影は終了な。』






『お疲れ様でーす!』
『お疲れ様です!』
『お疲れっす!』






ゾロゾロゾロゾロ



『真田監督‼︎…俺の役、台本のセリフ上では優しい言葉ですけど、実際すごい悲しみとか憎しみを抱えてると思うんすよ。どんな感情で明るく言えばいいのか…それにあとで真の悪役って思うようなセリフもあって…俺の役って悪役なんすかね、良役なんすかね。俺考えすぎてわかんなくなっちまうんっす。アドバイスいただきたいっす!!お願いします!!!』



『うむ。そーゆーときはその役と恋人になるんじゃ。自分のことより恋人のことの方がよう見えちょるはずなんじゃ!』



『…………真田監督?』




『あ、気にせんでエエ!』





『…………??』











こうして坂倉監督の魂がたまに乗り移ることは珍しくない。




















琴音と5人の子どもたちが僕を待つあたたかい家に僕は帰る。








No.38 13/12/08 00:28
小説家0 ( ♀ )

一応これで完結です。

坂倉監督の映画によって、生きる希望を取り戻し、あたたかい家族を取り戻し、おまけに恋愛の成就まで果たした真田翔太くん。


熊と全力で戦ったかいがありましたね。

最後の一気な流れは、36歳になった真田翔太が過去を思い出す形でバーっと進みました。


真田くんが休学している間は〝誰も知らない伝説の真田〟というレッテルを貼られていました。



今は葉月琴音と幸せな家庭を築いて坂倉監督の魂を継いだ映画監督、〝誰もが知る伝説の真田翔太〟を目指し日々精進しています。



あったかい気持ちになるような小説を書きたかったから書きました。
ありがとうございました。

No.39 13/12/08 11:39
匿名39 

こんにちは。
一気に読んでしまいました😃
今回はハッピーエンドですね🎵
ほのぼのと出来ました😃
素敵なお話をありがとうございました☺
前回は教えて頂きありがとうございました🙇
次の小説も楽しみにしています😃
主さんの才能が羨ましいです😃

No.40 13/12/08 12:04
小説家0 ( ♀ )

毎回感想いただきありがとうございます。


小説家になろうっていう魔法のあいらんど並みに有名なサイトでポエルというペンネームで小説書いてます。「小説家になろう ポエル」でググってもらえればそこから飛べます。もし時間があったら他作品もいっぱいあるので読んで下さい。(読めば分かるっ★てタイトルの奴を)できたらそちらに感想もらえまら嬉しいです。

本当にありがとうございます✴︎

No.41 13/12/08 12:28
小説家0 ( ♀ )

ちなみに前レスの続きで、どんなのがあるか一言。(読めば分かるっ★てタイトルの中で)

②俺は誰だ?
アノヒトとの恋愛!←イチオシ
笑って下さい。

③俺が恋したのは
一風変わったTSもの。


④怒涛のseven★days
早食い早飲みしたら、アレでますよね。
ソレに関わる話。


⑤私が甘えるのは…
これはオチが見どころ。

⑥俺の自慢の…
これは甘いかな。

⑦夏の希望
あははー、て感じ

No.42 13/12/09 10:38
匿名39 

こんにちは😃
主様が記載されているところを拝見させて頂きました。
デブス…を昨日からずっと読ませて頂いています。
まだ全部読めてはいませんが💦
すごい才能ですね‼
私は想像力が皆無なので尊敬です‼
引き込まれます‼
涙もあり感動しました😢
このお話はまだ続くのですよね?
主様の小説をもっともっと読んでみたいです‼
いつも素敵な小説をありがとうございます‼

No.43 13/12/09 12:22
小説家0 ( ♀ )

>> 42 超嬉しいです。ありがとうございます(o^^o)デブスの逆転勝利も書いているのですが、最近は読めば分かるに猪突猛進しております。書きたいのですがハマるとそればっかりになっちゃうようなサガなので。小説もハマって興味本位に最近書き始めただけですし(^^;;ですがありがとうございます!恐縮ですが、もしよければ小説を読もうのサイトの方にも感想を頂けると嬉しいです。登録無し大丈夫なので…てすいません、調子に乗って。嬉し過ぎます。読者少ないからかなり嬉しい言葉でした。ありがとうございます。


今は包帯男と可愛い彼女の続きを書いていて、明日中(もしくは今日の夜)に読めば分かるの方に投稿するのでぜひそちらもよろしくお願いします。

わー

なんでしょうね。気分が最高です。笑

No.44 13/12/09 13:57
匿名39 

>> 43 ありがとうございます。
図々しくあちらにも感想を書かせて頂きました。
デブス…を読み終えましたら違う小説を読ませて頂きます。とても楽しみです😃
今の私の楽しみは主様の小説を読ませて頂くことです😃

風邪が流行っておりますのでお気をつけくださいね。
では、また今から小説の続きを読ませて頂きます🎵

No.45 13/12/09 15:02
小説家0 ( ♀ )

>> 44 ありがとうございます(^O^)/♥︎
ちなみにデブスの奴は教訓的なイメージで、読めば分かるの方はやや爆発してる部分もありますが、どうかよろしくです(^O^)/★

じぶん的にハロウィンパーティーが一番気に入ってます。だんだんヘンテコな話になってしまってるのですが、どうか飽きずにご覧下さい。よろしくお願いします。

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