SENA ~私の恋物語~
「世奈って一目惚れした事ある?」
「ないない!ありえないよ」
「だよね!いつかしてみたいな~。一目惚れ。
いつも性格知ってから好きになってるパターン」
「みんなそうじゃないの?」
18の夏。
小学生からの親友、奈々が突然口にした "一目惚れ"
一目惚れってどんな感じなのかな。
見た目がドストライクじゃなきゃありえないよね。
生まれて18年、今までそんな人に出会った事がない。
特別理想が高いとは思ってないし、カッコいいって思う人は普通にいる。
けど、タイプではないし「あ、あの人カッコいいな」くらいの感覚で、その人とどうなりたいとかそういう感情を持った事がない。
今までの恋は、お互いがお互いを知って惹かれ合って付き合う。
そんな感じだった。
だから恋愛はそういうものだと思っていた。
13/07/22 03:16 追記
読んでくださっているか分かりませんが…←
この小説は私の実話です。
多少捻ったりしていますが、話のベースは私の18の頃の恋物語です。
長編になりそうですが、よろしくお願いします(^^)★
今日は奈々とショッピングセンターに買い物に来ていた。
「もう~本当金ない。
バイト増やそっかなー」
「え、奈々週4くらいで入ってるじゃん。」
「足りないよ。欲しい物たくさんあるし、学校終わってからだから5時間くらいだもん。」
バイトかあ…
私もしたいんだけどな。
『ねぇお母さん、バイトしたいんだけどさ』
『駄目です!毎月お小遣いあげてるじゃない。
卒業するまで勉強に専念してればいいのよ。』
高校入学後から始めようと思ってたバイト。
お小遣い要らないからバイトしたいと母に告げたけど、帰りが遅くなる事や、勉強が疎かになってしまうんじゃないかと心配する母はバイトをさせてくれなかった。
「あたしこれからバイトだからそろそろ行くね!
また明日学校で♪」
「うん、気を付けてね!」
奈々と別れた後、自宅近くのコンビニに寄った。
まだ新しく出来たばかりで徒歩3分掛からないくらいの場所。
ジュースとお菓子を選びレジに並んだ。
「あれ?明里(あかり)じゃん。」
「世奈!?久しぶり~!」
明里は同じ中学でクラスが同じだったから、中学時代は仲が良かった。
高校は2年で中退。
ずっと疎遠だった明里とコンビニで再会。
これがきっかけの一つ。
「いつから働いてた?
あたし、ここしょっちゅう来てるよ。笑」
「近いもんねー!
まだ1週間だよ!笑」
「そうなんだ。ビックリ…!」
「世奈も来れば?まだ募集してるよ★
今週末も二人面接来るみたいだし楽しいよ。」
「ああ…うん。働きたいんだけどねー。」
コンビニは学生アルバイトも多いから働きやすそうだし、お母さんに駄目元で話してみよっかな。
帰宅後、夕食の支度を手伝いながら話を振ってみた。
「今日さ、家の近くのセブン行ったら明里いたんだけど」
「へぇ~!久しぶりじゃない?」
「うん、ずっと会ってなかったからビックリした。
それでね、明里に募集してるよって言われて、バイトしたいなぁーって…」
「…」
何故か沈黙。
やっぱ駄目かぁ…
「駄目って言ってるでしょ」
あーやっぱり。
「みんな普通にバイトしてるよ?
だからって勉強してないわけじゃないし、あたしだって疎かにするつもりない。
あそこだったら近いし自分のお小遣いは自分で稼ぐ!」
すごい必死になってるあたし。
みんなが羨ましく思えて、一度もアルバイトを経験した事ないあたしはみんなと同じように働いてみたかった。
「ねぇあなた、世奈がすぐそこのコンビニでアルバイトしたいって言うんだけど、何かと心配だしまだいいわよね?」
「アルバイトくらいやらせてやればいいんじゃないか?
社会人になる前にある程度学べる事もあるし、そんな難しく考える事でもないだろ。」
お父さん!
ありがとー!
心で叫んだ。
「えー里奈もバイトしたいなー」
妹も会話に入り込む。
高2の里奈もあたしと同じように反対されていたから、よく二人でバイトしたいよねって話していた。
「とりあえず1ヶ月だけならいいわ。
もしバイト始めた事で何らかの影響が出た場合にはすぐ辞める事。」
「お母さん!ありがとー」
妹も同じ条件で許可を貰う事が出来た。
お父さんのお陰だなー♪
そして、あたしは明里にメールをした。
『バイトしたいんだけど、まだ面接って受けれるかな?』
22時過ぎに返事が来て、店長に話をしてくれたとの事で、明日の夕方面接へ行く事になった。
翌日。
「奈々~!バイト始めるかもー★」
「えっ!ママ許したの!?」
「お父さんが丁度いて、アルバイトくらいやらせてやればって言ってくれたから」
「よかったねー♪
ずっと反対されてたもんね」
「明里働いてた!
今日学校終わったら面接行ってくる♪」
あたしもやっとバイト出来る。
受かればの話だけど。
「へぇ、お前バイトすんの?」
同じクラスの隼人が声を掛けてきた。
「うん、やっとね!コンビニだけど」
「どこの?行こっかな~」
「いや、いいよ来なくて。」
学校生活も普通に満喫してる。
あと1年もしない内に卒業だもんなぁ。
もうすぐ夏休みだし、彼氏欲しい。
前の男と別れて半年。
特に出会いもなく、好きな人も今はいない。
漫画みたいな青春味わいたかったよ。
この学校には……
そんな事出来る人はいない。笑
『面接終わったー(>_<)
めちゃ緊張したし連絡来るまで不安だよ(T-T)』
奈々にメールをした。
『お疲れ様★
採用されるといいね(^^)
今隼人たちといるんだけど世奈来ない?』
奈々に誘われ、みんながいるファミレスに合流した。
「「お疲れ~」」
隼人、直樹、奈々、優香がいた。
みんな同じクラスのメンバー。
直樹と優香は高2の春から付き合っている。
「今日みんなバイト休みなの?」
そう言いながら奈々の隣に座った。
「あたし辞めたー!笑」
優香は飲食店でバイトしていて、先週辞めたらしい。
「ねぇー、夏休みみんなでどっか行こうよ♪
BBQとかしたいしー」
「いーねー★」
夏休みまであと2週間。
高校生最後の夏休み。
「俺んちでBBQする?」
8月に隼人の家でBBQする予定を立てた。
ブーブーブー
土曜日の昼。
携帯が鳴った。
セブンだ!
「はい!もしもし!」
「セブンイレブン◯◯店の林ですが」
電話来た!
って事は採用!?
「来週から来ていただけますか?」
採用ー!
「はい!わかりました!
はい……はい…ありがとうございます!」
バイトは無事採用。
来週の火曜日の夕方からついに始まる!
あまりの嬉しさに枕を抱き締めた。
「お姉ちゃん採用されたんだ~♪」
「え!いつの間に!」
里奈が部屋のドアに立っていた。
「里奈の部屋まで声丸聞こえ。
あー採用されたっぽいなーって思って♪
おめでとう★」
「ありがとう!里奈は?」
「里奈も月曜日面接~♪」
丁度出掛ける様子の里奈。
デートかな?
いーな。
彼氏と順調そうだし羨まし!
彼氏ってどうやって作るの?
もう忘れちゃったよ。笑
とりあえず好きな人欲しいな~。
好きな人…。
あなたとの出会いを私はまだ知らない。
明里に連絡をした。
きっと明里が働いてなければ、コンビニで働く事なかったかもしれない。
『よかったー♪
バイト被るといいな(^^)』
そして火曜日。
初のバイトへ向かった。
制服に着替え、バックルームにある物の配置を説明されレジ打ちからのスタート。
楽しいー!
人が多くなる時間は違う仕事を教わる。
明里は今日昼からで入れ替わりだったけど、同じ時間のアルバイトの子も気を使ってくれて、無事初日を終えた。
「金曜日からも新しい子入るから、村内さんも早く覚えてね!
分からない事あればすぐ聞いて」
夕勤で入っていたアルバイトが3名辞めてしまったらしく、明里もそのタイミングで面接を受けて、あたし以外にあと二人入る予定らしい。
明里はここ一本だから、人手が足りない時間に入るため、平日は昼からと夕方からとバラバラ。
夕方にあと二人入るらしいから、今後あたしは昼からになるかも。って明里が言っていた。
今週バイト入る予定は今日と明日と日曜。
新人ばかりだけど大丈夫かな。
今週3日間は研修のため、レジには元々いるアルバイトの二人とあたし(計3名)で、来週からは二人になるからと店長に言われた。
来週からは一人でレジに立つ。
どーしよー!
今は不安ばかりでマメにメモは取るようにした。
どうしよう。
接客に対する不安や緊張のドキドキと、彼へのドキドキで心臓が破裂しそう。
あー店長助けてー!
「村内さん…でしたよね?」
「!」
お客さんがいなくなったと同時に彼から話し掛けられ戸惑う。
えー、顔に出そう!泣
駄目駄目!
「はい…!」
「若原って言います。よろしくお願いします。」
彼は微笑みながら自己紹介する。
「こちらこそ…」
「いくつですか?同い年くらいですよね。」
「18になりました」
「じゃあ同い年ですね!よかった。」
意外に口数が多い彼。
話してみると結構愛想はいいから、すぐ仲良くなれるかな。
22時にバイト終え、帰ろうとした時に彼に呼び止められ足を止める。
『お疲れ~♪
バイト終わった頃だと思って電話してみた♪』
『奈々!きたよ!』
『え?』
興奮のあまり、奈々に報告した。
『一目惚れー!?
えー!どんな人!?』
『もうやばーい…。言葉に出来ないから今度見に来て。笑』
『そんなドスライクだったの?
彼女は?いるって?』
『いや、まだそこまで話せる仲になれてない!笑』
彼女…
全く考えてなかった。
彼女いるのかな…
いるよね。
あんなカッコいいもん。
いない方が不思議。
いないとしたら性格に問題有りとかでしょ。笑
え、そんな人なの?
まさかね。
頭の中で自問自答を繰り返して、奈々と電話を終えた後お風呂に浸かった。
「彼女…かぁ…」
何も知らないのに失恋した気分。
知りたい。
彼の事もっと知りたい…。
会いたい……。
翌日。
「今日世奈バイトでしょ?彼いるの?」
ニコニコしながら奈々は聞く。
「ううん、今日は彼の友達と入るんだー。
だから会えない」
「残念。」
ほんと残念。
完全に上の空状態で机に頬をつける。
「はぁ…」
溜め息しか出ない。
「元気ねぇーじゃん。どうした?」
いつもと違う世奈の様子を見て、隼人が声を掛ける。
「世奈は恋をしたのっ!
一目惚れだって♪ね?」
「えっ…ひ、一目惚れ!?」
「シー!あんた声デカイ。」
奈々が発した言葉に隼人も驚いていた。
隼人は世奈が好きだった。
性格も明るくて見た目も悪くない。
寧ろモテる方の部類。
でも隼人は世奈との関係を悪くしたくない事で、自分の気持ちを伝える事が出来ないでいた。
世奈が自分に好意があると感じれていたなら、また違ったのかもしれない。
けれど隼人にはそんな自信がなく、振られた後の事ばかりを気にしてしまい、気まずい関係になってしまうなら今のままでいい、と自分の気持ちを誰にも言えずにいた。
バイトの時間になり、バックルームに入ると若原くんの友達らしき人がいた。
「お疲れ様です。あ、村内さん?
初めまして!よろしくお願いします。」
「お疲れ様です。
えっと…」
まだ名前すら分からない。
「佐藤政樹って言います。
若原と同高でクラスも一緒なんス!」
「そうなんだ。
よろしくお願いします。」
出勤登録して、昼勤の方々と交代。
「あたしまだレジ不安で…」
「俺もだよ!
まだ4日目だし、今日は副店長いるし何とかなるっしょ!」
若原くんとはまた違ったタイプの男の子。
身長はあたしとあまり変わらないくらいかな。
若原くんは結構大きかったなぁ…
お客さんが並びやすい1レジには副店長が多めに入ってくれて、2レジにあたしと佐藤くん交互に入る感じで、今日はお菓子の品出しをメインにやっていた。
帰宅し、夕食を済ませ勉強を始めて間もなく携帯が鳴る。
【佐藤です★
今日はありがと!
また被った日はよろしく(^^)】
【お疲れ様です♪
無事帰れたかな?
こちらこそありがとうございました★】
5分置きくらいに佐藤くんはメールをくれた。
次のバイトは金曜日。
金曜日はまた違うアルバイトの子だった。
若原くんは明日だったっけ。
勉強していても頭の中は彼の事ばかり。
【世奈って呼んでいい?
高校どこ?(^ω^)】
【うん、いいよ★
あたしは西だよ♪
佐藤くんは?(^^)】
【政樹でいいよ(^-^)/
俺は北高だよ(^∇^)
西だったら結構近いね!】
北高!?
学ランだったからそっち系かなとは思ったけど。
若原くんも佐藤くんも頭良いんだ……。
30分程語ってから奈々と隼人と解散した。
「お姉ちゃん、採用された~★」
帰宅と同時に里奈が喜びの声をあげ、場所は自宅から自転車で10分くらいの飲食店らしい。
「おめでとう♪良かったね!」
「翼とたくさんデートしたいなー♪」
「デート…
あたしもしたい。」
「お姉ちゃんはまず好きな人作らなくちゃー!笑
翔くんと別れて以来全然じゃん!」
「好きな人出来たの!聞いてよ里奈!」
思わず里奈の手を引っ張り、自分の部屋へと向かう。
里奈にも若原くんの事を全部打ち明けた。
「えー!翔くんよりカッコいい?」
「比べ物にならない。
あんな奴と比べたら若原くんに失礼だわ。」
「ふぅん~♪
そんなイケメンなんだ。早く告白しちゃいなよ」
「無理無理!彼女いるか分かんないし、しかもまだ数回しか会ってない!」
告白とか無理ー!
「その政樹?って人に聞いてみたらいいじゃん。
感付かれるのが嫌だったら、二人は彼女いるの?みたいな★」
なるほど!!
それいいかもー!
ごく普通のやりとりで聞いてみる事に決めたあたしは、佐藤くんにメールをした。
【バイトお疲れ様★
今日入ってたんだね!
家近いから普通に寄っちゃった(^^)】
送信。
若原くんに会うためだったんだけどね!w
22時半頃、電話が鳴り手に取ると相手は佐藤くんだった。
え!?まさかの電話!?
『もしもし?』
『あ、お疲れ様~♪
今終わって帰るとこなんだけどさ、距離あるから暇潰しに電話してみたー★笑』
『そうなんだ!佐藤くん…』
『政樹でいいって♪』
『ま、政樹…』
なんか変!!w
違和感有りすぎる!
『てか暇潰しにって…彼女に掛ければいいじゃん。』
この振り方どう!?
でも普通そう思うよね?
彼女いるなら彼女にって思うよね?
『俺彼女いないし!笑
いたら彼女に掛けてるわ!
あー寂しっ!』
どうしよう。
聞く?
このタイミングで若原くんの事……
多分若原くんを前にしてしまえば、きっと抑えれなくなる気がする。
そんな思いで迎えた日曜日の夕方。
この日のバイトは若原くんと一緒だった。
バイト中は特に私語はなく、終わって二人で従業員が置く自転車置き場まで歩いた。
「若原くん、連絡先って聞いたら迷惑…?」
「え、別にいいよ?
なんか元気ないね。大丈夫?」
彼は赤外線を向け、あたしも携帯を取り出し連絡を交換した。
よかった…。
「てか何て呼んだらいい?」
「世奈で…いいよ///」
「じゃあ登録も世奈でしとくよ♪
俺の事は好きに呼んでくれていいから★」
好きに……?
『裕太』はきっと彼女もそう呼んでるよね。
対抗するわけじゃないけど、同じ呼び方は嫌だな…。
それにいきなり『裕太』は馴れ馴れしいよね。
彼女と同じは嫌だ……。
彼女が呼び捨てで呼んでるかなんて分からないけど、あたしは呼び捨ては敢えて辞めようと思った。
【裕ちゃんって呼んでもいい?】
彼女が『裕ちゃん』って呼んでたりしてね。
【全然いいよ(^^)
ちゃん付けなんてされた事ないから違和感!笑】
そんなんだ…。
でも何か嬉しいな。
裕ちゃん。
あたしも男友達にすらちゃん付けした事ないから変な感じ。
今日は深夜のバイトの男の子があたし達に話し掛けてくれた。
彼の名は棚橋剛くん。
1つ年上で正直見た目はオタクに近い感じの男の子。
でも優しそうな先輩。
あたしが働くコンビニは、若い子が多かった。
学生がほとんどかな。
棚橋くんは22時から02時まで入っていたり、大学が休みの前日は朝06時まで勤務しているらしい。
【今度みんなで遊びたいね(^^)】
裕ちゃんがそう言ってくれた。
【うん!遊ぼーっ★】
楽しみだなぁ♪
高校生生活最後の夏休みが始まる…。
ブーブーブー…
裕ちゃんの携帯が鳴る。
「……彼女?」
「うん、ちょっとごめんね。」
裕ちゃんは立ち上がって少し離れた場所で電話をし始めた。
彼女……か。
いいな。
電話とか当たり前だよね。
夏休み、デートだって普通にするよね。
"彼女" って特別だもん。
会いたい時に会えて、我が儘も言えて、好きって想われて…。
どんな時でも"一番" でいられる。
裕ちゃんから告白したのかな…。
裕ちゃんのタイプの女性ってどんな人なんだろう…
サラーっとした綺麗な長い髪で、見た目は清楚系で綺麗な人がタイプだったりするのかな。
あたしは髪が短くて見た目もギャルに近くて、勉強苦手だし不釣り合いだよね。
本当叶わぬ恋って感じ…。
「はぁ……」
自然と溜め息が出る。
電話を終えた裕ちゃんが再びあたしの隣に座る。
「ごめんね。」
「いいよ。彼女だもん。」
沈黙。
そりゃそうだよね。
あんな事言っちゃった後だし、気まずくて当然だよね。
「ねぇ、今の彼女と付き合う時って裕ちゃんから告白したの?」
「いや、あっちから。」
「どうして付き合ったの?好きだったから?」
「うーん。よく覚えてないけど、勢いもあったかな。」
勢い?
告白されたから付き合ってみたって感覚って事?
「でも誰でもいいってわけじゃないよね?」
「まあ…多少は気にするけど…。
俺ショートヘアー好きで、極端に短い子ってあんまいないじゃん。
彼女、世奈より短いよ。ベリーショート…かな。」
えっ…!
まさかのショートヘアー好き!?
意外!
あたしも短い方だけど、これより短いって相当短いよね。
裕ちゃんより短いじゃん。
無意識に髪を触る。
「へぇ…裕ちゃんってショートが好きなんだ…。」
嬉しいような…嬉しくないような…。
気付けばもう23時になる頃。
「そろそろ帰ろっか。遅いから送ってくよ。」
裕ちゃんが立ち上がる。
「ありがとう。」
お互い自転車を引きながら家へと歩き始める。
「めっちゃ近いね。」
「うん。笑
いつも徒歩で行こうか迷うくらい。」
あたしは車庫に自転車を停め、裕ちゃんを見送るため少し離れた場所まで移動する。
「じゃあ、またね。」
裕ちゃんが自転車に乗りかける。
「裕ちゃん……!」
裕ちゃんの背中に抱き付いた。
「…!?世奈」
鼓動が早くなる。
裕ちゃんにも伝わってるかもしれない。
好き………
「ごめんね。送ってくれてありがとう。」
裕ちゃんから離れ、小さく手を振る。
「家着いたらメールするね。」
優しく微笑みながら、裕ちゃんは自転車に乗り帰って行った。
裕ちゃん…。
あたしの事、思いっきり突き放して……。
自分では止められないの。
裕ちゃんが欲しくなる……。
「遅い!何してたの!」
玄関のドアを開けたと同時にお母さんが怒鳴る。
「バイトの子と話してたら遅くなっちゃった。」
「電話も出ないし心配するでしょ!遅くなるなら連絡くらいしなさい。」
電話…?
携帯を取り出して着歴見るとお母さんからの不在着信3件。
………気付かなかった。←
「っもう…ご飯食べなさいよ。おやすみ。」
「うん、ありがとう」
おかずを温めて夕飯を済ませる。
食器を洗っているとメールの着信音が鳴り、相手は裕ちゃんだった。
【ただいま★
俺は明日朝からバイトだ(+_+)】
【お帰り♪
そうなんだ(;o;)
夏休みだもんね~(^ω^)】
パートの方たちは夏休み期間中休みのため、政樹や裕ちゃんは朝から入る日もたまにあるみたい。
あたしは昼からか夕方からだけど。
0時過ぎまでやりとりをした後裕ちゃんは寝たっぽい。
シャワーを浴びて髪を乾かした後そのまま布団に入る。
眠れない……
目を瞑って裕ちゃんとデートする光景を想像しながら夢の中へ……
目を覚ますと時間は10時過ぎ。
8時半過ぎに裕ちゃんからメールが届いていた。
部屋を出て洗面所で顔を洗い歯磨きする。
「あ、お姉ちゃん、今日暇?」
「夕方から予定あるけど、それまでは特に。」
「来週翼の誕生日なんだけど、何あげようか迷ってて…
買い物付き合って欲しいな~♪なんて…★」
「別にいいけど…」
「じゃあ待ってる★」
化粧30分。
アイロンで髪セット5分。
自転車に乗って里奈と買い物に出掛けた。
色々見て回った結果、服をあげる事に決めた里奈。
「社会人になったら、もっと予算も増えていい物あげれるのになぁ…」
ここ数ヶ月、里奈は彼氏の誕プレのために欲しい物は我慢していた。
「高ければいいってもんじゃないでしょ。喜んでくれるって♪」
食料品コーナーでケーキの材料を選ぶ里奈。
彼氏のために我慢してきた事や、彼氏のためにケーキを作る。
里奈を見てると羨ましく思えて、あたしもいつか裕ちゃんのために…と裕ちゃんとの未来を思い描いていた。
夕方。
地元のメンバーで遊ぶ予定のあたしは、奈々と一緒に待ち合わせ場所へと向かう。
高校生になってから奈々以外の子とは会う機会も減って、数ヶ月ぶりの再会だった。
仲が良かった女子4人でファミレス。
車の免許取れたら行動範囲広がるのに。
中学時代の懐かしい話から誰かの噂話。
恋バナや彼氏の愚痴。
みんな久しぶりの再会となると止まる事なく喋り続ける。
解散をし、奈々はそのままあたしの家に泊まる。
「お邪魔しまーす。」
部屋に入り、話題は早速裕ちゃん。笑
「で?あれから彼とどうなの?♪」
昨日の出来事を照れながら奈々に話す。
「あーあ。それ完全やっちゃダメなパターン…」
ダメ!?
「だって、例えば今この状況で彼が世奈と浮気をしました。
それで仮に向こうが彼女と別れる事があって世奈と付き合ったとします。
彼、同じ事するよ?」
奈々の言う通り…。
それは分かってた。
簡単に浮気する人って、いつか付き合えたとしても自分にした事を他の女にする可能性高いよね…。
「とりあえず今は世奈の暴走で止まってるけど、キスしたりそれ以上の事したら…ただのチャラ男!」
「う、うん……。頭では奈々が言ってる事分かってるんだけど…。
裕ちゃんが近くにいると抑えれなくなって…」
「ただの浮気相手でもいいの?」
奈々の質問にあたしは首を横に振る。
「でも。……ごめん奈々、彼女になれないならそれでもいいって…正直思っちゃう…」
奈々には本音を言える。
「相当だね。今までの世奈にはありえない発想。
まあ…あたしは世奈の過去の男全員知ってるけど、ここまで世奈が本気になる相手って今まで居なかったよね。」
そう。
いつもそうだった。
当時は相手に好きって感情はあっても、自分から好きになって付き合うって経験がなくて、心から好きになれていないのに相手に想われる事で、自分も好きだと錯覚してたんじゃないかと今では思ってしまう。
だから裕ちゃんへの想いは特別に大きくて……
「浮気関係になる前に彼が彼女と別れてくれるのが一番いいんだけどね…。」
「…あたしもそうなってくれたら嬉しいけどさ……」
流石に『別れてほしい』なんて言えないけど。
彼女よりも自分の事を好きになってくれれば…
そんな自信ない…。
「みんなで遊ぶの27日だっけ?
なんか起こる気がする。」
「えっ…あたしと裕ちゃんが?」
「うん。彼は世奈の事意識するようになったと思う。
誰でも自分に好意ある人の事は意識しちゃうじゃん?
世奈があんな事した後特に避ける事もないんだから、嫌ではなかったんでしょ。」
「うん…。避けられたら本当終わり…」
「向こうから連絡ある内は大丈夫だって。
迷惑とか思ってたら自分から連絡なんてしないし、寧ろ好かれて嬉しいんじゃない?」
裕ちゃんはそういうの慣れてそうだし、来るもの拒まずタイプかな…。
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