夫婦の物語
好きとは何か?愛とは何か?
ある夫婦の物語。
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「あの…よろしくお願いします!」ずんぐりむっくりの体を最大限に小さく丸めて上目遣いで俺を見てる。上目遣いって可愛いもんじゃなかったか?なんか奥二重のせいか睨んでるようにも見える…まあそれはさて置き、とりあえず彼女とやらができたのだ!祝!祝い!ヽ(^0^)ノ
かみさんと別れて数人と付き合ったがなかなかうまくいかなかった。巨乳でスタイル良くて可愛かったが男にだらしなかったり…結局、セフレで終わった女もいた。
つくづく女運がない…だから今までとは違い、かなり引っ込み思案のおとなしめをチョイスした。見た目だけは目をつぶることにしたわけだ(;¬_¬)
「こちらこそ、よろしく!ハコちゃん!」俺は彼女の肩に手を回した。彼女はビクッとなり更に縮こまる。
女の子わりに肩幅広いし、いい匂いもしないな…イカンイカン!今回は中身重視だ!余計なことを考えるな!俺!
「飯食ってく?」俺は頭の邪念を振り払うかのように明るくハコちゃんに話しかけた。
「………はい!いいんですか?」またもやチラッと横目で俺を見る。この子は俺の顔をまともに見てない。こんなに恥ずかしがっていて大丈夫なんだろうか?
きっと付き合ったこともないのだろう…
「食いたいもん、なんでも言いな!」彼女はまたチラッと俺を見て…
「…あの、健一郎さん決めてください。」そう言ってまた下を向いた。うっ!…やりづらい…
結局俺たちは近くの洋食屋に飯を食いに行くことになった。長い間ここに住んでるが、一度たりとも行ったこともない店。何となく目に留まり入った。
中に入るとカウンター席が5つとテーブル席が2つの割と小さい店だ。まあ汚くはないから良いのだが…
「いらっしゃいませ!お二人様ですか?」厨房の中から俺と同い年くらいの男が出てきた。
「……!!あれ?ケンちゃん?ケンちゃんか?……」その男は俺の名前を呼んできた。目を丸くしてコック帽を取りクシャと握り締めた。
「俺!冬夜!トウヤ!だよ!」冬夜?え?トウヤ!?
「もしかして小学校の時の!!?」コイツは小学校の時、俺がパシリに使っていた湯沢冬夜だ…
「お前………デカくなったな…元気か?」冬夜はガキの頃ひょろっとしていてチビだった。たが今目の前にいる男はガッチリとした筋肉質の体で背も高い。180は越えてるだろう。
「元気だよ!今はひとりでこの店やってる!オヤジが去年亡くなったんだ」まさかコイツが洋食屋をやってるなんて。パシリとして使っていたが、家に行ったりしたことは無かったから気づかなかった…
「あれ?そちらの方は彼女さん?」冬夜はニコッと笑ってハコちゃんを見た。ハコちゃんはヘビに睨まれた蛙のように固まり、コクッと頭だけ下げた。何か分からんがハコちゃんが彼女という事を知られて俺はちょっと恥ずかしかった。この前まで付き合ってた女なら堂々と紹介出来たのに…
「久しぶりに会ったし今日はお金いらないからさ!好きなもの食べてよ!二人ともゆっくりしていって!」冬夜はコック帽をかぶり直し、窓側のテーブル席に案内した。
「これ!メニューね!何個でも好きなもの頼んで。彼女さんも好きなもの食べて下さいね!」メニューを俺達に手渡し冬夜は厨房に戻り水を持ってきた。
ハコちゃんは相変わらず固まってる…どうしたものか…まあとりあえずタダだし、ガッツリ食うか!
「ハコちゃん!何にする?」メニューをテーブルに置き、ペラペラとめくる。
「えっと…これ。」彼女が指差したのはデミグラスソースのチーズハンバーグだ。じゃあ、俺は…グラタンいってみるかな。
「冬夜!注文いいか?」
「はい!ご注文をどうぞ。」カウンターの奥からひょっこり顔を出した。ここはアルバイトくらいいないのか?
「デミのチーズハンバーグとシーフードグラタンよろしく!」俺はカウンター奥の冬夜に聞こえるように大きめの声で注文した。
「なんだよぉ~もっと色々注文してくれよ!奢りなんだからさ!じゃあさ、新作あるんだけどそれ試食してくれないか?」
「…おう!じゃあ頼む!」まあ、タダやし何でもいいや…
冬夜はウキウキしながら厨房に消えていく。昼時なのに俺達だけだから普段暇なのは予測できた。まさかあの、大人しい弱虫冬夜が洋食屋のコックだとは…ガキの頃のイメージが強すぎてなかなか今の冬夜と合致しない(;¬_¬)
しばらくすると鉄板に乗ってジュージューと音を立てるハンバーグとチーズがグツグツと言ってる熱々のグラタンが来た。
「うまそー!一人暮らししてるとさ、グラタンなんてあんまり食べないから久しぶりだわ!」あんまり期待してなかったが、なかなかのいい感じだ!
「ハコちゃんのハンバーグもうまそうじゃん!」ハコちゃんはジッとハンバーグを見つめてる。相変わらず何を考えてるか分からん(;¬_¬)
冬夜はカウンターの奥から俺たちを監視してる。味の評価が気になるのかな?(笑)
グラタンは程よい塩加減で海老もプリプリなんか知らんがめっちゃ濃厚…こんなうまいの久しぶり。
チラッとハコちゃんを見るとナイフとフォークをぎこちなく動かしチビチビとハンバーグを食べている。
「ハコちゃん!少し交換しない?」グラタンの器をハコちゃんに近づけた。
ハコちゃんはチラッと俺を見てコクンと頭を下げた。俺のグラタンをちびっと食べた。
「美味しい。とっても…」下を向いていて髪が邪魔して見えないがニコッと笑っていた。
「健一郎さん、どうぞ。」ハンバーグを大きく切ってフォークを俺に渡してきた。
うまっ!ハンバーグもかなりのもん…なんでこんなに旨いのに客がこないのか…
「…………どう?」冬夜はこちらの様子をうかがいながら近づいてくる。
「うまいよ!マジで!すげーなお前!」
「本当に!?良かったぁ…彼女さんはどうですか?」
「美味しいです。こんなに美味しいハンバーグ初めてです。教えてもらいたいくらいです。」冬夜の目を見て笑顔を見せてる。なんだ…人の目見れるんじゃん。
「ありがとうございます!いやぁ、なかなか客が来なくてね…こうやって感想も聞けないのさ…何がいけないのかな…彼女さん!女性目線からしてこの店何が足りないですか?どんな厳しい意見でもいいんで正直に教えてもらえませんか?」冬夜はかなり真剣だ。女性目線と言ってもこのハコちゃんじゃ…
「う~ん…ちょっと思ったのが店の雰囲気だと思います。店の外観からして少し時代を感じさせるから初めての方は入りずらいし、ここから少し行くとある、モリモリバーグの方
に若い方は行っちゃうかも…」
なっ(゚Д゚)なんだ!結構しゃべれるやん!俺の前だと無口なのに…
「そかぁ…外観か…確かに古いよね…あまり金はかけられないけど何か店の雰囲気変える方法ないかな?」冬夜はマジで悩んでるらしくハコちゃんに必死でアドバイスを求めている。
「私もお金がどのくらい掛かるか分からないんですが…店の色を変えるのはどうですか?外の壁を塗り直して新しい色にしたり、看板をオシャレなやつにしたり、花を植えたり…店の中もカーテンの色やテーブルクロスを変えるだけでも印象はかなり変わると思います!後は最近のお店だとサラダバーとか結構あるし、サラダバー作るとか…喫茶店としても利用出来るようにデザートを増やして女性客を増やすとか…」ハコちゃんもマジで考えているようだ。
「参考になるよ!アドバイス貰える人いないから本当に嬉しい!もしよかったらこれからも色々アドバイスもらえませんか?」
「おいおい!ハコちゃん困らせるなよ。」さすがに厚かましくないか?イラっとしてグラスの中の溶けかけた氷を口に含みかみ砕いた。
「……私センスないし、お役に立てないと思います。」ハコちゃんもさすがに戸惑ってるようだ。
「…たまにでいいんです。たまに来てこうやってアドバイス貰えたり試食してもらえたら。ケンちゃんも頼む!これからも金はいらないからたまに来てくれよ!」必死で頭を下げる冬夜が可哀想になりOKを出してしまった。ガキの頃散々パシリとして使ったしこのくらいいいよな…
俺とハコちゃんは二週間に一度ここに食事に来る約束をした。
冬夜が試食して欲しかったのはアップルパイらしく、俺とハコちゃんは俺のアパートでそのアップルパイを食うことになった。本当はその場でアドバイスを貰いたかったらしいが結構なボリュームがあったから後で味の感想を言うことにして持ち帰ったわけだ。
「ハコちゃん悪いね、あいつ何勝手なこと言ってんだか…」
「…役に立てれば嬉しいんですけど、大したアドバイスできなくて」アップルパイを頬張りながら話すハコちゃんはだいぶ俺に慣れてきた。
「いやいや、いいアドバイスしたよ!」俺は彼女の肩に手をかけた。
体を縮めて恥ずかしそうにしている。やっぱりこの子男なれ全然してないな…多分処女だろう。勝手な想像をしながらも俺も男だ。少し興奮してきてしまった。誰にも手をつけられてない女は初めてだ。
「ハコちゃん…疲れちゃったろ?少し2人でベッドで寝ない?」あからさま過ぎただろうか…
「…はい…」食べかけのアップルパイをテーブルに置き、ハコちゃんはスカートを直した。
思ったより素直に応じるな。これは出来そうだ。
ハコちゃんの手を引き隣の部屋に案内し、ハコちゃんをベッドに寝かせると後ろから抱きしめた。
我慢出来ずに胸に手をやると嫌がる様子もない。初めてじゃないのかな?
「あの!…」急に大きな声を出すハコちゃん。あれ?手がふるえてる。
「……あっごめん!つい…ハコちゃん初めて?」俺はちょっと早まりすぎたと思い、慌てて謝った。
「あの…初めてじゃないです。でも体に自信無いので嫌われるのが怖くて…」
ハコちゃんは俺の腰に手を回し抱きついてきた。まだ手が震えてるようだ。
「大丈夫だよ。怖がらないで。体見て嫌いになったりしないからさ。」
何とかハコちゃんと俺は結ばれた。が…確かにハコちゃんの言うとおり酷い体だった。
胸はデカいわけでもなく、垂れきっていて、お腹の肉はかなりのもんだ。そしてそして…匂いがキツい…
結局キスも軽くしかしなかったし、クンニなんてとてもじゃないけどする気はなかった。俺は初めてセックス最中に萎え、体調が悪いなんて言ったがこれはかなりショックな出来事だった。
ピピピ…(目覚まし)
ん?朝か…今日は午後にハコちゃんがくる予定だ。掃除でもするかな…
つーかあの場所は片付けんと…
リビングにある、花柄の箱の中には元カノと取ったプリクラや写真の山。食器棚もお揃いのものが多い…
食器は仕方ないが、プリクラや写真は廃棄するしかないな…てか、懐かしい…
そこには元カノとのキスプリやら抱き合ったものまである。その彼女はめちゃくちゃタイプだったが、金遣いが荒く男ったらしで別れた。が…こうやって見るとやっぱり可愛い。小柄の癖に胸がDカップで小さな顔…肌なんかツルツルのスベスベ…良い体してたよな…
うっ、反応してきちまった…
チャララン♪
おっと、メールが来たのか?
[おはようございます(^_^)ノ今日は健一郎さんの家に行けるの楽しみです。]
ハコちゃんだ…元カノの写真見て興奮しちゃった俺…なんか罪悪感_| ̄|○
「こんばんは。」ハコちゃんが来たようだ。彼女の手には何やら白い箱。
「健一郎さん、これ一緒に食べようと思ってケーキ買ってきました。」恥ずかしそうに俺に手渡してきた。
「ありがとうね!気を使わなくていいのに!」これっ!かなり並ばんといけないケーキ屋のじゃん。元カノ達はケーキどころかポテチさえ、買ってきたことないのに…
リビングのソファーに座らせ、珈琲を淹れた。ハコちゃんは相変わらず髪で顔を隠している。にしても…太いな(;¬_¬)
「ハコちゃん!二種類買ったんだね!どっちがいい?」
「健一郎さんが好きな方とって下さい。ハコはどっちでも平気です。」自分のことハコって呼んでるんか?呼び方だけは可愛いな。
「じゃあ、遠慮なく。」俺はミルフィーユを選び、ハコちゃんはチョコケーキを皿に乗せた。
甘いものが好きなのか、無言でパクパク食べてる。一人の時は五個くらい食ってそう(;¬_¬)
一時間後…
テレビを見るがあまり面白くない…
二時間後…
更にテレビを見るが、ほとんど喋らないから眠くなってきた…
三時間後…
二人とも無の境地になってきた…
何だろう?このつまらなさ…元カノとはテレビ見ててもウキウキワクワクしてたのに。何?この修行みたいな感じ。そろそろ夕飯でも食いに行くかな…
「飯どうする?」なんか腹の具合が悪いな…
「健一郎さん、顔色悪くないですか?」ぬっ!鋭いな…素晴らしい観察力。
「……ちょっと腹が痛くて。頭も少し痛いんだ」昨日クーラーかけたまま腹出して寝てたからな。
「今日は食事行くの止めましょう。ベッドで休んで下さい。おじやでも作りますか?」ハコちゃんは俺の背中をさすって心配そうにしている。やっぱりこういう時、女子がいるといいな。見た目はあれだが…
キッチンからはガタガタゴトゴトと音が聞こえる。一人暮らしだとキッチンなんか使わんからなんか新鮮。
うちは母子家庭で母親と暮らしていたが、男に熱を上げて料理なんてしてもらったことはなかった。というか、ほとんど帰ってこなかった。毎日毎日同じ服をきて、たまにコンビニ弁当が部屋に投げ入れられた。俺はその弁当を一週間くらいかけて食べる。最後の方が腐ってきて、臭いが酷かった。でも空腹の方が辛かったからな…
水は公園の水道だし、風呂もないから公園でボロボロのタオル持って洗った。生きてるか死んでるか母親の姉がたまに確認しに来る。その時千円札を俺に手渡した。たかが千円で何ができるというのか?俺を汚物のように扱い、近くに寄ると鼻をつまんで避けた。
「出来ました!私あまり料理得意じゃないけど…ほうれん草と卵のおじやです。」嫌な思い出を思い出しているうちに出来たようだ。
「うまそう。ハコちゃんありがとうね。後でお金渡すからさ。」何も冷蔵庫にないからスーパーまで走ってくれたんだ。
「お金なんていいです!ほうれん草と卵とだし類だけですから(笑)」手を顔の前でブンブン振っている。
「さっき、ケーキだって買ってきてくれたしさ…」女の子に何か買ってきて貰ったことがないからなんか悪い気がしてしまう。
「あの、こうしませんか?健一郎さんは食事のお金は全部出すと言ってくれましたが、お家で食事作るときの材料費は私が全部払います。」
「悪いよ!女の子に払わすなんて。」男としてどうなんだろ…
「悪くありません。付き合うのは平等でなきゃいけません!外食の方が高いと思うし。本当は私の方が申し訳ないです。」ハコちゃんは真面目な子だな。確かに今回は他の子と違う。
「冷めちゃうんで、食べて下さい。」ニコッと笑い、俺にスプーンを差し出した。
こんな子が母親なら良かった。体調が悪いとき、こんな風に優しくされたかった。ハコちゃんといるとなんか自分の理想の母親を求めてしまう。今までにない感覚…
「うまいよ!本当に!」
「良かった~。食べたらゆっくり休んで下さいね!薬も買ってきましたから。冷蔵庫にはゼリーとか栄養剤も買ってきて入れときましたから。」前の嫁なんか俺が風邪ひこうと、知らん顔。やっぱり人間見た目じゃないな…
「本当に何から何までありがとう。」ハコちゃんは布団を俺にかけ直して冷えピタを貼ってくれた。その後、軽く俺のおでこをさすった。
「そばにいてもいいですか?」
「俺は嬉しいけど、ハコちゃん退屈だろ?」
「大丈夫です!こうしてたいんです。」床にペタンと座り俺の手を握った。なんか分からんけど、泣きそうになってしまう。ハコちゃんには甘えたい…
「何かあったら言って下さいね。何かしてほしいことはありますか?」してほしいこと…
してほしいことは…
「頭を撫でてくれないかな?しばらく添い寝してほしい…」ハコちゃんは黙ったまま優しく笑い、俺の頭を静かに撫でてくれる。俺はハコちゃんの胸に顔をうずめた。あったかい…ずっとこうやって抱きしめて頭を撫でてもらいたかった。
ハコちゃんは多分だか、俺が眠るまでずっと頭を撫でたり体をさすっていてくれたと思う。
「ハコちゃん…?あれ?ハコちゃん?ハコちゃん?」先ほどまでそばに居たはずのハコちゃんがいない。
「どうしました?」ハコちゃんはキッチンでまた何か作っていた。
「朝ご飯作ったけど食べますか?大したものは作れてないですが…」テーブルにはご飯、味噌汁、卵焼き、鮭、漬け物が用意されていた。
夢に見ていた朝ご飯。こうやって味噌汁の匂いを朝から感じると幸せになる。
「食べれますか?」ハコちゃんは停止している、俺のことを不安げに見つめてる。
「ハコちゃん…結婚しよう。今すぐって訳にはいかないけど…でも、いずれ結婚しよう。」俺はハコちゃんを抱きしめてそう口走っていた。
「……はい。」ハコちゃんの目には涙がたまっている。俺の服をギュッと掴んだ。出会ってまだ二回目だけど、この子を離したくないとその時は思ったんだ。
「ハコちゃんにはまだ色々と話してないことがあるんだ。バツイチとは伝えてあるよね?それで、実は子供もいるんだ。前の嫁が育てていて、養育費もいらないと言われてる。その子とはこれから先会う予定はない。子供がいること話してなくてごめん。」
ハコちゃんは子供がいると聞いたとき一瞬悲しい顔をしたように思えた。
「そうですか。じゃあ会うことはないんですね。お嫁さんにもお子さんにも。」
「ないよ。それは大丈夫。それと俺の親の話なんだけど…俺には母親がいる。だけどもう20年ほど会ってない。今は親戚に面倒見てもらっているらしい。」包み隠さず話した方が未来のためだ。
「俺は小3のときから、母親に育児を放棄された。家にはたまにしか帰って来ない母親で、たまにコンビニ弁当投げ込まれてそれ食って一年間は生きのびた。その後、小4の途中で母親の母親。つまり、ばあちゃんの家にもらわれた。で、何とか高校までは行かせてもらえて、すぐに家をでた。今は母親だけじゃなく親戚一同とも関わりがない。」ふぅ~とりあえず天涯孤独ということは分かってもらえたかな?
「お婆さんとは仲が良かったんですか?なぜ親戚の方とも会わないのですか?」不思議そうな顔をして眉をひそめている。
「俺、ばあちゃんにも嫌われてたからさ。というか、俺の存在がとにかくあの一族にとっては迷惑だったわけだ。母親の尻拭いをしてるわけだからな。俺は母親と母親の姉の旦那が不倫してできた子だからさ。最悪だろ?ハハハ」気にしてないかのように笑い声をあげてみた。
「ハコちゃん??」ハコちゃんの目からは大粒の涙が流れている。手は心なしかきつく握り締められてるように感じた…
「私、悲しくて…健一郎さん。笑わなくて良いです。悲しい時は悲しい顔してください。辛かったですね…」辛かったですね。誰かにそんな風に理解してほしかった。
辛かった。本当に本当に辛かった。人に必要とされないだけでなく、殴られ、避けられ、人として扱ってはもらえなかった。自分は生きていてはいけない。そう思いながら生きてきたんだ。本当に辛かった。
「…あっ………」目から涙がこぼれた。泣くなんてみっともないと思っていたけれど、止めることなんてできない。ハコちゃんは俺の隣に寄り添い、俺の左手を優しく握り、背中をさすってくれた。久しぶりに泣き疲れて、ハコちゃんの膝枕で眠ってしまったようだ。
これが俺達の戦いのはじまりだった。
3ヶ月後…
「ハコ!今日は冬夜のとこ行く日だぞ!」今日は冬夜の店で新しいメニューの試食をすることになっている。店の模様替えなどして、だいぶ客が増えてきた。
「うん…待って。鍵が無くて(゚〇゚;)」ハコと同棲してから分かったこととにかく鈍臭い…
「ここだよ!毎回毎回何やってんだよ!」毎日の事ながらイライラする。
店に着いた。
「ケンちゃん、ハーちゃん!おはよ!」朝っぱらから強力な大声だ(;¬_¬)
「おい!試食って普通こんな朝っぱらからするか?」イライラする俺の横でハコは食えることだけ考えてるのかニコニコしている。この女は食えりゃいいんか…
「ごめんごめん!新しいパスタ取り入れようと思ってさ!昼とか夜だとお客さんいるからちゃんと感想聞けないし!」冬夜の店では確かにパスタのメニューが少ない。
「早く食べたい♪」鼻歌を歌い出しそうなくらいウキウキしてるのが一名いる。
「ハーちゃんちょっと待っててね♪」15分後…
「お!桜エビとキャベツ?のパスタか?」色はインパクトねぇな…
「アンチョビのソースで和えてある!見た目より濃厚だとは思う。」机にほおずえを付き俺達の顔をじっと見ている。
「……美味しい!けど、なんかパンチがないような…」ハコは目を閉じてパスタを噛みしめている。
「確かにな…まあ旨いからいいんじゃん?」
「イヤイヤ、出すなら2人にうまい!って言って貰えるものじゃないと嫌なんだ!」冬夜らしいがめんどくさい。ハコが余計なこと言うから…
「ブラックペッパーもうちょっと強めが良いかも!ソースは濃厚なんだけど味がちょっとぼやけてるから。」料理評論家のような口振りだ(;¬_¬)
「じゃあもうちょっと多めにしてみるよ!」冬夜は嬉しそうにハコのアドバイスを聞いている。こんなど素人の感想聞いて本当に為になるんか…
そして
「ハーちゃんいつものいる?」勿体ぶるように冬夜がニヤニヤしている。
「いるー!」また肥える…ここに来るたび毎回食ってるのが…
「はいよ~」ハコの目の前にはイチゴのたっぷり乗ったタルトが置かれている。でもって、かなりのビッグサイズ。それと一緒に生クリームタップリのウインナーココア。
「冬夜!毎回毎回良いから!イチゴだって高いだろうし!甘やかすなよ!」さっきまでウキウキのハコの顔が曇る。
「大したことないんだよ。イチゴくらい。そんなデカい声で怒るなよ。ねぇ、ハーちゃん♪」
「……うん。ごめんね、毎回。」ハァ…イライラする
「いーからいーから!ハーちゃん食べて♪」結局全部平らげて自宅に戻った。
「……」自宅に帰ってもハコと話す気にならない。イライラすると俺は度々黙る。
「ケンちゃん…みて!みて!面白いのテレビでやってる!」始まった始まった。いつものご機嫌取り。俺が黙るとハコは無理矢理にでも会話をしようと必死になる。それがまたウザイ。
「ああ。」そう答えた後寝たふりをした。知らない間に本当に眠ってしまって…
ん?ハコがいない…
ガチャ。どこかに行ってたんだろうか?ハコが帰ってきた。
「ケンちゃん起きた!ほら!ケンちゃんの好きなアボカドバーガーだよ!」今度は食いもんでご機嫌取りだ。腹も減ったし食ってやるか。
「……美味しい?(*'▽'*)」冷蔵庫から冷えたビールを出し、俺に差し出す。これで俺の機嫌が直るとでも思ってんのか?
「ん。普通」ハコの方をチラッとも見ず答えた。
「……そか。」残念だな。ハコは無駄な出費をしたわけだ。人を食いもんで釣ろうとは浅はか。
次の日、恐る恐る俺に話しかけるハコ。さすがにそろそろ話してやるか。
「今日は六時に帰ってくるから。夕食はカレーがいい。」今日は俺だけ仕事だ。
「わかった!!作っておく♪」分かりやすく元気になった。なんかイライラすんだよな…
「今日ね、冬夜くんがご飯食べに来なって言うから行ってくるね!」タダ飯食って来るわけか。優雅なもんだ。
「わかった。行ってくる」さてと、1日頑張るか…
小説・エッセイ掲示板のスレ一覧
ウェブ小説家デビューをしてみませんか? 私小説やエッセイから、本格派の小説など、自分の作品をミクルで公開してみよう。※時に未完で終わってしまうことはありますが、読者のためにも、できる限り完結させるようにしましょう。
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「しっぽ」0レス 15HIT 小説好きさん
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惨めな奴 🤪🤪🤪0レス 85HIT 匿名さん
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わたしとアノコ55レス 585HIT 小説好きさん (10代 ♀)
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また貴方と逢えるのなら0レス 81HIT 読者さん
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「しっぽ」0レス 15HIT 小説好きさん
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惨めな奴 🤪🤪🤪0レス 85HIT 匿名さん
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神社仏閣珍道中・改
(曹洞宗の葬儀についての続き) ※葬儀についてのレスとなります。…(旅人さん0)
146レス 4268HIT 旅人さん -
Journey with Day
リリアナは、そっと立ち上がり、壁のモザイクを指でさわった。 「この白…(葉月)
74レス 892HIT 葉月 -
西内威張ってセクハラ 北進
何がつらいのって草こんな劣悪なカスクソ零細熟すべてがつらいに決まってる…(自由なパンダさん1)
57レス 2159HIT 小説好きさん
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今を生きる意味78レス 468HIT 旅人さん
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黄金勇者ゴルドラン外伝 永遠に冒険を求めて25レス 894HIT 匿名さん
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勇者エクスカイザー外伝 帰ってきたエクスカイザー78レス 1750HIT 作家さん
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神社仏閣珍道中・改500レス 14753HIT 旅人さん
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真田信之の女達2レス 364HIT 小説好きさん
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おっさんエッセイ劇場です✨🙋🎶❤。
ロシア敗戦濃厚劇場です✨🙋。 ロシアは軍服、防弾チョッキは支給す…(檄❗王道劇場です)
57レス 1365HIT 檄❗王道劇場です -
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今を生きる意味
迫田さんと中村さんは川中運送へ向かった。 野原祐也に会うことができた…(旅人さん0)
78レス 468HIT 旅人さん -
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神社仏閣珍道中・改
この豆大師についての逸話に次のようなものがあります。 『寛永…(旅人さん0)
500レス 14753HIT 旅人さん -
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黄金勇者ゴルドラン外伝 永遠に冒険を求めて
『次の惑星はファミレス、ファミレスであります~』 「ほえ?ファミレス…(匿名さん)
25レス 894HIT 匿名さん -
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勇者エクスカイザー外伝 帰ってきたエクスカイザー
「チェンジ!マッドキャノン!!三魔将撃て!!」 マッドガイストはマッ…(作家さん0)
78レス 1750HIT 作家さん
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37レス 1239HIT おしゃべり好きさん (30代 男性 ) -
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