Everlasting Love☆
あたしは
今あたしの隣りで
スヤスヤ眠るこの男に
何度 傷つけられ
何度 泣かされてきたか………。
「終わりにしなきゃ」
そう思う度、
離れられないのはあたしだった。
この暖かくて綺麗な手を
離したくないのはあたしだった。
…◇◆…………………………………◆◇…
小説と言える程、上手く書ける自信もありません。
読んで辛くなる方や不快に思う方がいると思います(*_ _)m
そんな方は是非スルーしてくださいm(_ _;)m
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4年前の夏。
蓮の友達のパパから
「蓮ママ ウチの会社で人探してんだけどやらない?
給料いいから蓮ママにはチャンスだと思うんだけど!!!」
蓮は1人息子。
高校2年生。
この時あたしは12年続けた大好きだった仕事を辞め
新しい仕事につき1年が経とうとした頃だった。
30代半ばの女性の転職は
予想以上に厳しく
やりたい職種は年齢はギリギリでも 子持ちという点で
独身の若い女の子が優先された。
息子が生まれて初めて
俺はコレがやりたい!!
という物を私にお願いしにきた時
お金がかかるのは覚悟の上で
「やりな(^ー^)」
と言った。
1つの道具を買うにも万単位。
全て揃えるには何十万。
遠征も遠い所では十万以上かかる時があった。
大好きな仕事ではシングルマザーのあたしでは到底 金銭的に無理があった。
でも…
小さい内から沢山 我慢させてきた息子が
初めて「やりたい事」を見つけた。
やらせてあげたかった。
私は転職を決意した。
退職金で道具を揃えた。
中学生になる準備金も何とか出来た。
>> 1
ハローワークに通ってみたが
ピンとくる仕事はほとんど無く
呑気に職探ししてる場合ではないあたしは
結局、雑誌で見つけた仕事につく。
店が終わり精算や片付けなど全て終わって家に着くのは22時頃だった。
店のレイアウトをやらせてもらえる様になり
少し「楽しい」と思い始めた頃のお誘いだった。
聞けば確かに魅力的な給料。
勤務時間や勤務体制も魅力的だった。
高校時代は定食屋のバイトを3年続けた。
高校卒業後 就職し出産間近で退職。
大好きだった仕事は12年間。
あまり色々な職業の経験がない事と やっと慣れて楽しいと思い始めていた時の転職に正直 迷った。
1番の迷いは
「知り合いからの紹介」という事。
私が続かなかった時やミスした時などに迷惑をかける。
悩んだが決めた。
やはりこの歳でそのお給料とボーナスが貰える仕事はなかなかない。
>> 3
履歴書を見ながら5人の面接官が順番に質問してくる。
予想範囲内の質問には しっかり答えられたはず…だ。
1番偉そうな人が話し始めた。
「中川さんは女性ばかりの職場経験があるようですが、いじめや派閥がありますよ。…この会社。
耐えられる自信はありますか?
それから、この仕事は体力的にも精神的にも本当に大変な仕事です。ウチとしては定年まで続けて頂ける方を探しております。
大丈夫ですか?」
いじめ 派閥覚悟で入社しろと言う事か…
(・・;)
思わず聞いた。
「そんなに激しいいじめがあるんですか?」
隣りの男性が答える。
「いじめと言うよりは派閥ですね。よくある○○派 VS ○○派…ってな感じの傾向がありますよ。」
「そういう事ですか。大丈夫だと思います。以前の職場もそういう傾向はありました。
それから、私は今まで1つの仕事を長く続けてきましたし生活もありますから
頑張ります!!」
………面接終了!!!!!
緊張した(-.-;)
>> 4
面接が終わった者から筆記試験に移る。
別室に監視員?の男性が1人。
筆記試験は国語と数学と英語。
それぞれA3の用紙1枚。
やべー………。
永井さん「簡単な小学生レベルの筆記だから勉強なんかしなくても大丈夫!」
って言ってた癖に嘘つき(-_-#)
数学以外はまぁまぁ書けた。
分からない問題は仕方ないので提出し挨拶して本日は終了。
採用者のみ後日 連絡が来るようだ。
まぁ落ちたら落ちたでしょーがない。
私は退職する予定の職場に1つお願いをしていた。
「もし採用されたら、研修期間は給料が少ないので…良ければ土日だけ続けさせて欲しい」と。
店は土日が特に忙しかった為、快くOKしてくれていた。
ダメだった時はもちろん店に残ってね♪とも言ってくれていたので気持ちは多少 楽だった。
>> 5
数日後………。
「採用」の電話があった!!!
あの筆記試験で大丈夫だったんだ( ̄∀ ̄)
あと1人は誰だろう…。
私は面接が1番だった為、待合室でも ほとんど他の人と会話と言う会話はしていなかった。
それからまた数日後。
制服の配布と社内見学・説明があり、行く事に。
あとから来た女性はやはり永井さんが声をかけたと言う女性だった。
彼女曰わく
「残りの3人は次の為のストックらしいよ♪」と。
彼女は私より永井さんとの付き合いが長く仲が良い感じだった。
あ~そっか。
いじめや派閥で辞めてく人も多いって言ってたな。
そんなストック作っておく程 入れ替わりが激しいって…
なんとなく不安になった。
>> 7
この日は同期になる吉田さんと一緒に帰った。とは言え、吉田さんの自宅は会社から近い。なので、お茶をして帰ることに。
吉田さんはあたしと違い
明るく社交的でハキハキした姉御肌タイプの人でよく喋る。
完全にあたしは聞き役だ。
「ねぇねぇ。今日、顔見たぁ?超ぉぉ怖そうなおばちゃんいっぱいいたよね!!」
年上だからか まるでタメ口だ。
あたしは少し人見知りするのと この日がキチンと話をするのが初めてだった為 敬語。
「緊張してたのもあって、あまり顔見れませんでしたよ。でも空気が怖かったですね」
「怖かったよぉ!!一番手前にいた女なんて、すげー顔であたしのこと見てたし!!何様?って感じぃ(;`皿´)」
「ハハッ。よく見てますね(笑)」
「あとさぁ。すげー頭した女がいたよね!!(*´艸`*)」
「え?どんなですか(笑)」
「見た目どぉ見ても50歳位のおばちゃんなのに耳の上で2つにお団子してる人!」
よく見てるな…。
この余裕の差…。
ちょっと疲れそうな感じだな。
>> 8
結局この日は2時間位 話して別れた。
―そして―
入社日。
あたしは早めに着き朝礼まで指示された場合で待機。
吉田さん…まだ来ないな…。
結局ギリギリに来てなんとかセーフ。100人位の人前で入社の挨拶をした。
やはりあたしが先(*ω*;
この時 一番前例と後列にいた数名の顔を見た。確かにみんなキツそうな感じだ…。
この日は午前中、主任の女性に仕事を教わり午後は研修。
終わって3階へ戻る。
最後に簡単な連絡事項を部長やら課長が話し終了。
帰り際 吉田さんが少し遠目から
「凛ちゃん♪また明日ね!!」
と元気よくバイバイして帰った。
早速 初日から主任に怒られた。
「中川さん!会社にいる間は同期でも後輩でも必ず『さん付け』で呼びなさい」
「はい。すみませんでした」
やれやれ、疲れた初日だった。
約1ヶ月間このリズムの仕事が続いた。
>> 9
ようやく独り立ちし段々と仕事にも慣れてきた。
先輩達とランチすると やはり女性の職場独特の臭いがプンプンする。
一般的に良く言われる事。
女は陰口や噂話が大好きだ。
「○○課の○○とウチにいた○○は付き合ってるのがバレて辞めたらしいよ!」
だの
「○○は男好きだよね~男の前だと全然、別人だよね!」
だの。
そんな会話の中でウチの課の上司の名前が出てきた。
ウチの課には、3人だけ男性の上司がいる。
どうやら、「誰々とデキてるネタ」が私達が入社する前にオオゴトになり散々モメたらしい。
○○さんって あの綺麗な人だ~。○○さんは子煩悩そうな人だよなぁ…
お互い既婚者だよね?
まぁ良くある話か!!
なんて思いながら、ただ聞いていた。
>> 10
ある日あたしは仕事でミスをした。
今思えば大したミスでもなく よくあるクレームの中の1つ。
だが、新人だったあたしにはかなりショックな事だった。めちゃめちゃ凹んでいた。
あたしは入社してからずっと「この仕事はあたしには合わない、辞めたい」と思っていた。でも紹介で入ったからには頑張らないと!!!!!と思って頑張っていた。
そこへ課長・鈴木博文に呼ばれた。鈴木さんはみんなの嫌われ者。 ヤダなぁ~と思いながら会議室へ。
もちろん内容は今日のクレームについて。かなり こっぴどく言われイヤミをダラダラ言われてる内に段々と情けなくなってきた。 悔しさと情けなさで涙が出そうだ。 必死に耐えたが………ついに出てしまった。
泣き出したら止まらず気がつけば定時の5時が30分も過ぎていた。出て行きたくても この姿を人に見られたくない。変に騒がれるのも嫌だった。
あたしは鈴木さんに
「落ち着いたら帰りますので先に出てください」と頼み しばらく落ち着こうと会議室に残った。
誰かがノックもせず静かに入ってきた。
噂の男。織田 敦。
入社前にモメたと言う男………。
>> 11
「大丈夫?」
「………すみません、大丈夫です。もう帰ります」
「ここで1時間以上ずっと説教されてたのか?…あんなん気にするようなミスじゃないのに」
「あ…でも、あたしの不注意なので。すみませんでした」
「もう暗いし雨降ってきたから帰りな…あ!…傘ある?」
「はい」
うわぁ~!こんな泣き顔見られて最悪(-_-#)
だが、織田さんの手前、一緒に会議室を出てあたしは帰った。傘なんてない。濡れて帰りたい気分だった。
ボーっと歩いてると、誰かが走ってきて そっと傘を差し伸べてくれた。
織田さんだった。
「風邪ひくぞ!」
「あ………すみません」
「ちょっと時間ある?少し飲んで行かないか?」
そんな気分でもなく迷ったが わざわざ追いかけて来たと言うので飲んで帰る事にした。
この日から………
少しずつ、少しずつ距離が近くなっていく。
>> 12
居酒屋に入ったはいいが、あたしは見た目かなり酒好きで強そうに見られるが…実はお酒が飲めない(・・;)
しかも人見知り。
気分がオチていた事もあり何を話していいか分からない。
織田さんが色々話してくれた。
今までに辞めてった人の話。
会社の人間関係。みんなミスしながらも今に至る事。
そして、自分は1人1人との信頼関係を大切にしている…と。
誰に相談していいか分からなかったら いつでも俺に話してくれと。
あたしの心も少しずつ落ち着き 今まで誰にも話せずにいた不安な部分や悩みなどを話した。
段々、打ち解けていった時 織田さんが携帯を出した。綺麗な奥さんと可愛い子供の写メ。
幸せアピールか?(笑)と思いつつ、あの事を思い出した!
「織田さん!ちょっと耳にしたんですが、変な噂たてられて大変だったみたいですね(笑)………ヤバいんじゃないですか?サシで飲んでるとこ誰か見てたら また誤解されますよ(*´艸`*)」
織田さんは困惑した顔でその時の事を話した。あれには相当 参ったと。
>> 13
そんな話をしていると織田さんの白いワイシャツの胸ポケットで携帯が光っているのに気づいた。
「織田さん!携帯光ってますよ」
「ああ…」
パッと画面を見て また胸ポケットにしまう。…また光っている。私は気になって仕方ない。
「奥さんじゃないんですか?待ってますよ。今日はありがとうございました!そろそろ帰りましょうか」
「あぁ…子供待ってるか!?俺はもう終電ないから会社に泊まりだな(笑)」
え…?
終電ないって(*・ω・*)
織田さんの自宅はかなり遠かった。
「気づかなくてすみませんでした」
「気にしないで!俺が誘ったんだし俺しょっちゅうだから。会社が家のようなモンだよ(笑)あ!何かあったらメール出来るようにアドレス教えとく!」
あたしからメールする事はないだろうが、社交辞令的な物だと思い交換した。大丈夫だと言っても送ると言うので駅まで送ってもらい、この日は帰った。
>> 14
次の日 何人かの先輩に
「昨日は大丈夫だった?」と声をかけられた。
「はい。ご心配かけてすみませんでした。大丈夫です!」
この時はあたしにはまだ仲良しと言える先輩がいなかった。
素直に嬉しかった。
ベテランに見えたが あたしより5ヶ月前に入社したばかりと言う先輩、木村さん。
「私なんてミスの連続だったよ!って言うか今もミスばっかだけど!凹むよね~。でも大丈夫だよ。ここに1番仕事デキない人間がいますからぁ~(笑)何度、鈴木に呼ばれた事か!」
木村さんが続ける。
「でも私も嬉しいよ。やっとこうやって話せる人が出来て。ここの先輩ってさ、なんか感じ悪いよね。私、2回も呼び出しくらったし!…くだらないんだよ!内容が」
木村さんは…
織田さんに悩みを聞いてもらった事がないんだろうか…。
俺は新人とは常に近い距離にいようと思ってる、と言っていたが。
あ…
吉田さんは?
吉田さんは既に職場に打ち解けているが、織田さんとは?
あ、そっか!
あたしの場合 泣いたの見られたから…か!
>> 15
それからあたしは木村さんとたまにお茶をして帰ったりするようになった。
木村さんは酒好きだが、あたしが飲めないのでいつもコーヒーを飲んで帰る。
仕事に対する不安や悩みも 聞いてくれる人がいると随分ラクになる。
職場はいくつかのグループがあるがあたしと木村さんはどこにも属さないタイプだ。
当たり障りなく誰とでも話すが、特に仲良しグループはない。
だが、織田さんは見ていたのか 段々あたし達を飲みに誘ってくるようになった。
いつも決まって声をかけるのは木村さんに。
木村さんは酒好きなのと子供も自立していて自由だから断らない。
あたしは昔から男性に声をかけられるタイプではない。
いつもこの2人に半ば強引に連れて行かれる感じだった。
>> 17
朝、決まった時間に織田さんからメールが来るようになった。 …と言っても あたしと木村さん宛ての一斉メール。
「おはよう!!今日も1日頑張ろう♪」
織田さんは遠いから電車の中で暇なんだなぁー、きっと。
と思い あたしは返信する。
「おはよう!!頑張ろうね♪」
…そこからは、一斉メールではなく個々宛てに来る。なんの疑いもせず、あたしと木村さんの2人とやり取りしているモノだと思っていた。
織田さんの返信は早い。絵文字もいっぱい。
随分マメな男だな…と感心する位 毎日の日課になっていった。仕事中も気づけばずっとメールしてる日もあった。時間の許される限り。
そんなメールのやり取りにも慣れた頃、あたしには1つだけ気になっていた事があった。
木村さんは織田さんとメールしてる話はしてこない。
でも あたしは同じようにメールしているモノだと思い込んでいた。
ちょっと聞いてみた。
>> 18
「織田さんってマメですよね(笑)あのメールのやり取りを何人としてるんだろ?」
「ハハッ!私は朝忙しいから返信するの毎日やっとお昼過ぎ(笑)だからメールもそっからはほとんど来ない(笑)」
………………ん?
………………えっ?
木村さんとは、そんなにメールしてないの?
あたしにはかなり頻繁に来る。
しかも「気になっていた事」。 そう………織田さんからのメールにハートの絵文字がやけに多くなった事。
でもあたしは、木村さんにもしてるモノだと思っていたから
誰にでもハートをよく使う人なんだと思っていたんだ。
してはいけない意識をこの日辺りからしてしまっていたんだろう。誰に話す事もなく、お互い確認し合う訳でもなく。
いけない恋の始まりは、この日から始まってしまっていたんだ。
誰にも言わない・言えない密かな想いは、この日からあたしの胸に膨らんだ。
でもまだセーブ出来ていた。
密かな想い。織田さんは既婚者。綺麗な奥さんと可愛い子供達。あたしに見せた写メには花柄のカーテン 赤いソファー 幸せな家庭が映っていたから…。
頭では分かっている。
でも織田さんからのメールが毎日 楽しみになっていた。織田さんは何も深い意味などない。 そう思うあたしと、ハートの絵文字にイチイチ ドキドキするあたしがいたんだ。
>> 19
しばらくそんな日々が続く内に織田さんがやたら言うようになった。
「サシでもいーぞ!」
「サシで行くかい?」
「俺はいつでもOKだぞ!」
行けるハズがない。
OK出来るハズがない。
「あたし飲めないのに2人で行ったって織田さんツマンナイよ!!」
もし万が一、織田さんにその気があったら…
あたしの中の密かな恋心が織田さんに伝わるのが怖かった。
あたしは恋愛すると、それしか見えなくなる。自分でわかっているから一歩も踏み込んではいけない事だと必死で自分を止めていた。
思い出した。
入社して間もなく あたしがミスして泣いたあの日 2人で初めて飲んだあの日 織田さんが言ってた言葉。
その言葉は何度も織田さんの口から聞いた。
「俺は尊敬していた上司が1人いて!この何年間、その上司の言った言葉だけは絶対に守ってきた。それに、そういう目で女性を見た事も本当に1度もないんだ!」
その上司の言葉とは、
「何があっても社内の女には手を出すな!」
そうだ!!
織田さんはあたしに気があるわけじゃない。これも大事にしているコミュニケーションの1つなだけか!
勝手にドキドキしてる自分が笑えた。
このままでいれば良かったんだ。お互いにセーブしたまま、そのままの、今までの関係でいれば楽しかったはずなのに…。
あたし達は間違った道に…
進んではいけない道にハマっていく。
>> 20
夏。
忘れもしない8月のクソ暑いあの日。
その日は木村さんとまた3人で飲む約束の日だった。
しかし、暑さでバテたのと夏風邪をひいた木村さんは珍しく飲みに行くのを断ってきた。
初めてのドタキャンに、もちろん飲みは延期になると思ったあたしは帰ろうとした。
メールが鳴る。
「おいおい!帰るなんて言わせないぞ!今日こそサシ決行だ!キムさんはまた次回行けばいい!」
突然の事で
断る口実が見つからない。
「じゃあ、汗かいたから家でシャワー浴びてからでもいい?でも待たせるから中止しない?」
「いくらでも待つから。ゆっくり用意して来て!」
最後はハートだ。
ドキドキした。緊張した。でも嬉しくて嬉しくて鏡の前で何枚も着替えてみるあたしがいた。
「ただ2人で飲みに行くだけ」
自分の中で言い訳をしながら待ち合わせの飲み屋に向かった。
まだこの時は高鳴る胸を抑えながらも冷静でいられた。決して、してはいけない事の判断くらいは出来るあたしだった。
─そして─
笑顔で待ってる織田さんがいた。
- << 24 織田さんが色んなグループの女性達とよく飲みに行き、会社によく泊まっている事は知っていた。コミュニケーションを大事にしたいから、と言っていた。 ウチの課は定年に近い50代と中堅の40代の女性が多く あたしと同じ30代が少ない。 3人しかいない男性社員はあたし達と歳が近い。 「若いとね、勝手な噂が先走りするから!男性とは必要以上に仲良くしない方がいいよ!」と良く忠告されたりもした。 そんな忠告は頭の片隅にはあったが、みんな何だかんだ言って飲んだりしてんだからいいんじゃね?位にあたしと木村さんは思っていた。 でも今日は違う。2人きり。 色んな人達と飲み慣れている織田さんが言った。 「俺!サシで飲む事はほとんどないんだ!緊張すんねぇ~!」 やめてよ…そんな事 言われたらあたしも緊張すんじゃねーか( ̄○ ̄;)
>> 21
夏。
忘れもしない8月のクソ暑いあの日。
その日は木村さんとまた3人で飲む約束の日だった。
しかし、暑さでバテたのと夏風邪をひ…
織田さんが色んなグループの女性達とよく飲みに行き、会社によく泊まっている事は知っていた。コミュニケーションを大事にしたいから、と言っていた。
ウチの課は定年に近い50代と中堅の40代の女性が多く あたしと同じ30代が少ない。
3人しかいない男性社員はあたし達と歳が近い。
「若いとね、勝手な噂が先走りするから!男性とは必要以上に仲良くしない方がいいよ!」と良く忠告されたりもした。
そんな忠告は頭の片隅にはあったが、みんな何だかんだ言って飲んだりしてんだからいいんじゃね?位にあたしと木村さんは思っていた。
でも今日は違う。2人きり。
色んな人達と飲み慣れている織田さんが言った。
「俺!サシで飲む事はほとんどないんだ!緊張すんねぇ~!」
やめてよ…そんな事 言われたらあたしも緊張すんじゃねーか( ̄○ ̄;)
>> 24
この日は飲みは程々にしカラオケに行った。飲めないあたしに気を使ったんだろう。
薄暗い部屋に織田さんと2人きり。今日の織田さんはあまり酔っていない。
「会社の飲み会の時にさ!2人で歌えるイイ曲ないかな?」
織田さんが言う。
あたしは曲を探した。気づくと反対側に座っていたはずの織田さんがあたしの後ろにいる。
そっと一緒に本を覗き込んでくる。一気に距離が…近くなった。
ドキドキしないハズがない。
心臓が飛び出そうな位ドキドキでいっぱい。早く雰囲気 変えないと!
そう思ったあたしは言った。
「これは?」
globe?glove?のface。
歌ってみた。
織田さんが離れた。
ホッとした。
「これは無理だろ~!(笑)」
カミカミで歌う織田さんがおかしくて2人で笑った。
楽しかった時間が過ぎ、帰り際…。思いもしなかった事を織田さんが言った。
「凛…。ほっぺにチューして」
え?(・_・;)
織田さん、そんな酔った感じじゃないのに……………。
>> 25
もちろんするハズがない。
あたしはお酒も飲んでいない素面。
「酔っ払った勢い」なんて言う言い訳も通用しないんだから。
「ダメ!」
笑って答えた。
「じゃあ、ココ!」
おでこを指差している。
「ダメだよ!」
強く言った。
織田さんは諦めて歩き出す。終電がなくなったあたしのタクシーを拾うまでの道。無言のまま………手を繋いできた。
酔っ払ってるんだな、と思った。あたしをタクシーに乗せると 少し寂しげな顔で
「気をつけて帰れよ!また明日な!」
「うん、また明日ね!ありがとう♪」
織田さんは来た道を戻って行った。今までの織田さんとは違う織田さんな気がした。
ホッとしたような少し寂しいような、そんな自分がいた。
>> 26
次の日の朝。
今までと同じようで違う1日の始まり。この日から朝のメールは一斉送信じゃなくなった。
「凛!昨日サシで飲んだ事、キムさんは知ってる?」
「ううん。言ってない!」
体調が悪くて行けなくなったのに、あたし達だけで飲むなんて知ったら気分悪くしないか気になったから言ってなかった。
「言わない方がいいのかな?凛どう思う?」
「うーん。聞かれたら言えばいいんじゃない?」
「いや。実は昨日、凛といる時にキムさんからメールが入っててさ…『飲みは程々にね!』ってメールが来てたんだ!隠すのもおかしいのかと思って凛に聞いてみたんだ」
多分、木村さんは来たかったんだろう。あたしには何も言ってこない。ヤキモチな気がした。
「言わない方がいいかもね。人が具合悪いって言ってんのに2人は楽しんでたって知ったら気分悪いかもしれない」
「そうだよな…わかった!」
隠す必要なんてなかったのかもしれない。でも帰り際の出来事を思い出すと言ったらいけない気がしたんだ。
あたし達は結局、言わなかった。
─そして遂にこの日─
ここからあたし達の「許されない事」が始まってしまう。
>> 27
この日は夕方から会社のイベントがあった。自由参加だが大半の人が参加する。
あたしは興味もないし大勢の人に交わるのが苦手だから初めから欠席にしていた。織田さんは出席予定だった。
仕事が終わる定時が過ぎた頃、みんなはイベントへ流れ、あたしは帰ろうとしていた。そこへメールが。織田さんからだ。
「凛、今日は行かないんだろ?俺も行かない事にした!何?暇で暇でしょーがないって?(*´艸`*)俺もみんなイベント行って暇人確定!今日も仕方なく凛に付き合ってやるか!」
「2日連チャン?」
「嫌かい?」
嫌な訳がない。むしろ嬉しい。でも…いいのかな…。
「織田さんと2人で飲むのも免疫ついたからいーよ」
「よっしゃ!決定\(≧∇≦)/」
織田さんのテンションは高かった。この日はイベントでみんなが会社の近くにいる事もあり場所を変えた。
「どこ行こうか?お好み焼きじゃあ、まるでデートみたいか!?やっぱり飲みか!?」
織田さんはウキウキしている。昨日の帰り際 寂しげに思えたのは気のせいか。
結局また居酒屋へ行った。
>> 28
仕事の話だけじゃなく色んな話をした。織田さんはあまり家に帰らないイメージだったが広くて綺麗なマイホームがある事、2人の子供の事、初めて付き合った女性が奥さんな事、あたしの息子の事、離婚した経緯…など。
この日は金曜日で次の日が休みな事もあって随分、話した。息子はおばあちゃん家にいたから あたしも時間は気にしなくてよかった。
随分、話した後お決まりのカラオケへ。いつもと違う店で2人だから部屋も狭い。必然的に隣りに座る。この狭くて薄暗い空間にあたしと織田さんが2人きりでいる。
部屋に入って何曲も歌っていない、あたしが曲を選んでいると………いきなり織田さんがキスをしてきた。勢いに任せるように激しく。
一瞬で頭が真っ白になった。
>> 29
ビックリした。
「ちょっと!!!何してんの!?」
こんな言葉しか出ない。
一度 唇は離れたが更に勢いを増してキスをしてくる。勢いの余りあたしは椅子に倒れた。織田さんの手があたしの胸へ…。下へ…。
「織田さん!ダメ!人に見られる!」
織田さんは興奮している。更に更に激しくなる。
「織田さん!ダメだって!!!」
抵抗はしているが、止められなかった自分の欲望。密かに抱いていた恋心は一瞬にして崩れた。もちろん
「してはいけない事」
わかってはいたが受け入れてしまった愚かなあたし。 好きな人に抱かれたい。
「織田さん…ここではやめよう」
織田さんは動きを止め
「場所変えよう」とカラオケを出た。ちょうど近くにラブホがあった。入った途端、もう織田さんの勢いは止まらなかった。
あたしが受け入れてると、激しさは優しい愛撫に変わる。
さっきまでの勢い任せなキスから舌を絡め合う優しく長いキスへ。あたしの小さな胸に…首に…耳に…。
秘め続けた想いは隠せなくなった。止められなかった罪の始まり……………。
>> 30
織田さんは何も言わない。
「好きだ」とも「ごめん」とも「付き合って」とも…
何も言わず嬉しそうにイチャイチャし そしてまた あたしを求めてくる。
あたしは織田さんが何も言わないから あたしも聞かなかった。一夜だけの過ちなら それでもいい。織田さんは酔っていた、そう思えばいい。
ただ1つだけ気になった。
他の女性ともこんな関係があるのなら、今日であたしは織田さんから離れよう。そう思った。
「ねぇ…噂された○○さんとも本当は付き合ってたの?」
「あれは違う。本当に今までこういうのはない。初めてだ。昨日はすげー目の前にある凛のうなじにムラムラしてたが…まだ理性が勝った!………今日は理性が負けた。我慢出来なかった」
やっぱり、したかっただけね…。まぁ男なんてそんなモンだ。
織田さんはまたあたしにキスをし今日は思う存分あたしを抱きたいと言わんばかりにあたしを抱き続けた。
力尽き…2人とも寝た。
そして朝が来る。
>> 31
昨夜もあまり酔った感じはしなかったが、目が覚めて酔いも覚めた織田さんがどんな反応をするのか気になった。
織田さんが目を覚ます。
「凛、起きてたんだ?おはよう」
「おはよう」
チェックアウトまでまだ時間がある。どうするんだろう…。
「凛、時間は平気か?」
「あたしは大丈夫。織田さん早く帰らないとね!」
化粧をしようと立ち上がろうとすると あたしの手を引っ張り またキスをする。一体 何回したんだろう…。
2人でシャワーを浴び帰り支度をした。別れ惜しそうにしていたがバイバイした。
織田さんの帰りの電車の間中ずっとメールをした。あたしは何となく歩いて帰りたい気分で歩いて帰った。
もうすぐで着く頃 あたしは聞いた。何も言わない織田さんの気持ちが知りたかった。
「ねぇ…織田さん。今日の続きはあるの?」
「あ…言ってなかったね!好き!!これからも宜しくお願いします!あれ?もしかしてヤダ?」
>> 33
会社にも家庭にもバレてはいけない恋愛。誰にも言えない・話せない恋愛。
織田さんは奥さんが初めて付き合った女性。長く付き合った後 若くして結婚した。他の女性を知らない。基本的には真面目な性格で恋愛には不慣れで不器用だ。
織田さんは完全に舞い上がっている。それはあたしも同じだったが 付き合い初めなんてこんなモンだろう。
時間が許される限りメールして電話して。
織田さんは元々、残業やら飲んで会社に泊まる事が多かった為 頻繁に逢う事も可能だった。
あたしは寂しがり屋。織田さんが帰宅した後 土日は寂しかったが、織田さんは以前から飲みに行かない日は終電ギリギリまで仕事する事が多く 終電で帰っても最寄り駅に着く頃はもう日付が変わる。遠いから朝も早い。付き合う前からメールもマメにくれる人で返信も必ずくれる。
この頃は寂しいと言うより常に一緒にいた、メールも頻繁に出来たから安心出来る人だった。
>> 34
あたしは20歳で結婚し出産した。一回り年上の旦那とあたしのおばあちゃんと言ってもおかしくはない歳の姑と同居した。
蓮が生まれ幸せな新婚生活…………なんて、1年も続かなかった。旦那の収入は不安定。月に5万しかない時も増えていく。蓮が生まれるまではあたしも働いていたから何とかなっていたが生活はキツかった。
あたし達は姑の住む団地で同居した。姑は細かい。少しでもお皿のしまう場所が違うと指摘され 口癖のように「今の若い人は…!」と言われる。あたしが買ってきた物には決して手を付けない。冷蔵庫の中には常に封を切った牛乳が2本と玉子が2パック。間違えて使うモンなら「凛さん、これは私のじゃないかしら」と指摘される。魚を焼いた後はすぐにグリルを洗わないといけない。「あとで」なんて許されない。
「私はもう年寄りだから蓮の面倒は見れないわよ」とも言われた。自分の息子が働かないにもかかわらず「貯金しなさい」とも。
あたしのストレスは次第に増していく。
- << 37 コツコツ貯めた貯金も底をつきそうになり、あたしは働こうと決意する。蓮はまだ1歳になっていない。それでも生活の為には働かなきゃならなかった。 案の定 反対する旦那と姑。 「蓮が可哀想」 あたしは反対を押し切り、蓮を預けて出来る仕事を見つけ働き始めた。あたしの仕事は頑張れば頑張っただけ収入が増えた。ひたすら頑張った。業績は常にトップ1・2には入れる位 頑張った。これが逆効果になる。 益々、旦那は働かなくなった。 「蓮の為に働いて」と頼めば働こうとはするが3日も続かない。あたしは旦那に自分の収入は3分の2としか言わず 残りの3分の1は貯めた。いざと言う時の為に内緒の貯金をした。 旦那は働かないだけで人としては悪い人ではなかった。でも、あたし達は蓮が生まれてからセックスもない。20歳そこそこの女が「凛はお母さんであって、もう女として見れない」と言われる。 あたしの人生… こんなんでいいのか…
>> 35
あたしは20歳で結婚し出産した。一回り年上の旦那とあたしのおばあちゃんと言ってもおかしくはない歳の姑と同居した。
蓮が生まれ幸せ…
コツコツ貯めた貯金も底をつきそうになり、あたしは働こうと決意する。蓮はまだ1歳になっていない。それでも生活の為には働かなきゃならなかった。
案の定 反対する旦那と姑。
「蓮が可哀想」
あたしは反対を押し切り、蓮を預けて出来る仕事を見つけ働き始めた。あたしの仕事は頑張れば頑張っただけ収入が増えた。ひたすら頑張った。業績は常にトップ1・2には入れる位 頑張った。これが逆効果になる。
益々、旦那は働かなくなった。
「蓮の為に働いて」と頼めば働こうとはするが3日も続かない。あたしは旦那に自分の収入は3分の2としか言わず 残りの3分の1は貯めた。いざと言う時の為に内緒の貯金をした。
旦那は働かないだけで人としては悪い人ではなかった。でも、あたし達は蓮が生まれてからセックスもない。20歳そこそこの女が「凛はお母さんであって、もう女として見れない」と言われる。
あたしの人生…
こんなんでいいのか…
>> 37
旦那は地方で仕事が出来た!と帰らない日が次第に増える。旦那には目指す「夢」があった。
でも、ごめんなさい。
あたしにはその「夢」を応援する気持ちが薄れてきた。
家計の為に精一杯 子育てしながら働いた。姑に散々イヤミを言われながらも耐えてきた。
何のため?
愛ってなんだろう………。
セックスも無ければ夫婦の会話もない。旦那は帰ってくれば姑といる。あたしと蓮は違う部屋で襖を閉められる。
もう頑張ったよね…あたし。
蓮…。ごめんね…。
蓮をパパのいない子にしちゃうけど、パパの分もママ 蓮にいっぱい愛情を注ぐから!
蓮、ごめんなさい…。
あたしは決めた。
100万貯めたら出て行こう…!
>> 39
「別れよう」
あたしに拒否する理由はもうない。同じように同じ事を考えていたんだね…。
もうとっくに「愛」なんて無いと思っていたのに…何故か涙が出た。旦那も泣いていた。
「別れた方がいい関係でいられる場合もあると思う」あたしは言った。旦那は予期せぬ言葉に驚いていたが いくつか約束をさせ あたし達は離婚した。
蓮5歳、保育園年長さん。
あたしは旦那に感謝している。離婚しても金銭的にはやっていける自信を持たせてくれた。がむしゃらに働いてきたから、蓮と2人になっても困らない生活費は稼げていた。
ストレスから解放されたあたしは穏やかになり、蓮にまっすぐに愛情を注ぐ事が出来るようになったんだろう。
蓮のチックはいつの間にか治っていた。
蓮の為に………
どっちがよかったのかなんて分からない。けど、あたしに出来る事は一生懸命 働いて まっすぐに蓮と向き合う事。
結婚して5年。
離婚して2年。
あたしは女ではなく、母親として精一杯 生きてきた。恋愛なんてしてる場合じゃなかった。
>> 40
蓮と2人の生活にも慣れ、蓮は小学校高学年になる。反抗期…。蓮は同級生より早い成長期で背も高く筋肉質で声変わりもした。
中学校。悪さばかりする。でもスポーツで鍛えられた基本的な事は忘れていない。人一倍、友達を大切にし優しい性格。
悪さが楽しい時期はある。間違った事との線引きが出来れば多少の悪さは通り道。色んな経験をして色々 学んでいく。
蓮はたくましく育ってくれた。…と、あたしは思っている。
ママ、そろそろ恋愛してもいいよね?
気づけば離婚して11年。
27歳の時 恋愛したっきり もう泣く恋愛は嫌だと避けてきた。自分で言うのもナンだが、モテない訳じゃない。出逢いはあった。声もかけらるた。
あたしがただ面倒くさかった。
それが、織田さんとの出逢いで変わっていく。
(※年数の計算に若干ズレがあるかもしれませんが気にしないでください)
- << 45 織田さんは誠実な人。必ず約束は守ってくれる。そして、時間が作れる限り逢ってくれる。 時には居酒屋、時にはファミレス、時にはマック…。ほんの30分でも一緒にいられる事が嬉しかった。 「今日は帰らなきゃいけないから」 と言って一杯だけのつもりで居酒屋に入り、やっぱり一緒にいたいと言い朝までいた日も多々あった。 「今日はあまり時間がないから」 とマックに入り、別れ際 寂しくて涙ぐむあたしに「まったくしょーがねぇなー(笑)」と言いながら朝まで一緒にいてくれた事もある。 織田さんの携帯は毎回 光り続ける 。…奥さんからの電話…。 「織田さん…携帯…」 と言うと あたしを気にさせない為に携帯をしまう。 織田さんが寝た後にこっそり携帯の画面を見ると 着信が30回 メールが何通も。 心が痛い。 チクチクチクチク… 心が痛む。 自分のしている事を棚に上げて 携帯が光る度 胸が痛かった。
>> 41
蓮と2人の生活にも慣れ、蓮は小学校高学年になる。反抗期…。蓮は同級生より早い成長期で背も高く筋肉質で声変わりもした。
中学校。…
織田さんは誠実な人。必ず約束は守ってくれる。そして、時間が作れる限り逢ってくれる。
時には居酒屋、時にはファミレス、時にはマック…。ほんの30分でも一緒にいられる事が嬉しかった。
「今日は帰らなきゃいけないから」
と言って一杯だけのつもりで居酒屋に入り、やっぱり一緒にいたいと言い朝までいた日も多々あった。
「今日はあまり時間がないから」
とマックに入り、別れ際 寂しくて涙ぐむあたしに「まったくしょーがねぇなー(笑)」と言いながら朝まで一緒にいてくれた事もある。
織田さんの携帯は毎回 光り続ける
。…奥さんからの電話…。
「織田さん…携帯…」
と言うと あたしを気にさせない為に携帯をしまう。
織田さんが寝た後にこっそり携帯の画面を見ると 着信が30回 メールが何通も。
心が痛い。
チクチクチクチク…
心が痛む。
自分のしている事を棚に上げて 携帯が光る度 胸が痛かった。
>> 45
この日もいつものようにマックでお茶をしていた。たわいもない会話。
織田さんは女心に疎い。あたしといても平気で奥さんの話や子供の話もする。あたしも蓮の話をするから 別にそれはよかったが………
「……………ほら!ウチのカミさんは今 妊婦だからさ。免除してもらってるんだよ!」
…え?
今 なんて言った?
なんて言ったの?
「織田さん…今…なんて言った?」
「ん?」
「子供のサッカーで…なんて言った?」
「…え?………あれ?…え!…あれ?凛に言ってなかったか?………知ってるモンだと…俺、話したと思うんだけど………」
織田さんはめちゃくちゃ動揺している。でも、それ以上にあたしは動揺していた。
知らなかった。
奥さんが妊婦さんだなんて…。
とてつもなく情けなくて悲しくて…あたしは何も言わずマックを出た。
>> 46
涙が止まらない。自分がどこを歩いてるなんて気にも出来ないくらい泣きながら歩いて歩いて………。
色んな事が頭をよぎる。
なぁーんだ。織田さんは幸せなんじゃん!何ヶ月か後には可愛い赤ちゃんが生まれるんじゃん!………奥さんともエッチしてたんだ………。
なぁーんだ、なぁーんだ、なぁーんだ。
男の浮気は奥さんの妊娠中が1番多いって聞いた事がある。なぁーんだ、織田さんもその内の1人だっただけか! 所詮、ただの浮気相手だっただけなんだ…あたし。
あたし…
奥さんが妊娠中だって初めから知ってたら 付き合ってたのかな?
後ろなんて振り向かずに歩き続けた。今どこを歩いてて どこに向かってるなんて関係なかった。それを知っても落胆するだけで織田さんを殴って バカヤローと責めて 大嫌いになれない自分が悔しくて情けなくてたまらなかった。
織田さんは電話で何やらモメながら必死にあたしを追いかけている。
行き当たりばったりで歩いていたあたしは行き止まりにぶつかった。
>> 47
「凛…!ごめん。隠してたつもりではない。知ってると思ってたんだ。……凛…。」
振り向かずに聞いた。
「今…何ヶ月?」
「…5ヶ月…。」
あたしと付き合う前か…
「………幸せにね!」
「おい!今日は帰らない!もう帰らないって電話した!今日は凛といる。凛といたい」
そんな甘い言葉にまんまと騙されるバカな女がここにいる。あたしはいつもそう。
頭では分かっている。何度も何度も「別れよう」と思いつつ この男の真剣な目と甘い言葉に決心を簡単にも揺るがされるんだ。
そして自分に甘く自分の弱さが「ただ一緒にいたい」と言う気持ちを優先させてしまう。
合い言葉のように言っている「ずっと一緒」なんて叶うはずかない事を知りながら………。
>> 48
この日以来、織田さんはあまり家庭の話をしなくなった。あたしもあまり聞かなかった。聞けば傷つくのが分かっているから。
ズルい女。汚い女。最低な女。
たった1度だけだが出産経験はある。精神的にも身体的にも不安定な奥さんがいるのに…
それを知りながらも まだあたしは織田さんといる。
織田さんは心配性なあたしを不安にさせない為か「凛以外、やましい事は一切してないから!」と携帯もいつも無造作に置きっぱなしでいる。
だからあたしは、携帯が鳴り続けるのも目の前で見ている。
本来のあたしなら人の携帯なんて絶対見ない。でも、妊娠中の不安定な時期の奥さんがどんなメールをしてきてるのか気になる。何度か中身を見てしまった。
案の定 奥さんは精神的にオチた内容のメールをしている。
奥さん…
ごめんなさい…
あたし最低な女です。
それから時は過ぎ
ちょうど付き合い初めて4ヶ月に入ったあの日の夜。
>> 49
「織田の妻です。
どういうつもりで織田とメールしてるんですか?
あなたにも家庭があるんですよね?
もうやめてください。
織田共々、迷惑してます。」
知らないアドレス………。
妻……………?
バレた?
携帯………見られたの?
それしか考えられない。
織田共々………?
今 織田さんはどんな状況なんだろう。
織田共々って言うことは………
「俺も迷惑なんだ」
とでも言ってる?
織田さんは不器用。結婚して以来、初めての恋愛。浮かれていた。危ないなぁ…と不安だった。
でも…こんなに早く?
まだ付き合って4ヶ月。
終わっちゃうのかな………あたし達………。
何も手につかず悲しい気持ちでいっぱいになった。
でも、どこか冷静なあたしがいた。
奥さんに返信はせず、しばらく考えていた。
そう…27歳の時の恋愛。
あの時を思い出していた。
- << 51 27歳の時… ある事がきっかけであたしは一時期 出逢い系サイトの様なものにハマった。 そのサイトはここで言う 【仲間専用掲示板】みたいな物があって 仲間になった数名で専用スレッドで楽しむ。 1人で逢うのは怖いから そう言った大勢のスレッドで楽しんでいた。ある日みんなで飲み会をしようと言う事になり 偶然 近所だった同じバツイチママと先に友達になって逢った事があった為 一緒に参加した。 そこで知り合った陵君。 この仲間の飲み会で何度か逢った後に付き合った。 付き合い始めて半年もしない頃……… 「陵の妻です。 あなた騙されてますよ。 陵には妻子がいますから」 やはり知らないアドレスから 真夜中の突然のメールだった。 そう…あたしは『独身』の陵君と付き合っていたんだ。 あの時は何が何だか分からず、すぐ陵君にメールした。電話もした。既に繋がらなかった。何日も何日も…繋がらなかった。 騙されてたんだ。 そして…バレた瞬間に逃げられた。バレたその瞬間から音信不通になる。 あの時はいっぱい泣いた。 もう恋愛なんてしない!出逢い系なんてやめた。やっぱり所詮 出逢い系。こんな酷い男しかいないんだ。絶望感でやりきれなかった。 もう諦めて忘れよう!と思った矢先。突然メールがきた。 陵君だった。 携帯を見られ、バレてモメた際に携帯の取り合いになり 携帯を折った………データが全部分からなくなった…と。あたしのアドレスを必死に思い出し何度もメールしたが返ってきてしまい 必死に少しづつ変えてみながら送ってた、やっと繋がった…と。 「一言、謝りたかった」 あの日と同じ。 織田さんに連絡するのはやめとこう。今頃きっとモメてる………。 明日も仕事だ。朝になれば何かしらの連絡はあるはず。 祈るように朝を待つ。
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