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名無し
13/02/08 19:00(更新日時)





よく、いつから好きになったの?


どこが好き?


なんて聞くけど。




人を好きになるのに、理由や時期なんて、ない。





気付くと、気になって。

気付くと…、



その人の事思ってる。








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No.1837057 12/08/18 13:16(スレ作成日時)

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No.1 12/08/18 14:17
名無し0 


俺に、もっと踏み込む勇気があったら。


今頃、こんなにつらい思い、する事なかったかもしれない。



いつだって、キミの笑顔に癒やされてた。






名前しか知らないキミに。



No.2 12/08/18 18:18
名無し0 



仕事帰り、たまに寄るコンビニ。

いつものように、陳列されてる雑誌を開く。


特に、何かを読みたいってわけじゃなく、家に帰るまでの暇つぶしってやつで。


俺が寄る時間は、中高生も居ない、同じ社会人もまだ帰るには早過ぎる時間。


比較的、空いてる時間なのか、コンビニにしては、なんていうか、ゆっくりとした時間だ。



そんな時、店の奥の扉が開いた。


「いらっしゃいませ。」

女の声が聞こえてきた。







No.3 12/08/18 18:57
名無し0 



女?

この時間帯は、男子大学生しか居ない筈。


俺は、雑誌を手にしたまま、声がした方に顔を向けた。


確かに女だ。

しかも、コンビニの制服着てるし。



でも、それ以上気にとめる事もなく。
また、雑誌に目をやった。


そして、読んでた雑誌を手に取り、レジに向かって行った。


「いらっしゃいませ。」
慣れないせいか、緊張した面持ちで、俺が出した雑誌を受け取る。



No.4 12/08/18 20:14
名無し0 



慣れない手つきで、レジを打つ。
雑誌を袋に入れようとしたから、
「あ、そのままでいいです。」
そう言うと、ハッとして、俺の顔をちらっと見た。
「あ!はい…!」


言われた金額を渡し、雑誌を受け取った。

「ありがとうございます。」



別に何てことないやり取りだった。


ただ、彼女の笑顔を除いては。





No.5 12/08/19 08:48
名無し0 



ちょっとだけ、ハッとした。


…あぁ、営業スマイルってやつか。

まぁ、仕事だからな。


つい、冷めた目線で物事捉えてしまう…。



でも、何故だか悪い気はしない。




俺は、そんな事を思いながら店を出た。





No.6 12/08/19 09:23
名無し0 



今日も、仕事が終わっていつものように、コンビニに寄った。


俺のお決まりのコース。
まず、必ず雑誌コーナーに立ち寄って、読みたい本を物色。
それから、飲み物を買う。

そんないつもの行動に、特に意味はなくて。



ただなんとなく、辺りを見渡してみた。


彼女だ。

狭いコンビニで、客に笑顔で挨拶しながら、走り回ってる。
ちょっと、笑えた。


一緒に働いてるのは、やっぱり大学生で。

彼女は。
年は俺とあんま、変わんねえかな。
年下の大学生に頭下げながら、働いてる。




No.7 12/08/19 09:39
名無し0 



なんか、見てて飽きねえ。


そして、レジに行く。
二つあるレジのうち、俺は大学生がいるレジの方に並んだ。
俺の順番がきて、金を払って、商品を受け取る。
俺が並んだレジは、ドアから遠い方のレジで。

彼女が居たレジの前を通って、外に出るんだけど。


前を通り過ぎようとした時、
「ありがとうございます!」
彼女の声がした。

少し、どきっとした。
彼女の突然の声に、びびったのか。…

顔を見たわけじゃないが、笑顔だったのは、分かった。



No.8 12/08/19 10:39
名無し0 



結婚、してるのか…


こんな時間に働いて。

ダンナは、何も言わねえのか?



店を出た後、車のエンジンをかけながら、ふと、考えてた。


…関係ねえか…。



すっかり暗くなった駐車場で、ハンドル切りながら、ちらりと店の方に目をやると。

彼女は、相変わらず一人で走り回ってた。








No.9 12/08/19 12:37
名無し0 



実家を出て、一人暮らしを始めてから、もう何年経っただろう。


友達も居るし、仕事も順調。
これといって、不満はない。

まぁ、強いて言うなら。
結婚。か…。

お袋は、早く落ち着いてくれって、口癖のように言うけど。


俺は。

…もう、



まぁ、36にもなって、独りっていうのは、端から見ればな。
お袋の気持ち、わからねえわけじゃないけど。




結婚、か…


ふと、彼女の顔が浮かんだ。




俺…、何、考えてんだ……。

風呂に入りながら考えてた俺は、何かを否定するように、急いで風呂から上がった。




No.10 12/08/19 12:59
名無し0 



今日も、彼女は居た。

俺も毎日、コンビニに来てるわけじゃないから。
たまたま、居たんだろうけど。


最近、レジでお金を支払う時に、彼女と目が合う。
つうか、彼女の場合、誰に対しても、そうなんだけど。


俺も男だから、思いっきり笑顔っていうわけには、いかねえけど。


彼女が商品を受け取る時。
俺が、お金を渡す時。

必ず、笑ってくれる。


その笑顔が、大袈裟でも何でもなくて。

すげぇ、自然なんだ。

思わずこっちも、笑ってしまうっつうか。



ヤバい…

人前じゃあ、あんまり笑わねえ俺が…




No.11 12/08/19 13:35
名無し0 



「先輩!」
昼休み、休憩室で飯食ってると、会社の後輩が声掛けてきた。
「なんだ?いきなり。」
後輩を見ると、ニヤニヤしてる…

「お前、気持ち悪い。」
相変わらずの冷めた調子で、言ってやった。

「え?!そんな~!先輩、ヒドいっすよ~」


冗談で、泣きそうになってる後輩をよそに、俺は食べ終えた弁当を片付け始める。


「先輩、最近、なんかあったんすか~」
俺の愛情あるシツケにも、全くメゲない後輩が聞いてきた。
「なんか。って、何だ?」

「いや~、なんつうか、先輩最近、よく笑ってるんで~」





No.12 12/08/19 14:17
名無し0 



俺が…
笑ってる?


後輩の言った言葉が、やけに耳に焼き付いて、離れない。

「クールな先輩もいいっすけど。 俺的には、笑ってる先輩もありかな~なんて。」
こんな事も、言いやがって。


俺が…
変わった?

何で?いつから。



また、彼女の、あの優しい笑顔が浮かんできた。







No.13 12/08/19 16:03
名無し0 




5年…
経つのか。

当時、俺には付き合ってた彼女が居た。


結婚も決まってて。

柄にもないくらい、幸せだって思ってた。



式挙げる数日前だった。
《ごめんなさい…》
この、メールだけ残して。

あいつは、いなくなった。


まるで、ドラマみてえだな。
この時、俺は妙に冷静だった。






No.14 12/08/19 16:30
名無し0 



周りの方が、大変だった。

俺の親は勿論だけど。
あいつの親なんて、俺に土下座してきた。
「ごめんなさい!ごめんなさい…」
って、母親は、泣きながら何度も頭下げて。
父親は、黙って頭下げたまま、いつまで経っても顔上げない。


俺は…
正直、どう言えばいいのか、分かんなくて。


だって、そうだろう?
振られたのは、俺で。
そんな振られた男が、なんて言うんだよ。
今さら…

そう。今さら、なんだよ…

「だから、もう…。」
これ以上、何にも出てこねえ…

ぐっと、握ってた拳に力を入れた。


あいつの父親が、俺のそんな様子に気付いて、一瞬顔を上げた。

俺も、そんな父親に目をやる。



肩が震えてるのが、分かった。









No.15 12/08/19 16:52
名無し0 



結婚って。
やっぱ、二人だけでするもんじゃねえんだな。

この一件で、俺が学んだ事だ。



でももうひとつ。
結婚は、二人のもの、って事も。
矛盾してるけど、…これもほんとだ。


あいつとは、長い付き合いだった。
二十歳の頃からだったから。
長かったから、俺はあいつの事、何でも分かってた。

……つもりだった。



ただ。
長すぎて、見えなくなってたんだろな。



結婚って話が出始めた頃から、俺は、あいつが望むんだったら、それが〈幸せ〉なんだろうって。






No.16 12/08/19 19:46
名無し0 



だから、あいつの変化に気付かなかった。



今思えば、気付かないふりしてたのかもな。

面倒臭いっていう気持ちもあった…


今さら、結婚なんて。

そう。
今さら、だった。

そんな俺の気持ちに、肝心な俺は気付いてなくて。
あいつだけは、気付いてたんだ。



あんなメールを送ってきた時、誤魔化してた俺自身の気持ちに気付いた。

だから、もう、これ以上、何も言葉が出てこなかったんだ。


No.17 12/08/19 21:21
自由人17 ( ♀ )

主様横レスすみません
愛読します
…また更新可能な時☺宜しくお願いします

  • << 23 すみません…自スレ設定して頂けると有りがたいです

No.18 12/08/20 06:44
名無し0 

>> 17

おはようございます。

レスありがとうございます🙇
今、気づきました💧
ここを覗いてくるてる方が居るなんて。

仕事してるので、なかなか更新が 難しいかもしれませんが。

暇なときにでも、お付き合い下さいm(_ _)m



No.19 12/08/20 11:12
自由人19 ( 10代 ♀ )

続き楽しみにしてます😌✨

No.20 12/08/20 19:14
名無し0 

>> 19

こんばんは。
レスありがとうございます🙇
楽しみにしていただき、ありがとうございます🙇
暇つぶしに書き始めただけなので、先々どうなるかは分かりませんが…💦_
長い目で見てやって下さい(^_^)


No.21 12/08/20 19:40
名無し0 



そんな事があったから、なのか。


後輩が言うように、俺は、笑わなくなってた…のかもな。


過去の事、引きずるような人間じゃねえって、自分では思ってたんだけど。



そういやあ…、お袋は別だけど、親父だけは、あれから何も言わなくなったな。





そっか。
…俺、また、変わろうとしてるのか…





彼女の…
笑顔が?
俺を……






No.22 12/08/20 20:05
名無し0 



だからって、まあ、どうなるもんじゃねえけど。



今日は、例の後輩達と飯を食いに行った。

そのせいで、コンビニに寄るのが、いつもより遅くなる。


時計を見ると、10時を過ぎてた。
もうこんな時間に、彼女が居るわけないな…




車を駐車場に止めて、エンジンを切る。

ドアを開けようとして、ふっと店の方に目をやると…



彼女だ。

…………






No.23 12/08/20 20:55
名無し23 

>> 17 主様横レスすみません 愛読します …また更新可能な時☺宜しくお願いします すみません…自スレ設定して頂けると有りがたいです

No.24 12/08/20 21:06
名無し0 

>> 23

レスありがとうございます🙇
そうですか。
実は最初、スレ立てする時迷ったんですよね💦

ただ、誰もこんなとこ見てくれるなんてないなと思ったんで💦


かと言って、感想スレを立てるつもりも無いんで💦

分かりました。

自スレ設定にしますね
(^_^)



No.25 12/08/21 19:16
名無し0 



「お疲れ様です。」

同僚の大学生達に、笑顔で挨拶しながら出てくるのが分かった。


私服だ。
今まで、働いてたのか…。

女をこんな時間まで、働かせるなんて。



寒そうにコートのポケットに手を入れる、彼女の後ろ姿を。




俺は、ただ、黙って見つめるだけだった。







No.26 12/08/21 22:59
名無し0 



だからって、俺に何ができる?


客と店員ってだけで。



そう。
俺は、彼女の事、何にも知らない。
もちろん、彼女だって、そうだ。

俺の事、何にも知らねえ。



気が付くと、彼女の姿も見えなくなってて。


くそっ…
なんで、こんなイライラすんだ…。




結局、店に入る気がしなくて。
俺はそのまま、駐車場を出た。






No.27 12/08/22 19:07
名無し0 



気付くと、彼女がコンビニで働くようになって、ふた月が経とうとしていた。

俺は、訳の分からねえ気持ちを抱えたまま、彼女の居るコンビニに通ってた。


何でだろうな…
コンビニなんて、いくらでもあんのに。
嫌なら、店変えればいいだけの話…

なのに、俺は…






今日も、店に寄る。

クリスマスか。

店には色とりどりのイルミネーションが飾ってたり、アイドルがサンタクロースの格好をしたパネルが置いてある。



No.28 12/08/22 19:25
名無し0 



店に入ると、クリスマスケーキの予約をする客の姿が目に入ってきた。

彼女も、忙しそうに働いてる。


来週か…

クリスマスなんて。
もう何年も、何にもしてねえ。



あぁ…、あいつと別れてからか…。




彼女も。

彼女は…、ダンナと、ケーキでも食うんだろうか…


一冊の雑誌を手にとって、レジに並んだ。
特に読みたいっていうものでもなかったんだが。





No.29 12/08/22 19:38
名無し0 



コンビニのレジは、二つのレジを店員が行ったり来たりしてる。


詳しい事は、分かんねえけど。

だから、並んだレジに最初に彼女が居ても、俺の順番が来ても、必ずしも彼女がそこに居るとは限んなくて。




そりゃあ、なるべく、彼女の居るレジにって、思うけどな。

そうそう上手くは、いかねえ。



イイ年こいて。
何やってんだ、俺。
やってる事は、小学生みてえだな。


自分で自分の事、笑えた。




でも。







No.30 12/08/22 19:49
名無し0 



神様って、いるんだな…。

いや。
別に、信仰してるっていうわけでも、ねえけど。

この時は、マジで神様ってやつに感謝した!



俺の前には、彼女。


やべえ…
心臓が…、半端ねえ…



手に持ってた雑誌を台の上に置く。

「いらっしゃいませ。」
見慣れた彼女の笑顔なんだけど。

やっぱ、いい!


けど、俺は…
いたって、冷静。
いや…、のつもり。




なんか、言え!俺!






No.31 12/08/23 18:41
名無し0 



「あ、あの…!」

え?

「あ、はい…」



「クリスマスケーキ…」
「え?…」

「あ…」
「…?」


「クリスマスケーキ、いかがです…か…?」



「え…、あ…、はい。あ…、お願い、します…」





注文、しちまった…


クリスマスケーキ。



この俺、が…。







No.32 12/08/23 19:00
名無し0 



ったく、どうすんだよ…

ケーキなんか、注文しちまって。



誰と食えっていうんだ…

笑えるよな…。







ただ、ひとつだけ…。

気付いた事があった…



彼女が注文書に何かを書いてる時。


リングがなかったんだ…左手の薬指に。




それって、つまり。

結婚してねえって、ことだろ?



なんで、今まで気付かなかったんだ。



って事は…。





No.33 12/08/23 20:26
名無し0 



俺にも、チャンスがあるって事だよな?



けど。
彼女の手、マジマジと見たけどさ、ちっちゃくて。
真っ白だ。


背も、そんなに大きい方じゃねえ。




俺は、完全アウトドア派だから。
真っ黒で。ガタイもいい。


彼女とは、真逆だ。


彼女、釣りを渡す時、左手を添えながら、渡してくれるんだけど。

俺の手のひらに置こうとして、ちょっとだけ背伸びする。



そんなとこがまた、俺には、たまらねえ。






No.34 12/08/23 21:20
名無し0 



ただ。
彼女が、結婚してねえって分かったからって。


やっぱ、簡単には、いかねえ。



いきなり、声掛ける。なんて事、できるわけもねえし。

それじゃ、ただのナンパだ。



二十歳そこそこのガキじゃあるまいし。




ケーキを注文した翌日。俺は、会社の休憩時間にタバコを吸いながら、ぼんやりと考えてた。


そんな俺を、後輩がすぐ横で見てた事さえ、気付かずに。





No.35 12/08/24 18:45
名無し0 



「先輩、恋っすか~?」

「…あ?」


今、なんつった?

後輩のとんでもない発言に、俺の、思考能力が止まってしまった。



タバコをくわえたまま、無表情で後輩を見る。


「こ・い!恋っすよ!先輩~」

「は?…こ…い?」

「そう!誰か、好きな人でもできたんすか~?」



好きな、人。








No.36 12/08/24 19:00
名無し0 



「いる。」

「え?」

「だから。いる。」

「え~~~!!!」

「うるせえ。」

「いや!だって、先輩!好きな人がいるとか、…!!」

「あ?おまえが聞いてきたから、答えたんだろ。」

「いや…、そうっすけど!」

「なんだ?」


後輩の顔を横目で見る。


男のくせに、泣きそうな顔で俺を見てた。






No.37 12/08/24 19:13
名無し0 



コイツは、俺の過去の事、知ってる。



「そんな顔、すんな。」

「…先輩…」




好きな女、か…

あいつと終わってから、俺はもう…、女を好きになるとか。
ねえ…って思ってた。



俺は…


彼女の事、好きになっちまったんだな。



こっぱずかしくて、口にはだせねえけど。






No.38 12/08/24 19:29
名無し0 



後輩のおかげで、自分の気持ちに気付く事ができた、みたいだ。


「おまえのおかげだな…」

「え?何がっすか…?」

「あ?まあ…、いろいろな意味で。」



今までの、訳の分からねえモヤモヤとか。

イライラ、とか。さ。


理由が、分かったっつうか。



結局、俺は…

小学生レベルって事だな。
彼女に対する想いを、後輩に気付かされるぐれえだから。

でも…



「感謝してる。気付かせてくれて。」








No.39 12/08/25 09:49
名無し0 



俺は、後輩に彼女の事を全部話した。

コイツになら、話してもいいかなって思ったから。




「名前しか、分からないんすか…」

「あぁ。」


「だったら、やっぱ、聞くしかないっすよ!」

「は?…聞く、って何を。」

「だから!連絡先っす!」
「おまえ、それじゃ…、ただのナンパじゃねえか。」


やっぱ、コイツに話したのが間違いだった。






No.40 12/08/25 10:05
名無し0 



吸ってたタバコを途中で消して、仕事に戻ろうと立ち上がった。


「ナンパで!いいじゃないっすか!」


まだ、言ってやがる…


「あのな、俺はもういい年したオッサンなんだよ。そんな、ガキみてえな事、できるわけねえだろ。」


「ガキでいいじゃないっすか!!」


「…あ?」
コイツ、何言ってんだ。
言い返そうとして。



「先輩が…!先輩にまた…好きな人ができたんすよ?…オッサンとか、ガキとか…、関係ないじゃないっすか!!」




周りにいた同僚が、驚いて俺たちの方を見る。








No.41 12/08/25 13:32
名無し0 



「…分かったよ。」


俺は、興奮した後輩をなだめるように。
半分苦笑いしながら、後輩の頭を軽く突く。

「ありがとな。」
後輩は、ちょっと照れたように、笑った。




年は関係ねえか…

おまえの言うとおりだよ。
ただな、この年ぐらいになると…、やっぱ、いろんな事考えちまう。

つい、な…。




誰か、この情けない俺に喝を入れてくれ。






No.42 12/08/25 17:58
名無し0 



結局、イイ案なんて何にも浮かばず、時間だけが過ぎていく。






この時期、俺らの会社は忙しくなる。


だからまあ…、余計な事、考えずに済んでるから、良かったんだけど。




注文してたクリスマスケーキを受け取る日。

俺は、相変わらずの忙しさで、その日まですっかり忘れてて。
やっと仕事を終えて、会社を出た俺は、タバコを切らしてる事に気付いた。


「あ…、ケーキ…」

瞬間思い出し、時間を確認する。

一応、この時期の忙しさは分かってたから。
受け取る時間は、遅めにしといた。




少し急いで、車に乗る。






No.43 12/08/25 18:20
名無し0 



会社からコンビニまでは、すぐだ。


駐車場に車を停めると、俺は急いで店の中に入っていった。



正直俺は、その時までは何にも考えてなくて。

財布から引換券を取り出しながら、レジに向かう。



あ…、今日は彼女、いねえんだな。

見たことのない学生がレジにいた。


引換券を見せると、

「あ…」
と言ったまま、固まる学生。



え…?
どうした。




No.44 12/08/25 18:35
名無し0 



「すいません!」

俺に謝ったかと思うと、凄い勢いで店の奥へと走っていった。


何だ?

俺は、疑問に思いながらも待ってた。



すると、奥の方から、さっきの学生と、…彼女が出てきた。
彼女は私服だった。

それでも、その学生と二人、急いでレジの方へ入ってくる。



よくわかんねえけど、どうも、その学生、新人だったみたいで。
クリスマスケーキの受け渡し方が、分からなかったみたいだ。

それで、彼女が出てきて、代わりにやったみたいな。




No.45 12/08/25 18:56
名無し0 



っていう事で、ケーキは無事俺の手元にあるわけで。



手際良くレジの処理を済ませた彼女に、新人らしき学生が礼を言ってる。

にこにこ笑いながら、その学生とやり取りをした彼女は、俺に頭を下げながら、また、急いで店の奥へと消えていった。



俺はその瞬間、自分がケーキを持ってる事に、ハッとして。

いや…、想像してみろよ。
こんなオッサンが、ケーキを買いに来てるっつう姿…。
今更ながら恥ずかしくなっちまった俺は、急いで店を出た。

…!タバコ…!

買い忘れてた事を思い出し、クリスマスケーキを車に置いて、また、店に戻ろうとした。



No.46 12/08/25 19:15
名無し0 



すると彼女が、中からでてくるところだった。


ちょうど、俺と目が合った彼女は、

「あ…、ケーキ…、」

「あ…」

「あ、あの、ありがとうございました!」

いつものあの笑顔で、頭を軽く下げた。

「あ、いえ…。」

返事をしながら、彼女を見ると、左手にバック、右手に…
ケーキ、らしき物を持ってた。

「あ、ケーキ、ですか?」

「あ…!…はい。」


誰と、食べるんだ。



聞きてえ!






No.47 12/08/25 20:43
名無し0 



「今日は、ご家族でパーティーですか?」

え?


彼女が…聞いてきた。
俺はちょっと、焦った。

「あ、いえ…。俺、ひとりなんで」

「え… 」
彼女が、固まったまま、俺をじっと見てる。


一瞬、そんな彼女の様子が理解できない。



No.48 12/08/26 09:21
名無し0 



「あ…!」


ひとり。なのに、クリスマスケーキって…!


…墓穴掘っちまった…


呆然とする俺。…





「あ!あの!」
しばしの沈黙の後、突然の彼女の声に、はっとして我に返り、彼女を見た。



「わ、私も!ひとりで食べるんです!」

「え…?」


ひとりで、食べる?
今…、そう言った?よな?

え?って事は…

付き合ってるヤツもいねえ?って事か?





No.49 12/08/26 11:33
名無し0 



いや…
まてよ…。


彼女の方こそ、ひとりで食べるのにクリスマスケーキって…

俺の方は…、勢いで注文しちまったって感じ…だったからな。



そんな疑問に答えるように、
「あ!ほんとは、友達と食べる予定だったんです…!でも、ドタキャンされちゃって。…」

少し恥ずかしそうに、彼女が言う。



そっか。


「そう、だったんですか。」


「あ…、はい。」

「じゃあ…、お互い、ひとり寂しく、ケーキを食べるって事ですね?」


俺が、笑いながらそう言うと、

「ほんとですね!」

彼女も笑って、そう答えた。





No.50 12/08/26 11:44
名無し0 



「…じゃあ、…失礼します…!」

彼女が、頭を下げる。


あ…





顔を上げた彼女の顔が、なぜか、切なく、見えて、……




俺は…、彼女の腕を思わず、掴んでしまい……












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