離婚までの記録~その後~
離婚までの記録の続きです。 一緒に暮らしはじめてからのその後を書いていきます。
前スレ:離婚までの記録
http://mikle.jp/thread/1586873/
感想スレ
http://mikle.jp/thread/1610689/
※これは過去にあった実際の体験を綴ったものです。
- 投稿制限
- 参加者締め切り
彼女とA君がこちらにきた次の日、流石に前日からの疲れのためかみんな遅くまで寝ていた。
俺は事情を会社に話して何日か休みを貰っていた。
10時を過ぎた頃にA君が一番に目を覚ました。
『ママ!朝だよ~』
A君の元気な声で俺と彼女が目を覚ます。
『おはよー』二人でA君に言った後お互いに目があった。
『夢じゃないんだね…目が覚めてKがいるなんて、何だか不思議な感じ。ちょっと照れるね』
彼女はそう言って少し恥ずかしそうに笑った。
俺も
『そうだね。なんか照れるね』
そう言って笑った。
A君は知らない場所なのにそんなことはお構い無しな感じだった。
『A君お腹空いた~』
A君が彼女と俺を見ていった。
『じゃあ、朝ごはん食べるか!買い物いかないと何もないから、何か食べにいくか買いにいくかどっちにする?』
俺が聞くと
『食べに行きたい~』
とA君がぴょんぴょん跳び跳ねて言った。
『じゃあ準備していこう』
そう言うと皆で出掛ける準備をして車に乗った。(俺の乗っていた車は売って元嫁に渡したため、俺の母親のを借りていた。後日彼女の車が配達業者から届く予定になっていた。新しい車を買ってもよかったが、彼女の車は彼女の祖母が亡くなる一年前に買ってくれたものらしく、ずっと使いたいと言うのでそうすることにしていた)
※彼女は祖母の家にお母さんと暮らしていて、祖母は母親代わりみたいに育ったらしい。厳しいかったけれど優しいおばあちゃんだったといつも彼女が話していた。
車に乗り出発すると、住宅街の道路にたむろしていたご近所の主婦数人がこちらをジーっと見ていた。
俺とMが軽く会釈すると主婦達も戸惑いながら軽く会釈した。
そのまま近くのレストランに行き食事をした。
食事を済ませると、色々日用品等を帰るスーパーや、銀行、郵便局、市役所等、生活に必要な場所を案内した。
Mは一度通った道はだいたい忘れないんだと言っていた。
今日はとりあえずサッと道案内をして家に戻ることにした。
家に帰るとまだご近所さんがいてこちらを見ていた。
家に入るとA君はオモチャで遊び始めた。二階が気に入ったらしく、電車の線路を繋げて遊びに夢中になっていた。
下で俺とMはお茶を飲んだ。
『ご近所さん挨拶行った方がいいのかな?私の説明って何て言えばいいんだろうね』
と少し苦笑いしてMが言った。
『今夜お隣だけでも俺がちょっと行ってくるよ』
『そっか…私が行っても微妙だしね』
Mはそう言いながら、今夜は何にしようかなとさっき買ってきた買い物袋を覗いた。
その時俺はMやA君に対する配慮の無さにまだ気付いていなかった。
その夜、俺だけで両隣に挨拶に行った。
インターホンを鳴らすとお隣の奥さんが出てきた。
『こんばんわ』
俺が言うと奥さんも こんばんわ、と返した後、俺が話そうとするより早く奥さんが続けて話しだした。
『あの…今日一緒にいられたのは妹さん?』
『いえ違います。今日から一緒に暮らすことになって…』
そこまで俺が言うとまた奥さんが話しだした。
『そうなんですね。色々ありましたしね。若いから妹さんかと思いましたよ。まあお隣だし、色々よろしくお願いします』
『いえ。ご迷惑おかけしまして。こちらこそよろしくお願いします。』
そう言ってお互い会釈してドアを閉めた。
何とか大丈夫みたいだ。
その時は安易にそう思った。
家に帰るとMが心配そうな顔で
『…どうだった…?』
と聞いてきた。
『何とか大丈夫だったよ。特に何も言われなかった。向こうもよろしくってさ。後Mが妹ですか?って(笑)童顔だもんね』
俺がニヤニヤしながら言うとMが
『よかった…って童顔って言うな!』
とプクッと膨れていった。
Mは俺より八個下だが、実際はもっと年下に見える。十代と言われても違和感がないほど童顔だった。
本人はそれを気にしていて言われるのが嫌らしい。童顔のせいで十代と間違われ困ることが多いと言っていた。
この夜はA君とMと俺と三人でお風呂に入った。
A君はずっとはしゃいで、『A君はKと寝るー』と言っていた。
そして寝室のベッドで三人で寝た。
A君は寝相が悪いので落ちないよう壁際、Mも寝返りして落ちると言うので真ん中、その隣に俺が寝ることにした。
まだ疲れが抜けていないのか三人ともあっという間に眠りについた。
次の日も色々と市内を案内した。
その他にもちょっと遠いが大型ショッピングセンターにも行った。
A君は始終はしゃいでいた。本当に元気だ。
『ママー、Kーこっちこっちー』
そう言いながらあっちこっち連れ回された。
俺とMは元気だなぁと言いながら二人でとついていった。
A君が家で遊ぶ用に大好きなブロックと電車のセットを買った。
A君は、早く帰って遊ぼう!と俺の手を引いた。
Mは、まだ色々買い物してからだよ。ママが持っておくから、とA君に言ってオモチャを受け取った。
それから必要そうなものを買い、家に戻った。
A君は早速二階にオモチャを運び、『開けていい?遊んでいい?』とMに聞いていた。 (A君は二階の南側の部屋を気に入って自分の遊ぶようの部屋に決めたらしい)
Mは 『いいよ~。あっだけど、ちゃんとありがとういったっけ?』
そう言われてA君が
『あっ忘れてた!Kとママ、オモチャ買ってくれてありがとうございます』
と深々頭を下げた。
まだ2歳ちょっとなのにしっかりしているなと思った。
『どういたしまして』
俺とMが言うと、A君は小走りで遊び部屋に向かった。
二階からA君の楽しげな声が聞こえていたが、しばらくして聞こえなくなった。
どうしたのかな?と見に行くと、電車を握りしめたまま眠ってしまっていた。
Mと俺は顔を見合わせて笑った。
そしてA君をベッドまで運んで寝かせた。
A君がお昼寝している間に二人でまだ片付いていない荷物などを片付けた。
片付けながらふと気になった事があったのでMに聞いた。
『そう言えばさ、A君ずっと元旦那の事言わないね。』
俺が言うと
『多分いつも朝は私とA君が先に家を出るし、帰りは向こうがA君寝た後ばっかりだったから、居ないのが普通で気にならないんじゃないかな~。それにずっと日曜日も保育園で、私と居られるのって夕方と夜くらいだったから、ママと一緒にいられて遊べるのが嬉しいのかも、ママっ子だし(笑)A君人見知りもしないし、人と遊ぶのも大好きだから楽しいんだよ。本当にめちゃ喜んでるもん』
『そっか。Mは盆も正月も仕事でA君は保育園だったんだもんな。ママといっぱい居られるのが嬉しいんだね』
『私もA君とこんなにゆっくり過ごせて嬉しいよ。Kもいるし(笑)今日は腕をふるってご馳走作ろうかな!』
そう言ってMはキッチンへ向かったが、チラッとこっちを見て
『その前にちょっと休憩してからね。お菓子も食べちゃお~』
と笑いながらコーヒーとお菓子を用意していた。
その夜はハンバーグだった。
『ママのハンバーグ美味しい~お店のより美味しいよ!』
とA君が言う。
『ありがとう~ママ嬉しいな。A君への愛情たっぷりだから美味しいんだよ~』
Mが笑いながら言う。
俺も
『本当に美味しいよ。こんなに美味しいハンバーグ初めて食べた』
と言うと
『そんなこと言っても何にも出ないよ~』
とMがニヤッとした。
Mは小さい頃から自分の事は自分でして育ったからか料理も上手だった。
本当にこんなに美味しいハンバーグ食べたことないとお世辞無しで思った。
精神的に弱い面もあるが、基本的にMはしっかりしている。何でも効率よくテキパキこなす。天然な面もあるので時々ドジをするが…
食べ終わると
『ご馳走様でした!』
とA君が手を合わせた後、お皿を片付けてキッチンへ持っていった。
『A君ありがとう~。ママ助かる!』
そう言ってMが受け取る。
A君はすぐに俺のところへ来て、K一緒に遊ぼうよ~と言った。
俺とA君が遊んでいる間にMは食器を洗い片付けた。
『お風呂に入る人~』
片付け終わったMが言う。
『はいっ!は~い。Kも一緒に~』
A君が手をあげてジャンプする。
今日も三人でお風呂に入った。
お風呂からあがり歯磨きをしてMがA君をベッドに寝かしに行く。
『Kも一緒に寝ようよ』
とA君が言うのでみんなで二階へ行った。
今日も沢山遊んだのでA君はスグに眠ってしまった。
A君が寝ると二人で下に降りた。
『俺、明日まで休みだから、明日どうしようか?とりあえず主要な場所は案内したけど…』
『ん~明日までかぁ。じゃあ片付けも粗方終わってるし、お弁当作って公園にでも行こうか?』
『じゃあ公園に行こう。A君喜ぶね』
『そうだね!』
そんな話をした後俺達も疲れていたので、二階へ行きベッドへ入った。
ベッドに横になると
『K、今日も1日お疲れ様。ありがとう。お休みなさい』
そう言いながらMが笑ってキスをした。
『お休み。Mも1日お疲れ様でした』
そう言って横になった。
誰かと一緒にいてこんなに癒されると感じたのは初めてだった。
ありがとう。Mのその一言が嬉しかった。
翌日、Mが朝からお弁当を作ってくれ、みんなで近くにある大きい公園に行った。
A君はボールを持って走り回っていた。
俺もA君と一緒に走った。
お昼にはMの作ったお弁当を食べた。
やっぱりすごく美味しい。
食べ終わるとまたあっという間にA君は遊びに行った。本当に楽しそうだ。
思いっきり遊んだので、帰りの車の中でA君はぐっすり眠ってしまった。
今日はMもお弁当を作ったり大変だっただろうと、夕食の後片付けは俺がすると代わった。
『そんなのいいのに』
と言うMを無理矢理ソファーに座らせて、皿洗いをした。
『Kありがとう』
Mが微笑みながら言う。
皿洗いをしている間にA君とMが二人でテレビを見ている。
本当にそっくりだな。そう思った。
その夜もやっぱりみんなでお風呂に入り、みんなでベッドへ入った。
『明日は仕事何時に行くの?』
Mが聞く。
『5時に起きて、6時前には家を出るよ』
『めちゃ早いじゃん!私起きれるかな…朝苦手なんだよね…』
Mが心配そうに言う。
『起きなくていいよ。大丈夫だから(笑)ゆっくり寝てな』
俺が言うと
『ええっ…でも行ってらっしゃいって言いたい』
『じゃあ、寝る前に言えばいいよ(笑)』
『寝る前って(笑)じゃあお言葉に甘えて…お休みなさい。そして行ってらっしゃい』
『はい。お休みなさい。行ってきます』
二人で笑いながら言ってキスをして寝た。
翌朝、二人を起こさないように静かに支度をして、なるべく早く帰ろうと思いながら家を出た。
会社に付き、仕事をしていると、 9時くらいにMからメールがきた。
[やっぱり朝起きれなかったー。ごめんね。お仕事頑張ってね]
そんな内容だった。
[いいって(笑)寝顔見られたし!二人供可愛かったよ]
[恥ずかしいー。今からA君とご飯食べてお出かけします]
[じゃあ気を付けて行ってらっしゃい]
そんなやり取りをした。
昼休みになり電話をした。
MとA君はもうお昼を済ませ、A君は電車遊びに夢中だと言っていた。
俺は早く家に帰りたかったので仕事に集中してパパッと終わらせた。
早く家に帰りたいなんて昔の俺からは想像も出来ない。
俺は絵に書いたような仕事人間だったからだ。
人は変わるもんだな。
帰りの電車の中で、そんなことを思った。
そのまま何週間かが過ぎた時だった。
Mが
『私も働きたいな』
と言った。
『どうして?働かなくても全然大丈夫だよ。』
そう言うと
『ん~、だけど何にもしないで人の働いたお金遣うってなんか気が引けちゃうし、働いてないと楽してるみたいで悪いんだよね。でも、今すぐって訳じゃないよ。A君と一緒にいられて嬉しいし!仕事しないでも生活出来て、子供と一緒に過ごせるって幸せだし。贅沢~(笑)』
『Mは何にもしてなくないよ。家事したりA君のお世話したり大変じゃん。お金も気にすることないよ。しばらくはゆっくりしたらいいよ』
『だけど家事って言ってもすぐ終わるし…A君とは楽しいから全然大変じゃないしね(笑)お金はね…慣れてないからかな?ずっと働いてたからさ。なんだか自分が家にいて楽してるのになぁって思っちゃうんだ。Kが毎日頑張って働いてるのに甘えてるなって。』
『Mも家事頑張ってるじゃん。甘えていいんだよ。今までいっぱい頑張った分、ゆっくりすればいいんだよ。気にすることないよ。俺、MやA君の為にもっと頑張りたいって思うようになったし。だけど、Mが働きたいって言うなら反対しないけど』
『K、ありがとう。専業主婦なんてしたことないから、落ち着かないのかも。Kがそう言ってくれるなら甘えちゃおうかな。だけど、ゆっくりしたらパートくらいしたいな。お金はありすぎても困らないし』
Mがそう言って笑う。
『どんどん甘えてよ。今はゆっくりしよう!働くにしてもパートならゆっくりだしね。Mは働き者だ(笑)』
そう言って俺も笑った。
そうして特に何事もなく一ヶ月半が過ぎた。
ある夜、夜中に目が覚めるとMがベッドに居なかった。
焦って探すと、A君の遊び部屋にいた。
Mは一人で泣いていた。
『どうした…?何かあった?』
俺が聞くとMは、俺を見て胸に顔を埋め、声を殺して泣いた。
俺はそんなMを抱き締めて、落ち着くのを待った。
しばらく泣くと落ち着いたのかMが静かに話始めた。
『私甘くみてたみたい…』
『なにを?』
『こっちに来ること…』
『何かあった?』
『………………。毎日ご近所さんが数人子供達を遊ばせながら道路で話し込んでるんだけど…そこを通るときに挨拶しても無視される…私だけなら全然構わないんだけど……A君も無視されるし、この前ご近所さんの子供がA君に遊ぼうよって何人か来たら、その子のママが、近づいたらいけない。帰ってきなさい。その子と遊んだり話したらダメだって言われた……』
『……。そんなことが……すぐにいってくれたらよかったのに!もしかして毎日こうやって泣いてたのか!?』
『……うん。……だって……Kに……心配とか迷惑かけたくなかったから……』
『迷惑なんて思うわけない。こんな……ずっと一人で抱えてたのか?俺気付かないで……ごめんな……A君はどうなんだ?そんなことあって……』
『A君は、挨拶しないのはダメだよね~?聞こえなかったのかな?って言ってる。だけど遊ぶなって目の前で言われたのはやっぱり悲しかったみたい。なんで?A君なにもしてないのにって泣いてた……。私のせいだ。甘くみてたから!他人の家庭の事にこんなに干渉してくるなんて思ってなかったから……』
『子供まで……ごめん。俺が悪いんだ。本当に考えが甘かった。俺の考えが浅はかだったせいで二人に辛い思いをさせてごめん。なんとかするから……絶対に……』
『私やっぱり働く。そしたら朝出て夕方帰って……ご近所さんと顔会わさないし、A君もまた保育園に行きたいって言ってるし。』
『そっか………家を出るにしてもすぐには無理だからな……出来るだけ早く何とかするから!』
『うん。ごめんね。我が儘言って。』
『我が儘なんかじゃないよ。何かあったら次からはすぐに言って。迷惑じゃないから』
『……分かった……』
俺の考えの甘さのせいで二人を傷つけてしまった。
まさか子供まで無視されるとは思ってもいなかった
『こんばんは。あの…突然すみません。奥さん…?いらっしゃいますか』
『はい…あの、ご用件は?』
『私…奥さんにちょっとお話があって…』
その時家の中にいたMが玄関に出てきた。
『こんばんは。お話ってなんでしょうか?』
お隣さんはチラッと俺を見た後話始めた。
『いつも、皆で無視していたことを謝りたくて…』
俺達はその言葉にビックリした。
『ご近所さんといる手前、怖くて一人だけ違うこと出来なくて…家庭の事情がどうであれ子供さんにも…ずっと心苦しくて…だけど、子供にママなんで無視してるの?って聞かれて、これじゃあいけないって思ったんです。今更だけど謝りたくて。本当にごめんなさい。』
そう言って頭を下げた。
『こちらこそ…不快にさせてしまってすみませんでした。あの…ありがとうございます。わざわざ来ていただいて…』
『いえ…本当にすみませんでした。これからはお隣ですしよろしくお願いします。』
そう言ってお隣さんは帰っていった。
俺もMも驚きすぎて言葉が出なかった。
A君だけが楽しそうにテレビを見て踊っていた。
A君は向こうでもずっと保育園に行っていたので、こちらでもすぐに慣れたようだった。
先生からも、A君はしっかりしてますね。赤ちゃんがいたら優しく色々してくれるし、ビックリしちゃいます。お話も凄く上手だし、ママがお腹にいるときからいっぱいお話してくれたのかな?お友達もすぐに沢山出来て、今やクラスの中心ですよ。って言われたよ~とMが嬉しそうに言っていた。
A君が楽しそうでよかった本当にそう思った。
そんなある日、夜帰るとMが暗い顔をしていた。
『どうした?暗いけど…まさかまた何か言われた!?』
『違うよ…今日掃除してたら玄関の靴箱の棚の上にあった消臭?砂が入ってる瓶の中に…これ…』
そう言ってMが出したものは、俺の結婚指輪だった。
家を出るときに外して置いてきたものだ。てっきり元嫁が捨てたのだと思っていた。
俺はそう説明した。
『じゃあ奥さん捨てずに置いていったんだね。……どうする?』
『いや、どうするもなにも、もう要らないから捨てるよ』
『そっか。じゃあKに任せる』
そう言って指輪を渡された。
俺はゴミ袋に指輪を入れて、すぐにゴミ捨て場に持っていった。タイミングよく明日はゴミの日だった。
その日、俺とMは愛し合った。一緒に暮らして3ヶ月、離婚前に一度だけ愛し合ってから二回目のMの肌の温もり。
愛しくて心地よくて、ずっと肌を重ねていたかった。
MとA君。二人を絶対に幸せにするからと改めて誓った。
しばらくして不動産やから、家を買いたいって人がいるんですが、次の休みに見せにうかがってもいいですか?と電話がきた。
もちろん大丈夫ですと答えた。
日曜日、不動産やと買い主が来た。
30分くらい見た後に帰っていった。
夕方、不動産やから電話がきた。
『さっきの方が買われるそうです。やっぱり立地がいいのがよかったみたいですよ。だけど、入居は4ヶ月後くらいがいいらしいんですが…ローン審査等もあるので、それからになりますから、半年後くらいとみていただけたら。どうですか?』
『本当ですか!?早かったですね!売れるならそれでいいです。是非お願いします!』
ようやく一つ進んだ気がした。
これでここから出ていける。
Mも喜んでいた。
次の日、Mがお隣さんから
『引っ越されるんですか?』
と聞かれたらしい。
そうなんですと答えたら、無視しされてるからだと思ったようで、また謝られたらしい。(お隣さん以外はずっと無視が続いていた)
なにはともあれ、ようやく新しいスタートの為に進めたようで俺は嬉しかった。
家の売却も一応決まり、MとA君を連れて俺の母親の所へ行くことにした。
こっちへ来てから一度挨拶に行ったきりだったが、家の売却の話をしたときに、母親からご飯でも一緒に食べにいこうと誘われたのだった。
母親の家につくと、祖父母が来ていた。
祖母がいきなりMに
『ここは住みにくいよ?帰った方がいいんじゃない?子供さんもそのほうがいいよ』
と言った。
『お母さんちょっと…Mさんごめんなさいね』
そう言って、祖母にお母さんまた今度ねと言った。
『ごめんなさいね。おばあちゃん達には今はなしたばっかりだっから…驚いたみたいで…』
『そうか…タイミング悪かったな。今日はやめにする?』
俺が言うと母親が
『せっかくきたんだし行きましょう。A君にお土産もあるし』
Mも
『大丈夫だよ』
と言うので行くことにした。
A君はご飯食べ好き~と喜んだ。
そんなことがあったからか、Mは色々気にしていた。
俺が祖母に責められたりするんじゃないかと。
俺は、驚いただけだよ。大丈夫。 と言った。
『母親も気にするなって言ってた。知らない土地で慣れないから大変だろうけど、何でも言ってって言ってたよ。』
『お母さん優しいね』
Mはそう言ってそっと俺の胸に顔を埋めた。
あまり弱音は吐かないが、心配かけまいと押さえているんだろうなと思った。
その後しばらくして、平日家に祖父母がきたらしい。
野菜や果物、お米を持って。
この間は驚いちゃって…Kは何も教えてくれなかったから。
お米、家の兄弟が作ってるから、貰いにきなさい。子供も食べ盛りでしょう?
色々あったみたいだけど…これも何かの縁だからね。
そう言って帰ったらしい。
それを聞いて俺もちょっと安心した。
ある日、Mが気分が悪いと言って寝込んだ。
微熱もあるし風邪かな?と言って薬を飲んで寝ていた。
だがそれから二週間しても良くならない。
仕事には行っているが、体調はよくないらしかった。
『そう言えば…ちょっと生理遅れてるかも』
Mがそう言った。
『それってもしかして!?』
『多分…妊娠したかも』
『マジで!?本当に!?凄く嬉しい。でも、一回しかしてないのにすごくない!?』
『まだ決まった訳じゃないけど、って言うか的中率よすぎ(笑)A君も一人じゃ寂しいし、一人っ子は嫌だっから』
Mは嬉しそうに言った。
『明日病院行ってみるね』
『明日!?俺も行きたい。でも休めない…』
そんな俺に
『だからまだ決まってないって(笑)妊娠してたとしても、こんなだよ』
Mが指で小さな小さな丸を作った。
次の日、俺は落ち着かなかった。
まだかまだかとMの連絡を待った。
昼休み、Mから電話がきた。
『妊娠……してたよっ!クリオネみたいだった(笑)』
『やったー!ありがとう!嬉しい。A君は?A君は何て言ってた?』
『A君は、赤ちゃん?赤ちゃんいるの?って不思議そうだったよ(笑)だけど一緒に遊べる?って聞いてた』
『そっかー。そうだよな。まだよくわからないよな。今日は帰ったらお祝いしよう!早く帰るから』
そう言って電話を切った。
顔がにゃける。
社長に、なにかいいことあったのか?と聞かれたので全部話した。
それはおめでとう。益々頑張らないとな、と言われた。
家に帰ると一番に抱き締めた。
お腹を触って
『ここにいるのかぁ』
と言うと
『まだちぃーっちゃいけどね』
とMが言った。
その日からA君は毎日、赤ちゃんまだでない?と聞いてくるらしい。
俺にもK、赤ちゃんいるんだよ!と何回も教えてくれる。
本当に幸せだった。
母親や祖父母も喜んでくれた。
それから、日に日にMは体調が悪くなった。
つわりが酷いらしい。
そのうち何も食べられなくなり、水分をとってもすぐにもどしていた。
だが仕事は迷惑がかかるからと、無理して行っていた。
Mは元々色白だが、色白を通り越して血の気が一切なくなっていた。
A君を産むときも、貧血が酷く、毎日血液剤の注射を打っていたらしい。
そのうち、検診にも自分では行けなくなった。
定期検診を二回あけてしまった。
俺がなかなか休めなかったからだ。
やっと休みがとれ、一緒に検診へ行った。
俺は初めてエコーをみた。小さな赤ちゃんの心臓が動いている。時々、手?がピクッと動いた。
なんだか凄く感動した。
産婦人科の先生は、貧血が酷いと言って増血剤薬をくれた。それと仕事はもう辞めるか休んだ方がいいと。
Mは仕方ないね…と言って職場に退職すると連絡した。
職場の人は、赤ちゃんのためだしね。元気に産んでまた戻っておいで。といってくれたらしい。
『いい人達でよかったね』
俺が言った。Mはうん、と言った。
その日の夜、不動産やから電話がきた。
買い主のローン手続きが遅れていて、また少し先になると言う話だった。
Mも体調がよくないし、逆によかったと思った。
妊娠5ヶ月。
未だにMの体調は良くならない。
Mはげっそり痩せてしまっていて、お腹だけがポッコリと出ていた。
A君はそのお腹に耳をあてて男の子だ!と言ったらしい。
Mが時々お腹ちょっとだけ動くよ。とお腹を出した。
俺はさわるがさっぱりわからない。
その月も一緒に検診へ行った。
その日もエコーを見た。
前見たときよりだいぶ大きくなり人の形をしていた。足を伸ばした瞬間を見ることができた。
二人でエコーを見ていたら、なんだか先生が険しい顔をしてMのお腹を色々な角度から何度もエコーをあてた。
そのうち、他の先生も呼ばれた。(この産婦人科は色々な病院から先生が来ている)
そして、先生が重々しい空気で話始めた。
『ここでははっきり言えませんが…もしかしたら赤ちゃんは…無頭児かもしれません。大学病院を紹介しますので、今日これからすぐに行ってください』
そう言われた。
俺もMも意味がわからなかった。
無頭児…?
初めて聞いた。
だが、確実に嫌な知らせだとはわかった。
Mは泣いてた。
『赤ちゃん…だめなのかな…』
泣きながら言った。
『とりあえず紹介された病院行こう。』
そう言うしかなかった。
一緒にいたA君は母親がみてくれることになり、俺達は大学病院にむかった。
大学病院へ向かう車の中は空気が重かった。
俺もMも一言も話さなかった。
病院へつくと、産科へ向かった。
周りには幸せそうな妊婦さんがたくさんいる。
そんな中、Mは無表情で順番を待っていた。
紹介してくれた産婦人科の先生が急ぎでと連絡してくれていたらしく直ぐに呼ばれた。
俺達は二人で診察室に入った。
Mは診察室の中に併設された内診室に入った。
小さなカメラを入れて内診するらしい。カメラの繋がった画面に赤ちゃんが映った。
手や足を元気に動かしているのがわかった。
それを見ただけで俺は涙が出てきた。Mはどんな気持ちでこの画像を見ているのか…
しばらくしてMが内診室から出てきた。
なんだかボーッとしていた。
先生がちょっとエコーも見るからと言って、Mが横になり先生がMエコーをあてた。
赤ちゃんの心臓がよくわかる。
先生は赤ちゃんの頭を指差し
『ここですね。頭蓋骨がこのあたりから無くなってます』
そう言った。
エコーを片付けて、先生が絵を書いて説明してくれた。
頭蓋形成不全と言って、稀にある病気です。ここまで無いと助かりません。産んだとしても…生きるのは難しいですね。
先生がそう言うとMが泣きながら言った。
『どうにかできないんですか?手術とか…なにか方法はないんでしょうか?』
『残念ですが……少しだけなら手術も可能ですが、これほどの範囲は……』
『なにか……なんで…なにが悪かったんでしょうか』
『これはお母さんのせいとか、誰かのせいじゃないんですよ。防げないんです。誰が悪いからとかそんなのはないんです…何千人に一人はおこることで、それは誰にでも起こりうる可能性があることなんです…。自分を責めないでください。誰のせいでもないんですよ』
Mは嗚咽を堪えて泣いた。そして段々呼吸が激しくなり様子が変だと思った途端に倒れてしまった。
体が痙攣して泡を吹いている。
息ができないようで顔が青ざめてきた。
俺が慌てていると、先生が急いで袋をとりだしMの口と鼻をおおった。
しばらくしてMは落ち着いてきた。
どうやら過度のショックとストレスによる過呼吸だったらしい。
『ゆっくり息をして~ゆっくり~』
先生の声に合わせるようにMがゆっくり呼吸すると徐々に落ち着いてきた。
Mが落ち着くと、先生は
『話続けられる?大丈夫?』
と聞いてきた。
Mは俺に持たれながら『はい。すみませんでした』と小さく答えた。
先生は 『いいんですよ…辛いですよね。平気な人なんていませんよ…無理しないでくださいね』
といってくれた。
そしてこれからのことを話始めた。
『赤ちゃんは堕胎することになります。堕胎と言っても、もう大きいので出産と同じ型式になります。子宮を広げる海綿体を入れて一晩してから、誘発剤を使い陣痛をおこして出産します。赤ちゃんがもっと成長すると、お母さんも危険になるし手術による負担も大きくなるので早めに処置したいのだけど…出来れば二週間後に予定入れたいんだけど、どうですか?』
先生に聞かれて俺はMの方を見た
『赤ちゃんは…赤ちゃんはやっぱり苦しいんですか?痛いんですか?』
『そうですね…多少はあるかもしれません。だけど大きくなるともっと苦しいと思います…』
『早い方が赤ちゃんは苦しみが少ないんですね……出来れば……もっと一緒にいたいけど…赤ちゃんがそうなら…二週間後でお願いします…Kもいい…?』
Mがいいながら手をきつく握りしめた。
『うん…そうだね…赤ちゃんが出来るだけ苦しみが少ないうちに…』
そう言いながら俺も泣いてしまった。
『では予約入れておきますね。大部屋は他の方もいるから個室をお勧めするけど、どうしますか?』
『絶対に個室がいいです』
Mが言った。
俺も絶対にその方がいいと思った。
他の人が赤ちゃんの世話をしたりするのを見るのはきっとMには辛すぎる。
それはどんな人でも辛いと思う。
『わかりました。個室予約しておきますね』
そう言って先生はパソコンを見ながら予約を入れた。
そのあと色々説明され、同意書等を受け取って診察室を出た。
周りの妊婦さん達がこちらを訝しげに見ている。
それはそうだろう。
診察室から出てきた俺とMはすっかり泣き腫らした顔をしていたのだから。
Mは車に乗ると俺の胸に顔を埋めて泣いた。
『ごめんね…赤ちゃんごめんね…』
そう何度も呟いていた。
俺も泣きながらMを抱き締めることしかできなかった。
一時間くらい二人で泣いた。
『そろそろA君迎えにいかないと…』
鼻をすすりながらMが言った。
A君を迎えに行くために俺の母親のところへ向かった。
車を止めたところでMがこっちを向いて笑って言った。
『ちゃんと笑えてる?』
『えっ?…うん笑ってるよ』
『そっか。よかった。…泣いてたり悲しい顔してたらA君が心配するから』
そう言いながらMは鏡でも確認してから車を降りた。
そんなMを見て泣きたくなる気持ちをグッと押さえ、俺も鏡に向かって笑顔を作ってから車を降りた。
実家に入るとA君がお帰りーと走ってきた。
『赤ちゃん元気だった?』
A君がMに聞いた。
『ん~…元気だったよ。足でママのお腹蹴ってた』
とMは答えた。
A君は嬉しそうにMのお腹に元気だって~お帰りーと言っていた。
俺の母親も出てきてとりあえず二人とも上がってと言われ家に上がった。
A君がMとリビングで遊んでいる間に、俺は母親に全てを説明した。
母親は
『じゃあ…Mさん今辛いよね…。こんな知り合いも居ないところでこんなことになって…不安だろうね。あなたがちゃんと支えてあげなさいよ!A君もMさんも。』
そして帰り際に母親はMに
『Mさん。出来ることはするから何でもいってね。無理はしないで。キツかったらA君も預かるから。頼っていいんだよ』
そう言った。
『ありがとうございます。助かります。その時はよろしくお願いします』
そう言ってMは頭を下げた。
A君は
『またね~またくるからね~』
と無邪気に手を振っていた。
MはA君の前では辛い顔を見せなかった。凄く悲しいはずなのにA君には悟られまいと必死に笑っていた。
普段は何事もなかったようにA君と楽しく過ごしているM。
そんなMを見て強いなと俺は思っていた。
だけどそれは違った。
夜中にふと目が覚めた時だった。隣にいるはずのMが居なかったので家の中を探した。
するとMは子供部屋の1つで泣いていた。
多分俺やA君を起こしてしまわないようにだろう、声を殺して肩を震わせながら泣いていた。
『M……』
俺が声をかけると驚いてこちらを見た。
『K……ごめんね…起こしちゃった?…ごめんね…』
『いいんだよ…ずっと…一人で泣いてたの?』
『……うん…』
『起こしてくれたらいいのに…一人で泣いてたら…余計に辛いだろ…』
言いながら涙が出た。Mは強くなんかなかった。ただ俺やA君に心配かけないように、たった一人で悲しみを抱えてたんだ。
気付いてあげられなかった自分が情けなかった。
『ごめんね…Kも辛いのに…負担かけたくなくて…』
Mは涙をふきながら言った。
俺はそんなMを抱き締めた。
『これからは一人で泣くなよ…夜中でもいいから俺を起こして…二人なら少しは悲しさも半分に出来るかもしれないだろ…一人で抱えなくていいから……』
俺がそう言うとMは無言で頷いた。
しばらくしてポツリとMが言った。
『赤ちゃん病気になったのは、きっと私のせいだ』
『なんで?Mのせいじゃないよ』
『きっと不倫したから罰があたったんだ…罰なら私にあればいいのに…私のせいだ…私が赤ちゃんを病気にしたんだよ…ごめんね…ごめんね…私がいけないんだよ…赤ちゃんごめんね…』
Mはお腹を抱き締めながら言った。
『違うって!先生も言ってただろ?誰のせいでもないって、誰にでも起こりうるんだって。普通に結婚した人達にだってありうるんだよ。誰が悪いわけでもないんだよ』
『でも……でも……そうとしか思えないよ……』
『絶対に違うから。自分を責めるなよ…赤ちゃんだってママがそんなふうに思ってたら悲しいだろ…』
『ごめんね…赤ちゃんごめんね…本当にごめんね…』
Mはずっとそう言いながら泣いていた。
気がつけばもう空がしらみ始めていた。
Mは毎晩朝まで一人で泣いていたらしい。
俺は何て不甲斐ないんだと思った。
だがその日からMはちゃんと俺にいってくれるようになった。
気付けばあっという間に手術予定日になった。
Mは前処置のため前日から入院した。
A君はママが病気になったと心配していたが、Mがすぐ元気になって帰ってくるよと言うと安心していた。
手術前日の夜。Mは海綿体というものを膣に幾つかいれたらしい。
産道を少しでも広げるためらしいが、これがかなり痛みを伴ったらしい。
個室で電話も使用していいため、前日の夜はずっと電話で話した。
Mは不安と悲しみと入り交じった感じだった。
ずっと赤ちゃんの話をしていた。
元気に動いているのが、本当なら嬉しいはずなのにと泣いていた。
赤ちゃんにもたくさん話しかけていた。
四時頃に泣きつかれたのか、通話のまま声がしなくなった。
きっと寝てしまったのだろう。
俺にははかりきれないほど辛いはずだ。だけどMは俺のこともずっと心配してくれていた。
A君にもどう説明したらいいかと考えていた。
俺がシッカリしなければと思った。
手術当日。
俺も仕事を休んだのでA君を保育園に預けてから病院に向かった。
Mは陣痛誘発剤を入れたらしく、陣痛に苦しんでいた。
泣いてごめんねと言いながら必死に痛みに耐えていた。
俺は背中をさすってあげることしか出来ない。
Mの姿に涙が出た。
三時間たってもまだ赤ちゃんが出てこないため、誘発剤を追加された。
Mは陣痛のためかなり痛そうだった。
二回目の誘発剤を入れてから一時間程した頃だった。
Mが
『赤ちゃんが、赤ちゃん出てくるっ…先生…先生呼んで』
と言った。
ナースコールすると、直ぐに看護師さんと助産師さんが車椅子を持ってきた。
子宮こうの開き具合を確め、直ぐに車椅子に乗れる!?とMにいった。
Mは苦しみながらゆっくりと車椅子に乗った。
俺は分娩室前で待つように言われた。
どのくらいたっただろうか、先生が出てきて産まれましたといってくれた。
そして俺の事を心配する言葉と優しい言葉をかけてくれた。
当たり前だが赤ちゃんは見せてもらえない。
Mは分娩室でしばらく休ませますと言われた。
俺は言い表せない喪失感にかられた。
ああ、もう赤ちゃんはいないんだ。
そう思うと目頭が熱くなった。
一時間半ほどしてMが分娩室からストレッチャーで病室に運ばれてきた。
Mの顔は真っ青で血の気がなく、ぐったりしていた。
看護師さんが
『妊娠中の貧血と精神的なものとで少し衰弱しているので点滴をいくつか注しています。本当は今日帰れる予定でしたが、先生の判断でもう一晩入院してもらうことになりました』
と言われた。俺はわかりましたと言った。
Mの手を握り
『お疲れ様…』
と言うと
『赤ちゃんちゃんと産めなくてごめんね…』
とか細い声でMが言った。
俺はそっとMを抱き締め頭を撫でた。
『いや…辛いのに頑張って産んでくれてありがとう』
そう言うとMは目に一杯涙をためて泣いた。
その後俺は着替えや入院手続き等しにいくことにした。
そして婚姻届も出しにいく。
なぜ今日婚姻届なのかというのには理由があった。
赤ちゃんは火葬が必要な週数ではあったが、戸籍にはまだ載らない週数だった。
だから赤ちゃんの産まれた日だというのを形にするために、今日この日に入籍することにしたのだった。
俺は婚姻届をMに見せ、出してくると言って病室を出た。
入院手続きや婚姻届の提出が終わり病室に戻るとMは眠っていた。
枕には涙の後が残っていた。
昨夜から眠れなかったと言っていたので疲れたのだろう。
俺はしばらくMの寝顔を眺めていた。
一時間程するとMがうなされていたので起こした。
どうやら金縛りにあっていたらしい。Mは金縛りにあいやすい体質らしく、疲れているときにはよくあることだと言っていた。
そんな話をしていると看護師さんと先生が入ってきた。
『どうですか?少しは休めましたか?無理しないでくださいね。痛みがあったらナースコールしてください。後、この後に葬儀の方がくるので話聞いてくださいね』
『旦那さん、奥さん大変だから旦那さんが聞いてあげてください。』
『それと…希望されるのなら赤ちゃんと会えますけど…どうしますか?』
先生がMを見ていった。
『会います。お願いします』
『じゃあ旦那さんもいるし、今連れてきますね』
そう言って先生は看護師さんに指示した。
看護師さんはすぐに赤ちゃんを連れてきてくれた。
赤ちゃんは小さな箱に入っていた。
看護師さんと先生は葬儀の方が帰られたらまたナースコールで呼んでください。と言って出ていった。
俺とMは恐る恐る、ゆっくり赤ちゃんがくるまれている小さな布団をめくった。
中には小さな小さな男の子がガーゼに包まれて入っていた。
Mは赤ちゃんを箱から取り出すと、ほっぺたの方へ持ってゆき泣きながら
『赤ちゃんごめんね…辛かったね…苦しかったよね』
そう言って両手に包み込み優しく抱き締めた。
俺もMに体を寄せて、Mの手に俺の手を添え泣いた。
一時そうやって二人で泣いた後にMがポツリと言った。
『赤ちゃんKに似てる…ほら鼻とか似てるよ…』
そう言いながら小さく微笑んだ。
『こんなに顔も体もシッカリできてるのに…』
Mはそう言うとまた手のひらで包み込み赤ちゃんを胸にあて抱き締めた。
二人で赤ちゃんを眺めながら泣いていると、葬儀の人が来た。
始めにご愁傷様です。と頭を下げていった。
『先生等から聞かれているかと思いますが、この週数の胎児は火葬する事になっています。葬儀等は特にないですが、棺桶等はどうされますか?』
そう言ってパンフレットを見せてくれた。
『急な話ですし、今日の夜までに決めていただければ明日の退院に合わせてご用意させていただきます』
『わかりました。じゃあ二人で話して後で連絡します』
俺がそう言うと葬儀屋は、それではと言って帰っていった。
Mがパンフレットを眺めながら
『こんな小さな棺桶が普通にあるんだね…』
そう悲しそうにいった。
二人で色々みて、赤ちゃんの棺桶は桐造りのものに決めた。
俺もMも気が重かった。
ずっと赤ちゃんを囲んで二人とも黙っていた。
だがそろそろA君を迎えにいく時間になった。
『そろそろ行くね』
『そうだね…A君ママがいなくてビックリしちゃうかな…今日はハンバーグにしてあげてね。好きだから。』
『わかった。心配しないで、今夜はゆっくり眠りな。A君は大丈夫だから任せて』
『ありがとう。また明日ね』
『じゃあ、本当にゆっくりするんだよ』
そうして俺はA君を迎えに行った。
A君は俺のお迎えに喜んで、一緒に車まで競争~とはしゃいでいた。
『ママはまだ病院なんでしょ?明日にはよくなる?』
『うん。明日にはよくなって帰ってくるよ。だけどママは疲れてるからA君いい子にできるかな?』
『出来るよ~大丈夫A君いい子にする~』
『約束な。じゃあ今日はハンバーグにするから買いにいこう!』
『わーい。ハンバーグ~』
A君の無邪気な笑顔になんだか気持ちが和らいだ。
昨日の夜も俺と二人だったので、A君はもうなれたようだった。一緒に風呂に入り歯磨きをして一緒に寝た。
寝顔もMにそっくりだ。
翌朝もA君を保育園に連れていってから病院へ向かった。
ちょっとした供養?みたいなものをすると聞いていたので、供える花束を買うことにした。
赤ちゃんだし、菊などの花よりはMの好きなカスミソウにすることにした。
病院に付くとMが荷物をまとめている途中だった。
目の下にはクマができていた。やはり昨日もあまり寝付けなかったようだ。
『おはよう。どう?少しは休めた?』
『うん…昨日よりは休めたよ。あっ、これ先生が…』
そう言うとMは封筒を渡した。
『赤ちゃんの火葬に必要な書類だって…』
『そっか…』
封筒の中には死亡証明書などが入っていた。
荷造りが終わると退院手続きに行った。
手続きが終わったら来てくださいと言われていた場所へいくと、そこからまた違う場所へ案内された。
案内された場所には祭壇?のようなものがあり、小さな…昨日二人で選んだ棺桶が白い布の被せられた台の上に置いてあった。
葬儀屋にいわれ、俺は棺桶の横に花束を置いた。
周りはた手術や今回の事に関わった看護師さんや先生もいた。
線香をあげ、鐘のようなものを鳴らすと、その場にいた全員で手を合わせ黙祷してくれた。
しばらく静寂に包まれて。
葬儀屋がなにか言って黙祷は終わり、先生や看護師さん達はMや俺に優しい言葉をかけてくれた。
事前に車を裏に回すように言われていたので、棺桶をすぐに乗せることができた。
葬儀屋にお礼を言い車を出した。 葬儀屋は見えなくなるまで頭を下げていた。
家につくと、和室に赤ちゃんを置くことにした。
そして火葬場に連絡して火葬予約を取った。
丁度友引を挟むため明後日となった。
とりあえず俺の母親にも知らせた。
母親も火葬に立ち会うからといい、Mを心配していた。
Mはずっと赤ちゃんを眺めていた。
『なんだかトントン拍子に話が決まってくね…赤ちゃんとずっといたいけど…無理だもんね…』
そう言って泣いた。
『泣いても戻ってこないのに…涙が止まらないよ…』
『泣いてもいいんだよ。今はいっぱい泣けばいいよ…我慢することない』
そういいながら俺もぐちゃぐちゃに泣いていた。
火葬当日。A君はどうするか迷ったが保育園に預けることにした。
火葬場まで行くと俺の母親がもう来ていた。
係りの人が棺を預かり待合室に案内してくれ、三人で呼ばれるのを待った。
重たい空気だった。
しばらくするとまた案内の人が来て、台に乗せられた赤ちゃんに最後の供養を…と言われた。
一人ずつ線香をあげ、赤ちゃんを見る。
母親も涙ぐんでいた。
焼香が終わると、では、と言って棺を火葬する場所に入れた。
大人用に作られている火葬用の台に乗せられた棺は、一層小さく見える。
ゆっくりと扉がしまる。
赤ちゃんですので、15分ほどで終わります。と言われ、先ほどと同じ部屋で待つように言われた。
母親はMを気遣ってお茶を入れたりしていた。
15分が長く感じた。
その日からA君が寝たらMは赤ちゃんの骨壺の前で毎晩座っていた。
それとMは嫌がったが、Mのお母さんにも一応孫なので知らせる事にした。
緊張しながらMねお母さんに電話した。
俺だとわかると明らかに嫌な声になったが、以前ほどの敵意は感じない。
俺は赤ちゃんの事を全て話した。
Mのお母さんは受話器越しに泣いていた。
『なんでもっと早くいってくれないの…私もあれからちょっとは考えたのよ…。Mの話も聞こうとしないで…Mは大丈夫なの…?ずっと厳しすぎるくらい厳しくしてきてそれが正しいと疑うこともなかったこと…私も悪かったと思ったの。あの子は他人に気を使いすぎるくらいの子になって…、言いたいことも言わず、ワガママも言ったことなかった。思えば初めてあの子が自分の意思を言ったんだって気づいたの。何も言わなくさせていたのは私だったって。Mに一度帰ってきてといってくれないかな?あなたも一緒に。改めてきちんと話しましょう。赤ちゃんの事も辛いだろうから気晴らしにもなると思うし。』
お母さんはそう言った。
俺は伝えてみますと言って電話を切った。
Mに話すと考え込んでいた。
そんなときだった。元嫁からメールがきた。
内容は元嫁が事故にあったと言う内容と、Mと住んでること、妊娠したこと等を聞いてきた。
なぜ知っているのか聞くと、どうやら仲良くしてくれるようになったと思っていたお隣さんは元嫁から調べるように頼まれていたらしい。
子供作るなっていったのに、私が事故にあったのに心配しないの?子供達と連絡したくないの?
そんなことを言われた。
はっきり言って元嫁が事故にあったなど興味ないと言った。子供に合わせない、連絡するなと言ったのもそっちだろ。
離婚したのに子供作るなと言う権利はない、もう○○さん(元嫁の旧姓)とは関わりたくないと返した。
すると急に
子供達に会ってよ。私に連絡して。
私を心配して。
私達他人じゃないんだから。
女の赤ちゃんなんか死ね。殺せばいい。赤ちゃんなんか病気になって死ね。
女から聞いてないの?家の電話変えてないでしょ?だから毎日私女に電話してるんだよ。赤ちゃん死ねって。
そんな返事が来た。
俺は怒りに震えた。が、もう二度と関わりたくないと改めて思った。
赤ちゃんを亡くしたMに、知らないとはいえそんな電話をしていたなんて知らなかった。
Mに申し訳なかった。
今後一切連絡しない。もう他人なんだよ。子供達へのお金以外関わる気はない。 思い出すのも嫌なんだ。離婚は他人になることなんだ。
そう返事をして電源を切った。家の電話の回線も抜いた。
Mになぜ話さなかったのか聞くと、心配かけたくなかったし、前妻さんにあんなことを言わせてしまうようなことをしたわけだから…私が悪いから何も言えないよと言った。
俺は返す言葉がなかった。
俺は翌日、すぐにショップに行き携帯を解約して買い換えた。子供の事を連絡すると言っていたからそのままだったが、もっと早く絶縁しておけばよかったと思った。
A君の誕生日まで後二日というときに、仕事から帰るとMが申し訳なさそうな顔でたくさんのオモチャと服の入った段ボールを持ってきた。
『これ…元旦那が送ってきたんだ…A君の誕生日プレゼントにって…前、引越し後に残りの荷物送ってもらうのに住所教えてたから…電話していらないって言ったんだけど💦』
『そっか…。まあいいんじゃない?A君も喜ぶし』
『それと…』
そう言ってMが通帳を取り出して開いて見せた。
そこには元旦那からの15万の振り込みがあった。
『養育費も要らないって言ってたのに払うってきかなくて…離婚しても父親なんだから払う権利があるって言ってさ💦会わない事には納得してるけど、せめてお金くらいは出させてよって。後は私にも色々苦労かけたからって…』
養育費は俺からも断っていた。だが同じことを言われた。
父親の権利まで奪わないでくれと。
後はMの為にも少し何かしたいと言われた。きっと元旦那はA君は当たり前だが、まだMの事も愛しているんだろうなと感じた。
A君は養子縁組したので俺も父親になったが、元旦那も戸籍上は父親だから仕方ないと思った。
ただ、Mの事は正直複雑だった。
『断っても本人が振り込みしちゃうんだから仕方ないよ。Mがくれって言ってるわけじゃないし、前に俺も断ったんだけど同じことを言われたよ。A君の養育費はもう仕方ないと思うしかないかな』
『じゃあA君の養育費はともかく、私のためにって言うのはやっぱりやめてってもう一度お願いするよ。だってもう夫婦じゃないのに変だしね💦養育費はとりあえずA君の口座に全額貯金しておくよ』
『そうだね。それが一番いいね。』
そう言って送られてきたオモチャ等は誕生日に渡すことにして二階にしまった。
A君の誕生日会をする日になった。
今日は三人で水族館に行くことにしていた。
A君は行きの車の中でご機嫌で歌っていた。
水族館に着くと凄く混んでいた。
A君は俺に、おんぶ~と言ってきた。
A君をおんぶしながらなんとか人混みを掻き分け水槽に近づく。魚が見えると背中でA君がピコピコしていた。
その日は一日中A君はハイテンションで、帰りの車ではぐっすりだった。
ケーキを取りに行き家についてもまだA君は寝ていたが、起こしてケーキの箱を見せるとスグに元気になった。
みんなで誕生日の歌を歌い、Mが腕を振るったごちそうとケーキを食べた後にA君に誕生日プレゼントを渡した。先週買いにいったトミカと、俺の母親から預かっていたもの、 勿論元旦那からのプレゼントも。
A君は喜んでオモチャで遊びだした。
Mも幸せそうな顔で見ていた。
その時A君がオモチャを持って俺の方に来た。
『Kパパー一緒に遊ぼ~』
パパ!?A君は今確かに俺をパパと呼んだ。
『パパなの?』
思わず聞き返してしまった。
『うん?パパー遊ぼ~』
Mと俺は顔を見合わせた。
『もしかしてさ…まだ2歳半だったしA君の記憶が書き換えられたのかも…』
Mがコソッと言った。
A君は俺のズボンを引っ張りながら、遊ぼ~よ~とまだ言っていた。
A君が俺をパパだと思ってくれた…なんだか嬉しくて涙ぐんでしまった。
『どうしたの?痛いの?』
A君が心配そうに言ってきた。
『なんでもないよ大丈夫。ほら遊ぼうか』
A君はオモチャを俺に渡して二人で遊んだ。
その日からA君は俺をパパと呼ぶようになった。
A君は本気で俺を本当のパパだと思ってくれている。
俺も本当に嬉しかった。この時のことを絶対に忘れないと思った。
あっという間に時間はたち、GWになった。
Mの実家に三人で向かった。
A君は飛行機に乗れることと、Mのお母さんに会えることとで大喜びだった。
俺は正直不安があった。だがMの為にもA君の為にもお母さんにきちんとしなければと気合いをいれた。
Mの地元の空港に着くとレンタカーを借りた。
Mのお母さんが迎えに来るといったが、車があった方が後からの移動も便利なのでレンタカーにした。
Mの実家につくとお母さんが庭で待っていた。
A君は大喜びで走っていった。
俺とMはその後に続いた。
お母さんは俺を見ると頭を下げ
『以前は、話も聞かずに怒鳴るばかりでごめんなさいね。だけど娘やA君の事を思うと、はいそうですか。と言って黙って行かせるわけにはいかなかったのよ』
『はい。こちらこそすみませんでした。きちんと話もせずに連れ去る形になってしまって。本当に申し訳ないです』
『まあ、もう過ぎたことだし…A君も楽しそうだし、Mも…幸せそうだから。…だけど赤ちゃんは辛かったわね。こっちにきたことで二人とも気がはれたらいいけど。』
『ありがとうございます。Mは向こうでは知ってる場所も友達もまだ少ないからきっといい気晴らしになると思います。』
Mのお母さんとそんな話をして少し気まずさが薄れた気がした。
その夜はMのお母さんがタイ料理をフルコースで作ってくれた。Mのお母さんは料理がうまくなんでもできる。
MもA君も本当に楽しそうだった。
次の日。Mのお母さんは仕事に出掛けた。
Mの友達から、こっちにいるなら会いたいと連絡がきていた。
俺もA君も一緒にとMの友達が家に招待してくれた。
Mの友達の家に着くと、20人くらいの人がいてびっくりした。
皆家族連れだったり彼氏も一緒に来ていた。
M達は学生の頃からの付き合いで、度々彼氏や旦那、子供ぐるみで集まって色んなイベントをしていたらしい。
なのでみんな事情は知ってる。
だが快く受け入れてくれた。
俺が一番年上だと思っていたら、Mの友達の旦那さんが俺より3つ上だった。
Mの友達も年齢が様々だった。
みんな本当にいい人ばかりで俺も楽しかった。
Mも久しぶりに心から笑っていて楽しげだった。
A君はもちろん他の子と楽しんでいた。
みんなMの為に仕事や用事を調整して集まってくれたらしい。本当にMの事を思ってくれている。
久しぶりに友達と一日中楽しく話してMもだいぶ気が紛れたようだった。
俺だけではこんなふうにMを笑えるようにはできなかった。こっちにきてよかったとMを見ながら思った。
その日の夜はMの従姉妹二人とその旦那さんがきてくれた。
Mの実家の敷地に従姉妹の実家も建っている。なので小さい頃から姉妹のように育ったらしい。
今は結婚してそれぞれ暮らしている。
Mのお母さんは夜も仕事だったのでいなかった。
なので従姉妹達家族と3家族でMの実家でご飯を食べることになった。
『M~心配したんだよ?連絡しないでいなくなるから。話してくれたらよかったのに!』
『うん。ごめんね💦急だったし…私もちょっと病んでたから💦』
『まあ、Mのお母さんは怖いからね!マジで。昔から怖かったもんね~』
『まあね💦あっ、今更だけど旦那のKだよ』
『Kさんよろしくね。これからもたまに帰ってきて何時でも遊びに来てね。みんなでキャンプとかしようね』
『あっ、Kです。よろしくお願いします。それにしても皆さん仲がいいんですね』
『ずっと隣同士で姉妹みたいに育ったからね~』
そんな話をしながら夕食を食べ、ビールを飲んだ。
Mが地元が好きだから本当は離れたくない。だけどKは仕事もあるし、私はKと一緒にいたいから私がそっちにいく。
そう言っていたことを思い出した。
Mは本当に全てを捨てるつもりで俺のところに来たんだなと、従姉妹達と楽しそうに話すMを見ていて思った。
ここにはたくさんの友達と従姉妹達もいる。だけど俺のところにきてくれた。
俺は今よりもっと全力でMとA君を幸せにしたい。しなければとそう思った。
Mの実家にきて本当によかった。
赤ちゃんの事も夜になると多少涙ぐんだりはするがMはだいぶ笑顔でいる時間が増えたように感じた。
A君も楽しそうだし、俺もMの友達や親戚、お母さんとも色々話せて物事はいい方に向いていた。
最終日には空港まで空港バスで行くことにした。
Aはまた飛行機に乗れることを楽しみにしていた。
帰り際にMのお母さんが
『A君とMを絶対に幸せにしなさいね。』
そう言われた。
俺は『はい』と答えた。
Mとお母さんは普通に『またね』といって俺達はMの実家を後にした。
空港につき飛行機に乗ると、A君はあんなに楽しみにしていたのにはしゃぎすぎたのか俺に抱っこされながらぐっすり眠ってしまった。
MはそんなA君を見てから俺を見て
『K、ありがとう。私のために…。もう大丈夫だよ。悲しくないっていったら嘘になるけど、悲しんでばかりいても赤ちゃんも嫌だよね。こっちにきてみんなと話して元気もらったし!いつまでもクヨクヨしてちゃだめだってそう思えた。K、本当にありがとう』
Mはそう言うと俺に軽くキスをした。
『それならよかった。Mが元気になれたなら…。赤ちゃんの事はずっと忘れられないし悲しいけど、赤ちゃんがまた生まれ変わって幸せになれるように祈ろうね』
俺はそう言った。
家に帰りつくとやはりみんな疲れてぐったりしていた。
その日はみんなあっという間に眠りについた。
次の日は日曜だったのでMが俺の親にお土産を持っていこうと言ったので三人でいった。
『Mさん…。ちょっとは気晴らしできた?』
母親が言った。
『はい。すみません。ご心配かけてしまって…』
Mが言うと
『いいのよ。子供を亡くすのは…辛いからね。無理しないでね。だけど気晴らしできたならよかったわね。A君も楽しかったみたいでよかった。あっそういえば…』
そう言うと母親はカザガサとなにか袋を出した。
『これ。A君車が好きだって言ってたから買ってきたの。何がいいかわからないから適当な車のオモチャだけど』
そう言うと袋から車のオモチャを取り出しA君に渡した。
『ありがとうございます!』
A君は頭を下げてお礼を言うとおもちゃを受け取り嬉しそうに遊びだした。
『すみません。ありがとうございます』
『ありがとう』
Mと俺もお礼を言った。
『Mさん。無理しないでね。何かあったら遠慮なく連絡してね』
帰り際に母親がMに言った。
『はい。ありがとうございます』
そうMが言うと俺達は家に帰った。
それから何日かして、Mがツワリが辛くて辞めてしまった会社の人たちが遊びに来てくれた。
メールで事情を知っているのでMが落ち着いたらみんなで励ましに行こうと計画してくれていたらしい。
数人の人がA君にもお土産を持ってきてくれてA君は大喜びした。
俺はMが友達と気兼ねなく話せるようにA君とA君の部屋で遊ぶことにした。
4時間ほど話をして会社の人たちは帰っていった。
『またいつでも会社に帰っておいでって社長も言ってたよ』
『赤ちゃんはきっとまたM達の所にかえってきてくれるよ!』
『またみんなで遊びに来るから、元気出してね』
そんなことをいってくれたとMが言っていた。
みんな色々考えたり心配してくれたり…ありがたいよね。みんないい人達だ…。
Mは少しだけ涙ぐみながら笑って言った。
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