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付き合い始めると余裕がなくなる。
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道の香り

レス58 HIT数 6048 あ+ あ-

百花( 20代 ♀ ORPOh )
11/01/29 00:52(更新日時)

偶然

すれ違った車窓から

飛び込んできた

懐かしい あなたの顔


あの香を思い出した…



思い出には


全て香りがある

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No.1499343 11/01/05 15:46(スレ作成日時)

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No.1 11/01/05 16:03
百花 ( 20代 ♀ ORPOh )

〔アクアマリン〕



-----


その日は雨だった


もうじき長期休みに入る


そんな高三の放課後


この高校の全ての三年生が帰宅する事なく

教室で待機させられている


ブーブー

【終わったら連絡して】


マナーモードの携帯には
彼氏ツトムからのメール


パタンと携帯を閉じた瞬間教室のドアが開いた



『じゃあ今から説明してもらうからー

あー…聞きにくいやつ
あー…黒板の貼り紙が見にくいやつは
椅子持って移動しろー』



担任のダルそうな声に反応し
私の隣に椅子を運んだのは瑠璃


『ねーねー
この後ツトムと約束?』


『うん、まぁ…』


『嫌なら断ればいいのに』


親友は最もな意見を言いながら黒板に目を向けた

No.2 11/01/05 16:11
百花 ( 20代 ♀ ORPOh )

『どうもー!
いやぁやっぱりみんな若いね!
当たり前なんだけどキラキラしてるね!

僕は今年で40になります
若林といいます!

趣味は…

車の運転(笑)!』


ブフォッ
と反応したのは担任だけだった


突然前に立ち
喋りはじめたのは
自動車学校の担当者


今日は自動車学校から生徒の勧誘に来ているのだ


『40にしては若いね』
無表情に言う瑠璃に
私はうなずいて反応する



若林という担当者は
皆の笑いを誘いながら
テンポよく説明していく


次第に私も口元が緩んだ

No.3 11/01/05 16:23
百花 ( 20代 ♀ ORPOh )

最後まで説明が終わると
最後にパンフレットと
申込書が配られた


『彩夏はいつから行くつもりなの?』

『あたしは許可出たらすぐに行くよ
瑠璃もでしょ?』

『うん、早く免許とっちゃいたいしね』

『だよねぇー』



『申込あざーっす!』


すでに申込書に記入しはじめた私たちの横に
担当者の若林が立っていた


『もう申込書書いちゃっていいの?』

若林は不安そうだ


『親の許可は得てますよ』


私が言うと
若林は安心したように
ウンウンとうなずいた


『君たちは自動車学校には来たことあるの?』


『いえ…』


『見学はしたくない?』


『見学できるの?』


『うん!なんなら僕が案内するよ?』


私は瑠璃の方を向いたが
瑠璃は無表情で申込書にペンを走らせていた

こんな時
瑠璃は本当に愛想がないのだ


『…もし、機会があればにします』


味気ない返事の私に
若林はにこりと笑い
私の机の上に名刺を置いた


『この携帯に都合の良い日を連絡してくれたらいいよ』



そういうと
若林は足早に教室から出て言った

No.4 11/01/05 16:35
百花 ( 20代 ♀ ORPOh )

ブーブー

【着信 ツトム】


『瑠璃、あたし帰るね』


『うん、また明日~』


瑠璃はあくびしながら
手をヒラヒラとふった






『もしもし?
終わったよ?』

玄関で靴を履きかえながら電話をかける

『おー
もう校門まで来た』


校門に目をやると
黒のランクルが目に入った


『お待たせ』


助手席に乗り込みながらツトムの顔を見る


『おーおつかれ』


お疲れなのはツトムだ

また目の下にくまを作っている



『もう迎えにこんでいいって言ったやん…』


『…えーやん、別に…』


『ツトム、疲れとるやん…』


『疲れてねーよ』


『くま出来てるし…』


『出来てねーよ』


『出来とおって…』


『出来てねーって』



ハァー…



どちらからともなく
ため息が漏れる



最近はいつもこうだ


すぐに重い空気になる




なのに
ツトムは毎日会おうとする


私はそれを拒否するが

強く拒むことはできない

No.5 11/01/05 16:51
百花 ( 20代 ♀ ORPOh )

ツトムは私のひとつ年上


現在浪人生である


『お前と早く結婚できるようにするためだ』


この言葉と共に

難関と言われる国家資格を取得するために浪人生になると告げられた



高校の頃はヤンチャで
学校に遊びに来ていたような人が
まともに浪人生ができるわけがないと思っていた



でも

今のツトムは
がむしゃらに勉強をしていた



『今回の模擬テスト見てみんしゃい』


ヒラヒラと紙を私の目の前に差し出す


私にはよくわからない問題ばかりだが

判定はAだ



『すごいやん!』


『やろ?
Aなんて初めてやけん!
この調子なら受かる!』

No.6 11/01/05 16:55
百花 ( 20代 ♀ ORPOh )

ツトムは運転しながら
満足気に笑っていた



素直に嬉しい

そんなツトムを見るのは
素直に嬉しい



でも
毎日流れる重い空気



それを全く気にしないなど私にはできない




いつか言ったことがある


勉強に疲れたなら
一人で休めばいい


私が拒んでも
私を毎日迎えに来て
毎日セックスして

勉強疲れた
お前を迎えに行ったから疲れた
私に嘆く


嘆くなら
迎えに来なくてもいい


私が時々ツトムに会いに行くから


それでいいでしょう?




ツトムは言った


『俺はお前のために
苦しい思いをして勉強しているんだ
みんなお前のためだよ』


初めて聞いたツトムの涙声



この言葉に


私の胸の内は閉ざされてしまった

No.7 11/01/05 17:08
百花 ( 20代 ♀ ORPOh )

その日のツトムの家からの帰り道


瑠璃からの着信があった



『もしもし?』


『あ、彩夏ごめーん!
今ツトムと一緒?』


『うん、どうした?』


『公平のチャリ、パクられちゃってー
帰れないから助けてほしいんやけどー』


『まぢ?
ツトムー!
瑠璃たちのチャリ、パクられたらしいんやけど
迎えに行けないかな?』


『えーよ』


『ツトムと今から行くから待ってて!』



ツトムは車を走らせながら鼻歌まじりに話す


『チャリパクるなんてなつかしいなぁー!
俺も何台パクったかわからんでやー!』


ツトムは
自分のヤンチャな話をするときはいつもテンションが高くなる


『…そんな話
人にしたらいかんよ
一応犯罪なんやけ…』


私は
そんなツトムを恥ずかしく思う


『してねーって!
しかし、厚木や船越は鑑別から出てこんのぉー
あいつらヘマしよってからにー』



厚木や船越は
ツトムの友達で
やはりヤンチャばかりしていた


何をしたのか詳しくは知らないが
鑑別に入った

No.8 11/01/05 17:30
百花 ( 20代 ♀ ORPOh )

ヒートアップするツトムとは逆に
私のテンションが落ちてきたころ


手を振る瑠璃と公平が目に入った


二人を乗せたツトムは
ますますテンションがあがり
話をやめようとしない



『まぢっすかー!
ツトムさん、やべぇっすねー!』

瑠璃の彼氏の公平がツトムのテンションを更に高揚させる


『……………』


瑠璃は無言だ

呆れているのがわかる


『…もーその話は
聞き飽きたってば…』


私はそう言うのが精一杯だった


むしろ
もう何も言いたくなかった

No.9 11/01/05 20:12
百花 ( 20代 ♀ ORPOh )

>> 8 瑠璃たちを見送ったあと


二人きりの車内には
重苦しい空気が漂っていた


『…お前
さっきからわざとらしく
テンション下げすぎ』


『…わざとらしく?
テンション下がるんは
ツトムのせいやん!』


『俺のなにが悪いんよ?』


『カッコいいとでも思ってるん?
いつも粋がってたときの話ばっかりして…』


『粋がって?
それって俺をバカにしよるんやろ?

お前がやめろって言うから俺は色んなこと我慢してきたんやん?

今は昔とは違うやろ?』


『確かに、ツトムは変わったとこもあるよ

勉強めっちゃしてるし…
昔みたいに悪いことしなくなった

でも
本質的には変わってない

昔の話を自慢気にするとことか
公平に対しても
なんであんなに偉そうなん?』

No.10 11/01/05 21:44
百花 ( 20代 ♀ ORPOh )

>> 9 結局ツトムは
私の家に着くまで
一言も喋らなかった


いつもより強めに踏まれたブレーキに体が少し前に傾く


『…着いたぞ』


『うん…』


『早く降りろよ』


『…うん』


私が車から降りると
ツトムはこちらを一度も見ることなく
車を走らせて行った



ハァー…


わたしのため息は

悲しいため息なのか

安堵のため息なのか


自分でもよくわからない









ツトムのこと

ちゃんと好きなのかなぁ…

No.11 11/01/05 22:10
百花 ( 20代 ♀ ORPOh )

-----


私とツトムは
同じ高校の先輩と後輩だ



初めて出会ったのは
私の入学式だった


体育館から教室へと向かう廊下の途中に屋外を渡る場所がある

そこは上の階が見上げる事ができ
逆に上からは見下ろす事ができる


入学式を終え
その廊下を歩いている時

上から数人の生徒が私たちを見下ろしていた


その中の一人がツトムだった



『おーい
成瀬瑠璃ちゃん?
こっち向いてー?』


眉毛がこれでもかというほど釣り上がった
背の小さい男の先輩が瑠璃に声をかける


『…なんですか』


瑠璃は面倒くさそうに
答えた


『携帯教えて?』


満面の笑みの男の先輩


『…携帯持ってないので』


瑠璃はそれだけ言うと
私の腕を引っ張りながら
早歩きした



『…ちょっと!
隣の君は?!髪の長い…』


後ろで別の先輩らしき声がしたが
私も振り向かず
早歩きして教室へ向かった

No.12 11/01/05 22:24
百花 ( 20代 ♀ ORPOh )

私と瑠璃は
中学校からの付き合いだがとても仲良くなり
高校も相談して一緒に受験した


瑠璃は目がとても大きく
小柄で
誰から見ても魅力的な女の子だ

実際本当によくモテる
もちろん声をかけられる事にも慣れている



『さっきの先輩知ってる人?携帯持ってないなんて
すぐ嘘だってバレるよ』


『知らないよ
バレたっていいよ
教えたくないっていう意志が伝わればいいんだから

それより同じクラスで良かったよね!』


瑠璃はいつものマイペースで話しだし
私もたわいもない話をした

No.13 11/01/05 22:37
百花 ( 20代 ♀ ORPOh )

それから数日後

私は寝坊してしまい
いつも乗るバスを逃してしまった

次のバスでも遅刻はしないものの
20分も待つ事になる

私は瑠璃にそのことをメールし、携帯で音楽を聞いていた


トントン

肩を叩かれ
ふと顔を上げると

私服姿の若い男の子がいた


『おはよう』


『…え?』


『おはよう!』


『あ…おはよう…ございます…』


え…誰…?


『バス、来たよ』


その男の人は満面の笑みでバスを指差し
乗り込んで行った


私も慌てて乗り込むと
彼は一番後ろの真ん中の席に座っていた


なんとなく会釈すると
彼はまたニカッと笑った

ヤンチャそう…

私は避けるように
一番前の席に座った

No.14 11/01/05 22:50
百花 ( 20代 ♀ ORPOh )

バス停は学校の真ん前にあり
校門のすぐ前に停まってくれる


バスの窓から見ると
今日も数人の先生が校門付近に立っていた

入学式から二週間は
校門の前で制服などのチェックをしているのだ


バスから降り
校門を越えようとした時だった


『おい、ちょっと待ちなさい』


男の先生の横を通りすぎた時だった

その先生に呼び止められたのだ


『…あ、おはようございます
え?なんですか?』


呼び止められるなんて思っても見なかったので
少し慌ててしまった


先生は少し私をにらむような目付きで言った


『…煙草、吸ってないか?』


………は?


もちろん喫煙なんてしたことはなかったが
思いもよらない事を言われたので
驚いてなかなか声が出なかった


『違うか?匂うんだよ
ちょっとこっちに来なさい』


『ちょっ…
吸ってないですって!
に、匂いますか?』


そう言いながら
自分の制服を嗅ぐと

確かに煙草の匂いがした

No.15 11/01/05 23:00
百花 ( 20代 ♀ ORPOh )

『ちょっと待てって!』


私の腕を引く先生の前に
私服姿のあの男の人が立っていた


『さっきのバス停で
この子の隣で煙草吸ってるオヤジがいたんだよ!』



あぁ確かに…

うちはお父さんがヘビースモーカーだから
全然気にしてなかった


『…な!?
なんだお前!学校に理由もなく私服でなんか来るんじゃない!』


先生は私の手を離すと
その男の人に掴みかかった


『理由もなくって…
俺は停学中だよ』


『停学中なら尚更だ!
なんで学校にいるんだ!』


『忘れ物したんだよ
すぐ帰るよ』


『そんな話じゃない!
ちょっ…君はもういい
教室に行きなさい

お前はこっちに来い!』


『っだよ!
行くから手離せよ!』


その男の人は
先生の手を振り払うと

私の方をチラッと振り向きまたニカッと笑った


私は戸惑いながら
また会釈した

No.16 11/01/05 23:22
百花 ( 20代 ♀ ORPOh )

それから数週間後


私に彼氏ができた

彼はバスケ部で
寡黙だがユーモアがあり

席が隣でよく話すようになったこともあり
すぐに好きになった


瑠璃の協力もあって
付き合えるようになったが
付き合って僅か2ヶ月
彼は他に好きな人ができたと私に告げた



すごく辛かった

その女の子になりたいと思った


誰?

その子は誰なの?


何度聞いても教えてはもらえなかったその子を

毎日毎日羨んだ



ある日
学校へ行くと私の席に
瑠璃が座っていた


瑠璃は教室の入り口にいる私に近づいてきた


『彩夏は今日から私の席に座って

先生には適当に言ったから

このままじゃ
いつまでも忘れられないよ?

忘れなね、1日も早く』


私は涙を我慢することが
出来なかった

でも
絶対に早く忘れてやる!


そう
強く思った

No.17 11/01/06 00:10
百花 ( 20代 ♀ ORPOh )

>> 16 瑠璃は中学でしていたテニスを高校でも続けていた

公平も男子テニス部で
瑠璃を取り巻く数多くの男たちの中
見事瑠璃と付き合うことができた


私はなんとなく帰宅部だった

特に興味深い部活がなかったから


だから放課後は
適当に友達と遊んでいた


その日の放課後も
いつものように携帯をかまっていた


ブーブー

『今日も遊ぼうよ☆』


メールは中学の友達の
アリサからだった


『りょーかい☆
電車で向かいます』


メールの返事をするとすぐに駅に向かった





駅に向かう途中
公園のトイレで私服に着替えた


そして


煙草に火をつけた



フーッと煙を吐くと

なんだか気持ちが落ち着いた





彼に振られてから
初めて煙草を買ってみた


なぜ買ってしまったのか
自分でもわからないが


私はそれにすがるようになっていた


もちろん

誰にも秘密にしていたけれど

No.18 11/01/06 00:18
百花 ( 20代 ♀ ORPOh )

一本では物足りず
もう一本に火をつけたときだった


『あれ?
喫煙者だったわけ?!』


びっくりして振り向くと
そこには制服姿の男の人がいた


『助けた意味ないやん!
いや、意味はあるよな!』

え…


『俺!
まさか覚えてないん?』


え…


『…えー!!
俺やし!
校門で助けてやったろ?
あんた、煙草の匂いがしてそれで疑われて…』


あ、あー!!!
あの時助けてくれた私服の生徒だ!

『あ…あ、すみません!
あの時はどうも…

なんか制服なんで
わかりませんでした…』


『いやぁ、絶対忘れてただけやし!
俺があの時制服でもわからんかったやろ?』

No.19 11/01/06 00:27
百花 ( 20代 ♀ ORPOh )

『そ、そんな事はないですよ…』


『じゃあ初めて会った時のこと覚えてる?』


『え?
初めて会ったのはバス停で…』


『やっぱりな!
初めて会ったのはあんたの入学式の日だよ!』


『え?…いつ?』


『あんた、成瀬瑠璃と歩いてただろ?
あの時声かけたの俺!』


『あー、瑠璃に携帯聞いた…』


『違うって
俺が携帯聞いたのはあんたにだよ!
成瀬瑠璃は違うヤツ』


『え?あたしにですか!?聞かれた覚えが…』


『ないだろーね
あんた振り向きもしなかったから』


そう言って
彼はニカッと笑った


あぁ…
あの時の声は
あなただったんだ…

No.20 11/01/06 00:42
百花 ( 20代 ♀ ORPOh )

『…んで
あんた結局煙草吸ってたの?』


彼は私の指に挟まれた物を見ながら言った


『あ、ちがっ…
吸いはじめたのは最近で…あの日は本当にまだ…』


『ふーん…ま、いいけどね

…いいんだけど…』


彼はギロッと私を見た


『え!…なんですか?』


『うん、
まだあの日のお礼してもらってないなって思って…』


『…お礼?!
お金払えってことです?』


真顔で聞く私を見て
彼は大笑いし出した


『違うって!
ごめん、ごめん
言ってみただけだよ!』


私はからかわれて
少し恥ずかしくなったが
彼は続けて言った



『お礼っていうかさ

携帯教えてよ!
せっかくだし、あの時も聞いたけど、やっぱりあんたの番号知りたいわ!

俺の名前は足立ツトム
ちなみに二年六組』



『あ…
あたしは…並木彩夏
一年三組…』



ツトムと
まともに喋った
初めての日だった

No.21 11/01/06 01:06
百花 ( 20代 ♀ ORPOh )

その日の夜
ツトムから初めてメールがきた


『彩夏ちゃんって
テレビっ子やろ?』



私はハッとして
付けっ放しにしていたテレビを見た


なんで…


『なんですか?急に』


驚きながらも
少し冷たく返事をした



ブーブー

『メールしたらまずかった?』



『いいえ、別に』



『俺はテレビが好き』



あっそうですか…



ツトムのメールは非常に返信しずらいものだった



それからも
たまにツトムからメールが来ていたが
全てたわいもないものだった






季節は流れ
早くも夏休みが終わろうとしていた

No.22 11/01/06 01:15
百花 ( 20代 ♀ ORPOh )

ブーブー

【着信 瑠璃】


『もしもーし』


『もしもし、久しぶり!
彩夏最近何してた?』


『ほんと久しぶり!
最近はね、よくアリサと遊んでたよ

瑠璃は部活ばっかで大変だねえー』


『ほんとだよー

あ、でもね
明後日部活休みなの!
公平も休みなんだけど…

彩夏は暇じゃない?』


『暇だよ!
でも、せっかくだし
公平と遊べばいいじゃん』


『彩夏も一緒にだよ!
あと1人…

男の子もいるんだけど…』


『え?誰?』


『公平の友達だよ
いいやつだって!

彩夏のこと、公平も心配しててさ…
良かったらその人と
友達からでも仲良くなってみたらどうかなって…』


『あ、そうなんだ
うん、ありがとう!』


『良かった!
んぢゃ明後日の10時くらいに駅で待ち合わせよう?』


『わかったー!』

No.23 11/01/06 01:21
百花 ( 20代 ♀ ORPOh )

本当は

あまり乗り気になれなかった



もう2ヶ月もたつのに
元カレは
私の中から一向に姿を消そうとしない


いつも携帯をマナーモードにしてしまうのは


彼専用の着信設定を
解除できないでいるから


携帯を手にとり
着信やメールの受信ボックスの名前を見る
その瞬間まで


もしかしてって…

そんな小さな期待をしたいから



悲しいくらいに
まだ

好きで

好きで

たまらなかった

No.24 11/01/06 01:46
百花 ( 20代 ♀ ORPOh )

でも忘れようって決めた


だから
私はこの気持ちは
誰にも打ち明けなかった





約束の日


公平が連れて来てくれた男の子は
背が高くてイケメンだった


『はじめまして!
伊藤貴明です

彩夏ちゃんだよね?
よろしくね』


『あ、よろしくお願いしまーす』


貴明くんは
明るくて話もうまくて
すぐに打ち解けることができた


安心したのか気を遣ってくれたのか
公平は途中で別行動しようと提案した


断る理由もなく
貴明くんと私は二人きりになり
近くの大きなゲームセンターに入った



『彩夏ちゃん何したい?』


『運転するやつ!』


『あーあれね?
勝負しようやっ!』


私たちは
早速ゲームのシートに座りコインを入れた



目まぐるしいスピードで
圧勝したのは



私だった…

No.25 11/01/06 01:53
百花 ( 20代 ♀ ORPOh )

『彩夏ちゃん
めちゃくちゃうまいやん!悔しいわー!』


『あはは~
最近よく友達としてたからね!』


『ほんならもう一回勝負しようやっ!
多分次は勝てる!』


『ほんとに?いいよー!』


『あーでもその前に
ちょっと煙草吸って来ていいかな?』


『あ、うん
行ってらっしゃい』



私は自販機でジュースを買って椅子に座りながら待っていた


なにげに携帯を開くと
メールを受信していた



えっ………



頭の中が真っ白になった



『今○○のゲーセンにいるよね?
彼氏できたんだね
おめでとう』



元カレだった

No.26 11/01/06 02:03
百花 ( 20代 ♀ ORPOh )

違うっ!!!



咄嗟に返信しようとしたが手を止めた



忘れよう

そう決めたじゃない…



おめでとうって言われて
なんて返事するの?



本当は
まだあなたが好きだなんて言えない…





『お待たせ!』


見上げると
背の高い貴明くんが
笑顔で立っていた


『どうかした?』


『う、ううん!』


『そっか!
もう一回やろうかと思ったけど
なんか腹減らない?』


『減った!超減った!』



元カレがいるかもしれないゲーセンから
一刻も早く逃げ出したくて私はオーバーに伝えた


貴明くんは笑顔で

私の手を引いた





…見られたかな



『…ごめん、嫌だった?』


下を向く私を
貴明くんが覗きこんだ



『き、急でびっくりして…』



貴明くんは
フフッと笑うと
手をつないだまま
私をゲーセンから連れ出した

No.27 11/01/06 11:22
百花 ( 20代 ♀ ORPOh )

入ったのは
近くのファミレスだった


『彩夏ちゃん
好きな物食べな?
さっき勝負負けたし
何でもおごったるで!』


そう言いながら
貴明くんがメニューを渡してきたので
私は一番高いステーキを指差した


『…まっ!
ま、まぁえーよ
おごったるわ…!』


『これ二人分食べたいんだけど?』


『ま、まぢ?』


貴明くんが慌てるのがおかしくて
私は吹き出してしまった


『アハハ!冗談だよー!
本当はミートスパが食べたいなー!
…でも、二人前ね?』


『二人前も嘘やろが!
俺をからかいすぎや!』


貴明くんは今度は照れたように笑っていた



あぁ

なんか楽しいな…



このまま
時が過ぎてほしい…



イラナイ想いは
早くなくなればいい

No.28 11/01/06 11:35
百花 ( 20代 ♀ ORPOh )

『お待たせしましたー』


ちょうど私の注文した
ミートスパと
貴明くんの注文した
ハンバーグランチが運ばれた時だった


『…う!
いーとーう!』


私の後ろで大きな声がした


貴明くんは
その声に反応し顔をあげる


『…あ!先輩じゃないっすか!』


貴明くんは
右手を上げながら声のする方へ立ち上がった


私も振り返ってみると
そこには数人の男の人たちの姿があった


なんだ…またガラの悪い人たちか…


私は目の前のミートスパに向き返り
静かに口に運んだ




『いやぁーごめんごめん!知り合いの先輩だった!』


少しして貴明くんが戻ってきた


『ううん、いいよ』


『同じ中学の先輩たちでさー、たまに遊んでるんだ』


『ふーん、中学は公平と同じだよね?
公平もあの人たちと友達なの?』


『そうだよ?
あー…まぁ最近は公平は一緒に遊んでないな…

なんかあいつ最近付き合い悪いんだよ
瑠璃ちゃんに夢中なんだろうけどね』

No.29 11/01/06 11:43
百花 ( 20代 ♀ ORPOh )

『そうなんだ…

でも瑠璃は束縛とかしない子だからね?
それは公平の意志だよ?』


『あ、あぁそうだろうね

…別に誰も瑠璃ちゃんを責めてるわけじゃないからね?』


『あ…ごめん…』



つい
瑠璃のことになると
必死になってしまう…


瑠璃のこと
誤解されるのは嫌


瑠璃が
あまり人に心を開かなくなったのには理由がある

なのに
瑠璃は美しい外見のせいでお高くとまってるなんて
言われたりする


本当の瑠璃は
気さくで明るくて
とても人懐っこい


変わってしまったのは
去年のあの日から…


…きっと公平は知ってるんだろう


あの日のことを


だから
自分の友達とも少し距離を置きながら
なるべく瑠璃のそばにいるんだろう

No.30 11/01/06 11:55
百花 ( 20代 ♀ ORPOh )

それから最後は瑠璃と公平とも合流して
4人で遊んで解散した


私は家に帰るとすぐに
夕ごはんを食べた
お風呂から上がり
自分の部屋に戻るとすぐに携帯を手にとった



【メール受信 瑠璃】

『お疲れ!
今日は楽しかったね☆
貴明くんどうだった?』


瑠璃に返事を返す


『お疲れ☆
貴明くんいい人だね!
楽しかったよ』


ブーブー

『まぢ?
貴明くんも彩夏のこと
気に入ったみたい☆
ウシシシ…☆』


『ほんとに?
なんか嬉しいかも!
友達としてね』


ブーブー

【着信 瑠璃】

『もしもし?』


『もしもし彩夏?
友達としてってなんで?』


『え、あー…まだすぐにはそんな風に思えないっていうか…』


『あーそういう意味ね!
良かったぁー
もしかしてアイツのことがまだ好きだからとか言うのかと思ったよー』

No.31 11/01/06 12:05
百花 ( 20代 ♀ ORPOh )

ズキンッ……


『………』


『…彩夏?』


『…ねぇ
…まだ…好きじゃ
ダメかなぁ………ッ…』


『えっ?
…彩夏、泣いてるの?』


『…瑠璃ぃ……
あたし…
まだ…忘れられな…ッ…』


私は今日ゲーセンで
彼から来たメールのこと
本当の気持ち
全て瑠璃に話した


瑠璃は黙って聞いていた



『ねぇ…彩夏?』


『なに…?』


『もう…言う必要ないって思ってたんだけど…

あたし…アイツの好きな人わかったよ…』



『………えっ…』



『…知りたい?』



『……………』



『…知りたいなら…
教えるよ?

…まぁ、もうその子の事も好きじゃないと思うけど』


『…なんで?
なんで瑠璃は知ってるの?本人から聞いたの?』


『うん…まぁ…』


『……………』


『彩夏ぁ…ッ………
あんなやつ…ッ…!

やめなよ…っ!!…』



『……瑠璃?』


『やめなよ…!…ッ…』


『瑠璃…
泣かないで…』

No.32 11/01/06 12:12
百花 ( 20代 ♀ ORPOh )

瑠璃は
突然泣き出してしまった


『…彩夏が…
ヒィック……あ、あんなやつ…あんなやつを…ッ…

好きなのかと思うと…
…ほ、本当に…ッ…
あいつが…ムカつく…ッ』


『瑠璃?
…どうして?
何か知ってるなら教えて?
…その…
好きな人も…
ちゃんと聞くから…

………忘れる為に…』



『…本当?
ちゃんと…忘れる?
約束できる…?』



『………………うん…』



『絶対だよ?
絶対に…あんなやつのことなんか忘れるんだよ!?

約束だからね!』



『…瑠璃…

…………うん……
わかったよ…

約束…する』

No.33 11/01/06 12:37
百花 ( 20代 ♀ ORPOh )

でも…
なぜだろう


なんとなく
聞いてはいけない気がする

瑠璃に言わせてはいけない気がするのだ




『ねぇ…瑠璃?』




『彩夏…ちゃんと聞くんだよ?言うからね!
ちゃんと聞いて
現実と向き合ってね!』



瑠璃は私の言葉を遮る

私の気持ちが変わらないうちにと思っているのだろう
私の不安な気持ちをよそに瑠璃は口調のテンポをあげる





そして…








『………あたしだよ…

…アイツに…告られた…』




やっぱり…

聞いてはいけなかった




この衝撃


もしかして…
もしかしたら…そうかも…

一瞬頭を過った



やっぱり

そうだったか…




“彼は瑠璃が好き”






現実とは
残酷である

No.34 11/01/06 12:45
百花 ( 20代 ♀ ORPOh )

『…瑠璃
ごめん…またかける…』



それだけ言うのが精一杯だった



瑠璃が悪いんじゃない
全く悪くない



瑠璃はああ言ったけれど

彼も…

悪くない…



誰が誰を好きになっても
おかしくはないし

誰に責められるわけでもないはず




ただ

私の為に
辛い気持ちを押し殺して
真実を話してくれたのに

ただ
電話を切ることしかできなかった
そんな情けない私が
ここにいる



そんな自分を見るのも
悲しくて


ずっと
羨んでいた誰かさんが
瑠璃だったということも

やっぱり悲しくて





涙を止めることは
できなかった

No.35 11/01/06 15:23
百花 ( 20代 ♀ ORPOh )

翌朝
すっかり明るくなった空から眩しい光が差し込んだ


昨日のこと
やっぱり現実なんだよね…


ヒリヒリと痛む瞼が
また昨日の涙を呼び起こす


またタオルケットを頭から被ると
瑠璃との電話を切ったきり電源を入れていなかった
携帯をつけた


【メール受信 瑠璃】

『昨日はごめん…
軽率だった…

話せるようになったら
連絡ちょうだい
待ってるからね』



…瑠璃は軽率なんかじゃないのに

瑠璃は
どこまで優しいのだろう


隠す事も苦しかっただろうに…


でも…


正直な気持ちとしては
もっと早く
話してほしかったな…



瑠璃の優しさを
理解しようとするけれど

私の胸の中は
今とてもキュッと狭くなっていて


そこには

“かわいそうな私”

しか存在していなかった

No.36 11/01/06 15:36
百花 ( 20代 ♀ ORPOh )

ブーブー

【着信 アリサ】

『もしもし?』


『あ、もしもーし!
起きてた?
今日ヒマしてない?!』

アリサは朝からとてもテンションが高い

つられてこっちまで声が大きくなる


『うん!ヒマヒマ!
遊ぼうよー』


『やった!
んじゃランチしよう!
12時頃に駅前ね!』


『オッケーだよ!』



アリサからの電話には救われた

今日は一人でいたくなかったから



重い体をベッドから起こし洗面所へ向かった



この腫れ上がった瞼
どうしよう…


いつもより
濃いめにラインを引いて
サングラスをかけて出掛けることにした


メイクをしている間も
ずっと瑠璃のメールの事は頭にあった


でも
まだ返信する気にはなれなかった

きっとまだ瑠璃は部活中だからメールしない方がいい


なんて自分自身に言い訳をして
本当は瑠璃はこんな時に
部活に集中できる子じゃないってわかってるのに…


今の私は
本当に自分のことしか
見えていない

No.37 11/01/08 13:39
百花 ( 20代 ♀ ORPOh )

アリサはすでに来て待っていた


わたしのサングラスの下の腫れた目のことを気にしながらもテンション高く話してくれる


ランチに向かいながら
私はとても心地よい時間を過ごしていた


カフェに着くとすぐに
アリサが口を開いた


『ねぇ…なんかあったんやろ?話してみなよ?』


アリサの言葉に
何かを考える間もなく
昨日の出来事を話している自分がいた


苦しかった
悲しさも悔しさも…

もし瑠璃と私が席をかわらなければ
彼は告白しなかっただろうか…

もし私が瑠璃のように魅力的だったら…
私が瑠璃のようになれたら…


瑠璃…
瑠璃が羨ましい…


でも
そう思ってしまう自分も悲しいの…

この気持ちはどうしたらいいのだろう

瑠璃は悪くないのに…

今は瑠璃の声も聞きたくないよ…

自分でわかっていた


こんな気持ちになる自分だからこそ
彼に選んでもらえないのだろう


でもアリサには
私の醜い心の中を
隠す事ができなかった

No.38 11/01/08 13:53
百花 ( 20代 ♀ ORPOh )

アリサはずっと黙って聞いてくれていたが
ひと通り話して泣き出してしまった私を見て口を開いた


『…悪いけど…その元カレ大したことないやつだと思う…

んで…瑠璃も…
彩夏のこと傷つけないようにって思ってたんだろうけど…やり方違うやん?』


私はうつむいたまま頷いた


『彩夏は今は辛くて
それでいっぱいいっぱいだろうから…
今はワガママでえーんよ?
瑠璃のことはあたしがなんとかするから!
今はこれ以上悩まずに
失恋の傷を癒す事だけ考えな(笑)!』


アリサは明るく笑い飛ばしてくれた

その後も腫れた目の私を
“勝手に訪れた二度目の失恋記念”だとプリクラに誘った

できたプリクラの悲惨な出来に二人で大笑いした

No.39 11/01/08 23:41
百花 ( 20代 ♀ ORPOh )

プリクラの後はカラオケに向かった


『ここは失恋ソング大会にしましょうね(笑)』

私も自分で少し自虐的なことを言って笑えるくらい
明るい気持ちになれていた


『あれっ?アリサ!?』 


受付をしていると後ろで声がした


『あ、先輩!』


アリサは声のする方へ体を向けると返事をした

そこにはまたもやガラの悪い男たちがいた


『今から入るの?』


『はい、今来たとこです』


『俺らもだよ!なんなら一緒に入る?』


アリサはチラッと私を見てから答えた


『いえっ、今日は友達と歌い明かします(笑)
また一緒に行きましょう』


『そっか、了解!!』


その先輩は見た目より優しそうな声だった

No.40 11/01/08 23:52
百花 ( 20代 ♀ ORPOh )

『おーい!部屋あいてたかー?』


その先輩を呼ぶ声がした

そちらを振り返ってハッとした


『あれ?彩夏ちゃん?』


『…こんにちは』


現れたのはツトムだった


『なんだ、ツトムの知り合いかよ!じゃあやっぱり一緒に入らない?
俺らは3人だけだし』


先ほどの先輩が言う


『ん?亮平は彩夏ちゃんの友達と知り合い?
なら一緒に入ろうや!』


ツトムは強引に言う


『…彩夏、どうする?』


アリサは小言で聞いてくる


『アリサが良ければ…』



本当はあまり乗り気ではなかったけれど
ここで嫌だとも言いにくい


『じゃあ一緒に…』


アリサの返事で一緒になることが決まった

No.41 11/01/08 23:59
百花 ( 20代 ♀ ORPOh )

カラオケは思いの外盛り上がった

みんなノリがいいのはもちろんだが
とても気を遣ってくれて居心地もよかった


こういうガラの悪い人たちって損だよなぁ
見た目だけで嫌なイメージ持ってしまう…

とにかく
恋愛対象にはできない


絶対に…







その日の夜はアリサからメールがあり
アリサは亮平さんと同じ学校で移動教室が同じ事から親しくなり
最近気になっているのだと聞いた

『今日は嬉しかった☆
亮平先輩のアドレスもゲットできたしっ!』


『良かったね☆でもなんで最初断ったの?』


『彩夏、あーいう人たち苦手かと思って…』




アリサも本当に
優しいなぁと思った

No.42 11/01/09 23:13
百花 ( 20代 ♀ ORPOh )

アリサは中学の頃からとても目立っていた

とても明るいし
まだみんながメイクなどしないうちから一人だけとても上手にしていた

先輩たちとも仲が良く
恋愛経験も豊富だった



『彩夏の知り合いの先輩?あのツトムって人
あの先輩もなかなかいい感じの人だね!』


『そう?
まぁ今日はまぁまぁ楽しかったけど…なんかちょっと威圧的な感じしない?』


『まぁ…ちょっとね…
でも私は嫌いじゃないな☆』


『そうなんだ
亮平先輩のこと頑張ってね☆また遊ぼう!』




アリサとのメールを終えるとまたメールの受信を知らせるランプが光った



『今電話していい?』


ツトムからだった

No.43 11/01/09 23:28
百花 ( 20代 ♀ ORPOh )

『いいですよ』
軽い気持ちで返事をした

すぐにツトムから電話がかかり
気が付くと三時間も電話していた


『やべ!もう寝る時間じゃね?』


ツトムの言葉に私も時計を見て驚いたが


『私は眠くないですよ』


自分の口から出た言葉にも驚いた


まだ話したい…

そう思うほど
ツトムとの電話は楽しかった


ツトムはかなり笑い上戸のようだ

一度笑うととても楽しそうに何度も笑う

私はその笑い声をたくさん聞きたくて
笑わそうとしてしまう

ツトムも私を笑わそうとしてくれているのがわかる

その二人のやりとりが
とても楽しくて
私もたくさん笑った


再び時計を見るとさらに一時間がたっていた


『先輩、また一時間たっちゃいました…さすがに切りましょうか?

料金やばいかも…』


『いや、料金は大丈夫!高いプランに入ってるし!
でも、そろそろ寝るか?

…あ~最後にひとついい?』



『え?なんですか?』

No.44 11/01/09 23:42
百花 ( 20代 ♀ ORPOh )

『あのさ…

偶然彩夏ちゃんを見掛けたんだよね、○○で…

あの伊藤ってやつと付き合ってるの?』


ツトムはあの貴明くんを紹介された日のことを言った


『あ…貴明くん?
付き合ってないですよ?

先輩、どこにいたんですか?』


『はぁ~…
ほんと彩夏ちゃんて俺のこと眼中にないんやなぁ…

あの伊藤ってやつに声かけたやつがおるやろ?
あいつの隣に立ってたんやけど…』


『あーあの!
…ごめんなさい
あの時も考え事してたし

あの…なんかちょっと怖かったし…』


『怖いって、俺のこと?』


『…ごめんなさい
ん~…みなさんが…』


『あ~
ガラ悪いってこと?』


『……………』


『えーよ
ほんまにガラ悪いやつばっかりやし!

でも話してみるとそんなでもないやろ?』



『………はい』



『それなら良かったぁ!

あ!話し戻すけどさ…』



『あ、はい!』

No.45 11/01/09 23:53
百花 ( 20代 ♀ ORPOh )

『じゃあやっぱり彩夏ちゃんの彼氏は
あのバスケ部の…

名前忘れたけど
ナントカくん?』


ツトムの言葉に一気に現実に引き戻された



『…………いえ…』



それだけしか言葉にならなかった



『あ~違うんだ?なんか付き合ってるって聞いたんや!
ただの噂なんやな~』



ただの噂…

ツトムのその言葉は
予想以上に私の胸に重く響いた


噂…

もうただの噂と表現されてもおかしくないくらい

私たちの関係は過去のことになっているのだ



あの笑いあった日も
彼の自転車の後ろに乗ったことも
隣の席の横顔を見てドキドキしたことも…



みんな過去なのだ


時間は確実に過ぎていて
まわりはみんな変化しているのだ



私だけを除いて…

No.46 11/01/10 00:02
百花 ( 20代 ♀ ORPOh )

『…………』


『彩夏ちゃん?』



『あ…ごめんなさい』



言葉を発せずにいる私に
ツトムが呼び掛ける


『なんか俺…
聞いちゃいけないこと聞いてしまったみたいやな…』


『いえ…あの…』



『いや、えーよ!
悪かった!

なんか…
なんかそいつとあったんやろな?
もう聞くのはやめるな!
ほんま悪かった!』



ツトムは何かを察したようで慌てて私に謝った



『いえ、ほんとに!
謝らないでください…

すみません…なんか…
変な空気にしちゃって

せっかく楽しかったのに…』



『いや、俺が変なこと聞いたからや!

でも、俺と電話楽しかったって言ったのはほんと?』


『あ、はい!
それはほんとに楽しかったです』

No.47 11/01/10 00:23
百花 ( 20代 ♀ ORPOh )

『良かった!

ならな…
また電話するわ!
今日は最後は彩夏ちゃんの元気なくしてしまったし

今度は最後まで笑った声だけ聞きたい!


あと…
俺でよければ何でも話してよ?悲しい事があったりしてもさ…

俺が彩夏ちゃんを元気にしてやるから!』




ドキッとした


なんて嬉しい事を言ってくれるんだろう



口からは
ありきたりな返事しか出なかったが
私の心は一気に満たされていた



純粋に嬉しさで
胸がいっぱいになった






その日から

ツトムは毎日電話をくれた毎日お腹が痛くなるほど笑わせてくれた



ついに夏休みが開けた

No.48 11/01/10 22:08
百花 ( 20代 ♀ ORPOh )

休み明けの通学路を重い足取りで歩く


結局
瑠璃に連絡できていないままだった

こんなことは今までに一度だってなかった

私と瑠璃はお互い何でも言い合えたし
悪い雰囲気になったことすらなかったから…




ガラガラ

教室のドアを開くと
一番に目があったのは
瑠璃だった



なんとなく気まずさから動けないでいると
瑠璃は座っていた椅子から立ち上がって私に向かって歩いてきた



『…おはよう』


いつもよりテンションの低い声で瑠璃が言った


『お…おはよう…』


私は視線を合わせられずにより一層小さな声で返事をした

No.49 11/01/10 22:36
百花 ( 20代 ♀ ORPOh )

『アリサから連絡あって…話ししたんだ…

彩夏、ごめんね。
結局彩夏を一番傷つける形になっちゃったね…頭で色々考えて無駄なことするんじゃなくて
はじめから彩夏にきちんと話しするべきだったよね。

…今更だけど…
あたしは彩夏に悲しい思いしてほしくないっていつも思ってた。
今もそう…その気持ちは本当だから。』



瑠璃は真面目な顔で一生懸命話してくれた



『…うん。

なんか瑠璃があたしに謝ってくれるのも本当は変な感じだよね。

誰も…悪くないのに…


あたしは瑠璃に嫉妬してしまったんだよ。
本当に羨ましいって思ってしまって…

情けなくて、情けなくて…なんとなく瑠璃には顔を見られたくなかったんだ…


バカみたいだよね…
瑠璃はあたしの為に話してくれたのにさ。


瑠璃…ありがとうね

あたしこそごめんね。』

No.50 11/01/10 22:54
百花 ( 20代 ♀ ORPOh )

私たちは
どちらからともなく
視線を合わせると

ニッと笑った



それ以上は
この話しについては何も話すことはなく
話す必要もなく

今まで通りの私たちになった

アリサに『ありがとう』とメールを打ちながら

また少し涙が出そうになったけど
せっかく気持ちが晴れたのだからと思うと
自然に笑みがこぼれた






『彩夏!売店行こう!』


瑠璃に誘われ私たちは売店に向かった


売店でジュースを買い
また教室に戻ろうとした時だった


前からいかにも目立つ男子グループが歩いてきた


『よぉっ!』


そのグループの真ん中からこらちらに向かってきたのはツトムだった

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