親友
小説を読んでいると書いてみたくなる。
ふと小さなアイディアが浮かんだ
もっと構想を練ってから書くべきなのだと思う。
どうなるか想像ができない。
思いついたまま突っ走りますxF0
途中で断念する可能性大です。
辻褄あわないこと多々あるかもしれません。
初トライなので優しく見守ってください。
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あたしの名前は
山下香恵(やましたかえ)
あたしには小学校から続いてる長い付き合いの子がいる。
その子は勉強できて、バスケ部のエ-スだった。かわいそうなことに、あんまかわいくない。
絶対いじめっ子。
中学生ってグル-プ行動が中心でしょ?
あたしもバスケ部。
同じ学年が7人いた。
誰かしらが仲間外れになる。
その子に嫌われると仲間外れにされるんだ。
その子は仲間外れになったことないんだよ?
あたしが1番仲間外れにされた。
嫌な奴なの。
あたしのこと嫌いだろうし。
たかられたし!
彼氏も寝取られたし!!
ほんと嫌な奴。
でもなんでか、連絡してくる。
なんでか断れない。
変な関係なの。
私の名前は
浅香 真(あさかまこと)
私はあまり友達がいない。
自分から誘うのが苦手だ。
ベタベタした関係も作れない。
でも1人だけ誘える子がいる。
小学校3年からの付き合いだ。もう20年近い付き合いになる。
途中4年ほど空いたが…
二重でかわいい子だ。
成績も運動も程よくできて、羨ましかった。
男好きするタイプで、女には嫌われてた。
男の前では声や態度が変わるらしい。
それが露骨で嫌い。と言っていたA子との違いは私にはわからなかったが…。
誰だって変わるでしょ。異性の前だもん。
嫌われた大きな理由は、女の約束より男をとるからだ。
私も何度ドタキャンをくらったことか…
なぜか、ほっとけない。
誰かに話を聞いてほしいとき、あの子にはメ-ルができる。
20数年前の春
香恵は新しい赤いランドセルを背負っている。
隣の真実姉ちゃんに学校までの道は教えてもらった。大丈夫。ちゃんと行ける。
香恵は自分に言い聞かせながら、母の手を引き南郷小へ向かう。
大丈夫。大丈夫…。
呪文のように繰り返す。そうしていないと不安で泣いてしまう。
香恵の母親は、幼いときの原因不明の発熱で視力が極端に弱い。
「香恵、お母さんも学校へ行く練習したから大丈夫よ。ちゃんとお母さんが連れて行ってあげるからそんなに頑張らなくていいよ。」
母は香恵と繋いでいない右手で頭を撫でてくれた。
香恵は母が特別扱いされることを悲しむことをわかっている。
以前、母に代わってチョコの散歩に行ったときのことだ。
「まま危ないから、かえがチョコおしっこさせてくるよ。」
母は、淋しさと嬉しさとが混ざった複雑な表情をした。
もっと喜んでくれると思ったのにな。なんかまま変な顔してた。なんでかなぁ。
チョコに話しかけながら、家の前の空き地を走り回った。香恵は自分が満足し、喉が渇いたから散歩を終わりにした。
「ただいま!のど渇いた。」
椅子に座ると母がジュ-スを出してくれた。そのままチョコに水をあげている。
「ねぇまま。私がお手伝いするといつもすごい喜んでくれるのに、なんで今日は違うの?」
母は香恵の横に座り、頬をなでながら話す。香恵の存在を確認するかのように。
「ままは嬉しいよ。香恵はすごく優しい子に育ってくれてる。今日はね、普通はままが香恵の心配するのに、香恵に心配かけちゃってるんだなって少し悲しくなっちゃったの。ごめんね。せっかくお手伝いしてくれたのに、ままうまく褒めれなかったね。」
母は哀しそうに笑った。
「じゃあ私が休む番ね。」
香恵は繋ぐ手を変えて横に並んだ。母と歩くときのル-ルがある。
神経を使って歩く方が車道側。
母の足元、信号の色、すれ違う車、学校への道順。
香恵は全神経を集中させて、母の手を引いていた。自然と1歩前を歩く形になる。
それに加えて、新しい世界へ踏み入れる緊張から香恵は疲れ切っていた。
右側を歩くときも、香恵は母の足元は気にする。信号も見る。
でもそれ以外は、気にしない。話す余裕ができる。
「たけちゃん達はもう着いてるかなぁ。みんな同じクラスならいいのに。」
「3組あるからみんな一緒は無理よぉ。違う保育園の友達がたくさんできるわよ。」
香恵は保育園に通っていた。同じ保育園から9人が南郷小に入学する。
校門をくぐり、受付に向かう。香恵は緊張していた。
人の波に乗れば大丈夫よねって母は言っていた。
でも貼りだされたクラスの名簿から、名前を見つけてクラスの受付に並ぶ方式だった。
香恵は平仮名なら読めるが、たくさんある名前から、自分の名前を見つける自信はなかった。
「ごめん!こんなに早く着くと思ってなくて。校門で待ってるつもりだったのに。」
後ろに真実がいた。
「おばさんおめでとうございます。香恵も南郷小へようこそ。そんな不安そうな顔しないの。真実ちゃんに任せなさい。」
香恵はほっぺをぐりぐりされた。
「香恵は1組だよ。お友達いるか名簿みてみる?」
香恵は名簿にちらっと目をやって首をふる。
「教室行ったらわかるしね。おばさん受付こっちです。」
真実は、香恵の隣の家に住んでいる6年生だ。
回覧板を持ってくると、読んで次に回してくれる。
他にもよく気を回して、香恵親子の力になってくれている。今回も誘導をするため、準備係になって仕事を終わらせてきたらしい。
母の席も確保してあった。しかも香恵の席の真後ろだった。
「おばさん今日は特別ですよ。入学式は慣れてない保護者が多いから危険なんだって。私の誘導に従ってくださいね。」
真実は、母への気遣いがとても自然にできる。
香恵は緊張から解放された。
「真実姉ちゃん、まことちゃんは同じクラスかな?」
「まことちゃんは2組って言ってたかな。まだ来てないと思うよ。家が目の前だからギリギリに来るらしいから。楓ずるしてクラス教えたって言ってたし。」
楓(かえで)は真実の友達だ。
1度だけ真実と2人で香恵の家に来たことがある。
真実が回覧板の手紙を読んでいる間、香恵の相手をしてくれた。
香恵は相手の目を見つめる癖がある。たいていの人は気まずそうに目を反らす。
この人は私のこと嫌いだ。
香恵はそう判断する。
楓と会ったときも見つめた。
楓はしばらく目を合わせると笑顔になって言った。
「そんなにきれいなお目々で見つめられたら、お姉ちゃん恥ずかしくなっちゃうよ。」
香恵は楓が大好きになった。
楓の妹が真(まこと)という名前で香恵と同じ年だった。
入学式が始まった。
出席番号順の席で、山下は最後の列だった。
真は2組の1番前だ。名前を呼ばれ、立って返事をする。
3月生まれで小さい香恵には、真の姿は見えなかった。
あさかまこと
絶対お友達になるんだ。
香恵は真に話しかけるのが楽しみでしょうがなかった。
30分程で式は終わり、各教室に移動となった。
名前が貼ってある机に座った。遅れて保護者も教室に入ってくる。
最後に真実と一緒に母が入ってきた。香恵の後ろに誘導すると、真実は静かに出て行った。
担任の挨拶、配布物の確認、明日からの日程などの簡単な説明があって下校になった。
香恵は人が少なくなってから、母と教室を出た。
廊下に真実がいた。楓も一緒だ。側に2組の青い名札を付けた女の子もいた。
「お母さん、真実姉ちゃんが待っててくれてるよ。」
香恵は真実たちの方へ向かった。
「真実ちゃん今日はほんとありがとね。」
「たいしたことしてないです。」
真実は笑顔で応える。香恵は真実のこの表情が大好きだ。
楓が青い名札の子の手を引いて、香恵の側にきた。
「香恵ちゃん、妹の真。仲良くしてあげてね。同じクラスじゃなくて残念。ほら挨拶は?」
「…あさかまことです。」
香恵は驚いた。真は目を合わさない。ちょっと香恵の顔見ただけで下を向いている。楓とはタイプが違うようだ。
「やましたかえです。クラス違うけど仲良くしようね。」
「うん…。よろしくね。」
真はもういい?と目で楓に訴えて母のもとへ走って行った。
「ごめんね。あの子慣れるまで時間かかるんだ。」
香恵はがっかりした。真の第一印象は正直良くなかった。
入学式の朝
真は布団から出たくなくてぐずっていた。
昨日までは気が済むまで寝ていられたのに。小学校なんて行きたくない。
「いい加減にしなさい!」
母は強引に布団を片付け始めた。
「明日からはもっと早いのよ。お姉ちゃんたちは自分で起きるのに。末っ子は駄目ねぇ。」
布団がなくなっても畳の上で横になってる。
「顔洗って早くご飯食べなさい。片付かないでしょ。」
渋々起き上がる。今は8時半。楓と晶(あきら)の姿はもうなかった。
「かっちゃんとあきちゃんは?」
「とっくに学校よ。真も明日は7時に起きるのよ。」
真はあくびをしながらテ-ブルについた。しばらくぼ-とテレビを見つめる。
マンガに回したら怒られるだろな
「早く食べ始めなさい。食べるのも時間かかるんだから。」
真は何にでも取りかかるまでに時間がかかる。30分かけて朝食を済まし、着替えるために部屋に戻った。
まま9時半に出るって言ってた。あと30分もある。もっと寝れたのに。
出してあったワンピースを着て、ベランダから外を見る。家から学校が見える。もう下校しているようで、たくさんの小学生が家の前を通っている。
家の前の路地を歩く晶の姿が見えた。隣の家の彩香と一緒だ。
同い年の2人は幼なじみ。
家の近くに真と同い年はいない。真は晶と彩香が羨ましかった。
「真ちゃん、その髪型で行くの?寝癖すごいよ。」
彩香が声をかける。真は髪をなでるが寝癖は直らない。
「ねぇかっちゃんは?」
「かっちゃんはまだ学校。入学式のお手伝いだよ。恥ずかしいから部屋に入りなよ。」
晶は呆れている。真は居間に戻りテレビを観ることにした。
「ただいまぁ。」
晶が帰ってきた。ランドセルを置くと洗面所に真を呼んだ。
「真おいで。髪梳かしてあげるから。お母さん、真この髪で外にいるんだよ。恥ずかしいよ。」
真は素直に洗面所に向かう。母が梳かすと手荒い。何度も首が後ろにもってかれる。晶は優しく梳かしてくれる。
「真はもっとちゃんと自分のことできるようにならないと。靴下はいておいで。」
「はぁい。」
真のことは楓と晶が良く面倒をみる。
晶が真の支度を整えると、化粧を終えた母が出てきた。
もう9時半は過ぎていた。
「もう受付ギリギリだよ。早く行ってらっしゃい。」
晶はしっかり者だ。
真も母も学校に慣れている。保護者も見たことある顔が多い。
母が式のギリギリに入っても、
「朝香さん、こっちよ!」
と楓のときからの付き合いの保護者が席をとっておいてくれる。
真にしても、担任は去年まで晶の担任だった先生だ。家庭訪問で見たことがある。
新しい世界に足を踏み入れた感じはしなかった。
入学式が終わり廊下に出たら、楓と真実が立っていた。
「真、ちゃんと返事した?聞こえなかったけど。」
「したよ。一番前だから後ろの人には聞こえなかったんじゃない。もう帰ろうよ。」
「ちょっと待って。1組に真実の近所の子がいるんだ。すごいしっかりしてる子だから、友達になって見習ったほうがいいよ。」
「別にいいよ。かえろ。」
「ちょっと紹介するだけだよ。どうせお母さん話始めちゃったから10分は帰れないよ?1人で帰る?」
みんな母親と手を繋いで帰る中、1人で帰るのはさすがに寂しく感じた。
真は楓の側でおとなしく待つことにした。
「あっ、来た。さすが香恵。人の波が納まってから出てきたね。」
手を振る真実に気付いて、一際小さい女の子が母親の手を引いて近くにきた。
「ほら、あいさつは?」
楓に言われ顔を上げる。さっきから見つめられている。真は目を合わせるのが苦手だ。
「あさかまことです。」
他に言うことも思いつかず、下を向いてしまう。
女の子はやましたかえと言った。
かっちゃんと同じ名前だぁ。と思っていたら、後半の挨拶聞きそびれていた。
「……うね。」
「うん。よろしくね。」
真は香恵の視線が嫌だった。真は自分に自信がない。いつも姉たちと比べて勝てないからだ。
落ちこぼれ。真は自分をそう評価していた。だから、香恵のその視線は、出来ないことを見抜かれそうで落ち着かない。
かっちゃん、もうやだよ。
楓に目で訴えて、母のもとへ走って行った。
「真がままのとこに来るなんて珍しいわね。もう少し待っててね。
でね、高橋さんたらね…………」
真は廊下の窓から外を見て時間を潰した。
かえちゃんか、小さくてかわいい子だったなぁ。でもなんであんなにジ-っと人の顔見るんだろ。
「真帰ろう。お母さん待ってたら何時になるかわからないよ。」
楓の方を向くと、香恵親子の姿はなかった。
真の香恵の第一印象は薄く、この日のことは忘れてしまった。
香恵は小学校生活が退屈だった。平仮名、片仮名はすでに書けたし簡単な足し算、引き算もできた。
だからと言って、いい加減な態度を取ったりはしない。一生懸命聞いて、授業で覚えた振りをした。
周りの子にも積極的に話かけ、リ-ダ-ではないが、目立つ子に位置していた。
4月生まれの子とは、1年近くの差があり、ハンデのある香恵はこの位置に満足していた。
南郷小は、縦割り活動に力を入れていた。1年は6年とペアになり月に1度、昼休みに一緒に遊ぶ。
香恵のペアの6年生は、あまりぱっとしない地味な子だった。
運動が苦手らしく、みんなでドロケイをやろう!となっても見学をしていた。
香恵は、リ-ダ-シップを取っている男の子の側にいて、かばってもらいながら楽しんでいた。
雨の日は苦痛だった。みんなでトランプになればいいのだが、2人だと何をしても楽しくなかった。香恵は楽しい振りをした。
ペアの子が休みの日、香恵は気がねなく、みんなで缶けりを楽しんでいた。
校庭の隅に楓を見つけた。
「ちょっと抜けるね。」
香恵は楓の方に走っていった。
「何してるの?」
「真がドロケイしたくないって言うからお絵かき。香恵ちゃん抜けて平気なの?」
「今日はペアの人休みみたい。」
楓の後ろにしゃがんだ真がいる。折れた枝で落書きしている。
「真ちゃんて楓ちゃんとペアなの?」
「出席番号順だからね。1年生少ないから、真実もペアだよ。」
真実の名字は渡辺だ。1巡したということだ。
「真ちゃんばっかりずるい。みんなと遊べないなんてわがままだ。私ペアいないんだよ。楓ちゃん一緒に遊んでよ。」
「香恵ちゃんのペア学級崩すわけにいかないよ。缶けりに戻りなよ。みんな心配するし昼休み終わっちゃうよ。」
「楓ちゃんも嫌い。」
香恵は缶けりをやっている所に戻ったが遊ぶ気にはならなかった。遊具のタイヤに座ることにした。
真ちゃんはずるい。優しいお姉ちゃんがいて、面倒みてくれて。
わがまま言い放題じゃん。
私はたくさん我慢してるのに。あんな子と友達になれるわけがないよ。
香恵はイライラしていた。
「かえちゃん、缶けりやらないの?」
クラスの子が声をかけてくれる。
「なんか頭が痛くて。少し休んでるよ。」
香恵は真が嫌いになった。
香恵が居間で宿題をしていると真実が回覧板を持ってきた。
簡単に内容を読み、判子を押す。
「じゃあおばさん、次に回しておきますね。香恵一緒に行こう。」
真実が誘うのは珍しくない。香恵も続いて家を出る。
「楓のこと嫌いなんだって?」
やっぱその話だ。
「だって妹甘やかし過ぎなんだもん。」
「まぁね。楓は誰の面倒もよくみる子だからね。真ちゃんも嫌いなの?」
「なんで?」
「『楓ちゃんも嫌い』なんでしょ?」
確かにあのときそう言った。
「甘えっ子は嫌い。」
「そっか。私も楓も2人は仲良くなれると思ったのにな。残念。」
「私に真ちゃんの面倒みろってこと?」
「違うよ。真ちゃんも香恵に負けない位しっかりしてるんだよ。タイプは違うけどね。あっ今そんなわけないって思ったでしょ。」
真実が香恵のほっぺをグリグリする。
「今は同じクラスの子と仲良くするだけで精一杯だと思うけど、真ちゃんのこと嫌いなんて言わないで、機会があったら話してごらん。真実姉ちゃん信じて。」
香恵は納得がいかなかった。
そのまま3年のクラス替えで同じクラスになるまで、真との接点はなかった
真は3年生になった。
1・2年のとき一緒に過ごした麻衣と景子との関係が面倒になっていたが、また同じクラスだ。
真は自分からあまり話かけない。麻衣は転入生で、最初の席が近く一緒にいるようになった。景子はいつの間にか仲間入りしていた。
3人でいたら、他の子は話かけてこない。真は他のクラスメ-トの記憶があまりなかった。
真が仲良くできる2人。そんな配慮から同じクラスにされたのだろう。
真は、晶が入ってるミニバスのチ-ム南郷BBCに入ることを決めた。
いつも3人一緒にいて、放課後も遊ぶ。真には断る理由がなかったが、南郷BBCは週に4日練習がある。
2人との関わりが少なくなって気が楽になった。
元々負けん気の強い真は、どんどん上達した。
3年は1人しかいなかったのが幸いした。上級生に追い付こうと休憩時間もシュ-ト練習をした。
真は初めて自信をもてた。バスケなら同じ学年の子に負けないという強みのおかげだ。
それからの真は学力も体力も右肩上がりに伸びていった。
がんばろうがついていた通知票がほとんどよくできるになった。
3学期には、推薦で学級委員に選ばれた。
真は4年生になってようやく、自分からも話かけるようになった。
麻衣と景子との関係も続いていた。恋バナも始まり、真は1、2年で同じクラスだった、広治くんがかっこいいと思っていた。
麻衣も広治くんで、景子は龍之介くん。2人とも2組で、用もないのに廊下に出て教室を覗いては、目が合った!と大騒ぎしていた。
いつも一緒にいる3人に、祐介が絡むようになった。
祐介はちょっと成長が早いませた男の子。なぜか嫌われていた。触られたら妊娠する、とかひどい言われよう。
真にはそんなに嫌なやつには思えなかった。
そんな祐介がからんできて、麻衣と景子はからかいながら楽しんでいた。
祐介好きな子いないの?
いるよ。
教えてよ。
やだよ。
なんで?
なんでも。
どうしたら教えてくれる?
そっちも教えてくれたらいいよ。じゃあ真の教えてあげるから教えてよ。
いいよ。じゃあヒントからね。
じゃあ真聞いておいてね。
そんな流れで真は祐介と好きな人のヒントを出し合うようになった。でも真は広治はかっこいいと思うけど、好きって感情はわからなかった。
それから祐介と話す機会が多くなった。
「なんで浅香はあの2人と一緒にいるの。」
真は考える。何でと言われても…
「自然と。」
「よそから見るといじめられてるように見えたよ。」
確かにあの2人は派手で、きついことを言うこともあるから、泣いてる子も多い。真は地味だ。
「今回だって、勝手に交換条件に出されて頭にこないの?」
なぜか祐介は怒ってくれてる。祐介が言い出したことなのに、何かおかしかった。
「祐介にばれるだけだもん。祐介の好きな人私も知りたいし。それよりそっちはいいの?私に教えたらあの2人にも伝わるよ。」
「あいつらが聞き始めたら言うまでしつこそうじゃん。面倒だから教えるつもりだったよ。ついでに向こうも聞き出してやろうと思ったのに、生け贄出された。」
「可哀相な生け贄を助けてくれてもいいんじゃない?教えるつもりだったんなら。」
「いやだ。浅香の好きな人は聞き出す。でもちょっとずつしかヒントあげないよ。あいつら焦らしてやる。」
それから本当に少しずつヒントを出しあった。会話が弾んでヒントがない日もあった。
真は、祐介と話すのが楽しみになっていた。
真は、祐介がいつ話しかけてくるか、休み時間ずっとドキドキしていた。
祐介が休んだ日、すごく寂しく思った。ようやく真は自分の気持ちがわかった。
私は祐介が好きなんだ。
でも、祐介に与えてるヒントは広治のものだ。今更変えられない。
祐介の好きな人も2人まで絞れた。次のヒントで解る。そうしたら祐介と話すことは少なくなる。
真は祐介を避けるようになった。
帰りの会が終わり、逃げるように教室を出て下駄箱に向かった。祐介が追いかけてきた。
「もう解ってるみたいだけど、これ最後のヒント。」
ノ-トの切れ端に書かれたヒントを渡された。祐介はそのまま教室に戻っていった。
「真もう解ってるの?なんで教えてくれないのよ。」
景子が祐介の後ろから来ていた。
「まだ2人候補がいるよ。これでわかるかな。」
仕方なくヒントを見る。見て驚いた。
「2人とも消えちゃった。」
祐介が嘘ついていたようには見えない。
真の家で3人で考え直してみることにした。
「今までのヒントを教えてよ。」
いつも景子が仕切る。
これまでの祐介とのやりとりを2人には話していなかった。知られたくなかった。
「3組で、髪が肩より長くて、姉妹がいて、画数28画…。で、AさんとBさんに絞れたの。今日のヒントが元2組。」
景子が手のひらに書いて画数を確認している。
「ね、2人も当てはまらなくなっちゃったでしょ?数え間違えたかな。」
「ばかじゃないの。あんたじゃんそれ。麻衣帰ろう。」
ランドセルを背負って玄関に向かう2人を慌てて追いかけて見送った。
楽しそうに2人話して帰る。
「かわいそ。月曜に失恋だ。」
麻衣のいじ悪く笑う声がした。
私?
何度も紙に名前を書いて確かめる。間違いなく28画だった。
念のため他のクラスメ-トも調べ直すが、真以外に当てはまる子はいなかった。
晶が帰ってきて、一緒にお昼ご飯を食べた。
「どうした?元気ないね。」
「そんなことないよ。かっちゃんは部活かな。」
「朝おにぎり作ってたよ。明日1日試合だから、今日宿題やって月曜の準備しとくんだよ。真疲れて寝ちゃうんだから。」
「わかってるよ。」
午前中の試合が終わり、昇降口に続く階段でお昼を食べている。
校庭では数人がサッカーで遊んでいる。
祐介と広治の姿もある。真はつい祐介を目で追ってしまう。
「真ちゃんまだ食べてるの?なおとトイレ行ってくるよ。」
「もう少し。すぐ行くね。」
1人になり、お弁当を進めていると、祐介がこっちに走ってくる。
なんで?
思わず後ろを見る。誰もいない。
「浅香今日試合なの?」
言葉が出ずうなずくだけ。
「そんなに広治見てるとばれちゃうよ。」
「見てないよ!もうわかってたんだね。」
「俺は絞れないように、必死にヒント考えたのに、浅香は俺のヒント真似して考えなかっただろ。かなり前から失恋してました。もう立ち直ったけど。」
真は黙ってしまう。鈍感過ぎて泣きたくなる。
「そんな気にするなって。俺すぐ好きな子できるから平気。広治に伝えてあげようか?うまく行くかもよ。」
真は首を振る。
月曜に、真のペ-スで話しかけれたら伝えられたかも知れない。
もう立ち直った
という言葉で、もう私のこと好きじゃないと思った。
しばらく祐介を思い続けるが誰にも言えなかった。
香恵は3年のクラス替えで、真と同じクラスになった。
真は相変わらず暗く、いじめっ子2人と一緒にいる。
香恵も何度も悪口を言われた。
生意気。先生におべっかばっか使って気持ち悪い。ブス。ばか。近寄るな。
気に入らなければ徹底的に傷つける。あの2人の気に障らないよう気を使う女子は多い。
真はどっちかって言うといじめられるタイプだ。あの2人で真の悪口を言ってることもある。
でも一緒にいる。
香恵は友達が続かない。保育園のときの子といたり、2人組のとこに入れてもらったりしている。
3人組だと、2人のとき何を言われているか気になる。
他の2人もきっとそう。どこに行くのも一緒。お互いに見張ってる感じがしてけんか別れになる。
他のグループでも、同じようなことを繰り返すみたいで、すぐに新しいグループができる。
香恵は、良く思われるために演技する癖が抜けず、見破られるようになった。
1年のときリ-ドしていた学力も追いつかれ、中の上を維持するのが精一杯だ。
目立つ存在ではなくなった。
それでも香恵は、自分を受け入れてくれる子を見つけだす能力に長けていた。
久しぶりに真実が回覧板を持ってきた。私立の中学校に進んでから忙しいようで、真実の母親が持って来ていた。
「香恵大きくなったね。学校はどう?」
真実は試験勉強の息抜きにおしゃべりしようと、香恵の部屋にあがってきた。
「真ちゃんと同じクラス。でもあまり話してない。真実姉ちゃんはなんで私と真ちゃんが友達になれると思ったの?」
香恵はずっと気になってたことを聞いた。
真実は楓からよく真の話を聞いていた。
楓曰く
真は出来がいい。ひらがなとかの基礎学力をつけるスピ-ドも比べものにならないし、負けず嫌いで目標が高いからどんどん伸びる。幼稚園児が小学生相手に対等に勝負しようとするばかなんだよ。
真実は疑問に思った。正直、真はそんなにできる子に見えない。身の回りのことだって姉たちにやってもらっている。どっちかって言うと幼い子だ。姉ばか?
真の世話をするのは私達の遊び。特に晶のね。真はできるんだよ。不器用で気分屋だから時間がかかるけど。世話好きの姉に世話させて喜ばせて、自分は楽をする。嫌な妹でしょ?絶対友達に苦労するよ。同級生とじゃ精神年齢が合わない。
「できない振りして楽するしっかり者と、物分かりいい振りして我慢してるしっかり者。友達になったらおもしろそうじゃない?」
香恵は納得がいかなかった。結局真と友達になっても、真が楽して私が我慢ってことじゃないか。
「真ちゃんは学校でどんな感じなの?」
「よくわかんない。バスケ始めてからいつも眠そうなのに、テスト百点とるし。しゃべんないの学級委員に推薦されるし。いじめっ子といつも一緒で話しかけづらい。」
真実は意地悪な笑いを浮かべた。
「真ちゃん気になってるね。よく見てるじゃんかぁ。」
「そんなことないよ。香恵はみんなを見てるもん。真ちゃんだけじゃない。」
「そっかそっか。」
真実は相手にしてくれない。
「やっぱ真ちゃんはスロ-スタ-タなんだ。楓が言ったとおりだ。香恵、お姉ちゃんっていいね。羨ましいね。」
「私は真実姉ちゃんがいるもん」
真実は香恵が大好きな笑顔になった。
「かわいい香恵のおかげで息抜きできたよ。帰ってもうひと頑張りしますか。」
真実は立ち上がりコ-トを着る。
「じゃあまた来るよ。」
真実の話で、ますます真がわからなくなった。
香恵は好きと思うと、気持ちを伝えたくて我慢できなくなる。
1年のときは、ちょっと意地悪するAくんから始まって、足が早いBくん、顔がかわいいCくんに積極的に話しかけていた。
2年のときもクラスのボスのDくん、保育園から知ってるEくん、やっぱAくんと気が多かった。
そんな香恵も3年になって同じクラスになった順一に、今までとは違う好きを感じた。
順一は、色白でサッカーが上手くて大人びた子だ。少し女子をバカにしてるところがある。そんなところも魅力に思えた。
香恵はバレンタインに手紙を書いた。小さなチョコを添えて順一の机に入れた。
翌日ドキドキして教室に入った。
人だかりができて盛り上がっている。中心にいるのは、景子と祐介だ。
「ほら祐介。山下来たぞ。優しく抱き締めてあげれば?」
順一の声がした。
香恵はすぐには状況が把握できなかった。男子に押されて人だかりの中心に行くと、祐介の手に香恵が書いた手紙があった。
「キ-ス。キ-ス」
景子を皮切りに、男子が囃し立てる。
香恵は泣くのこらえて教室から飛び出した。
香恵は人前で泣きたくない。泣いてたまるかと歯を食い縛った。
教室からは
「お姫様が照れて逃げたぞ。追い掛けなくていいのかよ。」
順一の声がする。あんなに性格が悪いなんて知らなかった。
「ねぇ。山下さん。」
思わず香恵は振り向いて睨み付けた。真が立っている。
真も笑ってたに違いない。何しにきた?泣いてるか確かめにきた?絶対泣かないもん。
「なんで手紙机の中に入れなかったの?」
「えっ?」
「手紙、開いて机の上に置いてあったって景子言ってたよ。祐介の机の上にあったって。」
「私は…封筒に入れて机の中に入れた…よ。」
「封筒なんてないよ。手紙だけ。誰に出したの?」
「……順一くん。」
香恵は頭が働かない。泣くの我慢してたことも忘れていた。
そんなひどいことするの?
「落ち着くまで保健室いれば?先生に具合悪いって言っておくよ。それとも先生にチクろうか?」
香恵は首を振った。そのまま保健室に向かう。
保健室の扉を開けてから、何も考えていないことに気が付いた。
どうしよう。
「先生、山下さんが急に具合が悪くなって泣き出したんです。」
真の声だ。
「泣くまで我慢したの?とりあえず熱計るからそこに座ってて。」
「落ち着いたら、治ったって言えばいいんじゃない?私戻るね。山ちゃんはいい先生ってあきちゃん言ってたよ。話してみたら?」
耳元で囁やかれてくすぐったくて、少し笑ってしまった。
「先生、日直なので戻ります。担任に伝えます。失礼しました。」
真は外向きの声があるんだと思った。
「しっかりしてる子ね。何ていう子?」
「浅香さん。学級委員してる。」
香恵は混乱して敬語どころじゃなかった。
「あれが噂の浅香の末っ子か。」
香恵は渡された体温計を脇に挟んだ。
「で、何があったの?ほんとに具合悪い?」
「なんでわかるの?」
香恵は思わず聞き返していた。
「だてに十数年保健室のお姉さんしてないのよ。泣いた顔見てピンときた。」
香恵は素直に感心した。
「なんて、まだそこまでいってないみたいね。昨日5年の浅香さんと話したのよ。『妹は怠け者で、最低限の仕事しかしない。』んですって。その妹が動いたなら何かあったって思わない?」
香恵は自然と今朝の出来事を山ちゃんに話せた。
「今の男は肝っ玉小さいなぁ。」
話し終わり、山ちゃんの第一声がそれだ。香恵は思い切り笑えた。
「ほんと小さいねぇ。」
「今のは秘密ね。で、香恵はどうしたい。」
香恵はもう落ち着いていた。順一もどうでも良くなっていた。
「教室に戻ってみる。でも休み時間までいてもいい?」
「もちろん。でも病人じゃないからこき使っちゃおうかな。」
香恵は掲示物作成を手伝って、2時間目が始まるぎりぎりに戻ることにした。
「もう戻ります。ありがとうございました。」
香恵が保健室のドアを開けようとしたら勝手に開いた。
「あっ香恵ちゃん。もう大丈夫なの?良かった。」
クラスの女の子が迎えにきてくれた。
「もう平気。一緒にもどろ。」
香恵は何もなかったかのように教室に戻り、休み時間になると祐介に声をかけた。
「ごめんね。間違って祐介の机の上に行っちゃったみたい。」
「次は机の中に入れてね。」
笑いながら手紙を返してくれた。
「ありがと。そうだね。次は祐介好きになるか。」
「ぼくの魅力は若い君たちには解らないよ。ベイビィちゃん。」
祐介は肝っ玉が大きいと思った。
香恵と真は5年も同じクラスだった。
真は景子と麻衣から離れ、1・2年のときに同じクラスだった2人といる。
知的で人気がある2人。自然と他の子も集まって、大きな集団になっていた。
真はよく抜けて、香恵とたけちゃんのところに来て話しては、呼び戻されていた。
香恵は、4年生から南郷BBCに入った。たけちゃんが入ったからだ。
バスケを始めて真の様々な面をみた。
真は普通の4年生だった。ただの負けず嫌い。
負けて悔しがり、勝って喜ぶ。
そんな真をみたら、特別な存在に感じなくなった。
真に話し掛け友達の1人になっていた。
帰りの会が終わり、体育館に向かう。今日は6時間だったから、帰宅する時間はない。
香恵と真とたけちゃんの3人が教室から出るとき、担任が真に声をかけた。
香恵達は先に体育館に行き、バカな話で盛り上がった。
練習が始まるまでの、このおしゃべりがあるから続くんだ。
と香恵は思っている。
あと5分で始まるという時間に真はきた。香恵は気になり更衣室に一緒に入る。
「何の話だったの?」
真はランドセルをロッカ-にしまうとバッシュを履き始めた。真は練習がある日はジャ-ジで登校する。
「あなたは誰が友達なの?って聞かれた。」
「そんなの昨日の生活アンケ-ト見ればいいじゃん。」
学期始めに必ず書かされるアンケ-トだ。
学校は楽しいですか?
仲が良い子は誰ですか?
悩んでいることはありますか?
などなど。
香恵は下らないアンケ-トだと思っている。こんなのに悩みを書く人がいるのかと。
「友達の欄書かなかったから心配したみたい。」
「始めるよ-。」
キャプテンの声がした。急いで円陣に加わる。
19時半に練習が終わる。方面別に車に乗って帰る。
「お疲れ」
真は近いため歩いて帰る。晶だけが入っていたときは、母が迎えに来ていた。
真が入ってからは2人で帰った。真だけになっても、母は迎えに来ない。
香恵とたけちゃんは同じ方向だ。車の配車を待っている。
「たけちゃん、昨日のアンケ-トの友達誰書いた?」
「香恵ちゃんと浅香さん。なんで?」
「真今日呼び出されたの友達いないって出したかららしいよ。」
「いないって書いたの?」
「…何も書かなかったらしい。けど同じ意味じゃん?」
「同じ意味ではないと思うけど。それで機嫌悪かったんだ。」
別に機嫌悪くなんかないよ…
ほとんど聞こえない声で香恵はつぶやく。
次の日から香恵は真にあまり話掛けなくなった。
数日後
「浅香さんは香恵ちゃんと仲直りする気ないの?」
「喧嘩してないよ。」
「相手怒らせたらけんかじゃないの?」
「怒ってるの?」
「だから話しかけて来ないんじゃない?」
「でも何が悪かったかわかんないのに、謝れないし…。」
「とりあえず浅香さんから話しかけたら喜ぶと思うけど。」
今だって用があれば普通に話しかけるし、会話もする。だから別に真は香恵の態度を気にしていなかった。
たけさんが気まずい思いをしている。真は香恵と話してみることにした。
用がなくて話しかけることをしない真。話し掛けるタイミングがわからない。なんと話し掛けるのかもわからない。
休み時間のたびに今度こそ!と席を立つ。一足早く香恵は友達と話し始める。
話を中断させる必要はないよな。
と思い席に着く。話し終わるタイミングを探っていると、誰かしらが話しかけてくる。
そんなこんなで下校時間。今日は練習がない。今日は失敗。
たけさんごめんね。
真はたけさんを目で探した。
香恵が一緒に帰ろうとたけさんを誘ってるとこだった。たけさんは真を気にしながら、2人で帰って行った。
いつものたわいのない話をする香恵にたけさんはイライラした。
「なんで浅香さんが話しかけようとしてるのわかってるのに、タイミングずらすの?」
「そんなことしてないよ。」
香恵は視線をそらす。
「香恵ちゃんのそういうとこ嫌い。もう私知らないから。」
そのまま門を出て、香恵の家の方向とは逆に曲がる。少し遠回りになるが、香恵と帰る気にはならなかった。
香恵はいつもこうだ。気にくわないことがあると、距離をおく。話しかけようとするとタイミングをずらす。
私はこんなに傷ついてるのに、相手は謝るどころか話しかけてもこない。って被害者ぶる。
保育園からの付き合いで、我慢してきたけどもう限界。
何あの態度。たけちゃんは真の味方なんだ。真はやっぱちゃっかりしてる。
「お-い。Aちゃん、Bちゃん一緒に帰ろう。」
20M先の2人を呼びながら駆け寄る。
「あれ?たけいさんは?」
「急にあっちから帰るって言いだしたの。ひどくない?」
香恵は2人の間に入って歩き出した。
私にはすぐ友達ができる。たけちゃんなんて1人に飽きてすぐ戻ってくるに違いない。
香恵は会話の中心になった。歩道はそんなに広くないから、自然とBが後ろに下がった。
香恵は気にしない。たまにちゃんとBにも話を振ってるし、香恵の家が一番近いからその後話せばいいことだ。
隣の路地に真の姿が見えた。1人で歩いてる。
友達いない子は淋しそう。
香恵は真に勝っていると心から思えた。
翌日、香恵とたけさんが一緒にいないのは不自然だった。
真はたけさんにどうしたのか聞いた。
「香恵ちゃんといるの疲れちゃった。」
「今日はちゃんと話し掛けるつもりだよ。」
真は自分のせいで2人が仲違いをしてると思った。
真は正直女の子同士はめんどくさい。
怒ってる理由がわからない。誰ちゃんと仲良くした。っていう嫉妬も意味がわからない。
そんなめんどくさいことに巻き込まれるなら1人でいる。
でも自分のせいで仲いい2人がけんかするのは嫌だった。
「浅香さんと香恵ちゃんが仲直りしても、私は前みたいに一緒にいるつもりはないよ。解放されて気が楽になっちゃった。」
その後、たけさんの人気は爆発的に伸びた。
たけさんはボ-イッシュな女の子だ。もともと女の子に人気があった。
香恵と離れ、たけさんに取り巻きができた。まるでモテル男の子みたいだ。
真と2人でいることも増えた。
さばさばしてるたけさんは、真と合った。男の子同士に近い。
取り巻きの子たちは、真に嫉妬したが、何もできない。
真が近寄ってるわけではないし、真を凝らしめるにも仲間ハズレのしようがない。
せいぜい香恵を巻き込んで、わざと聞こえるように悪口を言うくらいしかできない。
その悪口がたけさんに聞こえたらと考えると、言えなくなる子が増え、香恵とたけさんの取り巻きではない保田さんだけがいつまでも真に聞こえる悪口を続けていた。
真は1人で帰る。途中話し掛けられたら門まで一緒に行く。
みんなが帰る相手を探してる間に教室を出るか、担任の手伝いをして遅くなることが多いからほとんど1人だ。
香恵と保田は、早いときも遅いときも校門で真を待ち伏せする。
真は感心した。
いい子ぶってるよね。
友達いないんじゃない。
せいぜい聞こえてくるのは一言二言の悪口だ。そのために30分以上待つこともある。
しかも真が誰かと一緒だったら、悪口は言えないのに。
待ち伏せされていい気はしないが、遅くなればなるほど今日もいたと楽しむようになった。
真はいじめられている気はしてなかった。
6年になり、真は南郷BBCのキャプテンに選ばれた。
香恵は真を避けていた。真は香恵が1人のときに話しかけてくる。
練習のことや班長会議の連絡とか用件があるときだけではあるが、香恵は戸惑った。
香恵は真をいじめてると認識してる。嫌がらせをしてる。
なのに普通に話かけてくる。たまに用件以外の会話にもなる。誰かに伝言を頼めば済むのに。
保田と一緒にいるときは、絶対に寄ってこない。
校門で待ち伏せもなんか気が乗らない。保田の発言を聞くだけになった。
どんなに考えても解らない。香恵は真に聞くことにした。
練習前に真に話しかける。今日はたけさんと話していた。
「ちょっと聞きたいんだけど…」
「どうしたの?」
香恵はたけさんが気になって切り出せない。
「廊下行こうか。」
真が体育館の外に出た。香恵はたけさんを見る。
「浅香さんに話しあるんでしょ?行かないの?」
たけさんも香恵に用があれば普通に話しかける。
「話しの邪魔してごめんね。」
香恵は廊下に向かう。
「どうしたの。珍しいね。かしこまって。」
真は笑う。
「なんで普通に接するの?私嫌なことしてるのに。」
「待ち伏せのこと?」
香恵はうなずく。
「保田さんと仲良くしたいんでしょ?だったら私のこと悪く言うの正解だよ。あの人私のこと嫌いだから。」
「気にならないの?」
「暇だなって思うよ。保田さんの悪口って、同じこと繰り返すだけだよね。山下さんが考え出したら怖いかも。」
真は余裕がある。
保田が真を嫌う理由を香恵は知ってる。保田は奥山くんが好き。奥山と真は学級委員で良く話している。それが気にくわない。
「保田さんの前では話しかけたりしないから安心していいよ。」
練習する時間になった。
真がしきる練習はきつい。去年はだらけた雰囲気があった。
今年はだらけを許さない。練習後はヘトヘトだ。悔しいけど充実感はある。
休憩のとき、香恵の周りの2軍軍団では不満だらけだ。でも真に直接言う人はいない。
真とかたけさんとか、1軍のほとんどは休憩時間に水分をとるとすぐにボ-ルを手にする。
もともと技術に差があるのに、体力、練習量でも差が開く。文句なんて言えるわけがない。グチれば何とか頑張れる。
2軍なりの知恵だ。
帰り道たけさんに聞いてみた。
「私とやっちゃんのやってること知ってる?」
「知ってる。」
「真から聞いた?」
「クラスのほとんどが知ってることだよ。学級会の議題候補にもあったし。」
クラスには、「お悩み解決箱」という学級会で取り上げたいことを書いて入れる箱がある。
毎月その中から、学級委員と班長で議題を決める。
そこで投票があったと言う。しかも1票ではなかったらしい。
「なんで出なかったの?」
「浅香さんが、私が悩んでいないから、これはいじめじゃないってさ。いつまでバカなことする気なの?」
香恵は恥ずかしくてしょうがなかった。
「もうやめるよ。やっちゃんから離れる。」
「浅香さんが議題決め会議のあとに、保田さん浮いちゃうかなって心配してたよ。かなり評判悪いしね。」
「私は?」
「山下さんはうまくやれそうじゃん。」
たけさんは笑う。クラスのみんなが敵に回ってどううまくやるって言うんだ。香恵は考えた。
真とたけさんは敵ではないか。あと何人か話しかけたら仲間に入れてくれそうな子は頭に浮かぶ。
たしかになんとかできるかも。
やっちゃんは厳しい。
香恵はこのまま保田と仲良くすることにした。
でも真の待ち伏せはしない。少しずつ保田の話から真の悪口を減らしていった。
1学期の終わりには香恵も保田もクラスで浮かなくなっていた。
終業式の日、学校は午前中で終わる。お昼食べてすぐ練習のため体育館に向かう。
真がちょうど家を出るところだった。香恵に気付いて道路を横切ってガ-ドレ-ルを乗り越えた。
「山下さんすごいよね。」
「なにが?」
通知票配られたとき、クラスで1番の成績です。と担任に誉められた真にすごいと言われるようなことはしていない。
「保田さん浮かないようにしてくれたじゃん。私には無理だ。」
真は本当に保田を気にしていたようだ。嫌がらせした相手なのに変な人。真にすごいと言われ嬉しかった。
「ねぇ、トライアングル回数減らさない?あれキツいよ。」
照れ臭く話を変える。
「DFの練習はきついよね。でも減らさない。増やそうと思ってたけどそれは止めようかな。」
増やすなんてとんでもない。今の回数だって終えると座り込む人がほとんどだ。
「本当に練習好きだよねぇ。」
「私は運動音痴だから人より練習しないと駄目なの。たけさんとかは運動できるのに、休憩時間も練習するからずるいよね。どんどんうまくなる。」
真は本当に悔しそうだ。香恵は真が運動音痴と思ったことがない。どっちかって言うと良いほうに入ると思うくらいだ。
「運動音痴なの?」
「そうだよ。バスケ始めたおかげで球技はごまかせるけど、陸上系は駄目だね。」
陸上系だって香恵よりはできる。香恵にしたって標準より上だ。
「基準が高いんじゃない?十分だと思うけど…。」
「基準は姉かなぁ。かっちゃんは高跳び、あきちゃんは短距離の選手だったからね。中学じゃ駅伝も選ばれてるし。私はそこまでの運動神経ないもんね。」
確かに、真の姉たちの運動神経の良さは目立っていた。でもバスケは6年のときの晶より真のほうが上手だと思う。
でも真は年の差のハンデなんて関係なしに姉たちに勝ちたいのだ。
香恵は真の自信のなさが不思議だったが、なんとなくわかった気がした。
真は勝てないところばっか気になるようだ。姉たちが残した記録、今のバスケの実力などなど。
勝ってるとこだってある。同学年と比べれば余裕だ。
しかも真は何でも自分より優れてるところがあれば、そこだけが印象に残り、すごい人だと思う。
かなり過小な自己評価だ。
頼りになる姉がいて羨ましく思ったこともあったが、いなくて良かったと思い直した。
2学期終わりに球技大会がある。サッカ-とバスケの2種目。
サッカ-は男女別だが、バスケは混合だ。
2組の熱血体育先生は、運動神経が良い男子を固めて打倒南郷BBCを掲げていた。2組にはBBCメンバ-はいない。
去年は、真とたけさんは勝負にならないからとサッカ-に出場していた。
3組には1人だけBBCメンバーがいたが、バスケの優勝は2組だった。
その代わりサッカ-男子は2組が最下位。
2組は今年も同じ作戦でくるようだ。熱血先生は真に「今年はサッカ-に逃げるなよ。」と宣戦布告してきた。
2学期最初の学級会は球技大会の作戦会議となった。
男子サッカ-は、3組が強敵だ。広治がいる。力を抜けないから主力メンバ-を固めた。
女子サッカ-は、去年優勝している。ビリにはなりたくない。真とたけさんの力が大きい。
会議の中心は2人をどっちに入れるかになった。
3組の子もBBCの1軍だ。1人では負けている。2人いたほうが安心だ。
どっちかと香恵でどうにかなるという意見には、香恵が反対した。
去年香恵はバスケに出た。2組はチ-ムプレ-ができている。ゾ-ンDFをしてくる。香恵にはどうしようもできなかった。
香恵の意見で2人はバスケ、香恵はサッカ-に決まった。
あとはどちらか得意な方に別れるだけだ。
種目別に練習計画を作り学級会は終わった。
体育の時間や業間・昼休みも球技祭の練習にあてた。
バスケの練習は真が仕切る。たけさんに厳しい練習は止められていた。
「勝つためにはやっぱ多少は厳しくしなくちゃ駄目じゃない?」
真は反論したが、運動苦手な子もいるという言葉に納得した。
『みんなでバスケを楽しむ』
を目標にした。練習も基礎の他は攻めの練習だけにした。DFの練習はきつくて地味だ。
楽しい練習にチ-ムはうまくまとまっていた。
女子サッカ-は保田が仕切ろうとしていた。
兄相手に小さい頃からやっていたため技術はある。得意なスポ-ツだ。しかし1対1用の技術だ。
全体を仕切ることはできない。香恵が間に入る。基礎練習では保田にお手本を頼み、試合形式の練習では香恵が仕切った。
攻めと守りに分かれ、香恵と保田はオ-ルコ-トで動く。
去年は真とたけさんと保田がオ-ルコ-トだった。2人の攻めと守りの切り替えの判断の早さは群を抜く。
保田がボ-ルを奪いドリブルすると、どちらかが前を走っていた。
保田はどうしても自分の力で勝ちたかった。真達の力がなくても勝てると証明したかった。
ボ-ルを1人で長く持ち、チ-ムワ-クなんてなかった。
不満がたくさん出た。練習に参加しない人も出てきた。保田は練習しないでうまくなるわけがない!と愚痴をこぼす。
香恵はキレた。
「全部やっちゃんの自分勝手のせいだよ。わからないの?分かるまで練習こないでよ。」
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