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空深華(くみか)と真っ白な犬

レス96 HIT数 8170 あ+ あ-

空深華( 773jnb )
10/08/12 04:51(更新日時)

これは、親に愛される事なく育った空深華(くみか) のお話。
 
※私自身の体験した実話を小説にしました。日記風に書くと、私自身PTSD(心的外傷後ストレス障害)により、フラッシュバックしてしまい、手の震えや涙が止まらなくなるので、なるべく表現を緩やかなモノにしてあります。
 
過去に同じような体験をされた方、つい感情にまかせて虐待をしてしまう方など、いろいろな方に読んで頂きたいと思ってるおります。
 
そしてこの世から虐待に苦しむ子供が一人でもいなくなってくれることを切に願います。

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No.1229646 10/01/24 02:52(スレ作成日時)

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No.1 10/01/24 03:14
空深華 ( 773jnb )

ミンミンゼミとツクツクボウシが
鳴きわめいて
真夏の風景をより一層
色濃く描いている。

   八月
 
 
運命の子・空深華
力いっぱい
この世に生を受ける。
 
その愛くるしい笑顔は
何者をも味方にするだろう。

No.2 10/01/24 03:29
空深華 ( 773jnb )

  天真爛漫
   無邪気
  愛くるしい瞳..
  
例えだしたらキリがないほど 
  可愛い!
   
   
   空深華、
  あの子は
 太陽に愛された子供

No.3 10/01/24 03:42
空深華 ( 773jnb )

 空深華は
 恐れを知らず
 草木や花やミツバチや..
 空に雲に太陽だって
 味方にして
 
 成長していった。
  
 誰もが空深華の味方だった。
  
  
  
   空深華は
   幸せだった。

No.4 10/01/24 03:48
空深華 ( 773jnb )

  空深華は
 
 三つ歳をとり、
 いろいろな事を
 話すようになった。
  
 またいろいろな事に
 興味を持つように
 なった。

No.5 10/01/24 03:54
空深華 ( 773jnb )

  お父さん...
  
  あなたは
  お父さん....?
   
  お父さん.....
  何をしているの?
  
  お父さん......
  何を食べてるの?
  
  無邪気な空深華は
  興味津々.....

No.6 10/01/24 04:06
空深華 ( 773jnb )

   !!!!
   突然!
    
   飛んできたモノ
    
   びっくりして
   怖くて
   泣けてきた
   
   床に散らばる
   箸の上に
   
   お父さんと
   お母さんの
   
    怒号が 
   降り続けた
    
   いつまでも 
   いつまでも..

No.7 10/01/24 04:14
空深華 ( 773jnb )

  空深華は
  お父さんに
  興味があった 
  ただ......
  それだけ。
   
   お父さんを
  見つめていると
   
  お父さんの顔が
  鬼のようになり
  何か飛んできた
   いつも.....
   怖くて泣いた
   
  お父さんは
  空深華に
  興味がなかった
  ただ......
  それだけ。

No.8 10/01/25 00:35
空深華 ( 773jnb )

  空深華は
  お父さんが
   
  鬼ような顔を
  するのが
  怖かった
  
  お父さんの
  投げてくるモノが
  怖かった
  
  怖かった怖かった
  でも、それよりも
    なぜ??
  
  なぜ?お父さんは
 そんなことするの?
  空深華が悪いの?   
  
 
   空深華は
   とても
   悲しかった

No.9 10/01/25 00:44
空深華 ( 773jnb )

 ある日お母さんが
 空深華に聞いた
  
 「お父さんいる?」
  
 この世に産まれて
 三年経ったくらいの
  幼い頭では
  質問の意味も
 理想的な解答も
  よく........
  わからなかった
  
 
 
 
 
  「いらない」
 
 
 
 
  空深華は
  そう答えていた

No.10 10/01/25 01:05
空深華 ( 773jnb )

 春には桜が咲き
 山野の花の蕾(つぼみ) には、
 やがて綺麗な花が
 咲くように
 
 冬に訪れる将軍は
 あらゆる生命の活動
 を小休止させるように 
  
  物事は
  あらかじめ
  決まっている
  
 そう決まっているの
  
  
    運命
  
  
   さ・だ・め
  
  このお父さんと
  このお母さんの
  元に産まれてくる
 という....運命
  
  そして、
  空深華の.....
  
  「お父さん....
   いらない」
  
  この答えで
  運命の歯車が
  ギシギシと
  音をたてて
  回り始めたの
   
   

No.11 10/01/25 01:11
空深華 ( 773jnb )

 
  そして.......
   
   
  お父さんは
  いつの間にか 
   
   
  
  いなくなった

No.12 10/01/25 01:20
空深華 ( 773jnb )

  遠い遠い
 
 歩いても歩いても
 きっと辿りつけない
 くらい 
 遠いところへ
  
  空深華たちは
  引っ越しをした
  
  空深華とお母さん
 そして一つ年上の
 お姉さん、聖子と一緒に
  
  ワクワクした。
  何か楽しい事が
 待ち受けているようで
  空深華は
  ドキドキした
  
  

No.13 10/01/25 01:34
空深華 ( 773jnb )

  聖子は
  おとなしい子
  
 無邪気でやんちゃな
 空深華とは
  真逆のタイプ
  
  聖子は
  同じ親の元に
  産まれた同士
  
  姉妹なんて
  もろい絆じゃない
  
 同じ運命を背負って
 共に闘う事を
 共に耐え抜く事を
 よぎなくされた
 
 空深華の戦友
  
  運命の仲間
  
 空深華にとっては
 なくてはならないヒト

No.14 10/01/25 03:44
空深華 ( 773jnb )

   太陽の
  眩しいほどの
  愛情を浴びて
  
  空深華は 
  育っていった
  
  聖子に続いて
  保育園に入った、
   空深華は
   
  四歳になっていた。

No.15 10/01/25 04:05
空深華 ( 773jnb )

  お母さんは
  ご飯を作るのを
  嫌った。
  
  お腹が空いた...と
  言うと
  恐ろしい顔をして
  怒りだす
  
  空深華は
  母親の顔が
  恐ろしくて
  恐ろしくて
   
 なぜ怒っているのか
 わからなくて
  
  ただただ
  悲しかった。
   
  母親の怒りは
  一旦始まると
  何時間も
  止まらなくなり
   
  モノに当たったり
  激しいヒステリーを
  起こして
 空深華と聖子の事を
  あらゆる言葉で
  罵った。
  
  悲しかった。
  泣きたかった。
   
   でも泣くと
   逆上して
    火に油。
  幼い空深華でも
   その事を
  理解していた。
  
  空深華と聖子は
   部屋の隅で
   息を潜めて

 (お母さんの機嫌が
  早く良くなって
 ご飯が食べられます
  ように........)
  
  そう祈った

No.16 10/01/25 04:32
空深華 ( 773jnb )

  お母さんは
 保育園へ持っていく
  準備もほとんど
  しないヒト。
  
  紅葉舞うある日、
 保育園のお遊戯会で
 女子はみんなブルマをはいていた。
  
  空深華は
 持って来なかった。
   
 「先生忘れました..」
   
  先生は嫌な顔を
  した。
  
  何かぶつぶつ
  吐き捨てて
   
 「パンツでやりなさい」
  
  ....空深華は
  恥ずかしくて
   嫌がった。
  
 もっと抵抗したかったけど、
  先生が怒ったので
 .......黙った。  
  
  
  後々渡された
 お遊戯会の写真には
 
  たった一人
 パンツ姿で哀しそうに
  カメラを見る
    
  
  幼子がいた。

No.17 10/01/25 04:46
空深華 ( 773jnb )

  いつ頃からか、
    
   我が家に
   黒い猫が
   居座った。
   
   母親は
   黒い猫を
   溺愛した。
   
   黒い猫は
   かわいくて
   お利口さんで
   
 空深華と聖子とは 
 比べ物にならない
  くらい大事
  
 そんな母親の言葉を
 子守唄がわりにして
   
  空深華は毎夜
  眠りについた。

No.18 10/01/25 06:50
空深華 ( 773jnb )

  母親の愛情を
  一身に受けた
   黒い猫が
  
  母親の膝の上で
  なでられて
 安眠しているのを見て
  
  うらやましいと
  思う反面、
  
  黒い猫のお陰で
 母親の機嫌が良い時間
  が長くなり、
  
   安堵する
  幼子、空深華は
  
  五才になった。
  
  無邪気で明るい
  天真爛漫な
  太陽のこども、
   空深華は
   
  人の顔色を伺い
  何も物申さない
  ワガママさえ
   言わない
   
  深い哀しみを
  瞳に宿した
      
      
  五才児だった。

No.19 10/01/25 07:05
空深華 ( 773jnb )

  ある夜のこと
  
  空深華は
  息ぐるしさで
  目を覚ました。
  
   
  タンがのどに絡む
  せきが止まらない
  息が出来ない 
   
   苦しい....
   苦しい....
   
   お母さん...
   助けて.....
  
   お母さんは
  異変に気づいて
  背中をさすったり
  たたいたり
   してくれた。
   
   
   
  嬉しかった。
    
   
  お母さんが 
 心配してくれている
     
     
   当たり前の
   そんな事が
  本当に嬉しかった

No.20 10/01/25 07:23
空深華 ( 773jnb )

  苦しくて
  夜中になると
  息ができない...
   
   ヒイヒイ
   ゼエゼエ
  
   ゴホゴホッ
   ゴホゴホッ
   
 
 
 
 小児ぜんそくだった。
 
 
 めったになかったが
  機嫌の良い時
  お母さんは、
  
  空深華の胸に
 クリームを塗ったり
 背中をたたいたりと
  看病してくれた。
  
  でも、大半は...
  
  ウルサイ
  ネムレナイ
  オヤフコウ
  シンデクレ
  ドコカイケ...
  
  と怒鳴り散らした
   
   空深華は
  咳を我慢したり
 小さい咳をするよう
   努力した。

No.21 10/01/25 07:28
空深華 ( 773jnb )

  努力の甲斐なく
   ほどなく
   空深華は
   入院した。
    
     
   ぜんそくが
   悪化して
    肺炎を
 引き起こしたのだ。
   
    

No.22 10/01/26 01:23
空深華 ( 773jnb )

 息ができなくて
  苦しいから
  
  ベッドシーツ
  や髪の毛や
  パジャマなどを
 わしづかみにして
  
  ゼェゼェ
  ゼェゼェ...
  
  のたうち回った
  
    
    
    
    死
    
    
     
     
   それは
  足音を立てて
   空深華に
  襲いかかろうと
   していた。

No.23 10/01/26 01:33
空深華 ( 773jnb )

    ヒトは
 何かを為すべくして
  
  この世に
  産まれてきた。
   
   それは
  お母さんを選ぶ
   もっと前
    
   神様の前で
   
   自分自身が
  産まれてから
   やるべき事を
    
    使命を
    
  果たしてきます
  
   
   
   そう言って
   
   自分自身で
   親を選び
    
   静かに胎内に
   芽吹いたのだ。

No.24 10/01/26 01:56
空深華 ( 773jnb )

  いつかどこかで
  耳にした言葉
   
    
 
  
  
  
 自分で親を選んだ?
     
    
     
    
   そんな訳ない
     
     
      
      
    
 この先、幾つ
  歳を重ねても
     
   この言葉を
  信じることは
   
   空深華には
  できなかった
  
   
   神様の元に
  いつかまた
   行けたなら
    
    
   事の真相を
  確かめてみるかな

No.25 10/01/27 01:23
空深華 ( 773jnb )

 意識が........
 遠のいていく
   
  空深華.....
  空深華.....
 
  お母さんが
  微笑んで
  私を呼んでる
   
  ずっと昔の
 まだ優しかった頃の
   お母さんだ
    
   お母さん
   お母さん....
   
   空深華は
 お母さんに抱き付き
   甘える
    
   
   ねぇ
   お母さん....
 
   私の事好き?
    
   
  
   
   
    ねぇ
   お母さん...
    
   

No.26 10/01/27 01:29
空深華 ( 773jnb )

    
    
    
   ねぇ.....
   お母さん?
     
     
    
   私のこと…
    好き?

No.27 10/01/28 01:43
空深華 ( 773jnb )

   空深華は
  目を覚ました。
    
 
   どれぐらいか
   わからない位
    長い間
   
   生死の境を
  いったりきたり
  彷徨(さまよ)って
   いたらしい 

   どうやら、
  空深華には
    
  まだこの世で
   やるべき事が
  あるようで....
    
    
  運命の歯車は
   回りだす
     
  
   空深華に
  更なる試練を
   与える為に....

No.28 10/01/28 02:13
空深華 ( 773jnb )

   ほどなく
 空深華は退院した。
    
  
  五才の子供は
   母親の元へ
  聖子の元へ
   戻れる事を
   喜んでいた。
    
    
   入院生活で
 空深華に会いに来て、
 優しく世話をして
  くれたのは、
  親戚のおばさん。
   

...母親ではなかった。
    
    
    空深華は
  寂しくて
   心細くて
    哀しくて...
   
    ただ
   お母さんに
 
  
 
   会いたかった。

No.29 10/01/29 12:51
空深華 ( 773jnb )

   子供が
  親に求めるモノ
   それは...
         
   
    愛情
   
    
    
  
   好きだよ   
   大事だよ
 産まれてきてくれて
   ありがとう
    
     
    子供は
   何よりも
  そんな言葉を
   求めている
    
     
    
   自分は
  愛されている
  必要とされている
     
     
  そう思えるだけで
   子供の心には
   幸せの泉が
   湧き出てくる

No.30 10/01/29 13:03
空深華 ( 773jnb )

 家に戻った空深華に
   安穏の日は
   なかった。
    
    
   日々、
 ぜんそくの苦しみと
  母親の暴言に
   苦しんだ
    
  
  
  カネクイムシ
  
   
   
   暴言の中で
   よく出てきた
   フレーズ
    
    
   入院代と
  空深華の世話を
  してもらう為に
  呼んだおばさんに
  支払った手間賃...
    
   全て空深華の
  せいだと.....
   
  母親はワメいた。
    
    
    
  毎日聞いていると
   
  空深華は自分が
  悪いのだと
 
 思い込むようになった

No.31 10/01/29 13:25
空深華 ( 773jnb )

    八月....
   照りつける
  太陽の陽射しが
   
  あまりにも
  まぶしいので...
    
     
   空深華は
   泣けてきた
    
    
    
  母親に見つかると
  激怒されると
 思い知っていたので
    
 見つからないように
 周りを気にしながら
   声を殺して
    
   
   空深華は
   泣いた
    
    
  お腹が空いて
   いたから...?
  
 オモチャを買って
 もらえないから…?
   
   
 ....そうじゃない
  そうじゃない...
 
 
  愛されていないと
   知ったから
    
    
   毎日毎日、
  
  産まれてきて
  欲しくなかった
  死んでくれ
    
    
  そう.....
  言われるから
    
    
   
   
   空深華は
   肩を震わせて
   泣いた
    
    
   
  
   
 愛されていなくても
 必要とされなくても
 子供は歳をとる
 
   空深華は
  六歳になった

No.32 10/01/30 20:22
空深華 ( 773jnb )

  この頃から
  空深華の記憶に
  登場する、
   
  【おじさん】
  というヒト。
   
   お母さんの
  親戚のおじさん
  らしい。
    
    
   50代も後半に
  さしかかっていた
   おじさんは
  しつけに厳しい
   ヒトだったが
    
    
    何故か
   聖子よりも
 空深華を可愛いがった。
    
   週に四回位は
  おじさんの家で
  泊まっていた。
    
     
  お母さんの元を
   離れるのは
  嫌だったが
   空深華に
  決定権はない。
    
     
  おじさんの奥さん
 が、空深華がお腹
 空かせた顔をすると
    
  インスタントラーメンを
  作ってくれた。
    
     
  食事の質は
  おいといて、
 食事にありつけるのは 、
  ありがたかった。

No.33 10/01/31 07:35
空深華 ( 773jnb )

  おじさんは、
  空深華が発言
  したり、意思を
 表明したりするのを
  望んでいなかった
    
    おとなしく
  言われたとおり
   していると
  機嫌が良かった
    
     
  おじさんの家で
   空深華はいつも
   部屋の隅で
   絵を描いて
    遊んだ
    
     
   ここに居たら
  母親のヒステリーに
  怯えることも
 空腹感に襲われる事も
  無かったが、
 
 空深華は家族の元に
   帰りたかった
    
    
 
 
   家族と一緒に
  暮らしたかった

No.34 10/01/31 16:59
空深華 ( 773jnb )

  たまに過ごす
  家族との生活も
  
   だんだん
  空深華にとって
   
   辛いものと
  なっていった。
    
    
   おじさんが
   聖子よりも
  空深華を家に
   呼びたがる…
    
  空深華の顔が
   だんだん
  お父さんに
   似てきた…
    
    
   それだけで、
  母親の空深華に
  対するヒステリーは
    
   激しさを
   増した…。

No.35 10/01/31 17:09
空深華 ( 773jnb )

  お父さんに
  似てきた事は
  空深華には
  どうしよもない
  出来事
    
   何故そんなに
  母親が怒るのか
  空深華には
 理解できなかった。
    
     
   一日のうち
  八時間位は
   怒鳴られていた
     
    聖子は
   ホントに素直で
    良い子、
  
  聖子は産みたくて
  産んだ子供だけど、
   空深華は違う
    
   空深華は 
   橋の下で
   拾ってきた
    
    
   お母さんは
  毎日そうやって
   ワメき、
    
    
  空深華の目の前で
   聖子とご飯を
    食べる
    
     
   何時間か経って
  母親の機嫌が
   よくなれば
    
   残り物を
  口にする事が
    できた。

No.36 10/01/31 17:24
空深華 ( 773jnb )

  不思議だと
  思うかも
  しれないが、
   
   
  子供が育つ環境
   として、
  これほど
   劣悪な状態でも
    
     
   六歳の子供は

   母親から
   逃げたいとか
   離れたいとは
   思わなかった
    
     
  愛されていないと
   知っていたので
    
     
   いつか
  大事にされる日々
   が........
 
 愛される日々が来る
   
   そう信じて
  やまなかった。
    
  そう信じる事が、
  
  空深華にとって
   
  
  生きる希望だった
   
   
    

No.37 10/01/31 23:29
空深華 ( 773jnb )

   ...ある時、
  お母さんの大事に
 育てていた黒い猫が
  
  いなくなった。
    
     
   家族みんなで
  必死に探したが、
   結局戻っては
   来なかった。
    
    
  母親の落胆ぶりは
  ひどく、
    毎日
  寝てばかりいた。
    
  電気を付ける事や
 物音を立てる事を
 許されなかったので
    
  聖子と暗い中で
  息を潜めて
  過ごした。
    
  お腹が空いたら、
  
  見つかると
 恐ろしい事になる…
  と分かっていたが
   
  冷蔵庫をこっそり
 開けて、ハムなどを
  二人で分け合った
    
     
 でも大半見つかって、   
  お仕置き.....と
   
  外に追い出された。   
   
  (今日は、何時間
  したら、家に
  入れてもらえるの
   かな.......)
  
    
  空腹と惨めさと
 寒さに襲われながらも
      
 聖子と一緒に居ると
  安心したし、
 二人で何でも
  乗り越えられる
    気がした。

No.38 10/02/01 00:08
空深華 ( 773jnb )

  まだ夜の冷気が
 肌を刺すように
   冷たい....
      
    冬の朝

 突然叩き起こされ
   
   『手伝え!』

   と言われた。
    
    空深華は
  寝ぼけまなこで
   何のこと??と
  確認する間もなく
   外に出された。
    
   外には大きな 
   リヤカーが
    置いてあり、
     
    母親が
 見覚えのある荷物を
   積んでいた。
     
    どうやら 
   引っ越しを
   するようだ。
         
 鬼のような顔をして
    怒るので
       
  まだ薄暗くて 
 気味の悪い田舎道を
   
   聖子と二人で
  重いリヤカーを
   押しながら、
    進んだ。  
  
   幼い姉妹は 
 新居と住み慣れた家を
  
  
  
   何往復もした。    
  
  

No.39 10/02/01 00:18
空深華 ( 773jnb )

  全ての荷物を
 新居に運び終えると
   
   東の空が 
  一日の始まりを
   告げるために 
 明るくなってきていた。
   
        
    空深華は 
 住み慣れた我が家を
   離れる事が
 どうしようもなく
   寂しかった。
      
    これから
  どんな出来事が 
 待ち受けているのか…   
  
 言い様のない
  不安に襲われ、
   胃に何かが
 引っかかったような
 気持ち悪さを感じた
               
  
  きっと、幼子は
予感していたのだろう......      
  
  
  
   これから 
  待ち受けている、
  
      
  空深華にとっての
   本当の地獄を。
   
   
   
   

No.40 10/02/02 16:42
空深華 ( 773jnb )

>> 39   地震がきたら
  きっとすぐに
 崩れてしまうような
  古い造りの家
  
 それが新居だった。
   
   
  二部屋と台所と
  少し広めの玄関。
   
    
   お母さんの
  ヒステリーが始まると
    
   ある時は
  玄関に.....
    
   ある時は
  台所に.....
   と逃げた
    
   この時期の
  母親のヒステリーは
    
  以前にも増して
  激しくなっていた
     
     
   口で言っても
 言うことを聞かない
    
   そう叫んで、
  太く長い木の棒を
  いつも手に握り
   
   激しく床を
  叩いて私たちを
   威嚇した。

No.41 10/02/02 16:56
空深華 ( 773jnb )

   黒い猫が
  いなくなって
  少し経った頃
   
   母親は何匹か
 捨てられていた猫を
   拾ってきた。
    
     
    母親は
   猫を溺愛した。
    
     
    猫が柱で
  爪をといだり、
   掃除バケツを
  ひっくり返したり
    すると.....
    
     
  威嚇用の木の棒を
  振り回して、
  鬼の形相をして
  私たち姉妹を
  追いかけてきた
     
     
    理由?
     
     
    
  猫をキチンと
   見張って
  居なかったから...
    
     
   ワルガキ
   クソガキ
 ソノセイカクヲ  
 タタキナオシテヤル!
    
    
   母親の形相が
  恐ろしくて
   空深華は
   逃げた
    
  
  心臓が今までに
   無いくらい
  バクバクしていた。
   
   

No.42 10/02/02 17:11
空深華 ( 773jnb )

   空深華は
  必死で走った。
    
  
   (捕まったら
   殺される...)
   
 本気でそう思った。
    
   聖子の事を
 気にかける余裕など
  あろうはずもなく
    
    
    間一髪
 トイレに逃げ込み
  鍵をかけた。
    
   直後、
  『くみちゃん
   開けて!!』
    
  
  聖子が必死な声で
 懇願した。
   
   空深華が
  開けようと、鍵の
 ツマミに手をかけた.....
   
   
   その時!
    
  
  
  聖子の悲鳴が
  辺りに響いた。
   
    
    

No.43 10/02/02 17:23
空深華 ( 773jnb )

  激しい物音
   
  木の棒が何かに
  当たる音...

  聖子の泣き声
   
    
    悲鳴
    
   
  母親の叫び声
     
   
   何かが
 引きづられていく音...
    
     
   トイレの中で
    空深華は
  恐怖で震えながら
   聞いていた。
    
     
  (お姉ちゃん
   お姉ちゃん...
    
    ごめんね
    ごめんね..)
     
   空深華は
  遠くでいつまでも
  止むことのない 
  
   母親の怒号と
  聖子の悲鳴を
   聞きながら
     
     
   トイレの中で
  泣きじゃくった。
    
    
      
     

No.44 10/02/03 19:14
空深華 ( 773jnb )

  どれくらいの
 時が経ったのだろう...
    
   辺りには
 静寂が戻っていた。
   
   
  (お姉ちゃん...
  大丈夫だったかな)
    
  聖子の身を案じた
   その瞬間
   
   重たい足音が
 ゆっくり、空深華に
  近づいてきた。
    
     
  空深華はとっさに
 ドアノブを握りしめ
   
  (どうかドアが
 開きませんように!)
   
  そう、必死に
  祈った。
    
   その瞬間
    
 母親の怒り狂った
  罵声と共に
    
   ドアノブが
  ガチャガチャ
   揺れた。
    
    
  もの凄い力で
 ドアを蹴っている
  ようで、
    
   その振動で
  
  ドアが壊れて
 しまうのではないか
  という恐怖に
 
  
  空深華は襲われた。
   

No.45 10/02/03 20:59
空深華 ( 773jnb )

  ...とても長い間
   母親の攻撃に
    
   空深華も
   ドアも
    
   耐えていた。
    
    
   ものすごく
   怖かった。
    
   怖くて...
   怖くて...
    
  ( もうやめて!
   勘弁して!
   お母さん!!)
    
   泣きそうな
   自分の気持ちを
    
  必死に抑えながら
     
    空深華は
   心の中で
    
    ずっと
   叫び続けた。
     
     
    それは....
 鬼と化した母親には
    決して
     
      
   伝わる事は
    なかった。
     
    
      

No.46 10/02/03 21:19
空深華 ( 773jnb )

   どうして
  いつもいつも
    
   お母さんは
   怒るの?
    
    猫が
  障子を破いたり
  本を破ったり
 バケツをひっくり
  返すことは....
    
     
 私たちのせいじゃ
   ないでしょ?
    
    
   どうして
 私たちが怒られるの?
    
  
    私は
  お母さんに
   
  口答えをしたり
  ワガママ言ったり
  した事は
  一度もないよ...
   
   なぜ?
   どうして?
     
     
   どうして?
   
   
  
   
    ねぇ.....
   お母さん....
   
    
   
    

No.47 10/02/03 21:37
空深華 ( 773jnb )

  漆黒の闇が
  辺り一面に
  広がり、
   
  空深華の視界には
  何も映らなかった
    
    何時間
   経ったのか...
     
     
   空深華には
  知るすべもない
    
    遠くで
   車の走る音...
    
  犬の吠える声が
    
   空深華の耳に
  入ってきた。
    
   いつの間にやら
 攻撃は終わっていた...
   
   (やっと
   終わった...)
     
  空深華は深く
  安堵のため息を
  ついた。
      
    
  カエルの鳴き声が
  一日の終わりを
 告げようとしていた。
    
     

No.48 10/02/04 19:19
空深華 ( 773jnb )

   恐怖から
  解放されても...
  
  空深華はしばらく
  動けなかった。
   
  身心共に疲労感
  でいっぱい.....
   
  もぅ眠りたかった。
   ゲーコゲーコ
   グワッグワ
  
  カエルの輪唱が
   聞こえる
   
  (このまま
 ここにいても...)
   
   意を決して、
  音を立てないよう
   細心の注意を
  払いながら、
    
 空深華はトイレの鍵を
   
    開けた.....
     
     
   【 カチャッ 】
     
     
   小さな音に
  小さな心臓は
   
   バクバク
   バクバク
    
   早打ちした。
     

No.49 10/02/04 19:36
空深華 ( 773jnb )

  心臓がドキドキ
  して、
   
  恐怖心に、また
 空深華は襲われていた
      
   震える手で
  ドアノブを回し
  ドアを開けた。
     
    カチャッ
    キィー.....
     
  (お願い
   静かにして!)
     
   心臓の鼓動が
 聞こえてしまうの
  ではないかと
   思えるくらい
  高まっていた。
   
   空深華は
  見つからないよう
   祈りながら
     
     
  そっとトイレを
    出た。
    
     
   
   
   真っ暗
     
      
     
   空深華は
   手探りで
    
   ゆっくり
   ゆっくり
   
    進んだ
    

No.50 10/02/04 20:10
空深華 ( 773jnb )

  居間の灯りが
   襖(ふすま)の
   すき間から 
   モレていた。
      
   空深華は、
    そっと
 中の様子を探った。
   
   
   お母さんの
    膝の上に
 聖子の頭が乗っていて
    
   お母さんが
 優しく語りかけていた。
 
   先ほどまでの
 戦場のような空気は
  嘘のように消えて
  
    居間は 
 穏やかな雰囲気に
  包まれていた。
 
   空深華は
 それ以上見ることが
   出来ず、
   
   
   
   
   目を伏せた。
   
   
          

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