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ジュリ( TSTfi )
10/05/04 23:14(更新日時)

4月。

生暖かい風が肩に少しかかる私の髪を優しく揺らす。
すぅっと息を吸い込むと、肺が爽やかな空気で満たされた。


「うわぁー……」

そして今、真新しい紺色の制服、いわゆるセーラー服に身を包んだ私は、視界いっぱいに広がる桜に見とれている。

例年に比べ寒かった冬のせいで今も鮮やかに咲き誇った淡いピンク色の桜は、見つめていると吸い込まれそうになった。

その華やかさに圧倒されて、私はぼうっと校門の前に立ち尽くす。

アーチ形の豪華な校門の右下に立てられた看板には、『桐谷高校入学式』の文字。

その文字の通り、今日は入学式で、そして私は今日からこの高校の生徒になる。

いよいよ女子高生デビューってわけ。

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No.1162417 09/09/29 16:42(スレ作成日時)

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No.1 09/09/29 16:45
ジュリ ( TSTfi )

周りには私と同じ制服を着た女の子や、学ランを着た男の子。

みんな2、3人で固まって楽しそうに喋りながら歩いてく。

きっと、同じ中学校だった人同士なんだろう。

同じ中学校出身の子がいない私は1人で突っ立って、続々と校門をくぐってゆく生徒たちを見ている。


そのときだった。

トントンッと左肩に軽い衝撃。

すぐに、誰かに肩を叩かれたんだと分かった。


「はい?」

慌てて振り返った私の目の前にあるのは金色のボタンがついた、学ラン。

どうやらこの人も今日からここの学校の生徒らしい。
私は、顔を80度程上に上げた。その先にあった顔に私はびっくり。

……かっこいい……

黒い短髪で目はぱっちり、男の子にしては長すぎる程のまつげがさらにその目を大きく見せている。

そんな大きな目をしていても、可愛い感じはなく、きりっとした印象を思わせる。

鼻は少し高めですっと通り、口は小さめ。
そんな男の子の両脇には女の子が1人ずつ。

どちらも私と同じセーラー服姿だ。

2人とも髪をきれいに巻いて、いかにも女子高生。

No.2 09/09/29 16:50
ジュリ ( TSTfi )

「あのさぁ」

「あ、はい?」

「これ」

そう言って目の前のイケメン男子に渡されたのは、白い携帯。

「写真、取ってくれる?」
……写真、ね。

「分かった」

私が頷くと、男の子はにかっと笑った。

「サンキュー」

笑うと、一気に少年っぽくなった。

「じゃあよろしく」

男の子とガールズは小走りで校門の下に並んだ。
私はズーム機能で画面にきっちり3人が入るようにする。

「いきまーす。はい、チーズ」

カシャンという機械音が鳴った。

また小走りで男の子が駆け寄って来る。

「ありがと。君も撮る?」
「私? け、結構です」

ぶんぶんと首を振る。なんでいきなり。

「そっか。じゃあな、助かった」

男の子はくるっと向きを変え、長い髪を揺らす女の子と一緒に行ってしまった。

私もそろそろ行かなきゃ。

No.3 09/09/29 16:55
ジュリ ( TSTfi )

アーチ形の門をくぐると、桜並木が30メートル程続く。

入試で来たときは全然咲いてなかったのに。

その桜にまた見とれながら、奥の掲示板にクラス確認へと向かった。

AからEまでのクラスの生徒表の中から『望月 朱里』の名前を探す。
それが私の名前。

A組にはなかった。B組にもない。C、DにもなくE組の表でやっと見つけた。

「1年E組」


そう声に出して呟いてみても、

「私も! 同じクラスだね!」

と喜んでくれる子はいるはずもなく。

私は入学式会場である体育館へ向かった。

体育館は、中学校とは比べものにならないぐらい大きかった。

入口に立つ先生の指示に従ってE組の席に着く。

知ってる子が誰もいないというのはやっぱり心細い。

キョロキョロと辺りを見回していた私は、1つ前の列にある人を見つけた。

さっき、写真を頼まれたあのイケメン男子だった。

同じクラスなんだ。

男の子は、さっきのガールズと違う女の子と楽しそうにお喋りしていた。

周りの女子もちらちらとそのイケメン男子を気にしている。

あきらかに目立っていた。

  • << 5 「皆さん、静かに」 前に立つ先生の一声で会場のざわめきが徐々におさまっていく。 「只今より、桐谷高校の入学式を始めます」 その言葉とともに、退屈で憂鬱な時間が流れ出した。 校長先生の話しは長いし、パイプ椅子の座り心地も悪い。 やっと校長先生が壇上から降りたと思ったら次はPTA会長。 いかにもお喋りが好きそうなおばさんだった。 全く終わる気配のない話しに耳を傾ける気にもならず、私はまた辺りを見回していた。 私の両隣の男の子はどちらも俯いて寝てる。 左の子なんて軽くいびきかいてるし。 何回天井を見上げただろう。 まだ話は終わらないらしい。 仕方がないからPTA会長の方に顔を戻したとき、後ろを向いていたイケメン君と目が合った。 そのままじっと見つめ合う。 するといきなり、イケメン君が口を大きく動かし出した。 口パクだ。 ……さっぱり分かんない。首を傾げる私。 親切にも、もう一度言ってくれるらしい。なになに? 「……す、あ、あ、と?」

No.5 09/09/29 21:01
ジュリ ( TSTfi )

>> 3 アーチ形の門をくぐると、桜並木が30メートル程続く。 入試で来たときは全然咲いてなかったのに。 その桜にまた見とれながら、奥の掲示板にク… 「皆さん、静かに」

前に立つ先生の一声で会場のざわめきが徐々におさまっていく。

「只今より、桐谷高校の入学式を始めます」

その言葉とともに、退屈で憂鬱な時間が流れ出した。
校長先生の話しは長いし、パイプ椅子の座り心地も悪い。

やっと校長先生が壇上から降りたと思ったら次はPTA会長。

いかにもお喋りが好きそうなおばさんだった。

全く終わる気配のない話しに耳を傾ける気にもならず、私はまた辺りを見回していた。

私の両隣の男の子はどちらも俯いて寝てる。
左の子なんて軽くいびきかいてるし。

何回天井を見上げただろう。
まだ話は終わらないらしい。

仕方がないからPTA会長の方に顔を戻したとき、後ろを向いていたイケメン君と目が合った。

そのままじっと見つめ合う。

するといきなり、イケメン君が口を大きく動かし出した。
口パクだ。

……さっぱり分かんない。首を傾げる私。

親切にも、もう一度言ってくれるらしい。なになに?

「……す、あ、あ、と?」

No.6 09/09/29 21:06
ジュリ ( TSTfi )

すああとって何?

また首を傾げる私に、イケメン君はついに呆れてしまったようで、
はぁ、と小さなため息をついた。

そしてその後、なぜか私の足元を指差した。

その指示に従って私は視線を自分の足元へ……


「うぁっ」

私は小さく悲鳴をあげた。
スカートが大きくめくれている。
太股丸出し、もう少しでパンツが見えそうだ。

慌ててスカートを元に戻す。

いつからこうなってたんだろ?

さっきのは『すかあと』って言ってたのか……

慌てふためく私の様子を見て、イケメン君はクックッと、聞こえるか聞こえないかぐらいの微かな声で笑ってる。

……まぁ、この人のおかげで気付いたから文句は言えないんだけど。

っていうか、隣の男子に見られてないよね!?

左右確認をする。
よかった、どっちも眠ったままだ。

安心した私に向かって、目の前の男の子はまた口パクを始める。

私は動く唇をじっと見つめた。

「み、す、た、ま……? ……水玉!?」

No.7 09/09/29 21:15
ジュリ ( TSTfi )

きゃあああ!!

 私は心の中で大絶叫。


……見られた……私の……水玉柄のパンツ……見られてたぁー!

ありえない!

恥ずかしすぎる!

ひきつる顔で目を合わせると無言でにっこりと笑うイケメン。

あぁ、最悪……

しかも、私とイケメン君が喋っているのに気付いた隣の女の子が私を睨みつける。

この時点で私は、今日はついてない日なのだと確信した。

しかしすぐ後に今日はウルトラスーパーついてない日なんだと分かった。

私に突然襲い掛かってきた、尿意。

トイレに行きたい。行きたい……!

その思いはどんどん強くなる。

やばいってー!

お腹に力を込めて必死にこらえる。

早く入学式終われ……


恥をかくのを覚悟で席を立ってトイレに行こうかと考え始めたとき、やっと、式の終わりを告げる声が聞こえた。

「只今をもちまして、入学式を終わります」

そして、各クラスごとに担任と出ていく。

やっとE組が退場する番がきて、列にになって入口に向かい歩き出した。

私は列からそっと抜けて、入口に立つ先生のもとへ。

No.8 09/09/29 21:33
ジュリ ( TSTfi )

私は列からそっと抜けて、入口に立つ先生のもとへ。

「あの……トイレはどこですか?」

見た目はいかつい男の先生だったけど、私が尋ねるとにこやかに笑って体育館の横手にあると教えてくれた。

ありがとうございます、と頭を下げ、急いでトイレに直行。

やっと苦しみから解放された。

すっきりした私はトイレを出て体育館と校舎を繋ぐ廊下を歩く。

校舎内に入るとすぐに校舎案内図があった。
1年E組は……4階の一番端だ。

そう確認して、私はまた歩き出す。

廊下の右側にはドアがずらりと並んでいて、左側は窓。

そして、その窓から、中庭が見え、そこにもたくさんの桜が植えてある。

きれいだなぁ、そう思ってそのまま通り過ぎようとしたときだった。

「あれ……?」

誰か、いる。

中庭の中に誰かが立っている。
学ランを着ているから、男子生徒らしい。

この時間に校舎内にいるってことは1年生なんだろうか。

でもなんで?

私は窓際まで近づいた。

私と男子生徒の距離は窓を挟んで15メートルぐらいで、ここから見えるのは横顔だけ。

No.9 09/09/30 20:55
ジュリ ( TSTfi )

>> 8 でも、それだけでもはっきりと分かる。

その男子生徒が美男子だってことが。

さっきのイケメン君とは違ってきれいっていう言葉が似合う。

なんか、目を反らせない。
食い入るようにその男の子の横顔を見つめていたときだった。


 ―ドクン。

私の心臓が大きく跳ねた。
……え?

……ドクン、ドクン―
心拍数はどんどんスピードアップ。

なんで……?

速まる鼓動の意味も分からないまま、まだ目を反らすことができない私。

そのとき、気付いた。

「泣いてる……」

微かに微笑む男の子の頬には、涙が伝っていた。


どうして泣いてるの? 
鼓動はまだおさまらない。
もう、頭がこんがらがってきた。

No.10 09/09/30 21:08
ジュリ ( TSTfi )

放心状態だった私は、いきなり背後からかけられた声に飛び上がることになった。

「おい」

「はっ、はい!」

背後の人物に肩を掴まれそのまま私は半回転。

回った私の前にいたのは、さっき私にトイレの場所を教えてくれた、あのいかつい先生だった。

「トイレには行けたのか?」

「あ、はい。ありがとうございました」

「そうか。だったら早く教室に行ったほうがいい」

にこやかにそう言う先生に私は好印象を持った。

そして先生は廊下を曲がって消えた。

どうやら窓の向こうの男子生徒には気付かなかったらしい。

再び窓に目をやるとなんと、思いきり目が合ってしまった。

「っ……!」

また高鳴る鼓動。
やばい。

耐え切れなくなった私は、廊下をダッシュ!

階段を一段飛ばしで駆け上がり、一気に4階まで上りきった。

なんとか息を整えて、1年E組の教室の戸を引くと、教壇で喋っていた先生が私の方を向いた。

「すいません……」

先生に頭を下げる。眼鏡をかけた、50代前後に見える痩せ型の男性教師。

なんか怖そう……先生は無表情で

「席に着きなさい」
と一言。

No.11 09/09/30 21:12
ジュリ ( TSTfi )

空いてる席を探すと、最後列の端がぽつんと1つ空いていた。

何度か周りの机にぶつかりながら進み、やっと席に着いた。

そしてすぐに教科書の配布が始まる。

分厚い教科書をかばんに詰め込んだ後、先生からの話しが終わって今日は下校。
明日は早速テストだ。

私は学校を出て駅へ向かった。


「重っ……」

かばんを持った右肩がずっしりと重い。
肩が外れそう。

必死で歩いてやっと駅に着いたのに、私は改札口で重要なことに気付いた。

「定期がない!」

なんで?なんでないの!?
何度かばんの中を見ても定期は見つからない。

もしかして学校…?

あるとしたら学校だよね。
もうっ、
ほんっとに今日はついてない!!

何!?

私神様になんか恨まれるようなことした!?

No.12 09/09/30 21:15
ジュリ ( TSTfi )

また重いかばんを持って学校まで戻ることになった私。

なんて可哀相なのかと自分でも同情しちゃう。

学校まで戻ってきた私は職員室へ。

「あの……定期、落ちてませんでしたか?」

一人の女の先生にそう聞くと、幸いなことに

「あー、落ちてたわよ。もしかして望月さん?」

「はい!そうです!」

「ちょっと待ってて」

すぐに定期は私の元に戻ってきた。

赤くて、大きく『望月朱里』と名前が書かれた定期入れ。

よかったぁ……

先生にお礼を言って職員室を出た。

これでやっと電車に乗れる。

かばんを左肩に持ち替えて歩き出した私は、
校門に向かう途中の駐輪場で、あのイケメン君に会った。

No.13 09/09/30 21:38
ジュリ ( TSTfi )

>> 12 目が合った瞬間、イケメン君はニヤッと笑って

「あ、水玉」


……人をパンツの柄で呼ぶなぁー!!

「ちゃんと望月朱里っていう名前があるんですー!」

私は印籠のように定期入れを見せ付けた。

「え、バカり?」

「バカりじゃなくてあ・か・り!」

完璧にバカにされてる。

「同じクラスだよな?」

「うん」

「俺、川瀬南津」

かわせなつ、か。ふーん。

「あのお友達とは一緒に帰んないの?」

「お友達?」

記憶にない、といった感じで川瀬が首を傾げる。

「ほら、私が写真撮ってあげた子」

「あー、あの子たちね」

思い出したみたいだ。

「友達じゃないよ」

「そうなの?」

「いきなり声掛けられた。写真撮りませんかーって」
なんだそれ。

ようするに川瀬がイケメンだから一緒に撮りたかっただけってことか。

「ふーん」

「ちょっと安心した?」

いたずらっぽく笑う川瀬。
「はい?なんで安心するの?モテるんだなぁと思っただけ」

「そうなんだよなー。俺、イケメンだから」

自分で言っちゃってるよ。
まぁ確かに私もかっこいいと思ったけどさ。

No.14 09/09/30 21:41
ジュリ ( TSTfi )

>> 13 「はいはい。じゃあ私、帰んなきゃいけないから」

この重ーい荷物を持って。
歩き出した私に向かって


「じゃあな、バ・カ・り」

からかう川瀬南津の声。

私は振り向いて一言。

「うるさい……ぴーなつ!」

よし、すっきり。

そして私はまた歩き出した。


うん、なかなかいい。

南津だから、ぴーなつ。

思い付きにしては上出来のネーミング。

してやったり気分の私は上機嫌で電車に乗り込んだのだった。

座れなかった私は、電車に揺られながら、ふと中庭の謎の男子生徒のことを思い出していた。


なんで泣いてたんだろう……?

No.15 09/10/01 17:35
ジュリ ( TSTfi )

>> 14 翌日。

友達を作ろうと張り切って教室に入った私は、いきなり誰かとぶつかった。

「ごめん!」

相手をよく見るとセミロングの女の子。

ちっちゃくて可愛い。

「私こそごめんね。それとおはよう」

そう返してくれる声はハキハキと元気な声。

「おはよう」

「私、矢崎結実。けが、してない?」

「大丈夫。望月朱里です。よろしく」

私たちはすぐに仲良くなれた。

結実も、同じ中学校出身の子がいないのだそうだ。

「不安だったんだけど、よかった、友達できて」


ほっとしたように笑う結実の笑顔はほんとに可愛かった。

No.16 09/10/01 17:40
ジュリ ( TSTfi )

>> 15 昼休み。

すっかり打ち解けた私と結実は一緒にご飯を食べている。

場所は食堂。
3学年が集まる食堂はすごくにぎやかだ。

「ねぇ、同じクラスの川瀬君知ってる?」

焼きそばパンを頬張りながら結実が聞く。

川瀬君って……あぁ、ぴーなつのことか。

「知ってるよ」

「やっぱり朱里も知ってたか。川瀬君かっこいいよね」

人のことパンツの柄で呼ぶけどね、とは言わなかった。

結実のイメージを壊すのはかわいそうだから。

「朱里は?気になる男子いた?」

「私ー?……あ」

思い出した。
中庭の男子生徒。

「なに?いるの!?」

興味津々の結実。

「うん、まぁ……」

「ほんとにっ?1年?」

「たぶん、そう」

「何組?」

分かんない、と首を振る。
「じゃあ探そうよ!今ここにいないの?」

結実が食堂をぐるりと見渡す。

いたとしても、見つけるの大変だよ。

「あ、川瀬君見っけ」

結実が嬉しそうな声を上げる。

結実にあそこあそこ、と袖を引っ張られて無理矢理私も視線を川瀬に向けた瞬間、私の目はくぎづけになった。

川瀬にじゃない。
川瀬の横にいる、男子生徒に。


それは紛れも無く、昨日中庭にいたあの男の子だった。

No.17 09/10/01 17:46
ジュリ ( TSTfi )

>> 16 「いた……」


思わず漏れた言葉に結実が反応する。

「え、いたの!?どこ!?」

「……川瀬の、隣……」

その男の子は川瀬と楽しそうに喋っていた。

あいつの友達だったんだ。

ドキン―

また、心臓が跳ねる。

体が熱い。

なんだろう、この感覚……
「うわぁ、かっこいいじゃん!」
興奮してる結実。

「話し掛ける?」

「むっ、無理だよ!」


そんなことできるわけないじゃん……

結局、ぼーっと見つめるだけで昼休みは終わってしまった。

でも、その男の子が何組かが分かった。

隣のクラスのD組。


気付けば私は、ずっとあの人のことを考えてる。

これってもしかして……

No.18 09/10/01 18:49
ジュリ ( TSTfi )

放課後、私は教室に残されていた。

なんでかっていうと、私がめでたく学級委員になってしまったから。


……全然めでたくなんかないっ!

だって……じゃんけんで負けたんだもん。

しかも。

「よろしくな、バカり」

男子の学級委員は、こいつ。


「だからバカりって呼ぶな!ぴーなつ!」

「ぴーなつじゃねぇ!」

「じゃあ……ナッツ?」

「ほとんど一緒じゃねぇかよ」

パコッと頭をはたかれた。
「痛っ!暴力反対!」

「今のは撫でたんだよ」

ニヤッと笑う川瀬。思いっきり叩いたくせに。

「ねぇ、ぴーなつかナッツかどっちがいい?」

「なんでどっちかなんだよ」

ふて腐れる南津。

「じゃあ……ぴーなつにしよう」

「なに勝手に決めてんだよ。普通に南津でいい」

「えー?ぴーなつのほうがいいよ」

私がそう言うと

「うるせぇ」

今度はデコピンが私のおでこにヒットした。

「いったぁ!」

ピリピリする……

「南津でいい」

「分かったよ……ぴーなつ……ひぃっ!」

「ぴーなつ?」

ほっぺたをつままれた。

「間違えました!南津でした!」


必死で訴えると、やっと手を離してくれた。

No.19 09/10/01 19:23
ジュリ ( TSTfi )

「もうっ!痛いよ!」

「撫でたんだよ」

どこが!まだヒリヒリする……

恨めしげに南津を睨むものの、効果ゼロ。

「お前はどっちがいい?バカりか……水玉」

そう言ってまたクックッと笑う南津。

「どっちもやだ!」

「んー……じゃあ、ちょっと立って」

 ?

なんで立つの?

疑問を持ちながらも素直に立ち上がった瞬間。

ひらっ。

南津の手がさっと動いて、
「ぎゃっ!?」

私のスカートがめくれた。
「何してんのよ!」

有り得ない!

またパンツ見られた……

「お前今日も水玉かよ。しかもカラフル。お前は水玉で決定ー」

ニヒヒ、と意地悪に笑う南津を横目で睨む。

「うっさい!人の勝手でしょ!ってか、パンツの柄で呼ぶな!ぴーなつ!」

「あぁ?」
そんな幼稚な言い争いをしていたとき。

No.20 09/10/01 19:26
ジュリ ( TSTfi )

「賑やかだなー」

教室の入口に誰かが現れた。

入口に背を向けて立っていたため、慌てて振り返った私は思わず固まる。

だって、だって……


そこに立っていたのが、あの男の子だったから。

「よぉ彰」

隣の南津が声を上げた。


あきらって言うんだ……

うまく回らない頭でぼやーっと考える。

心臓が暴れて、目を反らすことしかできない。


「今日どうすんの?」

南津よりも少し高めの、涼やかな声。

こんな声してるんだ。

「あー……悪ぃ、先帰ってて」

「分かった。じゃあその子と仲良くな」

そう言い残して彰君はいなくなった。


ヤバイ……これって完全に私、一目惚れってやつだ……

「あーあ。今日彰とどっか行こうって言ってたのに……」

名残惜しそうな南津の声も、今の私は上の空で聞き流す。

頭の中に、まだ響いてる彰君の声。

  • << 22 「こんなんまとめてらんねー」 15枚ほどに目を通した南津がグチをこぼす。 「もうさぁ、適当でいいだろ?」 「そうだね」 私も南津に同意し、結局クラス目標は『楽しいクラス』に決定。 っていうか、高校生にもなってクラス目標って…… どうよ? 「よっし、終わりだな。これからどうすっかなぁ」 頬杖をつく南津。 「誰か女の子でも呼べば?」 嫌味のつもりで言ったのに 「それいい。誰と遊ぼっかなー」 なんて言いながら携帯をいじりだした。 「ミカちゃん、ナナちゃん、アヤナちゃん……」 聞いたことのない女の子の名前が次々と南津の口から出てくる出てくる。 「南津って女好きだよね」 「大好き。ま、向こうから俺に寄ってくるんだけど」 「そーですか」 「そーなんです」 南津の笑顔がウザったい。 「んじゃま、帰るか」 ガタン、と音を立てて席から立ち上がり、教室を出る南津に続いて私も教室を出た。 靴箱で靴をトントンしていると、 「あ、南津くーん」 女の子の声がした。 振り向くと、二人の女子生徒がとびっきりのスマイルを、私の横に立つ南津に向けていた。 ミニスカ度合いとお化粧具合からして上級生だ。

No.21 09/10/01 19:28
ジュリ ( TSTfi )

>> 20 「……ね、ねぇ」

「あ?」

「今の……彰君、だっけ?」

「おぅ。彰がどうかした?あ、お前もしかして彰に惚れちゃったとか?」

「そっ、そんなんじゃないけど……」

やっぱりこいつには相談なんてできない。

「ふーん」

目を細め、意味ありげに笑う南津。

「そんなことよりさっ、早くやっちゃおうよ、これ」

私は話しを反らして机の上の紙束を指差した。

これは、クラスのみんながクラス目標を一人一人書いたもの。
これをまとめるのが学級委員の初めての仕事なのだ。

「ったく、バカりがうるさいから全然進まねぇじゃんかよ」

なにぃ?
それは聞き捨てならない。
「南津のせいでしょ」

「いやいや、お前のせいだから」

そんな罪のなすりつけ合いがしばらく続き。

「……早く終わらせよ」

「おぅ。そうだな」


やっとそれが無駄だと気付いた私たちは作業に移った。

No.22 09/10/01 19:32
ジュリ ( TSTfi )

>> 20 「賑やかだなー」 教室の入口に誰かが現れた。 入口に背を向けて立っていたため、慌てて振り返った私は思わず固まる。 だって、だって…… … 「こんなんまとめてらんねー」

15枚ほどに目を通した南津がグチをこぼす。

「もうさぁ、適当でいいだろ?」

「そうだね」

私も南津に同意し、結局クラス目標は『楽しいクラス』に決定。

っていうか、高校生にもなってクラス目標って……
どうよ?

「よっし、終わりだな。これからどうすっかなぁ」

頬杖をつく南津。

「誰か女の子でも呼べば?」

嫌味のつもりで言ったのに

「それいい。誰と遊ぼっかなー」

なんて言いながら携帯をいじりだした。

「ミカちゃん、ナナちゃん、アヤナちゃん……」

聞いたことのない女の子の名前が次々と南津の口から出てくる出てくる。

「南津って女好きだよね」

「大好き。ま、向こうから俺に寄ってくるんだけど」

「そーですか」

「そーなんです」


南津の笑顔がウザったい。

「んじゃま、帰るか」

ガタン、と音を立てて席から立ち上がり、教室を出る南津に続いて私も教室を出た。

靴箱で靴をトントンしていると、

「あ、南津くーん」

女の子の声がした。

振り向くと、二人の女子生徒がとびっきりのスマイルを、私の横に立つ南津に向けていた。

ミニスカ度合いとお化粧具合からして上級生だ。

  • << 24 翌日の放課後。 「クラブ見学行かない?」 結実にそう誘われたけど、私は断った。 「ゴメン、私バイトしようと思ってるんだ」 もともと運動が不得意で、しかも面倒臭がりな私。 高校に入ってまでクラブに入る気なんてさらさらなかった。 結実には悪いけどね。 高校生になったら絶対バイトしようと決めていた。 そして、お金を貯めて一人暮らし…! それが私の夢なんだから。 「そっかぁ、分かった。じゃあまた明日」 「うん、またね」 教室を出ていく結実を見送ったあと、私も立ち上がった。 教室内にはもう私しか残っていない。 どんなバイトがいいかな。 やっぱりケーキ屋さんとかがいいよねぇ。 だって、余りものとか貰えちゃったりするしさ。 駅前で求人広告貰って帰ろう、そんなことを考えながら教室の入口まで来たとき 「よぉ」 いきなり目の前に現れたのは、南津。 相変わらず背が高い。 私が口を開きかけた瞬間、足元にさっと風が吹いた。 一瞬、何が起こったか分からない私に 「今日はしましまか」 ニヤーッと笑う南津。

No.23 09/10/01 19:36
ジュリ ( TSTfi )

>> 22 「あ、どうもー」

南津も笑顔を返す。

この笑顔で今までたくさんの女の子を落としてきたんだと分かる甘い笑顔。

さっと南津の周りに集まってくるガールズたち。

私には気付きもしない。
「じゃあね」

私はさっさとこの場を立ち去りたかった。

「おぅ。またな」

あまりにもあっさりとそう言われて、
ちょっと腹が立ったけど、私はそのまま1度も振り向かずに学校を出た。

No.24 09/10/01 19:39
ジュリ ( TSTfi )

>> 22 「こんなんまとめてらんねー」 15枚ほどに目を通した南津がグチをこぼす。 「もうさぁ、適当でいいだろ?」 「そうだね」 私も南津に同… 翌日の放課後。

「クラブ見学行かない?」

結実にそう誘われたけど、私は断った。

「ゴメン、私バイトしようと思ってるんだ」

もともと運動が不得意で、しかも面倒臭がりな私。

高校に入ってまでクラブに入る気なんてさらさらなかった。

結実には悪いけどね。

高校生になったら絶対バイトしようと決めていた。

そして、お金を貯めて一人暮らし…!


それが私の夢なんだから。
「そっかぁ、分かった。じゃあまた明日」

「うん、またね」

教室を出ていく結実を見送ったあと、私も立ち上がった。

教室内にはもう私しか残っていない。

どんなバイトがいいかな。
やっぱりケーキ屋さんとかがいいよねぇ。

だって、余りものとか貰えちゃったりするしさ。

駅前で求人広告貰って帰ろう、そんなことを考えながら教室の入口まで来たとき

「よぉ」

いきなり目の前に現れたのは、南津。

相変わらず背が高い。

私が口を開きかけた瞬間、足元にさっと風が吹いた。

一瞬、何が起こったか分からない私に

「今日はしましまか」


ニヤーッと笑う南津。

No.25 09/10/01 19:45
ジュリ ( TSTfi )

状況を把握した私の顔がみるみる熱くなる。

「この……変態!」

何なの!?

なんで毎回毎回会う度にスカートをめくられなきゃなんないわけ!?

「あほぴーなつ!」

ペロッと舌を出す南津を叩こうとしたものの、すっとかわされてしまった。

くそぅ!

「あんた、人のパンツ見んのが趣味なの?」

「いや?今日も水玉なのかなーっと思って」

「興味本意でスカートめくってんじゃないわよ!」

怒る私をまぁまぁとなだめる南津。

しかしその顔はいまだニヤケ顔。

「でもまぁよかったよ」

何が?

「お前が水玉柄以外もはいてることが分かって」

……。

「あいつは?お前がいつも一緒にいる友達」

「結実?クラブ見学行った」

まだ怒りがおさまらない私は素っ気ない返事を返す。
それに気付いてるのか、気付いていないのか

「お前は?いかないの?」

変わらずのんきに質問してくる。

「行かない」

「なんで?」

「バイトするから」

なんでいちいちあんたに説明しなきゃなんないのよ。

「ふーん」

しかも反応薄いし。

「じゃ、私帰るから」

こんなヤツの相手してる暇なんかないのよ。

早くケーキ屋さんでバイトするんだから。

南津から顔を背けて歩き出した私の背後から

「水玉ー」

No.26 09/10/01 19:50
ジュリ ( TSTfi )

またパンツの柄…

っていうか今日は水玉じゃないし。

しましまだし。

まだ何か用?

まぁ、最初っから用があって話しかけたようには見えないけど。

もはや怒る気にもなれず。

「何?」

振り向けば、にっこりと笑った南津がヒラヒラと手を振ってる。

「バイバイ、あかり」

「……ばいばい」

手を振り返す私の姿を確認すると、南津は行ってしまった。

あいつ、バイバイのためだけに私を引き止めたのか。

訳分からん。

最初は呆れていたけど、少しして気付いた。

今、南津、初めて私のこと朱里って呼んだ……。

なんか、嬉しい。

いや、
『きゃあっ!初めて名前で呼ばれたぁ!』
っていう少女マンガのような喜びじゃなくて、

素直に、仲良くなれた感じがするっていうか。

とにかく、恋愛感情ではない、絶対に。

早く帰ろう。

階段を一階まで降りたとき、私の目に入ったのは中庭。

昼休みはいちゃつくカップルで溢れる場所。

あの男の子……あきら君がいた、中庭。

一体、あそこには何があるんだろう。


気になった私は、ガラスのドアを開けて中に入った。

No.27 09/10/01 19:52
ジュリ ( TSTfi )

さすがにこの時間にはもう誰もいなかった。

夕日が差し込み、植えられた植物を照らす。

私は、彰君がいたあの場所まで足を運んだ。

彰君が立っていた位置に私も立ち止まり、彰君が見ていた方向に目を向ける。


「え……?」


そこにあったもの。
それは……

木、だった。

まだ小さな木。


でもそれは、ただの木じゃなかった。

その木の横に立てられた石碑に書かれた文字。

 『望月香里』


その名前は……紛れも無く……私の……


「おねー、ちゃん……」

No.28 09/10/01 19:57
ジュリ ( TSTfi )

「香里はね、がんなんだって」

ある日突然、お母さんはそう口にした。

それは、まだ去年の5月のことで、鮮明に思い出すことができる。

お姉ちゃんがいきなり学校で倒れて病院に運ばれた翌日、
薄暗いリビングでのことだった。


「がん……?」


最初は全く理解できなかった。

つい昨日まで普通に喋って、一緒に寝ていたお姉ちゃんが、がん……?


「で、でもさ、がんって今はもう治るんでしょ?だったらさ……」


暗い雰囲気の中で、わざと明るくそう言ったとき、お母さんが声をあげて泣き出した。


「おかあ、さん……?」


泣き崩れるお母さんの横で、今まで俯いていたお父さんが顔を上げた。


「朱里、よく聞いてくれ。……香里は…………


余命、半年なんだそうだ……」



ヨメイハントシ……?

No.29 09/10/01 20:05
ジュリ ( TSTfi )

「望月?」

ぼーっと突っ立っていた私は、かけられた声ではっと我に返った。

「やっぱり望月か」

「村上先生……」

生徒指導の村上先生。

入学式の日にトイレの場所を教えてもらったあのいかつい先生だ。

この先生、生徒からだいぶ人気があるらしい。

私も分かる気がする。

顔は怖いけど、すごく優しいってことが話していると伝わってくるから。

でも、なんで村上先生がここに……?

「お前……望月香里の妹、か?」

何も考えずに頷いた私。
頷いてから気付く。

この人、お姉ちゃんのことを知ってるの……?


「そうか、やっぱりそうだったか」

静かに微笑む村上先生。
「どうして……?」

「そのどうしては、どうして俺がここにいるのかっていう意味なのか、どうしてこの木があるのかってことなのかそれとも、どうして俺がお前の姉ちゃんのことを知ってるのかって意味なのか、どれだ?」


「…………全部」

ぽつりと呟いた私に、先生は、そうか全部か、と笑った。

No.30 09/10/01 20:12
ジュリ ( TSTfi )

「それじゃあ、ちょっと座るか」

先生が目線で近くのベンチを示す。

頷いてベンチに座ると、
先生も横に腰掛けて膝の上で手を組んだ。

「まず、どうして俺がここにいるかだけど……それは単純。
窓から誰かいるのが見えたから。望月かなぁと思ったらやっぱりそうだった」

「……」

無言で先生と目を合わせると、にっこりと微笑んでくれた。

「次はこの木のことだな。これはな、お前のお姉ちゃんが植えて欲しいって言ったんだ。

私がこの学校の生徒だった証が欲しいんだって」

村上先生は、遠くを見つめて言った。

証……

この木は、お姉ちゃんが桐丘高校の生徒だった証で、お姉ちゃんが生きていた証でもあるんだ。

そう思うと、鼻の奥がつんと痛かった。

「これは何の木か分かるか?」

先生の問いに、分かんないと首を振る。

「これは梅の木だ。なんで梅の木だと思う?」

また首を振る私に、にやっと笑って先生は答えを教えてくれた。

「梅干しが好きなんだってよ、お前の姉ちゃんは」

そんな理由で……?

なんか、花言葉とか、
もっと深い意味があると思ってたから、拍子抜けした。

No.31 09/10/01 20:15
ジュリ ( TSTfi )

……でもたしかに、お姉ちゃんは梅干しが好きだった。

コンビニでおにぎり買うときは絶対梅干しだったし。

梅干しが好きだから梅の木っていう発想が、お姉ちゃんらしい。

「次は、どうして俺がお前の姉ちゃんのことを知ってるのか、だな。
俺はな、あいつの担任だったんだ」

「お姉ちゃんの担任……」

「あぁ。2年B組の担任だった。あいつから、妹がいるって話しは聞いたことがあったんだ。

まさかその妹がこの学校に入学していたとは知らなかったけどな」

村上先生はにやりと笑った。

「……」

「新入生に望月って名前の生徒がいるって聞いてたからもしかしたら、と思ってたんだが、入学式の日にお前を見て確信した。絶対に望月香里の妹だと思った」

No.32 09/10/01 20:19
ジュリ ( TSTfi )

「……どうしてですか?」

たっぷりと間をあけた後、


「お前とお姉ちゃん、目がそっくりだ」

久しぶりに言われたその言葉。

きれいな顔立ちをしたお姉ちゃんと、童顔の私だけど
大きな目だけは似ていると皆から言われた。

お姉ちゃんが大好きだった私は、それを言われるのが何よりも嬉しかった。


また涙がこぼれそうになって、きつく目を閉じた。

そんな私に気を利かしてくれたのか、先生は腰を浮かせて

「じゃあそろそろ俺は行くよ。またなんかあったら俺のとこに来い」


頼もしい言葉を残して、行ってしまった。

先生が中庭から去った後、一人ベンチに座り、俯いていた私。

顔を上げて目の前にある木を見ることができなかった。

No.33 09/10/01 20:29
ジュリ ( TSTfi )

どれぐらいそうしていたんだろう。

「よっ」

「え……?」

いきなり私の隣に腰掛けた人物。

それは……

「南津……」

顔を上げた私の顔を見て、南津の笑った顔が戸惑った表情へと早変わりした。

「朱里?お前……」

「なに?」


「なんでそんな……


泣きそうな顔してんだよ」


そっと、南津の右手が私の左頬に触れた。

温かな、南津の手。

その手が触れた途端、

私の目に溜まっていた涙が一気に溢れ出す。

「お、おいっ」

「……ごめん」


俯く私の頭に、南津は優しく手を置いて


「どうした?」


聞いたことのない、柔らかな声を響かせる。

その声になんだか安心した私は、ぽつりぽつりと話し出した。

お姉ちゃんのこと、木のこと。



「自分でも、なんで泣いちゃったかよく分かんないんだよね」

全て話し終わったとき、涙は止まっていた。

たぶん目は真っ赤。

「すっきりしたか?」

「うん」

「そっか。それはよかった。じゃあな」

さっと立ち上がってそのまま行ってしまおうとする南津。

今気付いたけど、南津は体操着姿。

たぶんどこかのクラブ見学に行くんだろう。

No.34 09/10/01 20:36
ジュリ ( TSTfi )

「な、南津っ」

呼び止めると、南津は振り向き、座ったままの私の目の前にしゃがみ込む。

そして次の瞬間、
私は南津の手によってクイッと顎を捕らえられていた。

南津の顔が近くなる。


「なに? まだ俺と一緒にいたいの?」

「っ……!」

自然と鼓動が速くなる。

顔が熱い。

硬直してしまった私を、しばらくじーっと見つめていた南津は、いきなり吹き出した。

「お前、赤すぎ」

「だ、だって……!」

捕まっていた顎にはまだ感触が残っていて、心臓も暴れっぱなし。

「お前が呼び止めるから、ちょっとからかっただけじゃねーかよ」

からかっただけって……

心臓バックバクだったんですけど!

「このアホぴーなつ!」

「あぁ!?」

「私はねぇ、あんたみたいに異性に対する免疫がないの!分かる!?
そりゃあ南津はモテるからさ、今まで女の子といーっぱい付き合ってきて、慣れてるのかもしんないけど、私は慣れてないんだもん」

さっきまで泣いてたのが嘘みたいに怒る私に、

南津はふと真顔になる。

「悪かった。だってお前がさぁ……


可愛かったから」

南津の色っぽい声と吐息が耳にかかって、背中をぞくっとしたものが走り抜けた。

No.35 09/10/01 20:40
ジュリ ( TSTfi )

「……南津のばか!もうさっさとクラブ行けば!」

私はそう言い残して中庭を出た。

頭に血が上っているのは、怒ってるせいと、さっきの南津の行動のせい。

南津といると、からかわれてばっかり。

体のほてりがやっと冷めたのは靴を履きかえて校門をくぐった頃。


冷静になったら、後悔した。

南津にちゃんとお礼言わなきゃいけなかったのに。

……やってしまった。

明日ちゃんとありがとうって言おう。

そんなことを考えながら、私は駅前で無料求人情報誌をゲットして家に帰った。

No.36 09/10/01 20:51
ジュリ ( TSTfi )

「よ、あかり!」

「あ、南津」

翌日、教室への階段を上っていたところで、
南津に背後から声をかけられた。

そのまま南津は、私の横を歩きだす。

「南津昨日は……ぎゃっ!」

南津の手の動きとともに私のスカートが大きくめくれる。

幸い、周りには誰もいない。

「今日はチェックか」

「……」

叩いてやろうかと思ったけど、今はぐっとこらえて。

「き、昨日はありがと」

「え?」

私の思ってもみなかった反応に、南津のニヤケ顔が揺らぐ。


「ちゃんとお礼言ってなかったから……だから、ありがと」

きょとんとしていた南津は
「よく言えました」

すぐにまたニヤケ顔に戻って私の頭をクシャクシャ撫でた。

なんかその顔ムカツクけど、とりあえず昨日のお礼はちゃんと言った。

だから私は、
横に並んで階段を上る南津の横腹を思いっりきりつねった。

No.37 09/10/05 18:48
ジュリ ( TSTfi )

「いって!何してんだよ」

「何って……仕返し」

「仕返しぃ?」

「また私のパンツ見たから。いい加減やめてよね!
スカートめくり。
小学生じゃあるましい」


「小学生、ねぇ」

声を出すひまも無く私の腰には南津の腕がまわされていて、
背中は壁に押し付けられた状態になっていた。

「俺、高校生なんだよね」

「しし、知ってるよそんなこと!南津近い……っ」

必死に南津の体を押し返すけど、びくともしなくて。
「小学生がこんなことする?」

ついには南津のもう片方の手が頬に添えられて真っすぐ前を向かされる。

「ちょっ、南津……!」

なんでこんな状態になってるわけ……!?

パニック状態に陥ったとき。

「朝っぱらからイチャついてんじゃねーよ」

誰かが南津の頭にバコッとかばんをヒットさせた。

「痛てっ!」

ようやく私から南津の体が剥がれる。

私は、感謝の思いを精一杯込めた眼差しで、恩人の正体を確かめた。

しかし、その瞬間、やっと下がってきた頭の血が、
また一気に逆流する。


だって、その人は

「何すんだよ彰」


彰君だったから。

No.38 09/10/05 21:20
ジュリ ( TSTfi )

「朝からそんなもん見たくねーんだよ」

あくびをした彰君と、
ぱっちりと目が合う。

「っ……!」

「お前……」

「はい……?」

なかなか目を反らしてくれない彰君。

先に目線を外したのは私。
「どうもありがとうございました!」

頭を下げて私は一人階段を駆け上がった。

「あーびっくりした……」

教室に入ってほっと息をつく。

朝からこんなんじゃ心臓もたないって……

「おはよ、朱里。どうしたの?顔赤いよ?」

私のもとに寄ってきた心配そうな顔の結実に、
大丈夫だと笑いかける。

そのとき、
クラス内がざわついた。

ざわつきの原因は、女子生徒。

そして、どうしてざわついたのかというと、
あいつが入ってきたから。

『川瀬南津』が。

南津が入ってくると、毎日こんな感じ。

悔しいけど、イケメンの南津。

そしてその評判はもう学校中に広がっている。

この前、上級生の女子にも話し掛けられてたしね。

クラスの女子と挨拶を交わしながら悠々と教室内を歩く南津。

ちなみに
『おはよう』と言ったあとにとびきりの甘い笑顔で微笑むのが南津流の挨拶。

そして今日も、
その虜になる女の子たち。

No.39 09/10/05 21:32
ジュリ ( TSTfi )

私と結実にも「おはよう」
の言葉と甘い笑顔が向けられた。

でも、私は見逃さなかった。

一瞬だけ、私に向かって南津がニヤリと笑ったことを。

私はキッと睨み返すものの、完ぺきに無視。

しかも南津見たらさっきのこと思い出しちゃったし。

「はぁ……」

「やっぱり何かあったの?」

思わず出てしまったため息に、
結実が私の顔を覗き込む。

「ううん。ちょっと最近寝不足でさ」

ホントは毎日熟睡だけど、南津とのことを言えなくて、うそをついた。

「でも大丈夫だから、気にしないで」

とそのとき。

「望月さーん」

聞き慣れない呼び名で私を呼び、こっちに向かってくるのは……

南津だ。

ニコニコ笑顔を顔に貼り付けてこっちに来るヤツに、冷たい視線を向ける。

「朱里に何の用かな?」

「知らないよ」

横にいる結実は少し興奮気味。

周りの女子も、
こっちをチラチラ。

そしてとうとう南津が目の前に。

「望月さん」

「なんですか」

その呼び方、うっとうしい。

「これ、落としてたよ」

そう言って私に差し出された南津の手に握られていたのは……


「携帯。望月さんのだよね?」

No.40 09/10/05 21:37
ジュリ ( TSTfi )

「な、なんで?」

制服の内ポケットに手を突っ込んでみると、そこにあるはずの携帯がなくて。

目の前のそれが私のものだということが証明される。
「落としてたよ。階段に」

『階段』の部分だけ囁くように言う南津の手から携帯をもぎ取る。

赤色の携帯は確かに私のものだった。

「もう落とさないようにね」

そのときの南津の笑顔は、なぜか意味ありげな笑みに見えた。

No.41 09/10/05 22:57
ジュリ ( TSTfi )

南津の意味深な笑みの意味が分かったのは、
その日の放課後。

今日もクラブ見学に行く結実と別れ、学校を出ようと葉桜になりかけの桜並木を校門に向かって歩いていたとき。

ポケットの中の携帯が震えた。

取り出して画面を見ると、知らない番号からの電話。

誰か分からない電話はとらない方がいい。

そのまま放置していると、しばらくして電話は切れた。

電話をしまおうとしたところでまたしても着信が。

画面を確認すると、どうやらさっきと同じ人。

誰だろう。

イタズラかな。

出るか出ないか迷っていたとき。

「もしもーし」

チャリンチャリン、
と自転車のベルを鳴らし、背後からやって来たのは、

南津……


とその後ろに跨がった
彰君……!

「もしもーし」

携帯を耳に当てている南津。

私の手の中でいまだに震えている携帯電話。

「え……」

もしかして、
もしかしちゃう?

恐る恐る通話ボタンを押して、耳に当てると

「よぉ、水玉」

電話の向こうから、南津の口の動きと少しずれた、南津の声。


「……なんで!?」

No.42 09/10/05 23:03
ジュリ ( TSTfi )

携帯と南津を見比べる私の前に、
自転車を停める南津、

と後ろの彰君。

その彰君を前にして、ドキドキしながらも、必死に考えて、気付いた。

「階段……」

「当ったりー」

今朝、階段で私が携帯を落としたとき。

そのときに勝手に番号を登録したらしい。


いやちょっと待って……。

「南津が取った……?」

「それも当たりー。
お前がパニクってる隙に」

お前はすりか!

人の携帯勝手に取って、
しかも勝手に登録するなんて……

怒りを抑えられなくて、
拳を握っていると、

ふと彰君の視線に気付く。

穴があくほどじっと見つめられ、血圧は急上昇。


「お前、もしかして……」

「な、なんでしょう?」

「…………いや、やっぱいい……」

そう呟いて彰君は私から目を反らす。

 ?

なんだったんだろう。

そしてまた、彰君が口を開く。


「なぁ……なんで水玉?」

え……?

そこ、ですか?

南津がぷっと吹き出す。

「あぁ、それはぁ……」

「言わなくていいから!」

必死に南津を止めるも、

「こいつ、水玉パンツはいてるから」

あっさりとバラされた。

No.43 09/10/05 23:07
ジュリ ( TSTfi )

「そうなんだ」

楽しそうに笑う彰君。

「ち、違うの彰君。違うこともないけど、違うのっ」

「はは、どーいう意味?それ」

なおも笑い続ける彰君。

もう恥ずかし過ぎるっ。

「大体、パンツの柄を知ってるって、どーゆう関係なんだよ。もしかしてお前ら……」

「違ーうっ!!
ほんっとそういうのじゃないから!」

「しかも、今日の朝も……イチャついてたみたいだし?」

「だっ、だからあれは南津がっ!彰君、ホントにホントに違うから!誤解だから!」

「お前、必死過ぎんだろ」

私と彰君のやり取りを、
ハンドルに肘をつきながら見ていた南津が口をはさむ。

「もとはといえば南津のせいなんだからね!?
南津が水玉とか言うから……」

彰君の前でかかなくていい恥かいたじゃんっ!

「だってホントのことだろ?」

「いちいち言わなくていいの!」


今気付いたけど、周りの生徒、特に女子生徒の視線がかなり痛い。

「……もう、私帰るから。じゃあね」

せっかく彰君と喋れるチャンスだったのに。

南津のせいでめちゃめちゃだ。

No.44 09/10/05 23:11
ジュリ ( TSTfi )

チャリンコ二人組に背を向けて歩き出した私の横に、
しつこく自転車が並んできた。

「なぁ、水玉ー」

「何?ぴーなつ」


「……。駅まで送ってやろーか?」

「大丈夫。
一人で帰れるから」

断ったのに、
なおも着いてくる。

「なんで断んの?イケメンが送ってやるっつってんだから素直に送られとけよ」

ナルシスト全開の南津を無視して歩き続ける。

しかし、
私は次の南津の言葉で足を止めることになる。

「彰も電車なんだけどなー」

「え?」

「なぁ、彰?」

「あ?……あぁ、うん。〇〇線」

私と同じ路線!

ということは。

このまま駅まで一緒に行けば彰君と同じ電車に乗って帰れる……!

「送ってあげましょーか?」

「……どうしてもっていうなら……いいよ」

「うっわ、お前分かりやす過ぎんだろ!」

「うるさいっ!」

おちょくる南津の脇腹を
ギューッとつねる。

「いってー!」

「撫でたんだよ」

南津の口調を真似てみる。
がしかし。

「痛っ!」

デコピンをされ、からかったことを後悔したのだった。

No.45 09/10/06 18:10
ジュリ ( TSTfi )

駅前。

結局送ってもらった私。

周りの視線が怖かったけど、彰君と帰れるのなら我慢だ。

駅までの道のりは、
ずっと南津が彰君と喋ってたから、全然彰君との会話もなかった。

でも!

今からは、彰君と二人で電車に乗る……!

私が降りる駅までの5駅分、彰君と喋り放題っ。

考えただけでも顔がニヤケちゃう。

実際、

「何ニヤケてんだよ」

南津にからかわれた。

「いいじゃん、べつにー」

気分ルンルンの私は、
彰君に続いて改札を通る。
「んじゃ、南津……え!?」

振り返った私はびっくり。

どうして……

どうして南津も改札も通っているんだろうか?

「俺、今日彰んちに遊びに行くから」

さらっと言う南津。

「そんなの聞いてないんですけど」

「言ってねーもん」

…………

「彰と二人だと思ってただろ。残念でした」


このあほぴーなつ!

No.46 09/10/06 18:31
ジュリ ( TSTfi )

南津を恨めしげに睨みながらも電車に乗り込むと、
ぽっかりと長椅子の端の席が空いている。
2人分。

気付いたときにはもう遅かった。

ちゃっかりと座っている彰君と南津。

なんて素早い動き……。

「ねぇ」

囁いて南津のシャツの袖を引っ張る。

「なんだよ?」

私が立っているため、
上目づかいになる南津に
一瞬だけドキッとして、
変な間があく。

「……替わって」

彰君に聞こえないように、南津の得意な口パクで。

南津はしばらく私を見つめた後、

「やだ」

「レディーファーストって知らないの?」

「なに、それ?」

知ってるくせに。

「いじわる。もういいよ」

吊り革をもう一度握り直して彰君に話しかけようとしたとき、
彰君とばっちり目が合ったものの、ぱっと反らされてしまった。

なんか、さっきからかなり見られてる気がするのは……自意識過剰?

No.47 09/10/06 19:25
ジュリ ( TSTfi )

「彰君?」

「んー?」

彰君の上目づかい。

南津以上にヤバイ……

ほんとは、あのことを聞きたい。

入学式の日、
どうしてお姉ちゃんのあの木の前にいたのかを。

でも、それはいつか、二人きりになれたときに聞こう。

「彰君は……何部に入るの?」

「俺?俺はクラブ入んない」

「残念だったな。彰のマネージャーできなくて」

「そんなつもりで聞いたんじゃないもん。私バイトするから」

「あぁ、そうだったな」

そう言いながらも、
彰君のマネージャーできるんだったらバイト諦めてもいいかな、なんて不覚にも一瞬考えてしまった私。

「ちなみに俺はサッカーなんだけど、どう?」

「どうって……何が?」

「マネージャー」

それってつまり、
サッカー部のマネージャーをやらないかってこと?

「お断り。どうせ私がしなくてもいっぱい入ってくんでしょ」

実際、私のクラスでも
南津がサッカー部に入ると知ってサッカー部のマネージャーをすると言ってる子を何人か見た。

「ま、そうなんだけど」

嫌みな男だ。

とそのとき。

「あれ、南津君じゃない?」

「うわ、そうだよ!
南津くーんっ」

No.48 09/10/06 19:31
ジュリ ( TSTfi )

ブンブンとこちらに手を振っているのは、超ミニスカのギャル二人組。

他校のブレザーを着ている。

目のまわりが真っ黒けっけだ。

「こんなとこで会うなんて奇跡じゃーん」

立っている人たちの間をぬってこっちに来るギャル。

南津はすっと立ち上がって吊り革につかまり、

「久しぶり」

甘ーいスマイルを向ける。
私はというと、
とっさに他人のふり。

そして、目を反らした先にあったのは……


手すりに頭をもたげてすやすやと眠る彰君の寝顔。

ドキン―

心臓が10メートルほど跳ね上がった……気がした。

できることなら手すりになりたい。

そう思うほどあどけないその寝顔に私の目はくぎづけになる。

「んじゃ、またねー南津君」
「バイバイ南津くーん」

ギャルたちが次の駅で降りるまで、彰君の寝顔を見つめたまま固まっていた私。

「おーい、朱里ー?」

すっ……

と南津の手が触れたのは、私の頬。

「ひっ……」

口から変な声がもれた。

「おわ、彰寝てんじゃん。で、お前は彰に見とれてたってわけか」

「……悪い?」

熱をもった頬をこすりながら、南津をにらみつける。

No.49 09/10/06 19:57
ジュリ ( TSTfi )

「べっつにー」

そう言って南津はまた席に座ると、ツンツン、
と彰君のほっぺを人差し指でつつき始めた。

「だめだよ、彰君起きちゃうじゃん」

「大丈夫。こいつ絶対ぇ起きないから」

その南津の言葉通り、全く起きる気配のない彰君。

南津がつねろうがこそばそうが、ピクリともしない。
「な?」

「うん……すごいね」

結局、私が降りる駅に着いても眠り続けていた彰君。

バイバイをいいたかったけど、あんなに気持ちよさそうに寝ているのに起こすのは悪いから、

「バイバイ」

と南津に言うと、南津は彰君の右手を持ち上げて手を振ってくれた。

その日の夜、私は彰君の寝顔を思い出し、ニヤケながら眠りについたのだった。

No.50 09/10/06 20:02
ジュリ ( TSTfi )

『仲良し合宿』

それは、桐丘高校の1年が親睦を深めるために、

毎年4月から5にかけて行われる二泊三日のお泊り会。

今年は4月の終わりにあるその仲良し合宿が、
二週間後に迫ったある日。

学級代表である私は、
各クラスの学級代表が集まる集会に
南津と共に放課後参加していた。

場所はA組の教室。

窓の外では激しい雨が降っている。

忌ま忌ましい湿気のせいで寝癖が直らなかった私の前髪は、ピンで上げられていた。

B組の学級代表であり委員長でもある杉本君が前に立って説明を始めた。

「みんなには、行き帰りのバスの席と、部屋割りをクラスごとに決めて欲しい。

そんで、それを書いた紙をあさってまでに俺に提出。
詳しいことはこのプリント見て」

各クラスに1枚のプリントは、南津が持っている。

しかも、その上に顔をのせて寝てる。

そっと抜き取ろうとしても、なかなか抜けない。

無理矢理引っ張ると、プリントと一緒に顔も動いて、南津が起きた。

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