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しあわせいろ

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モモンガ( PZ9M )
10/03/14 06:39(更新日時)

私の前には広がる風景があります


目には見えないけどそれは沢山の線となり形となり私のまぶたの裏で形になります


それが私にとって当たり前の風景だった


ずっとこのまま



この当たり前の風景の中で生きていくのだと思っていたよ



あなたと会うまでは




花の色も
海の色も
空の高さも



みんな知らなかった


音が香りが全てが指先を通って私に世界を



光を見せてくれた




目に見える光はどんな色ですか?




私の心の中にはいつも暖かい色があります



ねぇ




幸せってどんな色で描けばいいのかな…

No.1162024 09/08/31 02:16(スレ作成日時)

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No.1 09/08/31 02:34
モモンガ ( PZ9M )

またいつもの毎日が始まる


目を開けてもまぶたを閉じても私には何も映らない


ただ薄い明かりの中を


耳で
指で
体で

感じながらしか生きていくことができない


それでも太陽は暖かいし


雨のしずくは冷たい


風は髪をなぞり


雪は指先を冷やす


ねぇ



目に見える世界はどんな色ですか?



私はどんな人間なんだろう…




高校の卒業式を終えて早いもので季節は夏へと変化しているようで…

私はだんだん袖が短くなったシャツのボタンをいつものようにはめていた


朝になると日射しを体で感じるように私の二階の部屋には小さい頃からカ―テンがついていない



『はぁ…今日も暑いなぁ』


ベッドの上にあったうちわをあおっていると階段を上がる足音が聞こえてきた


多分お母さんの足音だ


(カチャリ)



『ことり?もう起きてる?お母さんもお父さんも仕事に行くからいつものように下でご飯食べてね



9時の位置に牛乳で3時の位置に焼いたパンがあるからね


わかった?』



『もぅわかってるよそれよりどう?



これって昨日お母さんがかってきてくれた新しいシャツだよね

おかしくないかな?』

No.2 09/08/31 12:23
りん ( ♀ wGqSh )

 ことりは軽く腕を横に広げてお母さんに微笑んで見せた


『よく似合ってるわよ
うすい水色と白の細いストライプが、恥ずかしがり屋の空と雲って感じよ』


お母さんはいつも健常者がイメージするように
優しく説明してくれる


でも


わたしには
空の色がわからない


雲の色がわからない


どんなに想像をしてみても


どうしてもわからない…




小さい頃はわたしがわかりやすいように話してくれた


爽やかな風の色とか
ひんやりした風の色とか


お母さんは、そんな話し方をしてくれた


でも未来を思った時、このままではいけないと考えた母は、表現の方法を変えた


この先のことりを想って
社会で一般的な表現にかえたのである――


それでもお母さんは優しかった

No.3 09/08/31 17:40
ちと ( ♀ QTTJh )

『そっか…ありがとうお母さん』

服は殆んどお母さんが買ってくれている


シャツの裾を軽く引っ張ってみる

見えないけど、みてみる

似合ってるのか本当は分からない
けれど似合っていると言われれば素直に嬉しい



『ねぇことり 今日はいい天気よ』

再びうちわをいじっていた私はギクッと動きを止めた

お母さんがじっと私の顔を見ている…気がする

『服がそんなに似合ってるんだから外にで』
『お母さん仕事は?時間大丈夫!?』


重ねるように慌ててお母さんの言葉を遮った

(トントントン)

いっけないとお母さんは急いで階段を降りて行く


行ってらっしゃいと笑顔で手を振る私は、階下に降りていくお母さんの音を聞きながら、ベッドに寝転んだ

外に出たくない


ちゃんとご飯食べるのよー 遠くでお母さんの声と扉が閉まる音が聞こえる

暫くして、車のエンジン音とともにお母さんは仕事場へ出かけて行った

No.4 09/08/31 18:44
砂の城 ( 30代 ♀ 5ECQh )

いつからだろう…
私の気持ちから、外出と言う言葉が消えたのは…

外出したくない…
怖い…
何が怖い?
見えない何もかもが…

私の世界はいつも僅かな光しかない…。
「さてと…、ご飯食べなきゃお母さんに、心配かけちゃうな。」
いつものように朝食を取る


私の毎日の始まり、何もない毎日。


両親が仕事から帰るまで、ことりは毎日家の中で過ごす。

両親はことりの引きこもりを何とかしたいと思っていた。

No.5 09/08/31 23:00
ピュアホワイト ( sHpfi )

>> 4 夕方になり、今まで遊んでた子供達の声がきこえなくなる。

あっ、お母さんにお花の鉢植えにお水をあげるように言われてたんだ。


慣れた手つきで、ハーブに水をあげることり。


庭には温室があり、色々な花が咲いている。


前はお父さん、お母さんと三人で温室にいって皆で話したっけ…

(回想)三人の笑い声がきこえる。

ピンポーン

その時、ただいまと母が帰っててくる。


お帰りなさい。


ことり、今日はお母さん、あなたに大事な話しがあるの。

No.6 09/09/01 08:07
モモンガ ( PZ9M )

あたしたちはリビングに移動すると横ならびに座った


お母さんはあたしが高校を卒業する少し前から結婚する前に勤めていた会社で仕事をし始めた


お父さんも仕事をしているから三人揃うことは今では難しくなっていた



それでもお母さんは積極的にあたしに話しかけたり外に連れ出そうとやっきになっていた



それはあたしが外に出掛けなくなった事が原因だろう


目にはみえないが二人の心配が声を通じて伝わってくる



でも正直言って今のあたしにはどうでもよかった



幼稚園や小学校では普段通りにできていたことも中学校や高校ではそうはいかない事が身にしみてわかったからだ



友達や先生もいるしそれなりに社会にだって理解はあるつもりだよ



でも杖をついて近所の店に行くのだって今のあたしには…



怖い



それは点字ブロックに座り込む人


通れない道幅


遮る自転車


なにより一人では買い物だってできやしない


いつも側に『誰か』がいて


その『誰か』があたしの目になってくれる


つまりあたしは半人前


一人じゃなんにもできないいわゆる『お荷物』なのだ



それが成長するにつれて痛いほどよくわかるのだ

No.7 09/09/01 15:36
りん ( ♀ wGqSh )

「お母さんね、ことりの事を理解しているつもりよ
でもそれは《つもり》であって、本当に理解しているとは違うの」



お母さんは続けた。

「お母さんもね学生の頃、母親に『どうしてわたしの気持ちをわかってくれないの?』って聞いた事があるの。
そしたら『どんなに頑張ってわかろうとしたって何も話してくれなきゃわからないわ』っていわれたわ」


ことりは《心配》して欲しいわけでもなく、《可哀相》と思われたいわけでもない


だから……


あまり話したくなかった


お父さんやお母さんの心配をそういうふうに感じたことりは、二人をうとましく思っていた……



ことりのほうこそ、両親をわかった《つもり》になっていたのだ……




(……そんな事どうでもいい、ほっといてなんて言ったらお母さん悲しむかな?)

No.8 09/09/01 17:12
ちと ( ♀ QTTJh )

『ほっといてって思ってる?』


私の心を見透かすようにお母さんは尋ねてきた



『…………そんなこと…ないよ』

言葉とは裏腹に顔をそらせてしまう

しまった!!これじゃあ肯定してるのと変わらない

もう一度顔をあげ
『そんなことない心配してくれてありがとう』と笑顔で言ってみた



『ことり』


隣に座る私の手をお母さんはギュッと握ってきた


『お母さん…?』


お母さんの表情が分からない

このまま
お母さんに見捨てられてしまうのだろうか

そんなわけもわからない不安が突然沸き起こる


『…お母さん?』

もう一度伺うように笑って見せる


『もうずっとことりの笑った顔見てないわ』
思いもよらないお母さんの言葉に私の体がカァっと熱くなった


椅子から立ち上がりお母さんの手を振り払った拍子にバランスを崩す


一瞬自分がどこにいるのか分からなくなる

お母さんの手をかりて私は立ち上がるしかなかった


あぁやっぱり、私は一人じゃ何も出来ない


『ことり、明日から…』

お母さんの声を背に出来る限りの速さで私は階段を上った


どうして
どうして
どうして


上手く笑えてると思ったのに

No.9 09/09/01 22:56
砂の城 ( 30代 ♀ 5ECQh )

部屋に入りドアを閉める。
(トントン)ドアをノックする音がする。

『ことり、実はねお父さんと相談して…』
お母さんの言葉を遮るように、私は
『私を見捨てる相談しているの?どうぞ見捨てて』と荒っぽい涙声でお母さんに言う…

『ことり…、お母さんもお父さんも貴女が産まれてから一度も、そんなこと考えたことないわよ…』穏やかにでも悲しそうにお母さんは言った…。
お母さんは、穏やかに話を続けた。
『ことり、実はね、明日からボランティアの人が来てくれる事になったの』

『ボランティア?何故?』

『貴女に以前のように、青空の下で太陽の様に笑って欲しいから…』そうお母さんは言った。

私は何も言えなかった…と言うよりあまりにも突然で何も言葉が浮かばなかった。

でも、両親の気持ちは痛いほど伝わった。

ごめんなさい、お母さん…お父さん…心配かけて。ことりは、心の中でそう謝った。

No.10 09/09/02 00:43
ピュアホワイト ( sHpfi )

>> 9 ベットに座ると、閉じた眼から涙が流れる。


母に心配させないように、声をころすが、涙があふれてとまらなかった。


私はどうして生まれてきたんだろう…


小さい時は当たり前のように思ってた。


お父さんとお母さんの顔に触れて頬ずりするのが大好きだった。

大きくなるにつれて、どんなに目がみえたらしあわせだろうと切なく思った。

私は
自分の顔さえしらない。


暗闇の中で、
どんなに孤独か…

泣き疲れて眠ってしまうことり。


チッ、チッ。
小鳥のさえずりで
目がさめる。

ベットの中で
ぼーっと、考えている。


ボランティアの人って…

どんな人なんだろう…

No.11 09/09/02 01:26
モモンガ ( PZ9M )

目が覚めるともうすでにお母さん達の姿はなかった



リビングのテ―ブルの上にはお母さんからの手紙といつものように常温の牛乳と香ばしい香りのパンが置いてあった



お母さんからの手紙は録音テ―プに入っている



昔から伝えたい事があるとテ―ブルの上に小さなレコーダーが置かれていた



わかりやすいように再生のところには丸いシ―ルがはられている



椅子をひいて座ると私はパジャマのままそれを押した



『ことりおはよう


昨日はなかなか眠れなかったみたいね



眠ったのは朝方みたいだったのでおこさずに出掛けるわね



本当はことりとお母さんとお父さんとしっかり話し合ってから決めるべきだったのかもしれないけれど



以前からたまに来ていただいていたガイドヘルパーの斎藤さん覚えているかしら



最後にあったのはことりが高校に入る少し前よね




その斎藤さんの活動してみえるNPOの無償ボランティアにね




ことりと同い年の子が入ったんだって



それでね毎週月曜日と金曜日にね




ことりの話し相手も含めてガイドボランティアをお願いすることにしたの』

No.12 09/09/02 01:35
モモンガ ( PZ9M )

『お母さんがまた勝手に…ってことりは怒るかしらね




お父さんにも昨日怒られちゃったわ…



ことりの気持ちが一番大切だろう…って



だけどね



お母さんまたことりに笑ってほしいの



たくさんのことりの知らない世界を見せてあげたい



ことり…



ごめんなさいね




また帰ったら話聞くからまた感想聞かせてね




ボランティアの子は加藤望ちゃんよ



あなたと同じ19歳




お昼過ぎに斎藤さんとくるからちゃんとご挨拶してね



じゃあ行ってきます』



すべてのテ―プを聞いたあとあたしは牛乳を一口くちに入れた




お母さんは何もわかっていない




同い年だから心が近づくわけでも



女の子だから親近感がでるわけでもないのに…




逆に気がついてしまうの



『彼女に見えてる世界とわたしの世界は全然違う



わたしは普通じゃない』って事に




もう誰にも迷惑はかけたくないのに



そう思っていた




不完全に産まれてしまった自分に生きる目的も



ましてや生きる意味なんかあるわけないと



そう思っていたんだ…

No.13 09/09/02 20:05
りん ( ♀ wGqSh )

ことりはテーブルの上にあるテレビのリモコンを手に取り、テレビをつけた。



そこから流れる音声で、
だいたいの時間を知ることができる。



何もしていないわたしに正確な時間は必要なかったが、テレビから流れる番組のテーマソングに耳を疑った。




お昼休みはウキウキ……


えっ?

おっ、お昼……?


ことりは急いで支度を始めようと立ち上がった時、両ももをテーブルにぶつけてしまった。


……イテテ
ことりはももをさすりながら部屋に着替えに戻った。



それから間もなく、玄関のチャイムがなった。


ことりは足取りも重く玄関へ向かい、ドアを開けると斉藤さんの明るい声がして、その後ろから



『初めまして、加藤です』と男性の声が……



ことりは事態を把握できずに黙り込んでしまった。

No.14 09/09/03 00:20
ちと ( ♀ QTTJh )

『あらあらあら』

黙りこんでしまった私に構わず斉藤さんは近づいて両腕に触れてきた

『ことりちゃん?大きくなって~』

『背も伸びたかしら?』

『可愛くなって~もう19だって?』


次から次へと喋りだす斉藤さんはその腕を嬉しそうにブンブン振っている



されるがままになりながら私は戸惑った顔をもうひとつの影に向けた



このひと……誰?



『斉藤さん斉藤さん困ってますよ』

斉藤さんの斜め後ろにいた黒い影が斉藤さんに話しかけた

別に困ってないよ

私は少しムッとして影をみた


私が困ってるのはむしろあなた


あ な た !

No.15 09/09/03 00:23
ちと ( ♀ QTTJh )

私は斉藤さんのことを良く覚えている

斉藤さんは私を赤ちゃんの頃から知っていると前にお母さんが言っていた

小さな頃から私を手伝ってくれて

運動会では一緒に泣いたり笑ったりしてくれた

自分の家族のことを楽しそうにはなしてくれる

優しい人

話すことが苦手な私は良くしゃべる斉藤さんといるのがとても居心地が良かった事を覚えている


『ごめんねことりちゃん』
『久しぶりでおばさん嬉しくて』

斉藤さんが照れながら恥ずかしそうに笑った

『この子はボランティアで入った新人の加藤望くん』

黒い大きな塊が一歩近づいてきた


私は一歩後ずさる


加藤…

…望?

どこかで聞いたような…?



カセットテープが巻き戻るように記憶が巡る


いや

カセットテープだ!


ボランティアの子は加藤望ちゃん

……同じ19歳

お母さんの言葉が頭の中で何度も再生されている


お とこ…?


・・・男!?


一生理解出来ないと思ってたけど

目の前が真っ暗になるっていう気持ちを私は初めて体感した

No.16 09/09/03 12:17
砂の城 ( 30代 ♀ 5ECQh )

>> 15 なんて、話せばいいのだろう…。
そう躊躇している私に…

『ほら、望くん、挨拶くらいしたら?』

斉藤さんが言う。

『あ、あの、加籐望です。宜しく…』



『あ、あの、あの…』ことりはどもる。

斉藤さんが

『あら、ことりちゃん照れてるの?』


『うん』そう言ったけど、違った高校を卒業してからお父さん以外の男の人に関わった事がなかった。


だから、正直怖かった。

No.17 09/09/03 14:26
モモンガ ( PZ9M )

『とりあえずあがらしてもらおうかな?
いいかな?』



そう言うと斎藤さんがあたしの指先に自分の指を合わせた



これは『私はここにいますよ』ってサイン



私達に突然手をだされてもわからない



ヘルパーの人はみんなそうやって指先を合わせる



そうやって腕に捕まって私達は歩いていく



守られながら




そう

いつも誰かに支えてもらわなければ生きていけないから




その時だった



『斎藤さん


大丈夫ですよ



この子ちゃんと一人でもやれますから



家の中まで手をかす必要はないですよ』


そう言って斎藤さんの手を遮った


『…だよね?


自分の事くらい自分でできるだろ?』



実際はそう思っているのに面と向かって言われると何故か腹がたつ



甘えたくなんかないのに




でもそんは風に


『できるだろう』



と言われた言葉にあたしは正直嬉しい反面とまどいを隠せなかった

No.18 09/09/03 14:51
モモンガ ( PZ9M )

リビングに上がると斎藤さんはあたしに何か飲まない?と聞いてきた




冷蔵庫に何があるか説明を受けた後に3つ麦茶が運ばれてきた



『はいどうぞ


氷が3つ入ってます

気を付けてね』




そう言うとプラスチックの大きめのカップをあたしの指先に運んだ





あたしはそれに口をつけずにテ―ブルにおき直した




短いため息をつくと右隣から男の子があたしに話かけた




『今日から毎週2日


ボランティアで話にきます加藤望です



福祉大学に通う一年生です



ことりちゃんとは同じ年なのでどうぞ宜しく』



あたしは彼の声のする方に軽く頭を下げた




別にしゃべり相手なんか要らないけど


目の前にいる斎藤さんの手前嫌な顔もできないよね



しばらく斎藤さんと昔の話や今の生活の確認などしたのち『次のお宅があるからまたね』と明るい笑顔で席をたった



『加藤くん


ことりちゃんを頼むわよ~



わからない事はなんでもことりちゃんに聞いてね』




加藤くんは斎藤さんを見送りに玄関までいそいだが


あたしは『そのままでいいからね』


とソファーに腰をかけたままだった

No.19 09/09/03 19:48
りん ( ♀ wGqSh )

斉藤さんを送り出した望は、『ことりちゃんと少し話がしたいな』
そういうとリビングのテーブルに向かい合う形で座った。



ことりが緊張した面持ちで黙ってると、望が話を切り出した。



『ことりちゃんは自分が半人前だとか、お荷物だとか、不幸だとか、そんな事を考えたりするのかな?』



望の言葉にドキッとしたことりは、すぐには答えられずにいると
望から予想外の言葉がでてきた



『僕は視覚や聴覚が不自由なひとを、健常者と比べて半人前だとか不幸だなんて思ってないんだ』



その言葉を聞いたことりは、つい感情的になり
『あなたにわたしの気持ちなんてわからないわ
目が見えないことが……どれだけ不安で……
どれだけ怖くて……

そして、どれだけ不幸かなんて……あなたにはわからないのよっ!』



望は静かに答えた。



『そうだね……
僕にはわからない。

でも、君にも僕たち健常者の気持ちはわからないだろ?
見たくもないモノや見たくもない光景を見てしまう不幸を』



望はそういうと、点字に起こした新聞記事を取り出した。

No.20 09/09/03 21:18
りん ( ♀ wGqSh )

自殺者数過去最悪のペース――

いじめが原因――
伸び率が際立つ。



『健常者だって不幸だと思う人が多いんだよ。
目が見えないのは不自由ではあるかも知れない……
でも、それが不幸だとは思わないんだ
そんな考え方はおかしいかな……』



ことりはこんな考え方をする人にあったことがなかったので、ある意味では新鮮で、望に対する気持ちが変わっていった……

No.21 09/09/03 23:37
ピュアホワイト ( sHpfi )

呆然とすることり


今までお父さんにも言われたことがない


だけど、どうしてなの?


心に熱いものがこみあげてくる


私は何をしていたんだろう?

ことりは今までの自分が恥ずかしくなった


その様子をみていた望はゆっくり話しだした


すぐにとは言わない


ことりさんの気持ちが変わるまでまつよ


決して不安にはさせない


僕が君の目になるよ


ことりの暗闇に光がさした



守られている気さえした

No.22 09/09/04 10:03
ちと ( ♀ QTTJh )

>> 21 その気持ちを私はすぐに打ち消した


私に光なんて…ない


ずっとずっと暗闇の中で生きてきたの


私はひとり


私の気持ちなんて誰もわからない





でも…





ひとりなのはみんなも同じ?


みんな苦しいの?

打ち消せない思いも残る


私は自分の2つの感情に戸惑っていた


初めて芽生えた気持ち

健常者

いや

自分以外の誰かのことを考えるのは初めてのことかもしれない


いつも
誰かから見た自分のこと

何かをしてもらう自分のこと


自分のことばかり考えていた



『受け身なことは悪いことじゃないよ』

『感謝することも大切だ』


けど
…と加藤望が話し続ける

『貰ってばかりの人生なんて楽しくないだろ?』


うつ向いていた私は顔をあげた

『ねぇ…楽しいって何?』

『本当にわからないんだよ』
私は弱々しく呟く


高校を卒業して

やりたいこともなくて
ただ何となく毎日を過ごして

未来も何も見えなくて
このままじゃいけないってわかってるけど

具体的なことも思い浮かばずに
立ち尽くしてしまう毎日

すくんだ足は動かない

No.23 09/09/04 10:20
ちと ( ♀ QTTJh )

『中村ことり』

静かな口調で加藤望は私の名前を呼んだ

夏の暑さのせいか

それとも自分への焦りか

汗が頬をつたう


正直

フルネームなんてあまり言われたことないから呼ばれてドキリとした


『…何?』


『いや…百面相がおもしろいなぁって思って』

ププッと加藤望が笑いだした


『あっあなたが変なこと言うからでしょう!?』

そんなに酷い顔をしていたのか

顔を触る私に



『面白い顔も見れたしそろそろ帰ろうかな』
加藤望が席を立った

『帰れ』

普段は使ったことのない言葉遣いをしてしまう

その反応すら面白いようで

加藤望はもう一度私の名前を呼んだ

No.24 09/09/04 10:23
ちと ( ♀ QTTJh )

『中村ことり♪』

今度は笑いを含んだような明るい声だ

『これあげる』

そう言って
テーブルの目の前に何かを置いた

『何?』

私はテーブルから遠ざかるように椅子をひく
『大丈夫 変な物じゃないよ』

『…だから何?!』
怖くて触れない


『しりとりをしよう』

『は?』

唐突な言葉に反応が出来ない

『先ずは…しりとりのりでりんご』

り?
りんごって?

安易過ぎだろう

突っ込みそうになる

『今度くる金曜日までに次のしりとりを考えてね』


『その時に君の感じる色を教えて』

『りんごってどんな色か…僕に教えて』


え?
しりとり りんご

いろ?

突然のことて頭はハテナだらけだ

『宿題だよ』

加藤望はポンと1回私の肩を叩き

私の家を後にした


これが


私と望の最初の出会い

No.25 09/09/04 10:59
砂の城 ( 30代 ♀ 5ECQh )

>> 24 あっという間の嵐のよう…。

でも…楽しかった。

ことりは久しぶりに思い出し笑いをした。


『あの人が置いて行ったのなんだろ?』

ん?触ると本だった、点字にしてある本。


『なんの本かな?でも…しりとりって(笑)リンゴの色って何色?』


でも、例えそれがどんな色でも、私には分からない。赤と言われても赤い色が分からない。


『なによ…いいやつかもって思ったけど、私が分からない事言って…』


ことりは、本を投げつけた。
お母さんが帰って来たら、もう来ないように言って貰おう。そうしよう。

そうしている間に、お母さんが帰ってくる。


『お母さん、男の子だった、もういや、もう会わない!』


ことりは、お母さんにおかえりすら言わずに、話した。


『あら、男の子だったの?お母さん女の子だと思っていたわ(笑)、ねぇ、ことり、お母さんはこのまま望君に来て貰いたいわ…』


そして、ことりが投げた本を拾い『ねぇ、ことり、お母さん何だか嬉しい。ことりがお母さんにこんなに沢山自分から思った事言ってくれたの、何年ぶりかしら?』

No.26 09/09/04 11:13
モモンガ ( PZ9M )

その夜


ベッドの脇に置いた本を指でなぞった



点字はあまり得意じゃなかったけど学校では徹底的に教え込まれる



生きていくために先生立ちも容赦がない



私はため息をつきながらうつぶせになった



指先からまぶたの裏に文字がつながる



『りんごのいろはあかいろ



りんごの味は何味?



りんごの重さはどれくらい?





りんごの皮はつるつるしてるの?




僕の知らないりんご



みんなが知ってるりんご




同じだけどちょっと違う




僕のりんごはどんなりんごかな




まさき




?…まさきって誰?



りんごの…詩かな…



みんなのりんごと僕のりんごはちょっと違う…



りんごなんて


あのちょっと甘くてすっぱいやつだよね


どれも同じじゃないの?



『…よく…わかんないや…』



みんなが私を励まそうとしている



望くんはいい人だと思うけど



あまりにも簡単に人の心に踏み込みすぎるよ



今度あったら



やっぱりボランティアはいらないって断ろう…




お母さん達

がっかりするかな…

  • << 28 三日後 望くんから電話があった 『もしもしことり? 僕だけど、明日ちょっと外にでない? 歩くのが嫌なら僕が車で迎えに行くから』 本当なら断りたい所だったが借りていた本もあるし ボランティアの件もちゃんと断りたかったので私は望むについていく事を承諾した 次の日になり望は私をむかえにきた 『どこに行くの?』の問いに 『いい所だよ』と含み笑いをした 隠したってすぐわかるんだから かげで笑っているかどうかなんて 私にはすぐにわかるんだから 車の中は以外に広く快適だった 望は私をどこに連れていくつもりなんだろう… その答えは意外な場所だった 『ついたよ ことり、ドアが開きます 左足からゆっくり出てね』 風が強い 足についた地面が柔らかい 砂…? 足元の砂に触っているとさらさらと指の間からこぼれ落ちた 遠くから聞こえるこの音は… 『海だよことり くるっと向いてごらん ことりの前方に一面の海 頭の上には高い空が広がっています 『あともうひとつ』 望はあたしの手に触れる
  • << 29 『こんにちわことりちゃん』 前方から声がした 小さな男の子の声だった 『こ…こんにちわ』 『望兄ちゃん本当にかわいいね 言ってた通り お姉ちゃん可愛いよ』 あたしは口元を押さえて顔を伏せた 小さい子にだって『可愛い』なんて恥ずかしい 『ことり、まさきくんたよ りんごのお話の男の子』 『あっ、えっ、そうなの? はじめまして中村ことりです』 あたしは右手を差し出した しかし反応がない 『あれ…遠いのかな… 望くん、まさきくんの手にさわらせて?』 あたしは足を一歩前に出した 『ことり姉ちゃん こっちにきても無理だよ 僕ね肩から腕が両方ともないんだ 目は見えるけどね 手が使えないの だから握手はできないの、ごめんね?』 あたしの目の前のまさきくんは明るい声で自分の話をしてくれた

No.28 09/09/04 11:28
モモンガ ( PZ9M )

>> 26 その夜 ベッドの脇に置いた本を指でなぞった 点字はあまり得意じゃなかったけど学校では徹底的に教え込まれる 生きていくために先… 三日後


望くんから電話があった


『もしもしことり?


僕だけど、明日ちょっと外にでない?



歩くのが嫌なら僕が車で迎えに行くから』




本当なら断りたい所だったが借りていた本もあるし



ボランティアの件もちゃんと断りたかったので私は望むについていく事を承諾した




次の日になり望は私をむかえにきた


『どこに行くの?』の問いに



『いい所だよ』と含み笑いをした



隠したってすぐわかるんだから



かげで笑っているかどうかなんて

私にはすぐにわかるんだから

車の中は以外に広く快適だった


望は私をどこに連れていくつもりなんだろう…



その答えは意外な場所だった



『ついたよ


ことり、ドアが開きます


左足からゆっくり出てね』



風が強い



足についた地面が柔らかい



砂…?




足元の砂に触っているとさらさらと指の間からこぼれ落ちた



遠くから聞こえるこの音は…



『海だよことり


くるっと向いてごらん


ことりの前方に一面の海



頭の上には高い空が広がっています




『あともうひとつ』



望はあたしの手に触れる

No.29 09/09/04 11:37
モモンガ ( PZ9M )

>> 26 その夜 ベッドの脇に置いた本を指でなぞった 点字はあまり得意じゃなかったけど学校では徹底的に教え込まれる 生きていくために先… 『こんにちわことりちゃん』


前方から声がした



小さな男の子の声だった



『こ…こんにちわ』


『望兄ちゃん本当にかわいいね



言ってた通り



お姉ちゃん可愛いよ』



あたしは口元を押さえて顔を伏せた



小さい子にだって『可愛い』なんて恥ずかしい



『ことり、まさきくんたよ


りんごのお話の男の子』



『あっ、えっ、そうなの?



はじめまして中村ことりです』



あたしは右手を差し出した




しかし反応がない



『あれ…遠いのかな…



望くん、まさきくんの手にさわらせて?』




あたしは足を一歩前に出した




『ことり姉ちゃん


こっちにきても無理だよ



僕ね肩から腕が両方ともないんだ



目は見えるけどね


手が使えないの


だから握手はできないの、ごめんね?』



あたしの目の前のまさきくんは明るい声で自分の話をしてくれた

No.30 09/09/04 12:42
りん ( ♀ wGqSh )

僕はね、生まれつき両腕がないんだ



ママはいつもいつも泣きながら僕に謝るんだ。

ママのせいで……

可哀相に……

こんな身体に産んでごめんなさいってね。



でも僕はママの子供になれてとても幸せだし、
この身体だって不自由ではあるけれど、僕は自分が可哀相な子供だなんて思ったことは一度だってないんだ。



そんな風にママが思ってたなんて知らなかったけど、ママはいっぱい悩んだんだろうな~
って考えてたらママのほうが可哀相に思えてきて……



僕よりもママのほうが不幸なんじゃないかって思って、僕ママに聞いたんだ――。



『ママ。
僕がこんな身体に産まれてきて後悔してるの?
いつも泣いて謝ってばかりで楽しいことなんかないんじゃない?
僕がいるせいでママは不幸になっちゃったの?』



そしたらママは大きな声でもっと泣いたんだ――。

No.31 09/09/04 16:05
りん ( ♀ wGqSh )

『まさき……ありがとう。
ママ、まさきがそんな風に考えててくれてるなんて……
思いもしなかったわ。


だから、いつか恨まれるんじゃないか、憎まれるんじゃないかって思ってたの……


まさきに辛い思いをさせてしまう、そんなママは母親失格――
そう思って今まで生きてきたわ』


(……やっぱり僕がママを不幸にしてたんだ)


『でも、まさきがママの子供で幸せって言ってくれて、ママは救われた気分よ。
これからは家族みんなで幸せになりましょうね』
ってママはそういってくれたんだ。



楽しそうに話すまさきの顔は見えないが、弾んだ声は嘘じゃないと感じた


お母さんはどんな思いでわたしを育ててきたのかな?

ことりはそう思わずにいられなかった……

No.32 09/09/04 23:22
ピュアホワイト ( sHpfi )

ママ、お姉ちゃんと遊んでいい?


お姉ちゃんにご迷惑にならないようにね


ことりお姉ちゃん、海の水触ってみる?

さぶんっていうんだよ


望はことりの手をとり
まさきの方へ行こうとする


ざぶん

冷たい!

どさっ

まさきは波しぶきがかかった瞬間にしりもちをつく

まさき!
とママがかけよる


ママみてて大丈夫だよ
僕が自分でおきる

ことりも心配する


よいーしょ
う…ん

そおっと、後ろから軽く手を出す母親

えへっ
もうちょっとだったのにと
まさき


望も
よく頑張ったぞとほめる


ことりは涙ぐんでいた


(何だか恥ずかしかった)


ことりお姉ちゃん
どうしたの?
どこか痛いの?


まさきくん、ありがとう


ことりはほほえんだ

No.33 09/09/05 10:09
ちと ( ♀ QTTJh )

望に連れられ
まさきくんと一緒に遊ぶ

砂でトンネルを作り

貝殻を探す

まさきくんと私は何度も転んでしまった


海水で足元が濡れている

払ってみたけど
きっとズボンは砂だらけだろう



砂のトンネルを作っている時
まさきくんは…自分の名前が『真希』と書くと教えてくれた



僕の希と望兄ちゃんの望で二人で『希望』なんだよ!

と真希くんは得意気に話してくれた

『2人は仲良しだね、ここには良く来るの?』

私は微笑ましく2人に問いかける

『うん!』

真希くんは足を器用に使って砂をいじりながら元気な声を出した



『ここは真希と僕の始まりの場所だもんな』

望がぽつりと言う


『始まりの場所…?』

『…ああ…うん…出会った場所ってこと!』

『ふーん』

何か言葉を濁された気がする


この時私は
久しぶりの外と海で興奮していて

そんな望の一瞬の変化には気付くことはなく
それ以上深く聞くこともなかった

No.34 09/09/05 10:13
ちと ( ♀ QTTJh )

『あーもー疲れたぁ』
1時間は遊んだだろうか

望の用意してくれたシートに座り

私は空を仰いだ

望と真希くんは元気で
私をここまで連れてくると

また遊びに行ってしまった


久しぶりの外


望に手渡されたお茶のペットボトルに口をつける


おいしい

…久しぶりに何かを飲んでおいしいと感じる

ふふっ

自然に笑みがこぼれ

にやにやしてしまう


手で周りの安全を確認するのも忘れ

ゴロンっと寝転んだ


コツン

『…てて』


案の定何かに頭をぶつけた

本だ


望から渡された本


あぁそうだ

今日は本を返して
ボランティアを断ろうと思ってたんだ


本をパラパラめくる

指で点字をなぞる



『ことりさん、その本…真希の書いた?』

声のする方に顔を向ける

小さな柔らかな声

そこには

真希くんのお母さんが立っていた

No.35 09/09/05 15:31
モモンガ ( PZ9M )

『真希くんが書いたんですね


最初は何なのかわからなくて…


でもなんで『りんご』なんですか?』



あたしは体勢を起こして真希くんのお母さんの方に顔を向けた



『フフ…


これね真希が二年生の時に書いたお話でね



学校の校外学習でりんご狩りにいったのよ




いつもは特別学級だから、あの子みんなと一緒に遊べるんだってはしゃいじゃってね…




その前の日に書いたお話なのよ



手のないあの子がりんご狩りなんて酷だと思うかしら…?



私も最初はそう思ったのよ



だから真希にもやめなさいって促したの


でもね


『りんごは目でも楽しめるんだよ


誰かが補助具を足につけるのを手伝ってくれたら僕だってみんなみたいに自分で食べれるんだよ



ママにだって苦手な事があるでしょう?




僕も手があるとできる事が苦手なだけなんだよ




だから僕は僕のりんごを楽しめるんだよ



それともりんごは手がないと食べちゃいけないの…?』


ってね



頭を後ろからガ―ンって



叩かれた気持ちがしたわ



あの子が生まれてからずっと



ずっと自分を責めていたの…

No.36 09/09/05 15:46
モモンガ ( PZ9M )

『何故あの子を健康に生んでやれなかったのか…



何が悪かったのか…




私達がいなくなったあとに



あの子はどんな思いで生きていくんだろう…ってね




私は



私は弱い母親だったわ



真希を守ろうとしてばかりで



あの子の



あの子自身の強さや可能性を見つけようともしなかった




ことりさん



望くんはとってもいい人よ




あんなに気持ちの優しい



強い男の子はあんまりヘルパーさんにもいないんじゃないかしら?





望とはね小児病院でのボランティアさんとして出会ったんだけど




望くんだけだったわ、真希に『車椅子から降りなよ』って言ったのは



人混みの中でも
学校でも
遊園地でも



真希は自分の足で歩けるんだよ…ってね



転倒がこわくて
人の目がこわくて…



でもそんなの真希には関係なかったのよ



初めて車椅子から降りて近所の公園に走り出したあの子の笑顔が今でも忘れられないの…』





真希くんのお母さんは最後の方


何度か言葉につまって泣いていた



海の音と



真希くんと望の笑い声が



あたしの中で幸せな音楽のように響いてきた…

No.37 09/09/05 20:56
りん ( ♀ wGqSh )

遊んでいた二人がことりのほうに近づいてきた。


楽しい笑い声をあげながら、その声が大きくなってきたのでわかる……



すると真希が話しかける。
『ことりお姉ちゃんも一緒に遊ぼうよ。せっかく海にきたんだからさ。』



ことりは『わたしはいいわ、二人て遊んできて』
というと、望がわたしの前にしゃがんで話しかけてきた。


声のする高さが、わたしの目線からなので望がしゃがんでいるのがわかった。



『三人で一緒にできる遊びがあるんだ。
せっかく来たんだから……ねっ』



『三人でできる遊び?』
ことりは考えた……


でも、想像できない。



『しりとりだよ』
真希が答える。



『ことりお姉ちゃん、しりとりしよう?』



全盲のことりと、腕を持たない真希、そして健常者の望……



その三人が、何のハンデもなくできる遊び。

しりとり……

子供の遊びだとバカにしていたことりだったが、
何となく楽しめそうな気がしてきた……

No.38 09/09/06 00:59
ピュアホワイト ( sHpfi )

風が強く、海の水も満ちてきた

久しぶりの外出だから、風邪を引いたらいけない

ことりさん、送るよ

真希とお母さんも送っていきます

と望が促す

車に乗ると、真希が元気よく話す

望お兄ちゃん
しりとりやろうよ

オッ、やるか!
じゃあ、太陽

次にことりさんだよ

ことりはビクッとして
焦る

えっと…


真希
ミートスパゲティ


烏賊(いか)

ことり
香り

真希
りんご


あらあら、みんなお腹がすいたのかしら?と真希の母

みんな笑って真希の顔を見ると母の膝で眠っていた

言い出しっぺが寝ちゃったな
ことりさんは大丈夫?

ことり
大丈夫です

その頃
ことりの自宅では、母が夕飯の支度を済ませ、時計をみる
ことりの母
望くんなら心配ないと思うけど遅いわね


キーッ、カチャ
ことりの自宅へ車が着く


窓からみて気がついた母が玄関のドアを開ける

お帰りなさい
望くんお疲れ様

ことり、どうだった?

ことりの手を、望から母にバトンタッチする

ことり
うん、久しぶりでちょっと疲れたけど、楽しかった


母と望は顔を見合わせ、微笑んだ

No.39 09/09/06 01:15
ピュアホワイト ( sHpfi )

母は
望くん有難う
ご飯食べていかない?
と声をかける


真希くん達を送って行くので失礼します

じゃあと母をことりが玄関へ向かおうとする

エンジンがかった後に、ドアの開く音がする

望が叫ぶ
ことりさん、今度来る時は行きたい所を決めといて
宿題だよ

ことりが頷くのを確認すると望は帰っていく

母はことりを見て微笑む
ことりの顔は真っ赤になっている

ことり、お腹が空いたでしょご飯食べながら話し聞きたいわと一緒にに家に入っていく

No.40 09/09/06 09:57
ちと ( ♀ QTTJh )

夕飯は偶然にもしりとりで出たミートスパゲティだった


そんな偶然が

疲れた体を癒す


クルクルとフォークを使い私は器用に口に運んだ


『それでね…真希くんがねっ』


今日1日あったことを
隣に座るお母さんと
向かいにいるお父さんに話す


口から先に産まれてきたんじゃないかってくらい



夢中で話した


『ご馳走さま』


カチャカチャと自分の食器を片付け始める私に

2人は驚いたようだ
『ことり…大丈夫?』
心配そうな母の声

私は食器の片付けもお母さんにやって貰うことが殆んどだった


これじゃダメだよね


まずは…一歩


『大丈夫だよ』


流しに食器を置いた私は振り返って笑った


決意したように私は口を開く


『あのね、お父さんお母さんボランティアのことなんだけど…』

No.41 09/09/06 12:37
モモンガ ( PZ9M )

『ボランティアの事だけど…望くんにお願いしようと思うんだ…』



あたしの答えが意外だったのかすぐに返事をしたのはお父さんだった



『いいさいいさ!勿論!!

ことりのヘルパーだ

ことりが決めたらいいんだよな?母さん


…どうしたお前…泣いてるのか?』



お父さんの言葉に驚いて顔をお母さんの方に向けた



お母さんからは何の声もしない


ひょっとしたら私が気がつかないだけでお母さんは私に気づかれないように泣いていたのかもしれない



『お母さん…?』



『…違うわよ泣いてなんかいないわよ


お父さんのバカ

そういうことをことりの前で言わないでちょうだい』



そういうとお母さんは勝手口からバタンと音をたてて庭へと出てしまった



『…おこられちゃったな



やっちまったか』




お父さんは頭をかきながらあたしの隣にこしかけた



『母さんの泣いた顔なんて久しぶりにみたな


ことりの高校の卒業式以来じゃないかな』


そういうとお父さんは『久しぶりに花火でもするか』そう言って私を夜の庭に誘い出した



勿論私には花火なんてわかりはしない


でも焼けた火の匂いにパチパチとなる美しい音は私にとっても夏の風物詩だった

No.42 09/09/06 12:53
モモンガ ( PZ9M )

お父さんは火をつけた花火を私の手に握らせるとポツリと呟いた



『ことりがいて


母さんがいて




幸せだな父さんは』



顔は見えないが優しいお父さんが昔から大好きだった




いつも口うるさくいうお母さんに比べて



お父さんは私に考える時間をあたえてくれる




私が何かに行き当たったときも簡単には手をかそうとしない



私は小さい頃からそれが嬉しかった




『お父さん




お父さんは私が産まれて幸せだった?




目の見えない私より


普通の目の見える娘の方が嬉しかったって思わない?』



私の質問にしばらく黙ったあとにお父さんは大きな手で私の頭をぐしゃぐしゃ撫でてきた



『ことりは成績はいいのにバカだなぁ



お父さんやお母さんがお前をそんな小さい事で『いい娘』『悪い娘』なんて決めてると思うのか?



目が見えても目が見えなくても



俺の子供はことりだけだ



こんなやんちゃで優しくて困った子はお前一人で父さん充分だ



父さんはお前が笑って生きていても泣いていきていても



お前がお前らしく生きてくれたら何にもいうことないの』




そういうと今度は左の手であたしの肩を抱き寄せてくれた

No.43 09/09/06 22:49
ピュアホワイト ( sHpfi )

お母さんが戻ってくる

「あら、花火いいわね
お母さんも混ぜて!」

お父さんはお母さんの花火に火をつけてあげる

ぱちっ

お母さん
「あっ、お父さんは私の好きな花火がよくわかったわね」

お父さんは
「お母さんは、毎年
線香花火をして、この健気さがいいのよねが口癖だろ」
とからかう

ことりは、声をだして笑ってた

花火が終わる頃、
お父さんはいつの間にかいなくなっていた

母とことりはリビングで一緒にお茶を飲んでいる

No.44 09/09/06 23:17
ピュアホワイト ( sHpfi )

母は、ことりの手を握り、話し出す

「ことり、世間に出ると、色々な嫌なことがあるかもしれない
。不安なことや怖いことがあったら、何でも、お父さんやお母さんに言ってほしい。一人で悩まないで」
母は包みこむように
ことりを抱きしめる

「今日のことりはとても強く、勇気があった。お母さん、とても、嬉しかった」

ことりは涙ぐみながら、うなづく

その時、時計が22時を知らせる

「ことり、疲れたでしょう。もう、休みなさい」
ことりと母は二階に上がっていく

No.45 09/09/07 09:24
ちと ( ♀ QTTJh )

『おやすみことり』

『うん
おやすみなさい』

部屋に入って私は電気もつけず
そのままベッドにもぐりこんだ

お母さんは私が部屋に入るのを見届けて
階段を降りていく



中学生までお母さんは私の部屋の隣に寝ていた


何かあったら直ぐに部屋に来れるように


でも高校生になってからお母さんたちは1階で寝るようになった


やっぱり夜は遅くまで起きていたい

好きな音楽を聞きたい

テレビも
ラジオも聞きたい

点字は苦手だけど本も読みたい


けれど
両親に私の全てを知られてしまうのは抵抗があった



今考えると思春期の私の気持ちを尊重してくれたんだと思う


きっと今も声を出して
お母さん!

お母さん!!

…と呼べば


直ぐにお母さんもお父さんも私の所に来てくれるだろう



ああ…


2人はずっと…


私の体も


私の心も


守っていてくれたんだね


こんな風に思えたのも望のおかげだ


いつの間にか

私は暗闇の中で

夢もみずに眠っていた

No.46 09/09/07 13:54
モモンガ ( PZ9M )

次の日


土曜日だったがお父さんもお母さんも仕事があるからといつもどうり会社へとでかけた




あたしは部屋の中でひととうり片付けをしてリビングでくつろいでいた




あんなに小さい真希くんだってあんなに楽しそうにして生きてるのに





あたしだって…



何かできたら…





高校では進学か就職か先生と家族でかなり話し合った



今の時代パソコンくらいできなきゃどんな会社だってとってはくれない



あたしたち目の見えない人間はそれこそがむしゃらにキーボードの配列を覚え込まされる




特殊だが音声に変換しながら入力できるものだってある



あとは点字に手話



はくじょうの使い方


自らを防御するための武術だってある



目の見えないあたしたちは絶対に外出の際はリュックだ




はくじょうを持ちながらかばんなんかもっていたら


『あたしのかばん盗んでください』って言っているようなものだ




足元も不安で
まわりにも気を使い


そんなんでどうやって外出なんて楽しめるだろう



そう健常者の人は思うかな




でもその世界があたしの世界



全てなんだ

No.47 09/09/07 22:55
ピュアホワイト ( sHpfi )

ことりは、午後までのんびりしていた

そういえば
お父さんとお母さんが、出掛ける前に話してた

パソコンに、何かつけたって?

ことりは、パソコンの前に座り操作し始めた

キーボードのどこかにあたったのか、音声がながれる

「ことりさん、おはよう。加藤望です。
明日までに行きたい所を決めて、できれば返信して欲しい。」

はあ…
びっくりした
こんなの、いつ取り付けたんだろう

明日までって聞いてないよ

行きたい所…

望くんといける所…

何を着て行けばいいんだろう

私のやりたいことって何だろう?

しばらく考えていたが、何も浮かばなかった

この先自分は何ができるだろう

ことりは、悩んでいた

No.48 09/09/07 23:41
りん ( ♀ wGqSh )

みんなが悩むこと――。

わたしには何ができるだろうか?


視覚障がい者が仕事を選ぶとき、按摩(あんま)や鍼灸が比較的職にありつけるという理由から人気が高い。



だけどそれは『したい』こととは違うような気がしてならなかった。


世の中には目が見えなくても、ひとつの事に一生懸命に頑張っている人もいる……


バイオリンやピアノなど、聴覚や触覚を活かして素晴らしい芸術を生み出す人もいる……


わたしは一体何がしたいんだろうか……


わたしにも一生懸命に打ち込めるものがみつかるのかなぁ……


望くんにお願いしてみようかなぁ……


『わたしも何か作ってみたい……何かかたちあるものを』

ことりはつぶやいた……



あっ!そうだ。
陶芸でお椀やお皿とか作る事ができないかなぁ。



そんなことを考えていたことりだが、お椀やお皿にも絵柄があることに
この時は気付いていなかった……

No.49 09/09/08 10:12
ちと ( ♀ QTTJh )

月曜日
午後

望は家まで私を迎えに来てくれた


『ごめんね』

運転し始めて
開口一番に望が謝ってきた

『本当は陶芸やれる場所探したかったんだけど…本当にごめん』

ううん
『凄く楽しみだよ』
と私は首を横に振った


昨日お母さんに教わりながらパソコンで望にメールしてみた


陶芸がしたい


その夜
数時間して自宅に望から電話がかかってきた


陶芸教室はなかなかないらしく、1日前に予約できる所は見つからなかったみたいだ


代わりに望が探してくれたのは車で1時間程の所にあるガラス工房だった


望に言ったことは本心だ

何かをやってみたい


作ってみたい


色んなことをしてみたい


私の中でその気持ちが膨らんでいる


『ねぇ…大学は楽しい?』
『今日は授業は??』
せっかくのドライブだ楽しい時間にしたい

申し訳なさそうな望に私は明るく話かけた


『月曜は午前しかないんだ』

『まだ1年だから講義も基礎科目ばかりだし』

『あ、基礎科目っていうのはね…英語とか体育もあるんだよ』

望は大学についてひとつひとつ解りやすいように教えてくれた

わくわくする

望から聞く知らない世界に
私は一生懸命耳を傾けた

No.50 09/09/08 10:43
モモンガ ( PZ9M )

ドライブの途中コンビニに立ち寄ることにした



『望くん行ってきて

私まってるから』



手をふる私のおでこを望くんが軽くこつく



『…いたっ』



『ことりさん~


二本の足が泣いてますよ?


リハビリ
リハビリ


ね?一緒に行こう』


私はドアの外から聞こえる女の子達の声に嫌悪感を感じていた




昔からそうだけど




コンビニの入り口って誰かが座り込んでいて私は利用することをあまり好んでいなかった




はくじょうがもし彼女たちにあたったらと思うとこわくてふれないのだ




こんなこと健常者の人は感じたりしないんだろうな…



望くんは車のドアをあけると私の手に自分の手を合わせた




その手を頼りに私は望くんの腕までたどり着くのだ



『はい、右足からゆっくり…



はい、いいよ

じゃあしめるからね』



そういうと望はゆっくりと歩き出した



少し歩くと女の子達の声が益々大きくなっていく



『ちょっとごめんね

目が悪い子が通るから足しまってくれるかな』



望くんの動きがピタリと止まった

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